本日は日曜日。
時刻は午後12時30分。

僕の粋で鯔背な作戦により、なんとか世界崩壊は免れたものの
その後再び発生した桃色空間の中で、僕たちは再び絶体絶命の危機に瀕していた。

森さんの得体の知れない号令パワーでモチベーションが上がっている我々超能力集団は
前回と同じく浮かれ暴れまわれる桃色神人ちゃんを次々と倒していった。

今回はわりと早く済みそうだな…
と、口には出さないものの僕も仲間も全員そう考えていたその時
ヤツは現れた。

 

『ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』

 

まるでヒスを起こしたエヴァンゲリオンのような激しい雄叫び。
他のと比べ一段と巨大なその神人ちゃんは、出現するやいなや
突然激しいダンスを踊り始め、倒しにかかる僕の仲間たちを次々と弾き飛ばしていった。

「ちぃっ、コイツ、手強いわね…!」
森さんが悪態をつく。
もう既にほとんどの仲間が戦闘不能に陥っており、この地域にいる超能力者は残り4人。
僕、森さん、新川さん、多丸(裕)さんの面子だ。
ちなみに多丸(圭)さんはすでにその超神人ちゃんに吹き飛ばされ、丸井のビルに突き刺さっている。

「どうします森さん?!このままじゃ全滅ですよ!」
超神人ちゃんの裏拳(?)を間一髪でかわしながら森さんに叫ぶ。
「そうね…別の地域から増援を呼ぶっていう手もあるけど…」
「ここから他のグループの場所までは、約5km離れていますな。」
同じく攻撃をかわしながら新川さんが言う。
「5kmか…全力で飛ばしても3分はかかるわね。それまで逃げ切れるか微妙だわ。」

 

そう、この神人ちゃんは僕らに対して別に敵意を持っているわけではなさそうなのだが
神人としての本能なのかあるいは『一緒に踊ろうよ!』的なスキンシップのつもりなのか
僕らのことを執拗に追い回す。そのスピードたるやすさまじく、キャプテンファルコンも真っ青なほどだった。
「増援を呼べばそれだけ被害も増えるだろうし、出来ればここで仕留めておきたいわ。」
「でもどうやって?僕らだけでこの神人ちゃんを倒せるとは思えないんですが…。」
「あたしにまかせなさい。…新川!」
「ハッ!」
「アレをだすわよ!」
「いいですとも!」
アレ?アレって一体…
「見てなさい…最近思いついた対神人ちゃん用の必殺技を!」
「ひ、必殺技!?」

森さんと新川さんが空中で横に並ぶ。
「いくわよ新川!」
「御意!」

 

「ジャケットアーマー(メイド服)パージ!ウイング展開!ドライブ全開!」
…森さん一体なんのまねなんです?
「執事ドライブ…出力最大! …ブーストォォォ!」
ああああ新川さん?
なんだか得体の知れないセリフを吐きながら神人ちゃんに突っ込む二人。
ビュンビュン飛び回り神人を翻弄する。

 

「アインス!」 

「ツヴァイ!」

「トラゴハァァァァァァァァァァァァッ!」

 

失敗。

 

「新川ーーーー!」
神人のカウンターをまともに食らった新川さんは血反吐を撒き散らしながら
桃色に染まっている空の彼方へと飛んでいった。

「ちぃ、失敗か。やっぱり即興じゃ無理があったわね。」
「なにやってるんですか!下らないパロディして、ふざけてる場合じゃないですよ!」
「別にふざけてたわけじゃないわよー。」
唇をとが らせブーたれる森さん。全然かわいくない。
「どうするんですか。とうとう僕ら3人だけになっちゃいましたよ!」
「そうね。やっぱり他所から援軍を呼ぶしか…」
「でも、ここから5キロ…果たして逃げ切れるでしょうか?」
こうしてる間にも神人ちゃんの暴挙は留まることを知らず、建物を次々と破壊していく。
「でも他に手はないんだし、逃げ切るしかないでしょ。」
「ですがその前に3人ともやられてしまっては…。」
「んんーそうね…。」
手を顎にあて、考え込む仕草を見せる森さん。
「こうなったら仕方ないわ…多丸(裕)!」
「ああ。」
「あたしと古泉で援軍を呼んでくるから、アンタ1人でアイツを足止めしてちょうだい。」

ええ?!多丸(裕)さん1人で?!
そのあまりの提案に、僕は顔を真っ青にする。
「ちょ、ちょっと待ってください森さん!」
「なによ。」
「無茶ですよ!あの神人を相手に1人で足止めなんて、ホントに死んじゃいますよ!」
すると森さんは顔を曇らせ
「…そんなこと分かってるわよ。…でも、他に方法がないわ。」
「しかし…」

 

「あんたとあたしは疲労困憊で、この中で今一番まともな戦闘が出来るのは多丸(裕)だけだけなのよ…。
 アンタかあたしが残るよりグッと成功の可能性があるわ。それとも、他になにかいい手があるの?」
「それは…」

場の空気が重くなる。
さすがの森さんも苦渋の決断だったのだろう、顔をしかめて酷く暗い表情をしている。
僕と森さんが沈黙を保っていると…

 

「森。」
ずっと黙っていた多丸(裕)さんが突然口を開いた。
「…何?」
森さんが返事をする。
すると
多丸さんは僕らに背中を、この上なく格好よさげに背中を向けて

 

 

「ああ。時間を稼ぐのはいいが―
 

 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

 

 

渋みたっぷりに言う。その声はあくまで冷静だ。

 

「なっ?」


か…

 

か…

 

かっこわるぅー!

