霊なのか夢なのかの続きです。

 

 

あたしは考えていた。この前のキョンの制服のシミ、今日のキョンの痣・・・・・・

 

あたしがこのキョンぐるみにしたことが、現実のキョンに影響してる・・・・・・?

 

あの時は・・・・・・ちょっとヨダレ垂らしちゃってシミにしちゃったし、昨日は勢いに任せて八つ当たりしてた。
・・・・・・偶然偶然!んなことあるわけ無いじゃない!あ、そうだ!名案が浮かんだわ。
シミが影響するくらいなら制服になんかを書いても影響するわよね?
というわけで、ブラックライトを当てないと見えないペンを引き出しの奥から引っ張り出した。
えーと何書こうかしら?・・・・・・ま、どうせ誰も見ないんだからあれでいいわ。♪~♪~っと。
これできっと偶然だってことが証明されるわね。さて寝るわ。
あたしはいつものようにキョンぐるみを抱きかかえた。

 


さて一時間目が始まったわ。キョンは頑張ってノート取ってる割にはテストで点取れないのよねぇ・・・・・・
まあそれはいいわ。今はとにかくあの落書きの確認よ。
ポケットからさっとガシャポンで取れるようなブラックライトを取り出し、キョンの背中の真ん中にそれを当てた。

 

あたしは絶句した。そこには昨日描いたハルヒ×キョンの相合傘がくっきりと浮かび上がっていたのだから。

 

・・・・・・こんなのあたし以外が描くわけないじゃない。しかも見えないペンで。
・・・・・・ということは、あのキョンぐるみは本当にキョンと繋がってるって言うの?
それはつまり、あのキョンの痣もあたしがやったことに・・・・・・あたしが・・・・・・あ・・・・・・

 

絶望と後悔が頭の中でオーバーヒートしてあたしは気絶した。気付いたときには保健室のベッドで寝ていた。

 

 

起き上がり時計を見る。4時半。どうやら放課後まで寝てたみたい。まだちょっと頭が痛いかも。


「失礼しまーす。あ、ハルヒ起きたのか。授業中にいきなり倒れてびっくりしたぞ、具合はどうだ?」
一瞬キョンと目が合った。でもすぐに目を逸らしてベッドに向こう側を向いて倒れこんだ。
痣ができた顔。あたしが殴ってしまった顔。あたしはその顔を見ることができなかった。
「おいおいどうした。まだどこか悪いのか?無理するなよ。」
キョンは優しい。だけどその優しさが今のあたしには苦しい。
あたしは身体を起こし、持ってる勇気をできるだけ振り絞って言った。
キョン、ごめんなさい・・・・・・
「ん?なんのことだ?一昨日のはもう仲直りしただろ・・・・・・ハルヒ?」
止められなかった。次から次へと溢れてくる。大粒の水滴が頬を伝う。
「おい大丈夫か!?どっか痛いのか!?」
・・・・・・嫌・・・・・・やめて・・・・・・優しくしないで!!

 

「・・・・・・ハルヒ?」
「ちょっと涼宮さんなにやってるの!」
キョンが尻餅をついている。騒ぎに保健室の先生も駆けつけてきた。
あたしはこの空気に耐えられず逃げ出した。ひたすら走って逃げた。

 


ドアもカーテンも閉めきり、照明もつけてない暗い部屋であたしは一人泣いていた。
もう3時間は泣きっぱなしかもしれない。泣いても泣いても涙が枯れ果てる気配は無い。
30分前くらいまではキョンからの着信が何回もあったけど全部無視した。
あたしは最低な女だ。殴ったことをまともに謝りもできないし、心配してくれたキョンを突き飛ばして逃げてきた。
絶対キョンに嫌われた。きっともう話しかけてなんてくれない。・・・・・・そんな生活するより死んだ方がマシよ。

 

