いつもの放課後。いつもの部室。
いつもの団員。いつもの団長。

この上なくいつも通りで
ハッキリ言ってしまえば昨日や一昨日となんら代わり映えのしないそんな中、唯一いつも通りじゃないものがあった。

いつもは感じない違和感。場所なんて特定できやしないが、それは確実に自分の体のどこかの場所から湧き出ていた。
体調が悪いわけでもないのに感じるこの倦怠感。どれだけ体を楽な状態にしても良くならないだるさ。
そしてなにより…胸の奥を締め付けられるかのような、根拠のない不安。

俺は今日、近年稀に見る巨大な憂鬱に支配されていた。

なにかショッキングなことがあった。とか、鬱になるような本や映画を見た。とか、別にそういうのじゃない。
このありふれた日常の1ページを、なんとなく、ほんとになんとなーく指でなぞってみただけだ。
そこで出会ったちょっとした違和感が、疑惑に変わり、恐怖に変わる。

最初のなにげない疑問がどんどん膨れ上がり、そして今、結果的に俺を不安のど真ん中へと立たせていた。

チラリ、とハルヒの方を見てみる。
朝比奈さんを団長席に座らせ、髪の毛を好き勝手いじってる最中だった。
楽しそうな笑みを浮かべながら栗色の髪をくしでとくハルヒと少し不安げな表情の朝比奈さん。

「さぁ、みくるちゃ~ん。今日はどんなヘアスタイルがいいかしらねー。」
「ふぇ~、くれぐれもおてやわらかに頼みますぅ。」
二人の微笑ましい光景に、少しだけ気持ちが楽になった気がした。が、
それも長くは続かない。
次の瞬間には、その美しい絵画のような二人の姿にさえ、不安を覚えてしまう。

ハルヒ。
お前は今、本当に、心からこの日常を楽しんでいるのか?

 

 

「おや、僕がここまで善戦できるなんて、今日は随分調子がよろしくないようですね。」

古泉に声をかけられ、ハッとする。
どうやら感情があっちに行き過ぎて、無意識のままボードゲームをやっていたようだ。
…無意識でやっても勝てるのか…。
「なにか深刻なお悩みでも?」
ニヤリ、と笑う古泉。『ニヒルな笑い』っていうのはこういうことを言うんだろうな。
まるで全てを見透かされてる気分だぜ。
「ま、俺もお年頃の男子高校生だ。悩みのひとつふたつ、あっても別に不思議じゃないだろ。」
といっても、今俺を現在進行形で苦しめている悩みは、この部室に入ってから発生したものだがね。

「ほほう。これは珍しいこともあったものですね。」
なんだオイ。俺に悩み事があるのがそんなにおかしいか。
「いえいえ、そうじゃありません。」
すみません、と苦笑いを作りわざとらしく肩をすくめる古泉。
「そうではなくてですね。あなたが僕の質問に対してあまりにも素直に答えてくれたものですから…」
まるで俺が普段素直じゃないみたいな言い方だな。
「…まぁ、自覚が有る無いは今関係ある話ではありませんね…。」
こほん、とひとつ咳払いをした後、古泉は俺の目をまるで覗き込むように…気持ち悪いな。
「まぁ、そうおっしゃらずに。」
目どころか心の中まで見透かされそうなその視線に、露骨に嫌な顔をして対抗する。
「…」
「…」
しばらく見つめあうこと約5秒間。
「…なんだ。」
「いえ、僕としては親友がその胸の内に秘めているデリケートな悩みをそっと、しかしたどたどしく、それでも丁寧に打ち明けてくれるのを今か今かと待ちわびてるわけなんですが…」
「死ね。」
ちょっとでも、ほんのちょーっとでもコイツに相談しようと考えた俺がとてつもなくバカみたいだ。