 

「…多丸(裕)さん、ソレはちょっとサムいですよ。」
「ねー。そんな汚い背中見せられても全然燃えないわ。」
「どれだけカッコイイセリフでも、ちゃんと言う人が言わないと様になりませんよ。」
「ほんと、一体何様のつもりなのかしら。」
「この期に及んでFateネタですよFateネタ。ちょっとイタイですよね。」
「でもまぁ、とりあえずこの場は任せてもいいってことよね?いくわよ、古泉。」
「はい、森さん。」

最早なんのためらないもなく振り返る。
最後に見えた多丸(裕)さんの背中は…小さく震えていた。

 

急いで球体化して空を翔る。
「全力で飛ばすのよ!多丸(裕)が少しでも時間をかせいでるうちに!」
「はい!森さ『ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』ええええええええええ?!」
耳を劈く雄叫び。飛行しながら後ろを向くと例の神人ちゃんがもうすぐそこまで迫ってきていた。

「早!なによアイツ、全然時間稼ぎになってないじゃない!」
「元からあまり期待していなかったとはいえ、これはあんまりですね!」
全力で逃げる。が、やはり神人ちゃんのスピードは凄まじく、どんどん距離が縮まっていく。

「どうします?!このままじゃまずいですよ!」
「く…そうね…。」
必死に逃げながら策を練る。
すると前方につきあたりが見えた。
「よし…古泉、二手に分かれるわよ。」
「え?」

 

「あそこのつきあたりで、あんたが右、あたしが左。
 どっちかは犠牲になる可能性大だけど、どっちかは無事に援軍を呼びにいけるわ。」
なるほど…確かに、2人揃ってやられるより、そのほうがよっぽど建設的だ。
だが、この場合…犠牲になるのは十中八九…
「あのぅ…森さん…。」
「言いたいことは分かるわ古泉。だけど最早これしか方法がないの。」
ああ…

意見を言う暇もなく、前にはつきあたり、後ろには神人ちゃんが迫る。
「それじゃ二手に分かれるわよ。 一、二、」
『ヴォォォォォォォォォォォォ!』
「散!」
森さんの合図で僕は一気に右折した。

神人ちゃんは?!

 

『ヴォォォォォォォォォォォォ!』
「やっぱりこっちに来たぁぁぁぁぁ!!」

泣き叫びながら全力で逃げる。
かなりのスピードを出してるはずなのだが、神人ちゃんとの距離は縮まる一方だった。
『ヴォオオオ!』
神人ちゃんが右フック(?)を繰り出す。
「ひっ!」
ギリギリで回避する。風圧だけで吹き飛んでしまいそうだ。
空振りした拳は空を舞い、そのまま横に建っていたビルに突き刺さる。
ビルはまるでスチロールのように簡単に壊れてしまった。
その光景を見て全身の血の気が引いた。

 

…だ、だめだ…死ぬ…。このままだと確実に死ぬ…。
今のはなんとか回避することができたが、これを連続で繰り出されたりでもしたらひとたまりもない。

 

…どうせ
…どうせ死ぬなら

僕は逃げるのを止め、神人の方を向きなおす。
迫る神人ちゃん。
目を閉じ、ゆっくり深呼吸する。

 

どうせ死ぬのなら…
最後まで超能力者らしく、せめて…超能力者らしく、戦って死んでやる!

 

コォォォォォォ…たぎれ!僕の中に流れるカミカゼ精神!

 

カッ!と目を見開き神人ちゃんを見据える。

 

「行くぞ桃色王、惚気の貯蔵は十分か?」

 

出来るだけかっこよく言い放つ。が、足はガクガク震えてるしオシッコも漏れそうだ。
ええい、覚悟を決めろ古泉一樹!

「行くぞ!」

決意を固めいざ突っ込む。
狙いは頭部、あそこに風穴を開けてやれば、さすがにひとたまりもないはずだ。

『ヴォオオォオオォォオオ!』
神人ちゃんの左ストレート(?)が目の前に迫る。
僕はスピードフルスロットルで突っ込んでいるのでソレをかわす余裕はない。

 

逃げる…?
いや、違う…
勝つんだ!!

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
その左手ごとぶち破ってやるぜぇ!

「古泉!!」
神人の向こうから森さんの声が聞こえる。

 

森さん…今までありがとう。
思えば超能力に目覚めたあの日から、森さんと僕、いろんなことがありましたね。

僕が始めて閉鎖空間に行った時、「新人はかならずこれをやる掟だ」とかなんとかいって
わざと神人の攻撃を受けさせられました。
その後の歓迎会で、酔っぱらった森さんから強制的に多丸(圭)さんとキスさせられました。
夏にみんなでパーティーした時、なぜか火のついた花火を食べさせられました。
急に多丸兄弟と僕の家におしかけてきて、お酒を飲んで酔ってさんざん部屋を散らかした挙句
みんなで僕のお気に入りのエロ同人誌(TIMTIMマ○ンシリーズ)をおもむろに破り始めました。

 

ほんとにいろんなことがありました。
決して楽しいことばかりじゃなかったけれども、僕は森さんと過ごしたこの4年間、
死んでも忘れません。

 

後のことは頼みます。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
僕はソロモンの悪夢の人よろしくちょっと裏声が混じった雄叫びを上げる。

 

そして

今まさに拳との距離がゼロになるその瞬間


『ヴォォォォォォォ…』


神人ちゃん自然消滅。

 

…このタイミングでですか。

なんだよ…人がせっかく覚悟を決めて…

まぁ、良かったんだけどさ。死ななくて済んだんだけどさ。
なんというか、こう、腑に落ちないっていうか…。

「ふぅ、今回も間一髪だったわね。」
いつの間にか森さんが近寄ってきていた。
「ええ…まぁ…」
「どうしたの?助かったんだから、少しは喜びなさいよ。」
「はぁ…」
素直には喜べない。
この僕のやり場の無い憤りは一体どうしたら…

「どうやら今日も2回戦は無いみたいね。助かったわ。
 …ほら古泉。あんたもちゃっちゃと帰りたいでしょ?さっさと反省会するわよ。」

…了解。

 