震える手でカッターを掴んだ。これで手首を躊躇わずにかっ裂けばきっと死ねるわよね・・・・・・ふふ。
でも、あたしは死ねなかった。刃を手首に当てた瞬間、携帯の着信音が鳴り響いたから。
自主映画撮影の時に適当に作って無理矢理歌わせたあの曲。

 

-音声着信:朝比奈みくる-  サブディスプレイにはそう表示されていた。

 

 

SOS団団員3兼マスコットキャラクター兼お茶汲みメイドさん。
このキョンぐるみをわざわざ作ってあたしなんかにくれた人。
そして何より、

 

――SOS団団員唯一の”先輩”――

 

あたしは頼りになる人に甘えたかった。わがままを聞いて欲しかった。自殺を止めて欲しかった。
震える指で通話ボタンを押した。

 

「あ、涼宮さん?今日はどうしたんですか?・・・・・・キョンくんとなにかあったんですか?」
優しい声。あたしのことを気遣ってくれてる喋り方。少しは収まっていた涙がまた溢れてきた。
・・・・・・ひぐっ・・・・・あたし・・・・・キョンに・・・・・ぐすっひどいこと・・・・・・
「ふぇ!?えっちょっと何があったんですか?あのぬいぐるみのことですか?」
・・・このままじゃ・・・・・・あたし・・・・・・げほっげほっ・・・おかしくなっちゃう・・・・・
「ちょちょちょっと落ち着いてててくだささい涼宮しゃん!いいまから行きますから!」
・・・・・・さっきも・・・・・・自殺しようとして・・・・・・
「じじじじじじじじじじ自殺!?だっだめですやめてください!!死ぬなんて考えないで!!
 いいいまからホントにダッシュで向かいますから!それまでしし死なないで待っててください!!!」
通話が切れた。・・・・・・一気に気が楽になったわ。
でもそのあとすぐにみくるちゃんからまた着信がきた。

 

「えっと・・・・・・あのぅ・・・・・・涼宮さんの家ってどこでしたっけ?」
今日初めて笑った気がする。

 

結局公園で待ち合わせしてそこから家に来てもらうことになった。
その間におかしくなっていた心を十分落ち着かせることができた。

 

「えぇっと、お、おじゃまします。」
あ、いいのよそんな。あたしの親忙しくていつも家にいないから。

 

 

みくるちゃん、本当にありがとう。あの電話が無かったらあたし志半ばで死ぬところだったわ。
「ふぇぇ!?どっどういうことですか!?」
こうカッターを手首に当てて、さあ今お空の上へ向かうわよって時に電話がかかってきたの。
「ふぇぇ・・・・・・」
そのときのあたしはどうかしてたわ。何もしようとせずにただ逃げてただけ。あたしらしくもない。
「そっそうですよ!なんだって当たって砕けろです!石橋を叩いて砕けです!」
二番目のはちょっとおかしい気がするわね。

 

その後、あたしは全部打ち明けた。キョンぐるみが本物のキョンと繋がってるかもしれないこと。
キョンぐるみを殴ったからキョンに痣がついたかもしれないこと。毎週日曜日にキョンとデートする夢を見ること。
途中で何回も泣きそうになりながらも、あたしは全てを話し終えた。

 

 

「えーっと、じゃあこのキョンぐるみはキョンくんとリンクしてるんですね?」
うん、たぶんそうなんだと思う。
「じゃああたしにいい考えがあります!こうやって・・・・・・」
そう言うとみくるちゃんはキョンぐるみを撫で始めた。
「いたいのいたいのとんでけー!ってやるんです!」
・・・・・・これ、笑うところなの?
「あー信じてないですねー?これ絶対効きますよ。おばあちゃんがよくやってくれたんです。」
・・・・・・みくるちゃんらしいというかなんというか・・・・・・

 

その後もみくるちゃんはいろんな相談に乗ってくれた。くだらない愚痴も聞いてくれた。
「じゃあ、また不安になったら遠慮なく呼んでくださいね。おやすみなさい。」
ありがとうみくるちゃん。この借りはいつか絶対に返すわ。命をかけてでもね。