「それはそれは、ストレートに酷いですね…。」
なんかほざいてる古泉を完璧に無視し、またハルヒの方を見る。
なにやら本日の朝比奈さんヘアーが決まったのか、楽しそうに髪をいじくっている。
どうやら今日は三つ編に決定したらしい。
「みくるちゃん。今日はちょっと原点に帰りましょう。」
「え?え?なんですかそれぇ~。」
ふふふーんとご機嫌に鼻歌を奏でるハルヒと
ふわぁーいと戸惑いを隠せない様子の朝比奈さん。
その様子だけ見てると、ホントに仲の良い姉妹のようだ。まぁ仲が良いのは事実なんだけどな。

ハルヒの顔をじっ、と見つめてみる。
その顔からは高校入学当時のようなトゲトゲした表情、フラストレーションで満ちているような表情をまったく感じさせない。見てるほうも気持ちのいい、ひまわりのような笑顔だ。
だから、だから俺のこの不安は杞憂のはずなんだ。
そう頭では考えているのに、少しもこの憂鬱は晴れてくれない。
それどころかとうとうハルヒの笑顔にさえ、不安を感じ始めてしまう。

本当は…こんないつも通りの日常を仕方なく送っているだけなんじゃないか。
もっとやりたいことがあるのに実は我慢してるとか…。
あいつは我侭で自分勝手だが、根は常識人で優しいからひょっとしたら俺たちに迷惑が

掛かるのを嫌がって…ハルヒに限ってそれはないか…だけど、ここ1年半ちょっとでアイツはだいぶ変わった。前よりずっとやわらかくなった。だから、もしかしたら有り得ない話ではないかもしれない。

あの楽しそうな笑顔も、実はかりそめの笑顔なんじゃないか。
自分の不満を表に出さないように…俺に…心配をかけさせないように。

言っとくが、これは全部俺の不安から出た想像だ。根拠も証拠もない。
だいたいそうならとっくに古泉のヤツは例のヘンテコ空間にレッツダイブしてるはずだし
長門から俺に対してなんらかの警告があったりするはずだ。
そもそもあのハルヒの笑顔を見れば、誰もが『そんなわけねーじゃん。』って言うだろうよ。
だが、もしハルヒが本当にそう思っているのなら、この退屈な日常に実はうんざりしているのなら
せめて俺だけは気付いてやらないといけない。その確率がどれだけゼロに近くてもだ。
うぬぼれとかそういうんじゃない。確かに俺は古泉ほどハルヒの精神分析に長けてるわけじゃないし、
長門ほどハルヒの期待に応えられるほどの器量は持ち合わせていない。
だけど、それでもハルヒの隣にいてやれるのは俺しかいないんだ。
いや、この言い方は違うな。
俺がハルヒの隣にいたい。ハルヒの気持ちに答えてやれるのは、俺じゃないと嫌なんだ。

と、俺が1人で勝手に熱くなっていると
「な、なにジロジロ見てんのよ。」
ハルヒに突っ込まれた。
しまった。どうやらハルヒを見つめたまま葛藤していたらしい。
他の団員の反応を見てみる。
朝比奈さんは不思議そうな顔をしていた。
長門は分厚い本から顔を上げ、いつも通り澄んだ目で俺を興味深そうに見ていた。
古泉はニヤニヤしていた。
「お前は死ね。」
「酷い。」

 

 

いつも通り長門がハードカバーの本を閉じ、下校の時間がやってきた。
「キョン。鍵しめといてー。」
了解しました。団長殿。

みんなが部屋を出たあと鍵を閉め、さて、俺も帰るか。と4人が待っているであろう下駄箱へ向かおうとすると…
「…」
長門が1人廊下に立っていた。
「なんだ長門。忘れ物か?」
「…」
ふるふる、と首を横に振る長門。
「?どうした『不安?』」
…え?
「彼女の気持ちが分からなくて不安?」
なにを言ってるんだこいつは、とは思わなかった。
本当、長門には全部お見通しなんだな。
「そう。」
そうかい。
「…」
しばらく黙り込んだ後、長門はゆっくり話し始めた。

「現在、涼宮ハルヒの精神は非常に安定している。
  不安定な以前とは違い、最近は閉鎖空間の発生も極僅か。」
長門にしては、この上なくわかりやすい説明だった。
「彼女はあなたが隣にいるこの日常を満足に過ごしている。
 だから、不安に思うことはない。安心して。」