 

 

 

そうさ、これが僕、古泉一樹のキャラクターさ。
一番がんばってる。一番苦労してる。一番難しいキャラを担っている。
そして、一番報われないのも僕だ。
なぜか世間ではホモ扱いされ、最近ますます(一部の女性の手によって)webでそんなサイトが増殖している。
二次創作では一番名前を間違えられる確立が高いし、自分のことを「私」とか言ってるものさえある。
珍しくまともなキャラで主役をはったと思ったら、なんだか片思いとか叶わぬ恋とか報われない話ばかり。
仮にもし涼宮さんとのカップリングが成立しようものならあっちこっちでボコボコに叩かれる始末だ。

いいんだ。今更…この位置づけにケチをつけるつもりはない。
これこそ、このキャラクターこそ僕のアイデンティティそのものなのさ。

そうだ、こんなでも嫌われるよりかずっとマシじゃないか。
いろいろイジられるのは、その分好かれてる証拠だ。

そして、SOS団の中でもそれは変わらない。
僕は報われないが、決してみんなから嫌われてるわけじゃない。


そう


この時は…


この時はまだ、そう思っていたんだ…。

 

 

 

「…あんた何『次回に続く!』みたいな語りしてんのよ。」
「ええ?だってもう10レスぐらい使っちゃったんですよ?!展開的にもここは引きを作って終わったほうが…」
「あたし前から思ってたんだけど、そういう『続き気になるだろ?え?でも残ねーん。今日はここまでだよーん。』
 的なSSの終わりかたって、なんかすっごい生意気で気にくわな『わぁぁぁぁぁ!!森さんタンマタンマ!!!』
危険だ!このままじゃホントにもう投下できなくなっちゃう!
「わかりました!終わりませんから!続けますから!その先は言わないでーーーー!!!」
「ふふん、わかればいいのよ。わかれば。」


桃色空間奮闘記
第4章
「このSSはフィクションであり、実際のキャラクター設定、事件、執筆者の気持ちなどは全く反映されてません。」


なんの意味があるかわからない反省会を終え、帰宅する。

(ふぅ、帰ってきました。帰ってきました…が。)
今までが今までだっただけにまたいつ出動になるかわからないという気持ちから
せっかくの日曜日なのに変に構えてしまって、心からゆっくりくつろぐことが出来なかった。

午後18時。
今のところ空間発生の知らせは来ていない。

…お腹がすいたな、いい時間だし、食事にしよう。

ご飯を食べているとき携帯が鳴って一瞬ビビったが、それは長門さんからの迷惑メールだった。
それから食器を洗って片付けたあと、お風呂に入って早めに床についた。

 

(…夜中に出勤という可能性もあるから、早めに寝ておいて少しでも体力を蓄えとかないとな…)
明日からまた学校だし、その為にも早めに寝ておく必要はあるだろう。
瞳を閉じる。今にも携帯が鳴り出しそうで、眠たいはずなのにビクビクしてなかなか寝付けなかった。
(くそう、鳴るか?…うあっ、今まさに鳴りそうだ!……まだ鳴らない…ヒッ!鳴るのか?鳴るのか?
  ………鳴らない…くっ僕をそうやって少しずつ追いつめるつもりだな!………うわッッ鳴る??!!
   ……何故鳴らない…………………鳴るならひとおもいに鳴れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)

 

が、結局その日はそれ以上桃色空間が発生することはなく、結果僕は久しぶりに熟睡できたのだった。

 

翌日
むくり、とベッドから体を起こす。少し寝すぎたのか首が痛い。

…結局昨晩は空間発生しなかったみたいだな。

まったく、それなら昨日あれだけ布団の中でブルブル震えていた僕が馬鹿みたいじゃないか。
…まぁいい、空間が発生しないにこしたことはないし、おかげでゆっくり眠ることが出来た。

顔を洗って歯を磨く。
いつもの制服に着替え再び鏡の前で軽く髪型をチェックした後、僕は自宅を出た。

 

学校に到着し、下駄箱で上履きに履き替えていると、偶然彼の姿を見かけた。
「おはようございます。」
軽く挨拶する。
「んあ?! あ、ああ古泉。おはよう。」
僕の顔を見るなり突然動揺する彼。
? なにかあったのかな。
「昨日はどうも。お互い大変でしたね。」
怪訝に思いつつも、あくまで普通に接する。
「あ、ああそうだな。世話かけた。」
だが彼は妙によそよそしく、一刻も早くこの場を去りたそうにしていた。
「じゃあ俺、もう教室行くわ。ハルヒも待ってるし。」
「あ、ちょっと…」
僕が制止する間もなく、彼はやりすぎなくらいの早歩きでそそくさと行ってしまった。

…なんなんだ一体。
せっかく昨日の話で盛り上がろうと思っていたのに。

まぁいいか。それは放課後のお楽しみにしておこう。
彼があんななのも、一刻も早く涼宮さんの顔が見たいからだとか、どうせそんな理由だろう。

不自然な彼の態度に対して何の疑問をもたぬまま、僕は自分の教室へ向かった。

 

1時間目、僕のクラスの授業は国語だった。
夏休み直前の期末テストが迫っていたため、クラス中誰も私語などをせず
淡々と教師の話を聞き、黒板の文字を写しており
それは僕も例外ではなく、ピンと張りつめた空気の中真面目に授業を受けていた。

授業が始まって30分ぐらいたったころだろうか。
調度国語の教師による長文の解説が終わり、ノート取りタイムに突入。
一層教室内が静寂に包まれたその時

 

『『『ナースコスプレに舐められぇながら、我慢できずに射○のぉ時間ですぅ~!!!』』』
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

