SIDE キョン

 

事件から二日後の朝、俺は妹という目覚ましで爽やかとは言えない目覚しで起きて、
いつも通りのハイキングコースを昇っていた。
いつもならここらへんで谷口に声をかけられるな……と考えていたが、
今日はまったく別の人物から声をかけられた。

 

古畑「んふふふ……キョンさん、おはようございます~。」
キョン「古畑さん……!」

 

そう、昨日俺達の部室にやってきた、あの怪しげな刑事だった。

 

キョン「で、何の用ですか?」
古畑「用?いーえー違いますよ、たまたま見つけたんで声をかけさせて頂いただけでして……」

 

それにしては待ち伏せしてたようにしか思えない。
完全に俺にターゲットを絞っていたんじゃないか?と思うほどだ。

 

古畑「えー昨日尋ねさせて頂きましたが、なかなかよい部活ですねー。
   普段はどのようなことを?」
キョン「活動らしい活動なんてしてないですよ。てきとーに暇を潰しているだけです。
    ただ、たまにハルヒが何かイベントを持ってきたりするけど。」
古畑「一昨日のイベントも、その一環ですか?」
キョン「そうですね。基本的にハルヒの思いつきで俺達は動いてます。」
古畑「生徒会とはどのような関係で?」

 

やはりそこを聞いてきたか……下手なことは言わない方がいい、この男の前では。

 

キョン「別に。対した関係は無いですよ。」
古畑「えーそれにしてはですね、あんな顔写真つきの名簿まで用意してあって……」
キョン「向こうがどう思ってたかは知りませんが、こちらから生徒会と関係を持とうとしたことはありません。
    もう学校についたので、これで……」

 

話して歩いているうちに学校に到着していたので、ここで話を切り上げることにした。
この男と話していると、とても不安になるからな。

 

古畑「えーありがとうございました。勉学頑張ってくださいね?」
キョン「そりゃどーも。じゃあこれで……」

 

勉学なんて真面目にする気は無いんだけどな。とにかく早くこいつから離れたかった。
俺はそそくさと駆け足で教室へと向かおうとした、が……

 

古畑「あ、キョンさん!」
キョン「なんですか?まだ何か?」
古畑「制服のボタン、まだ抜けてますよ?」

 

そうだ。昨日家を探したんだが無かった。やはり学校にあるのか?

 

キョン「ああすいません、忘れてました。」
古畑「はやく直した方がよろしいですよー?では。」

古畑は去っていった。まったく……ほんとに話していると疲れる。やれやれ。

 

SIDE 古泉

 

1時間目の授業が潰れて、緊急の全校集会となりました。
話題はもちろん、一昨日死んで昨日発見された生徒会長についてです。
そう、僕達の手で殺した……ね。
校長先生の話や、生徒会長引継ぎ式などがありましたが、僕には興味の無いことです。
退屈な集会が終了し、教室に戻ろうと廊下を歩いている時でした。

 

古畑「古泉さーん。どうも~。」

 

古畑という刑事が僕に話しかけてきました。
昨日の様子では明らかに僕等を疑っていましたね。警戒しなければ。

 

古泉「古畑さん、何故学校に?」
古畑「えー、まだ捜査は続いておりまして。
   それでですねーお願いがあるのですか。」
古泉「なんでしょう?」
古畑「生徒会室に行きたいのですがーえー……場所を忘れてしまいまして。
   よろしければご案内をお願いしたいのですが。」

 

ウソ……でしょうね。恐らくは僕と話すための口実。
しかしここで断るわけにもいきません。

 

古泉「よろしいですよ。お付合いしましょう。」

生徒会室へと向かう間、古畑は僕にしきりに質問してきました。

古畑「えー少々お尋ねしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
古泉「構いませんよ。」
古畑「実際のところ、SOS団と生徒会は……んー、どういう繋がりがあったのでしょう?」

 

やはりそこを聞いてきました。
もう「何も無い」で通すことは不可能でしょうね。

 

古泉「まあ……敵対という関係にあったでしょうか。」
古畑「ほう、それは何故?」
古泉「我々の団体は非公認ですからね。それにやっていることも1つの部屋で自由行動。
   目をつけられるのも当然であったでしょう。」
古畑「えーだからあんな顔写真付きのリストを?」
古泉「でしょうね。しかし古畑さん、敵対していると言っても、それは向こう側のみです。
   こちら側は、正直気に留めていませんでしたね。
   私達の団長である涼宮さんは、生徒会にどう言われたからと言って気にも留めません。」
古畑「んふふふ、確かにそうでしょうね。あ、ここでしょうか?」
古泉「ええ。では僕はここで失礼します。」

 

僕はあいさつをしてその場を去ろうとした。しかし……

 

古畑「あ、そうだ!1つ言い忘れてました!」

 

まだ何かあるのでしょうか?

