俺とハルヒが付き合うことになったときハルヒから世界を改変できる力が消えた。
あのときはその場の勢いでいろいろと恥ずかしいことを言ってしまったな。
今でも告白したときのことを思い出すと顔から火がでそうになほど恥ずかしくなる。
ハルヒは俺の告白にいつもの100万Wの笑顔で応えてくれた。
それから過ごした時間は幸せだった。ハルヒにつれられて遊園地に行ったり、水族館に行ったり……。
あれだけ奇怪な行動をしていたのにデートコースは一般のそれと同じ。
昔、古泉が言っていた通りやっぱり根底は普通の女の子なんだよな。
もちろんハルヒはSOS団の活動の手を抜くこともなかった。
むしろ付き合い始めてSOS団に影響はないことを示すためか、いっそう活動の突飛さは増したほどだ。
そんなこんなで時間が過ぎ一ヵ月後に変化は訪れた。

付き合って一ヵ月が過ぎたある日。その日、部室に朝比奈さんが来なかった。
朝比奈さんがハルヒに無断で団活を休んだことなんて今まで一度だってなかったのに。
まあ、そのときは風邪かなんかで休んでるんだろうなぐらいにしか思わなかった。
次の日は朝比奈さんだけじゃなく、なんと長門まで来なかった。
人間である朝比奈さんならまだしも、宇宙人である長門が来ないなんておかしい。
さすがに心配になった俺達はとりあえず職員室に突撃した。
長門の担任に聞いたところ今日は休んでるらしい。ちゃんと電話がかかってきて休みの報告があったとのこと。
朝比奈さんの担任にも同じように聞くとありえない答えが返ってきた。
「昨日の朝、急に親御さんから電話がきて、転校したとのことだ。お前達は仲が良かったのに知らなかったのか?」
それを聞いた瞬間ハルヒが担任に飛び掛かって職員室は騒然とした雰囲気になった。

俺自身も自分の考えに整理がつかず、ハルヒを止める気にもならなかった。
いや、こうなるとはわかっていた。朝比奈さんが未来に帰ることは。
ただ帰るのは卒業後だと勝手に思い込んでいたし、現実になると衝撃は大きかった。
相手の胸ぐらを掴み「嘘つくんじゃないわよ!」、「本当のことを言いなさい!」
と大暴れしているハルヒを先生方が取り押さえる。
朝比奈さんがいなくなったってことは……。
嫌な予感がする。騒ぎのすきに職員室を抜け出した俺は長門マンションにむかった。

呼び鈴を押す。何度押しても中から反応がない。ドアノブに手をかけると鍵がかかっていなかった。
中を見回す。もともと生活感のない部屋だったが、前はいちよう人が
生活するのに最低限必要な物だけはあったのに。部屋には何もなかった。
よく見ると一枚の紙切れが部屋の真ん中に落ちている。
そこには『さようなら』とだけ書いてあった。

また次の日。学校にむかう。なにもやる気が起きない。
今まで一緒にいた仲間の内二人もいなくなった。
もう今までのSOS団は戻ってこない気がした……。

途中の待ち合わせ場所でハルヒと合流した。
どうせすぐ知ることになるんだ。長門も転校したとハルヒに伝えた。
昨日の今日のことにハルヒは落ち込んでいたが、すぐにいつもの調子で言った。
「団長の許可なく勝手にいなくなるなんて許せないわ!キョン連れ戻しに行くわよ!」
ハルヒ……それはできないんだ。それでも俺は「そうだな」と答えた。
ハルヒだって辛いんだ。ハルヒにとって親友と言ってもいい人が二人も同時にいなくなった。
にもかかわらず、こいつは無理して笑顔を見せている。
俺にはまだハルヒがいるんだ。こいつが笑顔でそばにいてくれる。
それだけでなんでも乗り越えられると思った。
だが、現実は甘くなかった。

「痛っ!」
下駄箱で靴をはきかえているとハルヒが声をあげた。
上靴を脱いで足を見ている。
「何よこれ!?」
足の裏に画鋲が刺さっている。上履きに画鋲が入っていた。
「誰だよ!こんな悪戯するやつは!」
このときはまだただの悪戯だと思っていた。