とてつもなく変態チックな爆音が僕のポケットの中から鳴り響いた。
ビックリしすぎて思わず席を立ち上がる。
もちろんこんな着信音に設定した憶えはない。
っていうか、そもそもマナーモードに設定していたはずだ。
教室内を見渡す。クラス中が好奇の目で僕を注目していた。めちゃくちゃ恥ずかしい。
衆目に晒され、1人顔を赤くしていると
「…古泉。授業中は電源を切っておけ。」
こめかみをヒクヒクさせた教師から怒られた。
「す、すみません。」
気持ちが落ち着かないままあらためて席に座る。

机の下で携帯を確認する。

 

「mail:長門有希


 

 

 情報操作は得意。」



……長門さん。情報操作を駆使してまで僕に嫌がらせを…

今までかなり長門さんからこの悪質な着信音設定の嫌がらせを受けてきたが
今回のは度を越えてる気がする。

 

いつもならこっそり設定を変えておいて、大抵は森さんからの電話で初めてビックリさせられるという
決して長門さんは着信に関して一切関与しない姿勢をみせていたのに…
この静かな授業中、それもこんなオゲレツな歌にするなんて一体なんのつもりなのだろう。

それから授業が終わる20分ちょっと。僕は非常に気まずい思いをしながら過ごしたのだった。

長門さんのエスカレートした嫌がらせ。

この時点でまだ僕は、密かに起こっている事の重大さに気付いていなかった。

 

が、

 

「ヒッ、こ、こ、こ、こここここここここここ古泉君…!」

2時間目の休み時間。外の空気を吸いに中庭まで行くと
体操服を着て外に向かう朝比奈さんに出くわした。
彼女は気付いていなかったようなので僕から軽く挨拶したのだが…
「あわわわわわわわわわわわわわわわ…」
僕の顔を見た途端超ド級の勢いであわてだす朝比奈さん。
目には涙を浮かべ、足はガックンガックン震えていた。
この人が動揺してるのはいつのもの事だが今日のコレは以上だった。
「あ、朝比奈さん?」
「あっあああっああっあのぅ、こっこここっここっこ古泉君…わ、わ、わ、たしぃ…」
DJの人が回すアレみたいな声を出しながら、少しずつ僕から距離をとろうと後ずさる朝比奈さん。そして

「ごめんなさぁーーーーーーーーーーーーい!!!」
絶叫と共に後ろを振り向き駆け出す朝比奈さん。が、その先は壁だ。

「あっ、あぶな『プギャッ!!』
僕が止めるのも間に合わず、朝比奈さんは顔から壁に激突した。
「だ、大丈夫ですか?!」
あわてて駆け寄る僕。が、しかし
「ピギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
鼻から血をドバドバ噴き出しながら再び走り出す朝比奈さん。
僕が唖然としてる間に、彼女は運動場へと消えていった。

…な、なんなんだ一体。

朝比奈さんのあの様子。
なんだか僕の事を露骨に避けているようだった。


なんだか嫌な予感がする。

今日の朝のことを思い出す。
下駄箱で様子のおかしかった彼。
1時間目の授業中に起こった、長門さんの度が過ぎたイタズラ。

SOS団団員が3人とも僕に対して不自然に振舞っている。

これは偶然か?

 

ひょっとして僕…

嫌われてる?

 

 

いやいやいやいや考えすぎだ。
朝比奈さんはどうあれ彼が愛想悪いのはいつものことだし
長門さんのイタズラも今日に始まったことじゃない。
たまたま。そう、たまたまそういうのが重なっただけさ。

だいたいまず嫌われる理由がないしね。
そう、気にしすぎ気にしすぎ。勘違いヨクナイ。勘違いダメ、ゼッタイ。
そう祈るように空を見上げる。

が、そんな僕の願いはむなしく、儚く崩れ去ることになる。


「あれ?小泉君じゃない。」
昼休み。食事を終えた後廊下を歩いていると、我らがSOS団団長と出くわした。
「どうしたの小泉君?なんだか浮かない顔してるわよ?」
「あのぅ…涼宮さん…。」
「ん?なに小泉君。」
僕や彼など一部を除く全ての人が今の涼宮さんを見れば、いつもどおり元気一杯。
なにも変わった所は無い。と思うだろう。

だが、僕には分かる。涼宮さんは僕の顔を見て確かに動揺していた。
「大丈夫?小泉君。ほんとに顔色悪いけど。」
「小泉君。具合が悪いなら保健室にいったほうがいいわよ?」
「なんならあたしが一緒に付いていってあげるわよ。小泉君?」
その証拠に彼女は僕の…古泉の名前をさっきから露骨に間違えている。
突っ込もうにも突っ込みようが無い。
「小泉君?」
「ああいえ、別になんでもありません。気にしないで下さい。」

「そ、そう?ならいいけど…」

間違いない。これは僕にとってなにか良からぬことが起こっている。
閉鎖空間がどうとか、世界崩壊の危機がなんたらとかそういった問題じゃない。
あくまで僕、小泉違う古泉一樹個人にとって良くないことが起こっているのだ。

 

「あ、そうだ小泉君。言い忘れてたんだけど今日は団活休みだから。」
「え?そうなんですか?」
「うん。ちょっと今日ヤボ用があってね。みくるちゃんも用事あるみたいだし。今日は帰っていいわ。」
「はぁ、かしこまりました。」
「うん。じゃあまたね小泉君。」

…あやしい。
団員全員と団長から異様な態度を取られる僕。
そんな日に限って団の活動が休み。

…これはひょっとしてひょっとすると

僕…ハブられてる?