 

さて、と。・・・・・・痛いの痛いの飛んでけ、か・・・・・・そんなの科学的根拠もなんにもないじゃない。

 


・・・・・・いたいのいたいのとんでけー・・・・・・いたいのいたいのとんでけー・・・・・・

 

 

・・・・・・結局一晩中やってたわ。肩凝りもひどいし腰も痛い。そして眠い。
バカみたい。こんなんでキョンの怪我が治るわけないのに。

 

学校に着いた時には既に疲労困憊だったあたしは、席についた瞬間机に突っ伏した。

 

「どうしたハルヒ、昨日は電話にも出なかったし、やっぱどっか悪いのか?」
昨日あんなことしたのにキョンはまた優しくしてくれる。でもやっぱり顔は見れないからそのまま返事を返した。
いや、ただ寝不足なだけよ。
「寝不足か。夜更かしなんてするもんじゃねえぞ?まあ俺が言うセリフでもないが。」
そう言うとキョンは席を立って離れていった。きっとアホ谷口のところね。あたしは耳を澄まして会話を聞いてみた。
「よぉキョン、・・・・・・ん?お前昨日まで顔に痣無かったか?」
「ああ、でも今日起きたら無くなってたんだ。俺もびっくりしたさ。」
え?本当に?
腕の隙間から気付かれないようにチラッとキョンを見た。・・・・・・確かに綺麗な顔に戻ってる。
もしかしてあれが効いたのかしら?またみくるちゃんに借りが増えちゃったわ。
「ところでキョンよー、昨日涼宮が廊下を泣きながら走ってたぜ。お前なんかしたんじゃねえのか?」
げっ、谷口に見られてたの!?人生最大の汚点ね。
・・・・・・でもキョンは何もしてない。あたしがただ勝手に暴走してただけ。キョンは何も悪くない。
「あーそれなんだがな、昨日とりあえず電話で謝ろうと思ったんだが全然出てくれないんだよ。」
だからキョンは何も悪くないのに・・・・・・あたしが全部悪いのに・・・・・・なんでそんなに優しいの・・・・・・?
「あちゃー、こりゃお前と涼宮もとうとう終わりかもな。」

 

それ以降は何も聞こえなかった。あたしの中で「終わり」という単語が強く反響を繰り返していた。
・・・・・・また涙が溢れてきた。谷口に泣かされるなんてそれこそ人生最凶の汚点よ。

 

昨日の徹夜で凄く疲れが溜まってるのもあって、授業は少しも耳に入らなかった。

結局今日はキョンにSOS団団活中止だけを伝えてさっさと帰ることにした。
今のあたしは昨日のおかしくなったあたしと変わらない。落ち着いてから次のことを考えるわ。

 

 

家に帰るとすぐさまベッドに倒れこんだ。とにかく今は寝て疲れを取ることが先決ね。
このキョンぐるみを抱いてると不思議とぐっすり眠れる。あたしの悩みの原因なのに。皮肉なものね。

 


うーん・・・結構寝ちゃったかしら。今何時・・・・・・?・・・・・・って11時!?6時間も寝ちゃったじゃない!
流石に今からまたすぐには寝れないわね・・・・・・ん?
キョンぐるみを抱いているはずのあたしの手は明らかにもっと固くてがっしりしたものを感じていた。
・・・・・・って本物のキョンじゃない!?今日は木曜日よね?日曜日じゃないわよね?
ということはこれは夢で、結局あたしはまだ寝てることに・・・・・・流石に寝すぎよ。
「・・・・・・うーん・・・・・・ん?・・・・・・うわっ!?」
ちょっと騒いだからか、急にキョンが起きた。思わずあたしもびっくりして声を上げちゃった。
「なんだなんだハルヒ、今日は何の用だ?今日は日曜日じゃないぞ。」
い、いや、あたしにもよくわかんないんだけど・・・・・・
と、ここで気付いた。今は夢だからかわからないけどキョンの顔も見れてる。普通に話せる。
明日キョンに謝る練習をする絶好のチャンスじゃない!これを逃す手は無いわ。
あのさ、今日はデートじゃなくてちょっと話があるの。聞いてもらっていい?
「・・・・・・まあ、いいぞ。」