 

古泉「なんでしょう?」
古畑「えーこれをどう思いますか?」

古畑は顔写真付きのリストを見せてきた。

古畑「えーお気づきになられましたかー?」
古泉「何がですか?」
古畑「朝比奈さんの名前!これが丸で囲まれてるんですよ。」

 

丸がついている理由……僕にはわかる。なぜなら会長は、彼女を脅していたのですから
きっとこれは、「攻略できた」という意味での丸なのでしょう。馬鹿馬鹿しい。
しかし本当のことを言うわけにはいきません。

 

古泉「さあ……ファンだったのではないでしょうか?彼女は人気でしたからね。」
古畑「しかしですよ、敵対してる組織の人間のファンになるものでしょうか?
古泉「敵同士の恋というのも燃えるものですよ。すいません、次の時間に遅れてしまうので…」
古畑「あー申し訳ありませーん。失礼しましたー。」

 

僕は足早で教室へと帰った。あの男……確実に私達に近づいてますね。
他の方々のとこにも行くつもりなのでしょうか?心配です……。

 

 

SIDE ハルヒ

 

キーンコーンカーンコーン……

 

4時間目の授業が終わったわ。
私はいつも通り食堂に向かう。
それにしても昨日の刑事には参ったわ。イヤミったらしくいろんなことを聞いてくる。
「知らない」って答えたのは失敗だったかしら……
そんなことを考えながら食堂につくと、

 

居た………

 

確か古畑って言ってたかしら。ラーメンを食べてるわ。
正直話したくない。気付かれないように、そーっとそーっと……

 

古畑「おや!涼宮さんではないですか!」

 

気付かれた……

 

ハルヒ「あら、あんた確か刑事だっけ?まだ学校に居たの?」
古畑「ええ、捜査がまだ続いているもので。んーご一緒にいかがですか?」
ハルヒ「遠慮するわ。私ご飯は一人で食べる主義なの。」
古畑「そうおっしゃらずに。実はですね、少々聞きたいことがありまして……」
ハルヒ「答えたくないって言ったら?」
古畑「えー……困りますね~。」

 

そう言いながら古畑はニヤリと笑う。ほんとにイヤミな男ね。
でも答えないのも何かを隠していると思われてしまうことになる。
さっさと終わらた方がいいわね。

 

ハルヒ「いいわ。答えてあげる。その代わり、さっさと済ませなさいよ。私はお腹がすいてるの。」
古畑「ええ、聞きたいことは1つだけです。」
ハルヒ「何よ。」
古畑「えー……何故あのイベントを開こうと思ったのですか?」
ハルヒ「SOS団結成してから1年立ってたからね。1周年記念よ。」
古畑「しかしですね?生徒会にあったデータでは結成されたのは5月上旬と聞いてます。
   えー……そうですね?」
ハルヒ「ええ、その通りよ。」
古畑「しかし?今は5月の下旬ですね~?」
ハルヒ「それがどうかしたの?」
古畑「二週間以上もズレがあるではないですか~!これはどうなんでしょうか?
   普通1周年企画はその日か、せいぜい1週間前後でやるもんですよ。
   二週間後というのは、いささか遅れすぎでは?その辺はどうなんでしょうか~?」
ハルヒ「急に思い立ったのよ、大きなイベントをしたいなって。
    たまたま1周年だったから付け足したに過ぎないわ。」
古畑「なるほど~納得しました~。あ、それともう1つ!」

 

まだ続けるつもりなのかしら。はっきり言ってこれだけのやりとりでもうんざりだわ。
いちいち人の揚げ足取るような会話をして……ほんと気に入らないわ!