気が気でないまま放課後を迎える。
涼宮さんいわく団活は休みとの事だが…

…部室に行ってみようか。

いや、怖い。
これでもし部室に僕以外の団員が揃っていたら、どんな顔をすればいいんだろう。
お互いの間に生まれるであろう気まずさを容易に想像できる。

 

…駄目だ。部室に行くのはやめよう。
素直に下駄箱で靴を履きなおす。
試しに彼の靴箱を確認してみる。やはり靴はあった。

校舎をぐるっと回り外から部室の中が確認できる場所へと向かう。
向こうからは見えにくい角度をとり、恐る恐る上を見上げた。
窓の向こうではパソコンのモニターを覗き込んでいる涼宮さんの背中と
湯飲みが乗ったおぼんを持ってチョロチョロと動くメイド服の朝比奈さん
顔こそ見えないがやる気なくうな垂れる彼の頭と、微動だにしない長門さんの後頭部が見えた。

 


……
……ははは…やっぱりハブられてた。
あいたー、まいったねコリャ。

 

 

1人寂しく通学路を歩く。

そうか…嫌われてるのか、僕は。
ははははは…。

いいさ、別に僕は好かれようと思ってSOS団に入ったわけじゃない。
あくまで涼宮さんの観察&ご機嫌取りが僕の仕事。
嫌われようが別に構わないじゃないか。
涼宮さんは彼と付き合い始めて、その関係も良好だ。
僕の役目も、もう終わりなのかもしれない。

やったぁ、これでもうあの迷惑な団活に付き合わなくって済むんだ。
彼から愚痴を言われることも無いし、長門さんから嫌がらせを受けなくてすむ。
休日はゆっくり休める。好きなだけ眠れる。
いいことずくめじゃないか。ああ、嫌われて良かった。せいせいするよ。

 

「ふふ…ふふふ…」

 

上をむーいーてあーるこーう 涙がーこぼれーないよ『古泉?』

名前を呼ばれハッとする。
「あんた何やってんの?部活は?」
前を向くとそこには両手に買い物袋を持った森さんと、
森さんの3倍以上の荷物を持つ(持たされてる)新川さんがいた。

「も、森さん…。」
「どうしたの?元気ないみたいだけど。」
「…うう…」
「?」

駄目だ。こらえられない。
「も、も、も゛り゛ざぁーーーーん!!」
「ちょ、ちょっと古泉?」

涙をドバーっと流しながら森さんに抱きつく。
「わああああああああああん、わんわんわあああああああああああん!!」
街中でそこそこ人がいるにもかかわらずむせび泣く。
思えば人前で泣くなんていつ以来だったろうか。
「ちょっと落ち着きなさい古泉。一体どうしたってのよ。」
「ううううう…うううううううう…森ざん。ぼぐ…ぼぐぅ…!!」
「とりあえずどこか落ち着ける場所へ移動したほうがよさそうですな。」

 

 

 

 

「ふーん、そんな事がねぇ…。」
「やってらんないですよ。ったく。」
日本酒が入ったコップを乱暴に置く。

ここは駅前のおでん屋台。
僕は森さんと新川さんに話を聞いてもらっていた。
ちなみにこの屋台の主人は機関の仲間の1人であり、僕の飲酒には特別に目をつぶってもらっている。

「あんたなんか心当たりないの?」
心当たりとは?
「避けられるような事言ったりしたりしてない?「実は僕、古ハルが好きなんです」とか。」
言ってませんよそんなこと。僕、会長×喜緑さんオンリーですもん。
「オンリーなの?」
オンリーです。

「何も嫌われているから避けられているとは限りませんぞ。」
森さんの横でお酒を飲んでいる新川さんが口を開いた。
と、言いますと?
「よくある…なんらかのサプライズパーティーを行う為に、当日まで本人には黙っている。とか」
「ああ、わかるわかる。内緒にしなきゃ、って思ってついつい冷たく接しちゃうのよね。」
サプライズパーティーですかぁ?
「ベタなとこで言えば、誕生日パーティーってとこかしら?」
…僕の誕生日、4ヵ月ぐらい後なんですけど…
「そうだったわね。確か去年はあんたにMGのHi-νガンダムをプレゼントしたんだっけ。」
「…今だから言えますけど、僕あんまりガンダムとか詳しくないんでピンとこなかったです。
 あと、なんで完成させたやつをくれるんですか。プラモデルの楽しみほとんどなくなっちゃってましたよ。」
「もらっておいて文句言わないの。飾っとけばいいじゃない。
 …誕生日パーティーじゃないとすると…なんかあんたにまつわることで近々祝い事ってある?」

 


……
………ないです。

「じゃあやっぱ嫌われてるんじゃない?」
そんなはっきり言わないで下さいよ。また悲しくなってきたじゃないですか。
再び熱くなってきた目頭をごまかすように酒をあおる。

 

だんだん頭がぼーっとしてきた。
知るか。こうなったらとことん飲んでやる。

 

「あんたちょっと飲みすぎじゃない?大丈夫?」
だいじょぶ。らいじょうぶです。
「大丈夫じゃないようですな。」
うるせーぞ新川、このダメ執事。大丈夫だっつってんだろ。
ケッ、なにがSOS団だっつーの。ばっかじゃネーの。キモいんだよ。
「げ、愚痴り出したわ。」

涼宮ハルヒぃ?はっ、脳にウジ這った変態女が。年がら年中電波垂れ流してんじゃねーよ。
でしょでしょ?じゃねーよ。なんで2回言うんだよ、アホか!死ね!
「あーあ。言っちゃった。」
キョン?けっ、どっかの鹿みたいな名前しやがって。チ○ポは馬じゃねーか。
いっつもいっつも俺にばっかり当たりやがって。迷惑こうむってんのはむしろこっちだっつーの。
「いつも溜め込んでいる不満が爆発したようですな。」
朝比奈みくるぅ?へっ、男の劣情を誘うのが仕事のとんちきおっぱい女が。
AV録られる同人誌でも大量に描かれてろや。このアバズレ。
「たまに電車の中でこんなおっさんいるわよね。」
長門有希?ちっ、使い込まれたキャラクター性しやがって。
お前のような無口キャラはせいぜいエヴァンゲリオンの青いヤツにでも乗ってろっつの。
「普段が普段な分、余計に性質が悪く見えますな。」

 

ケケッー!!私を誰だと心得る!!
魑魅魍魎蠢く深淵の魔界からやって来た誇り高き派遣社員、ハデスコイズミなるぞ!!
愚かな人間共め。死にたくなければ我がg『ズドム!!』ぐはぁ…!!