あまりにも長門らしいその優しさに、思わず頬がゆるんでしまう。
「ああ、それは俺にもわかってるんだ。」
「…?」
「長門、ありがとうな。お前は俺の不安を取り除こうと思ってわざわざ残って、そんなことを言ってくれたんだろう?」
「…」
「嬉しいよ。そこまで俺のことを心配してくれて…けどな、そういうことじゃないんだ。これは。」
「…?」
長門はわけが分からない。といった具合に首を傾げている。
「上手く説明できないけどな…これは、この問題は俺が直接ハルヒと話して、解決しなくちゃいけないことなんだ。」
「…」
「結果なんて二の次でいいんだ。ああ、ハルヒが今の現状を楽しんでるってことは知ってるし、

  不安がることないのも分かってる。だけど一度俺の中で生まれちまった不安や疑問は、

  やっぱり自分で解決するべきだと思うんだな。結局さ。そうじゃないと納得できないんだよ。

  頭では分かっているけど、心が理解しないっていうか。」
長門はいつも通り無表情で、それでも興味深そうに俺の話を聞いていた。
ってなんかガラにもないこと言ったな。俺。
「まぁようするに人間ってのは変な生き物でな。結果よりも過程が大事ってことだ。」
慣れないことはするもんじゃない。だんだん話が変な方向に向いてきた。
「はは、なに言ってるか訳分かんないよな。うん、自分でもいまいちわからないからな。」

「…」
「まぁ、長門にもそのうち分かるよ。」
なんてったって長門は生まれてまだ4年しかたってないんだもんな。
そう言って頭を撫でてやる。サラサラした髪が心地よい。
「なにわともわれ、ありがとうな。長門。」
おかげさまで、実はちょっとくすぶってた最後の一歩が踏み出せそうだ。
「…そう。」
少しだけ心地よさそうに返事をする長門。俺にハルヒがいなけりゃ抱きしめてナニしてたね。
「…推奨する。」
「ん?なんか言ったか?」
「あなたの不安を正直に彼女に伝えることを推奨する。」
驚いた。
大した学習能力をお持ちだぜ。この万能4歳児様は。
「ああ、そうするよ。」
「そう。」

 

 

 

「遅いわよバカキョン!」
話を終えて長門といっしょに校門へ行くと、既に待ちくたびれた感が前面に押し出されたハルヒと
いつも通りニコニコ顔の朝比奈さんと、あとアレがいた。
「アレとは…酷いですね。」
冗談だ。古泉。

 

それから途中の分かれ道まで、団員全員で下校する。
たわいのない会話をしたり、古泉を無視したりしながら歩く。
だんだんとあの分かれ道が近づいてきた。
すると古泉がいっそう顔を近づけてきて、そして
「がんばってください。」
と一言呟いて去っていった。
アイツのことだ。細かい内容は分からないにしろ俺がハルヒのことで悩んでるってことぐらいは知ってたんだろう。
ただ、別にがんばるようなことをする必要はないぜ。

「それじゃあまた明日ぁー」
ほわぁーっと手を振りながら朝比奈さんが去っていった。当然ながらあの方は俺が悩んでることすら知らないだろう。
まぁ、それがいいんだけどな。朝比奈さんは。

「…」
「またね有希ー。」
コクリと頷きおれの方をチラッ、と見ると長門も同じように去った。
今日はありがとな。長門。


「じゃあ、行くわよ。」
ハルヒは元気よくそう言って歩き出す。
ちなみにハルヒが行こうって言ってるのは、最近から始まったSOS団の新たな決まり。
団長と団員1だけで行う放課後市内探索のことである。早い話放課後デートだな。

「次のみくるちゃんの衣装何がいい?」
「今年の文化祭は映画以外何をしようかしら。」
「最近古泉君がとうとうホンモノに見えてきたわ。原作がさっさと進まないから悪いのよ。」
楽しそうに話すハルヒ。
長門の言うとおりだ。ハルヒはこの日常を楽しんでる。
俺の隣にいる日常を、SOS団みんなで過ごす時間を心から楽しんでいる。

