……誰かが、ずっと謝っている気がした。
いったい何を誤っているんだ?
親類の葬儀のために久しぶりに都会に戻った俺は
電車の中で誰かが謝っているような気がした。
声を聞いていたのだろうか………
あまり覚えていない。
俺はつい先月まで都会に住んでいた。
にも関わらず、都会の賑やかさに圧倒された。
高層ビルに、何斜線もの道路。
まるでこの世の人間全てが集ったような人込み。
選挙カーに乗ったおっさんの演説は今では懐かしささえ感じられた。
今、俺が住んでいる土地はこんなに賑やかなものはない。
あるのは虫の鳴き声と清流のせせらぎぐらいだ。
いや、1人うるさい人間もいるがここでは置いておこう。
そんな静けさに、寂しさではなく安らぎを感じ始めたのは最近になってからだ。
確かに何もない土地だということは認めよう。
みんなでワイワイできるような喫茶店もなければ、
ファミレスはおろか自販機すらないという田舎っぷりだ。
最寄の町までいけばいろいろとあるのだが、
なにしろ自転車で1時間もかかる。
だが、この町に来てみて俺は世紀の大発見をしたのだ!!
前に俺の住んでいた町にはゲーセンやファミレス、喫茶店だってあった。
が、別にそれらを頻繁に利用していたわけでもなく、
そんなものがなくてもたいして不便ではなかったのだ。

……また、誰かが謝り続けている。
彼女は誰に謝っているのだろう。
そもそも本当に彼女なのかどうかは今になっては分からないのだが。
いったい誰に謝っているのだろう?
これだけ謝っているのだから、もう許してやってもいいだろ?
いつまでも彼女を許してやらない誰かに、
俺は少し苛立ちを覚えた。
俺の知り合いの過ちの塊のようなやつだって、俺は「ごめん」の一言で許せる自信はある。
まぁ、そいつが謝るという言葉を知っていたらの話だが。
どんな過ちでも、許されないということはないはずだ。
法律上取り返せないミスなんてないはずだ。
もしあるとしたらここに来て俺に教えてくれ。とくにお礼もしないがな。
………それでも彼女は謝り続ける。
では…取り返しのつかない過ちを犯してしまったのだろうか?
普通に考えてそんな罪は裁判所で判決を下されるべきである。
数百万の壺を割ってしまったとか?
愛犬を轢かれたとか?
もしそうだとしても彼女は故意にそれをしたのだろうか?
取り返しのつかないものなら、なおのこと許してやるべきだ。
彼女がいくら謝ったって……どうにもならないのだから。
それでも彼女は惨めな声で誤り続ける。
なぁ、謝られてる誰かさんよ?
いい加減彼女を許してやったらどうだ?
だけど彼女は謝るのをやめない。
ひたすら呪文のように唱え続けている。
「ごめんなさい、」と。

「そろそろ着くぞ。起きなさい。」
父親に小突かれて俺はようやくまどろみから目を覚ました。
妙にコーヒーが飲みたくなったのは置いておこう。
ようやく電車が終点に着いたようだ。
新幹線やらバスやらを乗り継いで数時間。
窓の外の風景は、半日前までいた場所と同じ国であることすら疑わせる。
いや、同じ時代であることすら疑わしい。
しかも俺の住まいはここからさらに車で山道を走らなければならない。
うっそうと木々が生い茂る山道を抜けるとそこが……
俺の住む土地。
雛見沢(ひなみざわ)だ。



   *この物語は当たり前だがフィクションだ。

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