※これは魅惑の王様ゲームの続編です。

 

 

 

「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
「はーい!あたしー!3番は5番のほっぺにチューするー!」
おい妹よ、確かに定番だがなんてことを言い出すんだ。俺が5番だぞ。
いやでも古泉に当たる確率は1/4だ。まだ俺には希望がたんまりと残されている!
「すいません。僕が3番です。」

 

 

ハイ俺の人生終了。短かったなぁ・・・・・・

 

 

というか古泉もせめてもっと嫌そうな顔するとかあるだろ何ニヤケてんだ。
と思った瞬間古泉は俺にルパンダイブをかましてきた。
「ああ僕のキョンたん!!もう誰にも邪魔はさせないよ!!!!!一万年と二千年前から愛してる!!!」
おいちょっと待て気色悪さがハンパじゃないってかやめろ俺はホモじゃないハルヒ長門助けてくれ!!!!
って何みんな顔赤くしてこっち見てるの!!??何!?最後まで見届けたいの!!!????
「さあキョンたん!アナルを出して!!!今日こそ僕らは一つになるのです!!!!!!
 キョンたんと僕が繋がったから!8月1日はアナル記念日!801の日!801の日!」
やめろここはアナルじゃないプリンだぞ甘いんだぞ妹の前で何をやめろやめろやめやみぇあっやっやややや

 

●<ふんもっふ!!!!

 

 

 

   ア   ナ   ル   だ   け   は   ア   ッ   ー   !   !

 

 

 

 B A D  E N D

 

 

 

・・・・・・こんな悪夢を見た所為で今年はフェリー内では30分しか寝てなかった。
もう古泉は信用できん。あんなホモどうにでもなれ。
どうやら俺は相当うなされていたようだ。あのハルヒでさえ心配してくれていたからな。
「だ、団長が団員を気遣うのは当然のことなのよ!!」
そういうことにしておきますよ。

 

というわけで今年もSOS団は例の孤島に合宿に行くことになったわけだ。団長のわがままでな。
俺達は今年受験だからこんなことをしている暇はない筈なのだが、朝比奈さんはもう近くの大学に行ったし、
他は全員東大A判定(長門は満点らしい)というなんとも勉強のできるメンバーが揃っているため、
俺のことなど全く構わずに毎年恒例の合宿をすることが決定してしまった。勘弁してくれ。
よく考えたら去年は朝比奈さんがそういう状況だったのか。ごめんなさい朝比奈さん。
今年は朝比奈さんの都合もあるので夏休み初日ではなく8月1日になった。
・・・・・・夢を思い出してしまったじゃないか忌々しい。

 


去年の王様ゲームから俺は一年間ずっと考えに考え抜いてきた。そしてようやく一つわかったことがある。

 

ハルヒに「大好き」って言われたとき、俺は完全にハルヒに惚れてしまったようだ。

 

自分の気持ちを素直に受け入れられるようになったのはようやく俺も大人になったってことかね。

 


ただ素直に行動に移せないのは昔から変わってなく、結局ハルヒと俺の関係は去年から全く変化無しで、
SOS団団長と団員その1のままである。それ以上でもそれ以下でもない。
「キョンよー、今年も涼宮とどっか行くんだろ?夜這いでもかけてさっさとくっついたらどうだ?」
「キョンにはたぶんそんな根性はないと思うな」
国木田よ、お前はたまに毒舌だな。

 

そういや去年の落書きの内容を教えてもらってないな。忘れた頃に聞いてみるか。

 

 

「毎年恒例!SOS団プレゼンツ王様ゲームたいかーい!!!」
若干名前がパワーアップしたな。
「「「「「「王様だーれだ!!」」」」」」
「僕ですね。じゃあこれも恒例ということで、2番が振り返りながら大好きって言う、でお願いします」
「あたしが2ばーん!」
妹は後ろを向くと、ジャンプしながら振り返った。
「だーいすき!だよっ!」
とても中学生には見えん。ロリコンどもが狙わなければいいが・・・・・・
「すごいわ!妹ちゃん完璧よ!ロリ萌え要素バッチリだわ!!あーでも『だよっ!』のところで首をちょっとかしげると
 もっといいわ!!ほらやってみて!・・・そう!そうよ!これで落ちないロリコンはいないわ!」
俺の妹に何吹き込んでんだハルヒ。てかロリコンに狙わせる気か。それだけはやめてくれ。