そっとハルヒの手を握る。
ハルヒは俺の顔を見ると少し照れたような笑顔を浮かべ、静かに手を握り返してくれた。

別に今更確認することじゃないんだろう。
結果は100%分かってるんだ。
それに、俺がこんなことを聞いてハルヒが気分を害する可能性だってある。
せっかく今を楽しんでいるのに、俺の勝手な思い込みのせいでハルヒの気を悪くしてしまっては元も子もない。

 

――あなたの不安を正直に彼女に伝えることを推奨する――

 

「ハルヒ。」
「なに?」
それでも
「お前さ…」
「?」
それでも俺は聞くべきだと思った。
どうしてもハルヒの口から直接聞いて安心したい。という思いもある。
だけどそれだけじゃない。

「お前は今、楽しいか。」
「はぁ?」

ハルヒはぽかんとしている。
「その…俺の隣にいるこの日常を、心から楽しんでくれてるか?」
「キョン?」
「『普通』であることを極端に嫌うお前が、この上なく『普通』の俺と付き合っていて…」
「放課後、今日みたいにのんびりした時間をみんなで過ごして…」
「そして今、俺と手をつないできわめて普通の放課後デートを楽しんでいる。」
「ハルヒが俺のことを誰より大切に想ってくれてるってことはすごく伝わってるんだ。」
いや、俺だけじゃない。少なくともSOS団全員のことを、コイツは大事に思っている。
だからこそ体調を崩した長門をあそこまで熱心に看病できるし、朝比奈さんと(多少強引ではあるが)仲良くスキンシップできる。古泉とも…あー、まぁ、一緒に企画立てたりしてるしな。
本当は誰より優しいんだ。その気になりゃ自己犠牲も省みないだろうほどにな。
ま、こいつは素直じゃないからこんなこと言えば猛烈に理由つけて反論するだろうが。

だから、俺もハルヒの気持ちに全力で応えたい。
今は満足してくれているからいい。だがもしこの先、ハルヒがなにか不満を感じるようなことがあれば、精神的に、肉体的に不安定になるようなことがあれば、出来る限り、いや、俺がなんとしても解決してやりたい。

だからこれは、その為のささやかな試練だ。

「ハルヒ。もしなにか不満があるようなら、悩みがあるようなら全部、俺に言ってくれないか。
 今に限ったことじゃない。これから先――『キョン。』」
話してる途中、急に口を開くハルヒ。
手を握ったまま俺の正面に立つ。自然と顔が向き合う形になった。
「ハルヒ?」
ハルヒは俯いている。やっぱり、気を悪くしてしまっただろうか。

急いでなにか取り繕う言葉をさがしていると
「キョン。」
再び俺の名を呼ぶハルヒ。
それからゆっくり顔を上げる。
その表情は、
いつも通りの、俺の大好きな唯一無二の笑顔だった。そして
「あんたもよーやく下っ端の心構えが出来たみたいねぇー。」
なんてことを言いやがった。
「は?」
「日頃団員の為に奔走している団長を敬い、気遣う。関心関心。」
「言い方がちょーっとクサすぎるけど、まぁ気持ちは伝わったわ。」
「その気持ちを常に持ち続けなさい。そうすれば、アンタの昇進も考えてやってもいいわ。」
いつものように得意げに、楽しそうに言うハルヒ。
少しはしおらしくなってくれてもよさそうだが。まぁハルヒに限ってそれは無いか。
そのあまりのコイツらしさに
俺は、呆れるどころか笑ってしまった。
「まったく、人がせっかく気合を入れて言ったらこれだ。」
わざとらしく呆れる仕草をする。心に巣を張っていた不安は既にどこかへ消えてしまった。
「なに言ってんの。勝手に不安になって、勝手に悩んだだけのくせに。」
げ、気付いてたのか。
「いつものアンタ見てれば分かるっての。何に悩んでたのかは分からなかったけどね。
 今話してくれて、ようやく理解したわ。」
ま、古泉にも気付かれてたしな。当然といや当然か。