ばたん きゅー

「鳩尾に一撃。容赦ないですな。」
「いい加減うざくなってきたしね。まぁ、この子も毎日大変だろうから
 たまにはこういう日があってもいいでしょ。」
「嫌われている。という話ですが…」
「うーん。あたしは気のせいだと思うんだけどねぇ。
 ま、そのうち分かるでしょ。今悩んでも仕方ないことよ。」
「それもそうですな。」
「っと、この子どうしようかしら。」
「私が家まで送っていきます。」
「そう?悪いわね。じゃあ頼んだわ。」
「御意。」
 

 

 


……
……うう…頭痛い…

 

閉じた目蓋の向こうから強い光を感じる。
目を開けて、ついでに体を起こす。
頭をボリボリかきながら周りをキョロキョロ見渡す。見慣れた光景。僕の家だ。

…僕…昨日確か森さんと新川さんと飲んでて…ハッ!
慌てて時計を見る。午前8時。
しまった。完全に寝坊した…。

 

自分の服装を確認する。制服のままだった。ちょうどいい、このまま学校に行こう。
酷い寝癖を適当に水で直し、僕は家を出た。


だが、学校に近づくにつれ、だんだんと気分が滅入ってきた。
そうだった…僕、嫌われてたんだった…

…SOS団の団活。どうしようか…。

……
よーーーーし。
こうなったら…
僕だって、言いたいことたくさんあるんだかんね。
この際思いの丈を全部ぶちまけて
あんな団活、こっちからやめてやる。
僕のいないSOS団なんて、スラックスの売ってない紳士服売り場。
『範馬刃牙』の載っていないチャンピオン。
TAKUROのいないGLAYみたいなもんじゃないか。
ははん、そうさ、僕がどれだけ大切な存在だったか、失ってから気付けばいいのさ。
むなしい決意を胸に秘め、僕は学校に到着した。


授業を終えHRを終え、そしてその時はやって来た。
放課後、早足で旧校舎の部室まで向かう。
僕は今日掃除当番だったので、他の団員は既に揃ってるはずだ。

部室の扉前まで来た。
高鳴る胸を抑え、今一度決意を固める。

なにか文句言ったり、反論したりしてきたら迷うことなく僕のサイキックパンチをおみまいしてやるぜ。

 

意を決してドアノブに手をかける。少し強めに扉を開けた。

 

「オラァーー!貴様ら『古泉君おっめでとーーーーーーーーう!!!』

 

…へ?

 

部屋に入るなり鳴り響く4つのクラッカー音。

満面の笑みの涼宮さんと朝比奈さん。軽く微笑んでいる彼といつも通り無表情の長門さん。
事態をさっぱり把握出来ないまま、周りを見渡す。
部室内はパーティー用に軽くリフォームされており
中央のテーブルには大量の料理と、『古泉一周年』とチョコで文字が書かれたケーキが置かれていた。

「み、みなさん…これは一体?」
戸惑いを隠すことが出来ず、ストレートに質問する。
「ふふん。おどろいたでしょ?」
パーティーハットを被った涼宮さんが得意げに言う。
「古泉君。今日なんの日か分かる?」
こ、これはサプライズパーティー?
いや、でも誕生日はずっと先だし…
僕が真剣に悩んでいると

 

「今日はね。古泉君がSOS団の副団長に任命されて、ちょうど1周年を向かえる記念すべき日なのよ!」
え?ええ?
「ははは、古泉。おもしろい顔になってるぞ。」
「ふふ、本当に。古泉君のそんな顔初めて見ましたぁ。」
同じくパーティーハットを被った彼と朝比奈さんがからかってくる。

 

1周年…僕が、副団長になって…

そういえば…そんな気も…
嫌われてたわけじゃなかったのか。
新川さんの言ったとおり、サプライズパーティーだったのか。

「いやぁ、ごめんね古泉君。“どうせやるなら本人には内緒にしよう”って
  みんなで話し合って、実は昨日の放課後も休みじゃなくて、この為の準備してたの。」
「古泉君昨日は逃げたりしちゃってごめんなさい。
  私ドジだから、古泉君と話すと今日のことついつい喋っちゃいそうで。」
「…祝。」
「まさかここまでうまくいくとはな。
 お前のことだから軽く振舞って……って古泉?!」

 

ううう…うう…うううう…
うわぁあああああああああああああん!!!

 

涙腺崩壊

 

僕の突然の号泣に長門さんを除く3人がビクッと体を震わせた。
「こ、こ、こ、古泉君?!どうしちゃったの?急に泣き出して…」
涼宮さんが心配そうに声をかけてきた。
「え、ええ、ぅずっ、すみまぜん…づ、ついうれじぐで…」
感動のあまり、声が声にならない。
「そ、そうなの?」
僕のあまりのキャラの違いに若干引き気味の彼と朝比奈さん。

結局僕が落ち着くのに、5分ほどの時間を要したのだった。

 

 

「おちついたか。古泉。」
え、ええすみません。取り乱してしまって。
恥だ。うれしかったとはいえ、あまりにも僕のキャラクターとかけ離れていた。
「で、でも良かったですね。まさかこんなに喜んでくれるなんて…。」
朝比奈さんが戸惑い気味に言う。
「ええ、しっかり準備していた甲斐があったってもんよね。」
うれしい。今まで生きてきた中でこんなにうれしいことがあっただろうか。
「キョンもたまにはいい事言うわね。」
「たまにはは余計だっつーの。」

彼がどうかしたんですか?
「実はね。この企画を最初に持ち出したのはキョンなのよ。」

彼を見る。顎のあたりをぽりぽり掻いてあさっての方を向いていた。
「あ、あなたが…?」
「ん…まぁな。なんだかんだでお前には世話になってるからな。
  ちょっとした感謝の気持ちってやつだ。」
ぶっきらぼうに言う。
「ふふふ、キョン君照れてますぅ。」
「朝比奈さん。茶化さないで下さいよ。」
「ま、キョンもSOS団に対してようやく…って古泉君?!」

 

ううう…うう
うわあああああああああああああああん!!