 

 

「妹ちゃんは初恋が実るタイプね。あんなに素直なんだもの。相手の子もメロメロよ」
妹に好きな人ができるってのは兄としては複雑な気持ちだけどな。
「・・・・・・ところでキョンの初恋ってどんなだった?」
初恋ねぇ・・・・・・(ほら!『初恋の相手はハルヒだな』って言え!言え!)
まだしたこと無いな。(このクソヘタレが!忌々しいったらありゃしない)
「アンタ人を好きになったことないの!?心が貧しいのね」
じゃあお前はどうなんだ。
「え?・・・え・・・っと・・・「キョンくーんハルにゃーん次やるよー?」
いいところで邪魔をするな妹よ。・・・・・・ハルヒの初恋話を聞けると思ったのにな。

 

その後は長門が古泉の額に肉って書いたり長門が一発ギャグで会場を凍らせたり
長門が朝比奈さんの胸を揉むという羨ましいこともあったりって長門ばっか当たるな今日は。

そんなこんなで次で最後ということになった。

 

「「「「「「王様だーれだ!」」」」」」
「はーい!あたしー!3番は5番のほっぺにチューするー!」
おい妹よ、確かに定番だがなんてことを言い出すんだ。俺が5番だぞ。
いやでも古泉に当たる確率は1/4だ。まだ俺には希望がたんまりと残されている!
「すいません。僕が3番です。」

 

 

いやあああああああ正夢いやあああああああああああああああああああああああ
誰か俺を殺してくれ!朝倉でも誰でもいいからあああああああああああああああ

 

 

「・・・あ・・・あれ?・・・すいません僕の勘違いのようです」
ありゃ?こんなの夢にあったか?いや良いんだけど。ものすごく安堵してるけど。
しかし動揺してたこともあって俺は近づいてくる者の気配に全く気付いていなかった。
「キョンくんみぎー!」
妹に言われるがままに右を向くとそこには

 

目をつぶって唇を突き出してるハルヒの真っ赤な顔があった。

 

さて状況を整理しよう。ハルヒは俺の頬にキスをしようとした。
しかし俺が振り向いてしまったことにより俺の頬があった場所には俺の顔の正面がある。
そしてハルヒは目をつぶっているからそれに気付いていない。
この現象が全て重なったとき起きることとは・・・?

 

パシャ
「あー!ほっぺって言ったのにー!」
「・・・と・・・撮っちゃいました・・・・・・いい妹しゃん!お部屋に戻りましゅ!」
「おやおや、見せ付けてくれますね。僕も寝ます。では」
「・・・・・・お幸せに」

 

 

こうして俺とハルヒだけが部屋に残されてしまった。
ハルヒはというと、さっきからずっと下を向いて黙っている、正直居づらい。
・・・・・・ごめんハルヒ、俺も部屋に戻る・・・・・・
そう言って俺はベッドから立とうとしたのだが、ハルヒに服の裾を掴まれて引き止められた。
「・・・・・・ひ・・・・・・ス・・・・・・・・・・・いの?」
・・・すまん、良く聞こえなかった。もう一回頼む。
「・・・・・・だから、人のファーストキス奪っといて何も言うことは無いの!?」
沈黙が部屋を支配する。1分くらい経過しただろうか。
・・・ハルヒ、ファーストキスの相手が俺なんかで嫌な気分にさせたことは謝る。でも・・・・・・ハルヒ?
見るとハルヒが目に大粒の涙を浮かべていた。
「・・・なんで・・・なんで謝るのよ・・・・・・嫌なわけ・・・・・・ないじゃないの・・・・・・」
おいハルヒそれはどういう「あたしはキョンのことが好きだった!」
「SOS団を作った時からずっと!なのにキョンはあたしとキスしても嬉しそうな素振り一つ見せないじゃない!
 やっぱりキョンはあたしのことなんてなんとも思って無いんだ、って考えたら一人でなに盛り上がってたんだろう
 って思えた。去年もそう。大好きって言ったのは本気だった。でもアンタはただ暴れるだけだったじゃない!
 ・・・・・・迷惑だったんでしょ?勝手にSOS団なんて変な組織に連れ込まれて、我侭なあたしに振り回されて、
 いいようにコキ使われて・・・・・・そんなあたしを嫌いにならないわけないわよね・・・・・・」
いやちょっと待てそれは「もう何も言わないで!これ以上あたしを傷つけないで!」
するとハルヒは割り箸クジを二本手にとって片方を渡してきた。
「これから最後の王様ゲームをするわ!キョンが王様!あたしが1番!
 最後だから本当にどんなことにでも従うわ。SOS団を解散しろって言ったら解散するし、
 転校しろって言ったらどんな手段を使ってでも転校するし、・・・・・・死ねって言ったら死んでやるわ!
 ほらさっさと命令しなさい!」