 

ハルヒ「何よ!1つだけって言ったじゃない!」
古畑「すいません。泣きの1回ということで。
   えー出来ればイベントで何をやったかを教えて頂きたいのですが……」
ハルヒ「もう忘れちゃったわ!そうね……部室に確かスケジュール表があったはずよ。
    いつもなら昼休みには有希がいるはずだから、あの子から貰って頂戴。」
古畑「えー分かりました。お付合いくださりありがとうございました~。」

 

古畑はラーメンのスープを飲み干すと、その場を立った。
ほんっとに疲れたわ。きっと部室に行くのね。有希……大丈夫かしら。

 

SIDE長門

 

昼休み。
私はいつものように部室に向かい、食事を摂取した後本を開いた
昨日からずっと情報統合思念体にアクセスしている。
しかし何度申請しても、この件に関する情報操作及び力を使う行動を許可してはくれない。
情報統合思念体は、私達の行動を『暴走』と受け取ったようだ。
故にその『暴走』に対して力を使うことを許さない、らしい。

つまり情報統合思念体はこう言いたいのだ。『行動は許可するが、責任は自分で取れ』と。

問題無い。私は望んでこの行動を選んだのだから。

 

コンコン

 

ノック音がした。部員の誰かだろうか?
いつも通り、特に返事をすることなくドアが開くのを待った。

 

古畑「えー失礼しまーす……」

 

予想外の人間だった。何の用だろうか?

 

長門「……何か用?」
古畑「えーですねー。一昨日のイベントのスケジュール表を見せて頂きたいのですが……」

 

そう言ったので私は涼宮ハルヒの机を指差した。その上に、まだそれは置いてあったからだ。

 

古畑「おーあったあった。読ませて頂いてもよろしいですか?」
長門「いい。」
古畑「ありがとうございますー。」

 

私は本に目を戻した。古畑任三郎はスケジュール表を凝視している。

 

古畑「えー長門さーん、ちょっとよろしいですかー?」
長門「なに?」
古畑「イベント中は、5人はずっとステージの上に立っていたのですか?」

 

ずっと5人一緒だったと言えば涼宮ハルヒと彼の安全は確保されるかもしれない
しかし、ここで嘘をついてもすぐにバレると判断し、正直に答えることにした。

 

長門「ほとんどは。ただし、私と朝比奈みくると古泉一樹の寸劇の時には、
   それ以外の二人は舞台袖に下がっていた。」
古畑「それは何分ぐらいでしょうかー?」
長門「4分ほど。……なぜそんなことを聞くの?」
古畑「何故、というと?」
長門「彼は自殺ではなかったの?」
古畑「いえー、今は殺人との見方が強いですー。あ、別に疑っているわけではないのですよ!
   あくまで形式的な質問ですので、ご気分を害されたならすみませーん。」
長門「いい。」
古畑「では、失礼します。ありがとうございましたー。」

 

古畑任三郎は部室を出ていった。
口ではああ言っているが、古畑任三郎が私達を疑っているのは明白。
捜査方針も殺人で固まったようであるし、状況は芳しくない。
私は人間でいう『不安』という気持ちを感じていた。


SIDE みくる

 

鶴屋「みっくるー!はやく!こっちこっち!」
みくる「ふええ、待ってくださーい」

 

うう、なんでこんなことになってしまったんでしょうか。
私は鶴屋さんに連れられて事件現場に向かっています。
なんでも、「事件現場なんてめったに見れないからね!一見の価値はあるさ!」だそうです。
わたしはもう見てるからいいですー……とは言えません。
気がのらないけど、こうやって来ています。


鶴屋「おおー!すごい!テレビドラマそっくりっさ!」

 

鶴屋さんは興奮している。一方の私は、何か違和感を感じていた。
なんだろう……

 

今泉「こら!君達!ここは一般学生は来ちゃダメだ!」
鶴屋「おおっ!でっかいデコだね!ペチンってやってもいいかいっ?」
今泉「ダ、ダメに決まってるだろ!まったくもう!」
鶴屋「あの人型のチョークに場所に死体があったのかいっ?ほんとにテレビで見た通りじゃないかっ!」
今泉「だからほら、早く出てって……あ、古畑さーん!」

 