教室に入るとまわりの様子がおかしい。ハルヒの席に集まって何かをしている。
俺達に気付くと国木田が話しかけてきた。
「ごめんね……キョン。消そうとしたんだけどなかなか消えなくて……」
ハルヒの机には『死ね』『バカ』等の言葉が書かれており、まわりに破れた教科書が散らばっていた。
「ちょっと!何よこれ!」
これは明らかにハルヒに対する嫌がらせだ。
「おい!これをやったのは誰だ!?」
「わかんねぇ。俺がきたときにはもうこうなってた」
谷口が気まずそうな顔で言った。
「誰よ!犯人は!」
クラスのやつらは沈黙して誰も答えない。
「こんなことするやつなんて最低最悪のくずよ!表立って何もできないくせに陰でこそこそして!」
そのままハルヒは席に座り窓の外を見ていた。俺は犯人すぐにでも殴ってやりたい気分だった。

昼休み。授業終了と同時にハルヒは教室外に出ていき、十数分するとどこからか新しい机を持ってきた。
ハルヒは昼休み中絶対に犯人を見つけてやると言って学校を駆け回っていた。もちろん俺も。

放課後、団室にきた俺達にさらにひどい光景が目に入った。
団室がめちゃくちゃに荒らされていた。
ドアの鍵は無理矢理壊されており、パソコンは壊され、朝比奈さんのコスプレ衣裳もズタズタに破かれていた。
「ひどい……」
ハルヒがついに涙を流しだした。俺は犯人にかつてないほどの怒りがわいてきた。
「これは……ひどい有様ですね」
そこに古泉が入ってきた。いつものにやけ顔のままで。
こんなときに笑ってることはないだろ。俺がそう言いかけたとき、古泉が信じられないこと言った。
「ところで涼宮さん。僕は今日限りでSOS団をやめることにします。
今日はそれだけ言いにきました」
耳を疑った。古泉がSOS団をやめる?

「ちょっ、ちょっと待ってよ古泉くん!どうしていきなり……」
古泉はハルヒの呼びかけも無視して団室をでていった。俺は古泉を追いかけて肩を掴んで止める。
「おい、いきなりどうしたんだよ!」
古泉は立ち止まりこちらを振り向いた。
「なんのことですか?」
スマイル顔のまま答える古泉。
「どうしてSOS団をやめるなんて言うんだ!」
「理由ですか?やっと自由にしていいことになったからですよ。
この一ヵ月、機関は涼宮ハルヒの能力が完全に消えたのか様子を見ていた。
そして今日、機関では涼宮ハルヒ能力は完全に消えたと結論をだし、晴れて解散とゆうことになったんです。
他の二人も似たような理由で今まで残っていたのでしょう」
「ふざけんな!お前はSOS団の活動を楽しいと思ってたんじゃなかったのか!?」古泉はオーバーアクションで肩をすくめてみせる。
「まさか。こんなのを楽しいと思うはずがないでしょう。
今までよく耐えてきたものですよ。もう涼宮さんのわがままに付き合う必要はないんです。
彼女のせいで僕たち超能力者がどれだけ辛い目にあってきたことか。
本当にせいせいしますよ」

古泉の言動に俺は耐えられなかった。怒りにまかせて古泉に殴りかかる。
しかし、俺のパンチは古泉に軽く止められた。次の瞬間、視界が反転する。
俺は古泉に投げ飛ばされていた。
「あなたもいきなりひどいことしますね。ですが、残念でしたね。僕は機関で格闘の訓練も受けていたんですよ」
そのまま古泉は去ろうとする。
「待て!ハルヒに嫌がらせをしているのはお前達なのか?」
また振り向いた古泉。
「違いますよ。むしろ逆です。
あなたは今まで涼宮さんが誰にもいじめを受けていないことを不思議に思ったことはありませんか?
涼宮さんは自分に親しい人にはとても優しくなることができる。
しかし、涼宮さんの他人に対する態度はまわりに敵を多く作る。
涼宮さんに嫌がらせをしようとする人は多くいました。
そんなことをされたら閉鎖空間が発生してしまう。
だから今までは裏で機関の人間が涼宮さんを守っていたんですよ」
そう言って古泉はもう後ろを振り返らずに去っていった。

それからハルヒへのいじめはエスカレートしていった。
毎日のようにハルヒのものは盗まれ、落書きされる。
ハルヒも最初は無視していたが次第に笑顔を失っていった。
俺は必死になって犯人を探したが手掛かりもなく、見当もつかなかった。
ついにはハルヒへのいじめはいつもそばにいる俺にも飛び火してきた。
…………
………
……
… 

俺とハルヒは屋上に立っている。
もはやいじめは物を隠すとかのレベルではなくなっていた。
毎日殴られ、蹴られ、金をとられる。
谷口や国木田、阪中すらも俺とハルヒを無視する。
俺もハルヒも限界だった。SOS団で遊んでいた頃が懐かしい。遠い昔のことのように思える。
ハルヒの手を握る。目をつぶり俺たちは屋上から飛び降りた。
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