 

 

・・・・・・やれやれ、被害妄想も甚だしいな。てか俺がはっきりしないのが悪いのか。すまんな。
本ッ当にどんなことでもいいんだな?さあて何にしようかなー?
まあ、最初から俺の命令は決まってるんだがな。

 

――1番は王様とキスだ。
「えっ?」

 

 

 

どのくらい経ったは俺にはわからない。少なくとも10分はそのままだったと思う。
ようやく唇を離した俺は、一番にこう言ってやった。

 

――お前の我侭なところも、俺を常に引っ張ってくれるところも、たまに拗ねてるところも、
   100Wの笑顔も泣き顔も全部ひっくるめて大好きだ。ハルヒ、愛してる――

 

「・・・・・・なんで・・・なんでキョンはそんなに優しいのよぉ・・・・・・」
ハルヒは声を上げて泣いている。今まで素直になれなくてごめんな。たまには俺の胸で泣いてくれ。

 

 

泣き声も小さくなってきた。そろそろ頃合だろうか。
俺はハルヒの持っている1番割り箸を取り上げ、王様割り箸を渡した。
「え?え?」
泣きの一回の王様ゲームだ。ハルヒが王様、俺が1番だ。
泣きの一回だからどんなことでも何なりとご命令くださいませ、ハルヒ様?
「・・・・・・あたしにそんな権限を持たせたことを後悔するんじゃないわよ?」
なんなりと。
「・・・・・・1番は一生王様の隣で王様を愛することを誓いなさい!!以上!!」
ハルヒ様?雑用係という身分の低い私めでいいのですか?
「いいの!キョンじゃなきゃだめなの!!あとその言葉遣い禁止!じれったい!」
光栄でございます。照れてる御顔もとても麗しゅうございます。
「やめろって言ってるでしょー!!」

 

 

きっと、俺たちはずっとこんな関係でいられるんだろう。そう思えた。

 

 

 

「きゃっ!」 ドシン


・・・・・・今のはなんだろう。魅惑の朝比奈さんボイスに聞こえたが。
「ねぇ・・・今のみくるちゃんの声・・・・・・あっちから聞こえてきたんだけど・・・・・・」
ハルヒはドアを指差している。

 

ダダダダダダダダ!!と足音が聞こえるや否や俺は走り出した。
ドアを開けると右には古泉、左には妹と朝比奈さんを抱えた長門が駆け出していた。
「ハルにゃーん!今度から義姉ちゃんって呼んでもいいー?」
いいからまず俺をお兄ちゃんと呼べ。

 

結局あの二人の身体能力には勝てなかった。
「不覚だったわ・・・・・・最初から全部聞かれてたのかしら?」
ああ、罰ゲームが必要だな。
「そうね、全員コスプレで買出しくらいはさせないとね。」
おっそろしい。

 

その後俺は自室に帰ろうとしたがハルヒに引き止められ、同じベッドで夜を明かすことになった。
皆が想像しているような出来事はこれっぽっちもなかった。全力疾走で疲れてたしな。ヘタレだしな。
「キョンは根性無しだからねぇ」
回想に出てくるな国木田。毒が強くなってるぞ。

 


その後もひと悶着あった。なんと朝比奈さんが携帯で「あたしはキョンのことが好きだった!」
「いいの!キョンじゃなきゃだめなの!」の部分を録音していたのだ。ドジな諜報員の唯一のお手柄である。
その音声は朝比奈さん→鶴屋さん→北高の後輩と渡り瞬く間に北高全体に広がってしまった。
おかげで俺とハルヒは学校公認のバカップルとなってしまった。いや別に悪い気はしないけどな。

 