 


明日あたしは現実のキョンに同じことを言うつもり。だからちょっと練習させて欲しいの。
「ああ・・・・・・うん、やってみろ。」

 

あたしは昨日みくるちゃんに打ち明けたことと同じことを全部キョンに喋った。
そしてそれが原因でキョンにひどいことをしてしまったことも話した。

 

・・・・・・本当にごめんなさい。
この言葉であたしの全ての思いを締めくくった。

 

「・・・・・・なるほどな。謎が全部解けたよ。そもそも俺はそう怒ってないしな。痣も治ったし。」
謎って何?と訊こうと思ったけど、なんとなくそれは訊いちゃいけないような気がしてやめた。

 

 

それからね、どうせキョンぐるみ抱いてることも言っちゃうんだから、告白もしちゃおうと思うのよ。
夢の中でこんな自己満のデートしててもしょうがないのよね。あんたはあたしの理想のキョン像なんだろうしさ。
それでキョンとあたしの関係がどうなるかはわからないけど、後悔だけはしないつもりよ。
あたしが全部自分で決めたことだから。自分のやることの責任は自分で持つってね。
「・・・・・・そうか。」

 

「でもきっと、その現実の俺もハルヒのことを許すだろうし、告白も受け入れると思うんだよ。」
・・・・・・なんであんたにわかるのよ。あんたはあたしが生み出したキョンでしょ?
「ちょっと俺の意見も聞いてくれ。お前は俺がただの夢の中の幻だと思ってるわけだろ?」
そうね。現実のキョンと今のキョンは別人。そう思ってるわ。
「俺から見たら、お前が俺の夢の中の幻かもしれないわけだ。」
それはないわ。あたしはあたしだもの。
「そう、それなんだよ。ハルヒはハルヒ。それと同じように、俺も俺なんだ。」
・・・・・・そんなの信用できないわ。あたしの夢の中で言われてもね。
でもそんなことお構い無しにキョンは続ける。
「つまり俺は、明日もさっきの長い話をお前から聞かされるわけだ。内容を知ってる長い話なんて苦痛でしかない。
 しかもそれが真剣に謝られる話だとなおさらな。こっちが申し訳なくなっちまう。
 そこでだ、今ここで合言葉を決めてだな、俺が明日それを言ったら今までここであったことは
 俺たち二人の共通の出来事だったって信じてくれるか?その場合もう告白も済んでることになるが。」
合言葉なんて生ぬるいものじゃ信じないわ。夢の中で毎回最後にやってることを現実でもやってくれたら・・・・・・
信じてあげてもいいけどね。

 


「・・・・・・それでいいんだな?じゃあ明日、部室で二人きりになったら絶対にやってやる。覚悟しとけよ?」

 


予想外の返事に驚いて呆然としているうちにあたしは唇を奪われていた。

 

結局その日はその後まともに眠れなかった。そりゃ夜中の2時まで9時間睡眠してりゃ眠くもないけどさ。
いや他の原因もあるけどさ。

 

夢のキョンの最後の言葉。部室で二人きりになったらキスしてくれると言った。
でも本当に信じていいの?所詮あたしの妄想じゃないの?・・・・・・そうよね。正夢なんてそう見るもんじゃないわ。
でも、ここでみくるちゃんの言葉を思い出した。
『なんだって当たって砕けろです!』
・・・・・・そうね。無駄に悩む必要なんてないわ。どうせ今日謝るんだし、部室で二人きりになるのは自然な流れじゃない。
ネガティブになっててもしょうがない。あとは腹決めてやるしかないわ!涼宮ハルヒ、ファイト!
・・・・・・それにしても今回はみくるちゃんに助けられっぱなしね。どうやって返そうかしら。