「どうせ団活終わったあと有希と校門出てきたのも、その事相談してたからじゃないの?」
まったくもってその通りです。
「ったく。」
ハルヒは軽く溜息をついた後
「生憎そんな心配は御無用よ。あんたやみんなのおかげで今は毎日を楽しめてるし、
     それに言われなくてもあたしは不満があれば真っ先にあんたにぶつけるから。」
そうかい。
するとハルヒはゆっくり繋いでた手を離し、そのまま俺の首に腕ごとかけてきた。
顔と顔の距離が一気に縮む。
「でも、ま、心配してくれたことに関しては素直に評価してあげてもいいわ。」
だんだんとハルヒの声が細く、甘くなっていく。
「だから、これはそのご褒美よ。」
その瞬間、なにをされるかはすぐに分かった。この場合分からないほうがどうかしてるよな。
だが、唇と唇が触れ合う瞬間の、ハルヒの一言までは予想できていなかった。

 

 

「心配してくれて、ありがとう。」

 

 

通りの少ないとはいえ道端でたっぷり十数秒口づけを楽しんでしまった後、
再び手を繋ぎなおし、また歩きだした。

 

「キョン。」
「ん?」
「さっきの話のことだけど。」
ああ、なんだ?さっそく何か不満発生か?
「違うわよ。」
「じゃあなんだ。」
「さっきアンタが言ったこと、一個だけ間違いがあったわ。」
ほう。一体なんのことに関してだ?
「あんた自身の事。」
俺?
「そう。」
ハルヒの、俺の手を握っている力が強くなった。
「あんた、自分の事『普通の人間』とかって思ってるみたいだけど、それは大きな間違いだから。」
「は?」
横目でハルヒの顔を見る。いつも通りの自信満々の顔は、少し赤みがかかっていた。
俺の視線に気づいたのかハルヒも顔を俺に向ける。そして、目線を少しずらしながら
「あたしを惚れさせたんだもん。その時点であんたは既に普通のカテゴリーから逸脱しているのよ!」
恥ずかしさからか最後の方はまるで怒鳴るような言い方だった。
そのあまりのこいつらしさに自然に頬がゆるむ。
「これはこれは。天下のSOS団団長からそんな言葉を頂けるとは、まことに光栄だね。」
「…っっっ、だからって調子に乗らないこと。隙を見せると揚げ足とられちゃうわよ。」
誰にだよ。なんて野暮なことは言わない。
「へいへい、胆に銘じておきますよ。」
「わかればよろしい。」
そう言ってまた前を向きなおすハルヒ。

 

…そうだな。
「ハルヒ。」
「ん?」
歩きを止める。手を繋いでるためハルヒの足も自然に止まる。
「褒めてもらったからな。」
ご褒美だ。
「ん…んむ…っ」
今度は俺から口づける。
抱きしめ、体全体を密着させる。さっきは比較的ライトなキスだったので、今度は唇を啄ばんだりしてみる。
…舌を入れるのは…さすがにここではマズイか。

 

 

 

 

「今日これから、あんたん家行くから。」
唇を離して見つめ合っていると、ハルヒがそんなことを言い出した。
「おいおい、『団長と団員1で行う特別会議』は確か明日じゃなかったか?」
ちなみにその会議とやらの内容は、団長と団員1の親睦を深める…まぁ、この話はいいか。
「たった今緊急でそう決まったのよ。反論は受け付けないわ。」
そうかい。それなら仕方ないな。
「そうよ。」
そう言うとハルヒは俺の手を三度掴み直し、早足でずんずん歩き始めた。
その後ろ姿からは不満や、不安を一切感じさせない。
そんなもの。これからも感じさせてなんかやるもんか。

改めて決意を固め、少しだけ歩く速度を上げる。
引っ張られていたはずの手から抵抗が消え、ハルヒの隣に追いつく。
自然と目が合い、微笑みあう。

ああ、やっぱり気持ちが通じ合うっていうのはいいもんだ。
とりあえず明日、長門に礼を言わないとな。
…一応、古泉にもな。

「なにぶつぶつ言ってるの?」
「ん?ああ」

 

ハルヒの笑顔を死ぬまで守ってみせる。って誓いを立ててたのさ。


「…バーカ。」

 

おしまい

 


|