 

再び涙腺崩壊。

 

思わず彼にすがりつく。
「うげぇっ!こ、古泉。落ち着け、落ち着けって!」
「ちょ、ちょっと古泉君!」
「ヒィィィィィ古泉君。落ち着いてぇぇぇぇ!!」
「わっしょい!!わっしょい!!」


それから再び僕が落ち着きを取り戻し、あらためてパーティーが始まった。
僕の為にSOS団3人娘が作ってくれた料理やケーキを食べながら、
彼と長門さんによるシュールな漫才などの出し物を見終わったあと
それぞれ1人ずつからプレゼントをもらった。
涼宮さんにはMP3プレイヤーを。
「ごめんね、あたし古泉君の趣味とかまったく知らないから、
 なんとなく無難そうなのを選んでみたんだけど。」
ありがとうございます。耳が腐るほど使いますよ!
朝比奈さんにはガンダムのプラモデル(MGケンプファー)を。
「私、男の人が喜ぶようなものって全然わからなくって…
  鶴屋さんに聞いたら、「ロボットが嫌いな男の子はいないさ!」って言われて…どうですか?」
ありがとうございます。僕ガンダム大好きなんですよ!
彼には新しいボードゲームを。
「ついでにコイツで敗北もプレゼントしてやるぜ。」
ありがとうございます。お手柔らかにお願いしますね。
長門さんには…なんですかコレ?
「…グランディア(SS版)。」
あ、ああ、ありがとうございます。名作ですもんね、コレ。
「そう。」

プレゼントタイムを終えた頃、ちょうど日も暮れてきていたのでパーティーはそこでお開きになった。

 

 

 

「じゃあね古泉君。また明日ー。」
「じゃあな。」
「さようならー。」
「…」

下校途中で解散する。
朝と同じ道をこれまた同じく1人で歩く。
が、朝と今では気分が全然違う。

 

ああ、僕はなんて素敵な友達をもったのだろう。
放課後までの卑屈になっていた自分を殺してやりたい。
プレゼントの入った紙袋を大事に抱え、ぼくはルンルン気分で帰宅した。

 

 

その夜

 

 

午後11を回りそろそろ床につこうとしていると森さんから呼び出しがあった。
なんでも、例の桃色空間が発生したらしい。

…あしたも学校だというのにあのお2人は…

苦笑するが、不思議と嫌な気分ではなかった。今日の喜びが大きすぎたようだ。
パジャマから私服に着替え、僕は再び自宅を出た。


空間の発生現場に行くと、そこには異様な光景が広がっていた。
「あ、古泉。やっと来たわね。」
あの森さん、これは一体…。

 

そこには派手なステージが設置されており、その上にはマイクやらドラムやらギターやら
とにかく色んな楽器が配備されていた。

「いやぁ、今までモチベーションをあげるために号令をかけてたじゃない?
 でもそればっかりじゃマンネリ化して結果的に意味なくなっちゃうと思って、ちょっと趣向を変えてみたのよ。」
はぁ…それで歌ですか。
おもむろにステージに上がる森さん。どうやら森さんが歌うらしい。
「それと、あんたが物凄く落ち込んでたみたいだから、それを励ます意味も込めて、ね。」
あ、その話なんですが…
「何?やっぱりパーティーだったの?」
は、はい、お騒がせしてすみませんでした。
「ふーん、まぁ良かったじゃない。」
僕が森さんとやりとりしていると

「おい森、こっちも準備できたぞ。」
おもむろにギターを持った多丸(圭)さんがステージの横(上手の方)から出てきた。
ええ…もしかして多丸(圭)さんが演奏するんですか?
「ん?俺だけじゃないぞ。」
多丸(圭)さんがそういうと
ステージ下手からベースを担いだ多丸(裕)さん、後ろからドラムスティックを持った新川さんが出てきた。
ええええ…バンドをやるには無理があるメンバーでは?
僕が1人絶句していると…

「「「よーし、そろそろ始めるわよ!!」」」
森さんがマイクで喋る。すると

 

『『『ウオオオオオオオオオオオオオ!!』』』

うわぁ!

慌てて後ろを振り向く。
いつの間にかステージの前にたくさんの観客(超能力者)が集まっていた。

…いつも思ってたんだけど、なんでこの人たちはいつもノリノリなんだ?

白熱するオーディエンス(超能力者達)を前に、森さんが声を上げる。

 

「「「ライブハウス閉鎖空間へようこそ!!!」」」
ライブハウスってい『『『オオオオオオオオオオ!!!』』』……。
「「「今までたくさんのアーティストが、この閉鎖空間でライブしてきたけど…」」」
いや、してきてねぇよ。
「「「あたし達が今日一番キレたライブやってやるよ…。」」」
『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』』』
「「「どうした!聞こえねぇぞ!!お前ら全員でかかってこい!!!」」」
『『『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』』』
「「「OK!まずはこのナンバー!カモン新川!!」」」
チッ チッ チッ チッ

 

 

『SSサイトを開こう ~更新するのは最初だけ~』

作詞:森 園生 作曲:植松信夫 歌:森 園生with閉鎖空間サイキッカーズ

 

※嗚呼 出来ることなら昔書いて途中で投げっぱなしにしてる
 長編SSの「つづく」という文字を「終わり」に変えてしまいたい

 

 溜まりに溜まった妄想を
 SSという形で世に出すの
 どれだけ偏った趣向を持っていても
 二次創作の世界ならどんな無茶なカップリングもお手の物
 気になるクラスのあの男の子はホラ
 コンピ研部長×ミヨキチの離れ技(This is the real world !)
 