 


今日は昨日よりは自然にキョンに接することができたと思う。それに必死で授業は全然聞こえなかったけどね。

 

昼休み、あたしはみくるちゃんと古泉くんと有希に、キョンと二人で話したいから、ホントに悪いんだけど今日は部室に
来ないで欲しいっていうメールを送った。
「いいですよ!頑張ってください!応援してます!  P.S:絶対キョンくんはOKしてくれますよ!」
「勿論いいですよ。明日の探索の組分けは無条件であなたと彼でしょうか?」
「あなたの恋愛が成就することを期待している。成就する確率は100%」
・・・・・・みんなはもうお見通しなのね・・・・・・ていうか古泉くん気が早すぎるわよ。なんとなく遠まわしだし。

 

HR終了の鐘が鳴り響く。・・・・・・今日ほど午後の授業が長く感じた日もないわ。
あたしはキョンに小声でちゃんと部室来なさいよって言って、すぐに部室へと向かった。

 

キョンがまだ来ない。1分が10分にも20分にも感じられる。まさかこのまま来ないなんてことは・・・・・・
ノックの音が鳴り響いた。は、はいっ!・・・・・・声裏返っちゃったわ恥ずかしい。

 

 

「おっす。ん?古泉も朝比奈さんも長門もいないのか。”二人きり”だな。」

 

別にキョンが強調して言ったわけじゃない。でもあたしにはそこだけ一気にボリュームを上げたように聞こえた。

 

キョンはいつものように椅子に座った。いくら待ってもあたしに近づいてくる気配はない。・・・・・・やっぱ夢は夢ね。
今は昨日練習したように謝ることにするわ。残念だけど。

 

キョン、ちょっと話があるんだけど・・・・・・
「ん?なんだ?」
この前あたしとキョンがケンカ・・・・・・じゃなくてあたしが勝手に怒った次の日に、キョンに痣ができてたじゃない?
「ああその話か。それはもう昨日聞いた。もちろん全部許してやるさ。そもそも怒ってなどいない。」
キョンは椅子から立ち上がり、あたしに近づいてきた。
「それよりも、昨日誰かさんと約束したことがあってだな、これからそれをやらなきゃいけないってわけだ。」
さっきから驚きで声が出ないあたしの肩をキョンは優しく掴んだ。
「俺、実はポニーテール萌えなんだ。」
・・・・・・なに?
「入学してすぐの時、あの変な夢から戻ってきた時、冬の・・・・・・いやあれは違うな、あとこの前と、夢の中。
 どんな時だって、お前のポニーテールはそりゃもう反則なまでに似合ってたぞ。」
・・・・・・バカ・・・・・・じゃない・・・の・・・・・・

 

キョンが笑った。あたしも笑い返した。そして目をつぶる。

 

あたしの唇とキョンの唇が重なる。・・・・・・現実世界でのファーストキス。

 

いつまでもこうしていたい。キョンの温もりをずっと感じていたい。

 

――あたしは今”幸せ”の真ん中で優しく包まれている。
     この幸せをもう絶対に離したくはない。離さない。そう決めた――

 

 

 

こうして幸せいっぱいのあたしだったんだけど・・・・・・ただひとつだけ失敗を犯していたのよ。
あたしはこのSOS団室にはあたし、キョン、みくるちゃん、古泉くん、有希しか入ってこないと考えていた。
だから鍵を掛けなかったんだけど・・・・・・実際はもう一人、堂々と入ってこれる人物がいたのよね。

 

激しくドアが開いた音がした。

 

「やっほー!差し入れうぇえっ!!!!!?????」
あたしは反射的にキョンから身体を離した。ドアの前にはビニール袋を取り落としたSOS団名誉顧問が立っていた。
今の鶴屋さんは、普段からは想像もできないくらい動揺していた。顔真っ赤だしね。あたしもだろうけど。
「ゴメンヨハルニャンキョンクン、トリコミチュウダッタノニオジャマシチャッタミタイダネ!アタシハココデオイトマサセテモラウヨー!ジャアネッ!」
このセリフを一息で一気に吐き出し、落とした袋も持たずに全速力で去っていった。アクセントが大分おかしかったわ。