しかも朝比奈さんは例のキスの瞬間の写真も鶴屋さんに送ってしまった。おかげで今も北高の掲示板には
隅に俺とハルヒの写真が貼られている。いや別に悪い気はしないけどな。

 


そんな高三の夏の出来事である。
これを良い思い出と呼ばずになんと呼ぶ?至高の思い出?究極の思い出?どうでもいいか。
そういやホモ古泉の件もあったが機嫌がよかったから全部忘れてなかったことにした。所詮夢。

 

 

 

もうあれも5年前か。

 

「なにボケっとしてるのよ。シャキッとしなさいシャキッと!」
ん?ああ、ちょっとこの写真を見てたら高三の時のことも思い出してな。
まさか告白とプロポーズを同時にされるとは思わなかったけどな。
「・・・あれは・・・・・・キョンがなんでもいいって言うから・・・・・・」
真っ赤に染まったハルヒ様はとても麗しゅうございます。
「だーかーらー!それはやめなさいっ!」

 

やっぱりこの関係が俺の居場所なんだと再認識。

 

「そういえばさ、あれから王様ゲームってしてないわよね」
ああそうだな。本当に最後の王様ゲームになるかもな。
「・・・・・・SOS団のみんな元気かな・・・」

 

 

高校を卒業してからSOS団は臨時休業となっている。俺たちの結婚式には来てくれたが、
それ以来全く連絡をとっていない。朝比奈さんは未来に帰ってしまった。確かに寂しい気もするな・・・

 

「決めた!今年の結婚記念日はあの孤島で過ごすわ!SOS団の皆も一緒に!」
おいおい突然だなハルヒよ。まあそういうところが好きなんだがな。
「古泉くん?あたしあたし!久しぶりねー!ねー8月1日にあの孤島に連れてってくれない?」
いきなり用件を言うところも変わってないな。でもそう簡単に行くか?
「えっ!いいの!本当!やったわキョン!行けるって!」
マジか。
「じゃあみくるちゃんと有希にも伝えるわ!・・・・・・え!?古泉くんと有希結婚したの!?」
な、なんだってー!?聞いてないぞ!?
「ついこの間?へー!有希に替わってくれる?・・・・・・有希久しぶり!お幸せにね!結婚式には呼びなさいよ!じゃまた」
えーっとじゃあもう長門は長門って呼べないのか。有希か。違和感あるな。
「じゃああとはみくるちゃんね。・・・・・・みくるちゃん?久しぶりー!」
あれ?朝比奈さんは未来に帰ったはず・・・・・・

「これるの?やったわ!これでSOS団は全員揃ったわよ!」
なんとまあ都合よく事が運ぶな。ハルヒパワー健在ってとこか。
「妹ちゃんも連れてきなさいよ!高二だっけ?あの時のあたしたちと同じね。」
時が経つのは早いもんだな。まあ妹ならたぶん言わなくても勝手についてくるさ。

 

 

ハルヒが寝ちまったあと俺は古泉に電話をした。朝比奈さんに電話するとハルヒがうるさいからな。
「今回の招集は既定事項だって朝比奈さんも言ってましたよ。あの日に皆都合が良かったのも既定なんでしょう。」
ハルヒパワーじゃないのか?
「いえ、ハルヒさんの能力はもう完全に消えましたよ。僕ももう一般人です。朝比奈さんや有希はそのままですけど。
 今回のことはSOS団の絆が引き起こした奇跡――とでも言いましょうか?
 あ、そういえば実はあの時僕とハルヒさんのクジ番号が入れ替わったんですよ。あれこそハルヒパワーです。」
あの勘違いはそれか。つまりハルヒは俺にキスしたかったと?そりゃ嬉しいことだな。
「そうですね。羨ましいことです。それでは8月1日にまた会いましょう。」
あーそれから長t・・・有希をちゃんと守ってやれよ?
「もちろんですよ。もっとも、命の危険には有希のほうがめっぽう強いですけどね。」
そうかもな。

 


5年ぶりに復活するSOS団。その絆は途切れてなどいなかった。
そしてあの部屋で、あの時と同じように王様ゲームを楽しむのだろう。
誰が王様になるかは時の運。誰が選ばれるかも時の運。
でも、もしできるならやりたいことがひとつある。

 

 

 

――ハルヒに、振り向きながら俺の本気の「大好き」を言ってやりたい。

 

 

 

 fin

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最終更新:2020年03月13日 09:09