(セリフ)
「企画SS?へっ、そんなモン関係ねぇよ。
 だってそうだろ?投下職人と支援する人がいる限り
  このスレは1年中いつだってお祭り騒ぎなんだからよ!」

 

 ※くりかえし

 

(多丸(圭)によるエキサイティング且つセンセーショナルなラップ)
「練りに練った長編SSを
 過疎に過疎ったスレッドに投下(灯火!)
 人が作った甘甘SS読んで
 その才能に嫉妬しながらも糖化(tou KA!)
 無理して作った長編SS
 投下したのに感想一言もなくて気持ち投下(おわり。の後すぐさま保守!)」

 

 (耳を突き刺すような、それでいてどこか叙情的なギターソロ)

 

 声も出ないくらいに…そんな今に一人と気付く

 

 中高生が作ったSSサイトの名前
 数年後の本人が見たら ~I want you~ 恥ずかしさで死ねそうだね
 
 ※くりかえし

  

 もう一回!

 

 ※くりかえし

 

 幸せを運ぶ不思議な言葉
 あなたと私を結ぶ誓いの言葉 
 それが“I Love you”だね
 Fuck!Fuck!Fuck!Fuck!Fuck!Fuck! you're a motherfucker! 
 

 

 

 2ヶ月間近くに渡る全国閉鎖空間ツアー<TOUR07 どうしたら親父シリーズみたいなの書けますかマジで >
が遂に大団円を迎えた森 園生with閉鎖空間サイキッカーズ。追加を重ねたこのツアー最終日のライヴ
レポートが到着したので紹介しよう。熱き情熱が迸ったライヴの空気を感じてほしい。

「限界を超えて来い!」

7月×日、桃色空間。アンコールの最後『夢が森森』が炸裂する直前、ぎっしりと人で埋め尽くされたフロアに
向けて、森は、そう言葉をぶつけた。

 もちろん彼女は、観衆の反応が生温くて腹を立てていたわけではない。すでに沸点を超えた状態に
あるものに、さらに熱を加えようとしたのである。

 

前夜に引き続き、この会場を超満員のオーディエンスと共に制圧した森 園生with閉鎖空間サイキッカーズ。
このライヴは<TOUR07  どうしたら親父シリーズみたいなの書けますかマジで >と題された全国ツアーの
追加公演としてのものであり、同時にこのツアーの実質的な最終公演にあたるもの。

 ライブ開始。オープニングを飾ったのは、最新アルバム『原作より好きっていう人も存在するんだよ』のいわ
ば代表曲的立場を担っていた『SSサイトを開こう ~更新するのは最初だけ~』。

この曲中、ステージ上には、背景を覆う黒いバックドロップ以外、必要以上のものは何ひとつ
存在していなかった。
通常のライヴであれば楽曲の放つ感情の種類によってさまざまに場面の彩りを変えていく照明も、
ずっと場内全体を赤く照らし続けるばかりだった。そこまで徹底的にシンプルな環境設定のもとで
再構築された『原作より好きっていう人も存在するんだよ』の世界観は、完成された美しさというよりも
むしろ、構築美と機能美の確立を見届けたあとで敢えて自らの手でそこに巨大な鉄槌を振り下ろす
かのような、破壊的とか自虐的とかストイックといった手垢のつきすぎた単語では言い尽くせないような
烈しさを孕んだものになっていった。

その事実は、いわば、彼女ら自身がそれまでの森 園生with閉鎖空間サイキッカーズの限界を
超越したことを物語っているように、僕には思えてならなかった。

即効性の高い起爆剤としてこのツアー中に効力を発揮し続けた『バカップル日記で殺せ』。まさに
森 園生with閉鎖空間サイキッカーズのダイ・ハードな支持者たちにとっての讃歌として唯一無二の
存在感を持つようになった。森の片腕に別の人格を宿ったかのようなステージ・パフォーマンスが
印象的な『長編SS 1人不人気打ち切り』も、聴くたびに鋭利さを増していく『糖影は毎晩楽しみだった』も、
すべて“壊しながら鍛え上げられてきた”かのような凄味のある説得力を持ち始めていた。もちろんそうした
ある種の進化は、最新作の収録曲に限らず、演奏されたすべての楽曲について感じられたことでもある。

 冒頭の言葉を吐いた後、『夢が森森』の壮絶な全力疾走でツアーそのものを締めくくった森の口から、最後
にこんな言葉が飛び出してきた。

 

「企画SS、甘いやつ期待しています。」

 

 

 

 

…って、下手なライブレポートしてるヒマはないぞ僕。

森さんなにやってんですか!ライブに時間かけすぎて、ついでにレスも
使いすぎて、もう神人全部消滅しちゃいましたよ!

「え、そう?まぁいいんじゃない?楽しかったし。」

あんまり悪ふざけがすぎると、ほんとにもう投下できなくなっちゃいますよ。
「いいのよ。執筆者もそのボーダーラインギリギリを楽しんで書いてるから。
 でも今回のはさすがにアレな出来だったわね。しばらく雑談所は見れないわ。」

 

結局の所やっぱり僕らが戦わなくても桃色の神人は自然消滅するんですね。
これじゃあ僕らが集まった意味がないじゃないですか。

「それ言ったらこのSS終わっちゃうってば。あんたはそれでもいいの?」

 

 

…もうちょっと続けたいです。

 

 

「よろしい。」

 

 

 

おしまい


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