キョンを見ると何事もなかったかのように微笑んでいる。あたしはこんなに恥ずかしいのに・・・・・・
「いや、別にどうってことないだろ。何なら皆を呼んで見せ付けてやってもいいんじゃないか?」
ええ!?ちょっとそれは本当に恥ずかしいわやめて!!
「冗談だ冗談。」

 


「ところでな、ずっと言いたかったんだけどまだ夢の中でも言ってないことがあるんだ。」
え?なになに?
「お前も本心を打ち明けてくれたことだしな。言ってやるよ。」

 

 

 

 「俺は、涼宮ハルヒを世界で一番愛してる。これからもずっとな。」

 

 

 

その後のことを少しだけ語るわ。

 

あたしとキョンの関係は、うっかり口を滑らせてしまった鶴屋さんから一気に学校全体に広まった。
最近女子からの鋭い視線を感じるのよねぇ・・・・・・キョンって結構もててたのに本人は気付いてなかったからね・・・・・・
そのキョン自身は結構堂々としてるんだけどね。

 

「おいおい何だよ、あの仲悪そうにしてたのはネタ振りだったってか?あーあー少しでも心配した俺がバカだったよ。」
「まあでも良かったんじゃない?なんかパッとしない関係だったしさ。」
「それから惚気るのは勘弁してくれよな。虫唾が走る。」
とりあえずあんたもいい加減に彼女でも作ったら?
「ぐはっ!?・・・・・・今のは効いたぜ・・・・・・」

 

みくるちゃんにはささやかなお礼としてあたしがコーディネートした服をあげた。
着せてみたらバッチリ似合ってたわ。今度の文芸誌の表紙にでも使おうかしら?
「お前はそういうセンスだけはいいからな。」
だけはって何よ、だけはって。

 


そして今日は日曜日。あたしは駅前でかれこれ1時間は待っている。
とは言ってもまだ待ち合わせ時間の30分前。別にキョンが遅いわけじゃないわ。
でもいくら二人きりのデートでもね、やっぱり遅れた方が罰を受けなきゃいけないのよ。もう既にルールと化したわね。

 

ここしばらくはあの夢は見てない。そりゃそうよね。本物のキョンとデートできるのにわざわざそんな夢見る必要も無いし。
・・・・・・あ、キョンが来た。さて今日も言ってやるわ。

 


  「遅い!罰としてキスしなさい!」ってね!

 


 fin

 

 

 

おまけ

 

「キョン、あたしの1/1ぬいぐるみ作ったから、キョンにあげるわ。」
マジでか。ありがとう。
「大事にしなさいよ?」
家宝にするぜ。

 


とは言ったもののこうなんというか抱いて寝るのはなんだかなぁ・・・・・・
「あーキョンくんなにそれ!ハルにゃんのぬいぐるみだー!ねーあたしハルにゃんと一緒に寝たいー!」
あー、うんいいぞ。でも乱暴に扱わずに大事にするんだぞ。
「うん!わーい!ハルにゃんといっしょー♪」
それからは特に何も考えずに就寝についた。ちなみに未だにハルヒ(霊)には抱かれている。
ぬいぐるみが鍵となってたことを知ってから更に安心して寝れるようになったな。

 

翌日

 

ハルヒは俺を見るとみるみるうちに顔が赤くなっていった。どうした?
「・・・・・・ぬいぐるみだからってセクハラすんな!!!!!!」バチーン
ぶはっ!?え?え?俺は何もしてないよ?ってかそもそもあれもリンクしてたのかいやみんなこっち見るな誤解だ誤解(ry

 

妹よ、お前はぬいぐるみ相手に何をしたというのだ?

 

「てへっ♪」

 

本当に本当におわり


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