おデコの広い刑事さんが助けを求めるように手を振ります。
え?古畑って確か……振り向くとそこには、昨日の放課後部室を訪ねてきた刑事さんがいました。

 

古畑「何をやってるんだね今泉君……おやぁ?朝比奈さんではないですか!」
みくる「ど、どうも……」
鶴屋「おやあ?みくると知り合いなのかい?」
古畑「実は昨日SOS団の部室を訪ねさせていただきまして!」
みくる「そうなんです……。」
古畑「ちょうど良かった!朝比奈さんに聞きたいことがあったんです~。
   少しお時間よろしいですか?」
みくる「は、はい……」

 

緊張します……何を聞かれるんだろう。

 

古畑「ズバリ聞きます。生徒会長と、何かありましたか?」
みくる「え…ふぇ!?」

 

まさかそんなことを聞かれるなんて……いきなりすぎてびっくりです
どうしよう、上手くかわさなきゃ……

 

古畑「実はですね、このSOS団の名簿。あなたの名前だけ丸でかこっていたのですよ。
   特別視しているSOS団の中で更に特別視なさっていたようで、何か心当たりは?」
みくる「あ、あ、ありません!!」

 

ああダメ、こんなの逆にあるって言ってるようなもんじゃない
でもどうしよう、まともに返せないよ……

 

鶴屋「おっと刑事さん!そこまでだよっ!みくるは嫌がっているじゃないかっ!」
古畑「えー……んふふふ、すいません……」
鶴屋「行こう!みくる!」

 

鶴屋さんは私を引っ張って事件現場の旧校舎から出ました。
ありがとう……鶴屋さん

 

みくる「あの……わたし……」
鶴屋「深いことは聞かないよっ!でもみくる、私は信じているからね!」
みくる「ありがとう……」

 

でも……ごめんなさい
私は、もう、犯罪者なんです。

 


放課後になった。古畑と今泉は校庭のベンチに座っていた。

 

古畑「ん~……」
今泉「で、どうなんですか。やっぱりSOS団が犯人なんですか?」
古畑「おそらくね~?アリバイトリックも検討はついてる。
   ただ決め手が無い~。」
今泉「もうあんまし時間も無いっすよ!学校にも明日ぐらいまでしかいられないし。」
古畑「そうなんだよね~困ったねぇ~。」

 

ため息をつく古畑。ふとそこに、二人の男子学生が会話をしながら歩いてきた。

 

「でもびっくりだぜ!あそこで殺人が起こるなんてよ!俺、一昨日あそこで告白したんだぜ?」
「告白って言ってもナンパ絡みじゃないか。門が閉まる直前まで粘ってさあ……」

 

古畑はその会話を聞き逃さなかった。
慌てて二人を呼びとめる

 

古畑「すいません!!今の話、もう1度よく聞かせてもらえますか?」

 

呼びとめられた二人は唖然としながらも、話を続けた。

 

谷口「いや、俺一昨日あの事件現場で告白したんですよ。
   ナンパしてようやく捕まえた女子を呼び出してね。」
国木田「玉砕だったけどね。」
谷口「うるせえ!」
古畑「えー、それは何時頃ですか?」
国木田「ほんとに門が閉まる直前でしたよ。7時ちょっと前だったかな?
    門が閉まるって慌ててたから間違いないです。」

 

古畑はそれを聞いてニヤリとする。

 

古畑「ありがとうございます。あ、すいませーん。」
谷口「なんです?」
古畑「あともう1つお願いが………」

 

古畑「えー今回の事件、やはりSOS団の5人が犯人だったようです。
   アリバイトリックもようやくはっきりとしました!
   しかしですね、残念なことにまだ確たる証拠はありませーん。
   そこで!私はこれから部室に向かい、5人のうちのある一人に焦点を絞って攻めたいと思います。
   その人物はですね、私の推理が正しければある勘違いをしているはずなんです。
   巻き込まれ型のツッコミ役、キョン……
   慌てんぼうのドジな癒し系、朝比奈みくる……
   無口で冷静沈着な娘、長門有希……
   常ににこやかなフォロー役、古泉一樹……
   そして、唯我独尊のSOS団団長、涼宮ハルヒ……
   この中の誰に狙いを定めたのか?えースレのみなさんも是非考えてみてくださーい。
   古畑任三郎でした。」


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