プロローグ
 
薬物乱用に溺れる奴等は、意志が金箔よりも薄いに違いない。
俺はそんな風に思っていた。しかしその考えが、
いかに的外れで愚かなものだったかと思い知らされた。身をもってな。
 
涼宮ハルヒのダメ、ゼッタイ
 
一章
 
俺は今日も強制ハイキングコースを、
目を半開きにしながらメランコリーに上っている。
なんで俺がこんな顔をしてるのかって?
それは今が受験シーズン真っ直中で無謀にも、
俺がその激流の中に身を投じているからだ。
驚くことに俺は都内の某有名国立大学。つまり東大だ。
そいつを志望してしまっている。
いや、させられているというべきか。
あの崇高なるSOS団団長、涼宮ハルヒにな。
ちなみに別に俺はハルヒと付き合ってる訳じゃないぞ。
そりゃ、たまにいい雰囲気になったりもするが、
これといったきっかけがな。それに、今はそんなことより受験勉強である。
おい、そこ!誰だチキンとか言いやがった奴は!…正直俺もそう思う…
とにかく、付き合ってもいないのに、
勝手に人の志望大学まで決め付けないでほしいものである。
お陰で昨夜もハルヒ特製受験対策問題集に打ちのめされ、こんな状態だ。
 
 
「よお!キョン!」
 
後ろから『朝っぱらから声を聞きたくない奴ベスト3』
にノミネートされている、谷口の声がした。
ちなみにあとの二人は古泉と妹である。
そのうちの片方は避けようがないがな。
 
「相変わらず眠そうだな、お前は。いいか?
親友として忠告してやる。お前が東大に合格するなんて不可能なんだ。
よく考えてみろ?俺が道行く女性にナンパして成功すると思うか?」
 
もしかしたらこいつは本気で心配してくれてるのかもしれないな。
自分をそこまで貶めることないのにな。
というか、お前は自分がモテナイ事にきづいてたのか。
「それはハルヒに言ってくれ。
それに俺だって東大一本に絞ってるわけじゃない。
あいつのお陰でちょっと名の通った私立大学くらいなら、
合格出来るだけの学力はついてるつもりだ」
まあその旨をハルヒに伝えたら猛反対されたがな。
しかし、そこまであいつの言われるがままになることもないだろう。
 
 
そんな会話をしてると後ろから女子の声が聞こえた。
「おはよ!キョンくん!谷口くん!」
そういったのは朝比奈さんではない。
あのお方は今はこの街にはいないからな。
その声の主は三年になってはじめて、同じクラスになった春日美那だった。
朝比奈さん同様、少し栗色のショートヘアーをアシンメトリーに束ねている。美人というよりは、健康的な可愛さがある女子だ。
 
「よう、春日」
俺はそいつに挨拶を返したが谷口は顔をしかめると、
そっぽを向いてしまった。やれやれ…またか。
クラス変え当初は、谷口のそんな態度をみて、
こいつも古泉と同じ道を歩みはじめてしまったのかと、
ひどく驚いたものだが11月の今となっては、
それは当たり前になっていた。谷口は、春日にだけはとてもそっけないのだ。
 
 
「じゃ、また学校でね!」
春日がその場を去ってから俺はいつものように、
谷口にその理由を聞いてみたが、谷口は
 
「あいつには絶対に、何があっても関わるな」
 
っと言ったきり一言も喋らなくなってしまった。
…やれやれ…そのセリフをきいたのも何度目かね…
こいつは春日に、よっぽどひどいフラれ方でもしたのか?
そんな事を考えながら俺達は学校についた。
 
 
この時、こいつの言葉の真意をもっと真剣に考えていたら、
俺はこのあとに待ちうける高校生活、
いや、人生の中で一番タチの悪い災難に会う事もなかったのかもしれない。
あのな、古泉。この世で一番怖いのは神様なんかじゃない、それは人間の欲望だ。
 


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