梅雨も終わり、いよいよ夏本番の暑さが到来し始めた。太陽の本領が発揮する季節だが、こと文芸部室には年中燦々と光を浴びせ続けられる人間がいる。

もちろん我らがSOS団団長こと、涼宮ハルヒその人である。ハルヒは引きこもりよろしくネットサーフィンに興じている。全く、文芸部室は天の岩戸じゃないんだ。
だが、俺としてはこのまま引きこもっててもらいたい理由があった。あまり他の人に見つかって欲しくないからな。
ただ、ハルヒだけじゃなく俺も出歩きたくは無い。何故かって?では今日起きた悪夢だと思いたい出来事を話さなければいけない。
話したくは無いが、話さないと話が進まないからな

………………

朝から照り付ける太陽のせいで、学校について最早帰ろうか等と考えたが、タイミング悪く玄関でそれを許してくれるとは思えない奴に遭遇した。

ハルヒである。挨拶もそこそこに、ハルヒが内履きを取り出そうと下駄箱を開けた瞬間、数枚の手紙がハルヒの足下に落下した。
ハルヒは唇をカモノハシの形に歪め、手紙をまとめてそのままゴミ箱へ移動した。おいおい、読まなくて言いのかよ?

「その必要はないわ。どうせ下らない事しか書いてないわ」
聞けばここ最近、ラブレターををもらったり、愛の告白をうけるようになって来たという。
中学の頃と違うのは、その全てを断っているとハルヒの談だ。ハルヒは何故かムキになってその旨を説明してくれた。
今までハルヒを避けてきたも東中出身の奴らからも告白されるようになったとか。
ハルヒは最初の頃こそ電波をゆんゆんさせていたが、徐々にクラスにも溶け込み始め、ハルヒ本来の素地が現れ始めた結果だろう。
他人からの評判もよくなってきている証拠だ。
いいことじゃないか、誰かと付き合って青春を謳歌しろよ、と声を掛けたら口を更に歪め、一言「うるさい」と吐き捨てた。

午前中は不機嫌オーラ全開だったので何も話さないようにし、昼休みを迎えた。
俺が昼飯を食べようとした瞬間、国木田に来客を告げられ、谷口のニヤけ姿を後にして、来客とやらの話を聞くことになった。
客は俺の全く知らない男子生徒であった。何の用なのか尋ねて見たところ、
「僕は涼宮さんのことを真剣にお慕い申し上げています。あなたに勝つ自信は正直ないですが、負けるつもりはありません!最後まで諦める気はありません!」
といい残し、去っていった。おーい、何か勘違いして無いか?

その後も二分置きくらいに似たような告知状とも挑戦状ともとれる告白を受け、俺は飯をろくに食べられなかった。
なんだあの告白は?谷口、国木田を始めとするクラスの奴は皆ニヤニヤしていた。どう言う意味だそれは?

その事を谷口や国木田に話すと、溜め息を付きながら話してくれた。つまり、

『ハルヒに告白→SOS団の活動の方が重要だから無理と断られるなぜ無理なのか?SOS団の活動とは何か?
俺を引き摺回す姿を不特定多数が目的つまり俺がいるから間に合ってますごめんなさい。』

という流れが俺の知らないところで出来上がっているらしく、ハルヒにフられたのは俺がいたから、と言う事になるらしい。
俺は突っ込む気にもなれず、残り少ない昼休みを気にしながら飯をかっこんでいた。
その後の授業間の休みにも同じような告白を受けつつ、放課後になるや否や、俺は部室に駆け込んだ。
ハルヒが何やら言いながら追いかけてきたが、放課後まで教室まで残るとかなりやばそうだったので、部室に逃げる事を選択した。

……………

大体こんな感じだ。話は変わるが俺は話と言う言葉を何回使ったかな?
さて、このまま下校の時間になって誰も出くわさず帰るのを夢見てたんだが、どうやら神はそれを許してくれなかった。
ドアのノックに朝比奈さんが応対し、呼ばれたのは俺だった。
来客に応じた俺は、本日二回目の邂逅を果たす事になった男子生徒と話をする事になった。内容は昼と同じだが、ここにハルヒがいる事が最大の相違点だ。
あまり大きい声で話さないでくれ。そうしないと

「勝負ですって!?」

遅かった。閻魔大王よりも地獄耳で、聖徳太子よりも多くの人の声を聞き分けられるハルヒが首を突っ込んできた。
そう、彼はハルヒを賭けて勝負を挑んできた。それをハルヒが目敏く聞分けてきたのだ。
「ふっふーん、最近色々声を掛けられてうっとおしかったのよね。丁度いいわ。この状態を一掃するチャンスだわ!」
そんなチャンスはない、と思いつつも口には出さなかった。
こいつの目は真夏どころか、赤道直下の日差しすら打ち破るほど輝いていたからだ。こうなったこいつを止めることができないのは俺が一番よく分かっている。

「トーナメント開催よ!『SOS団プレゼンツ 第一回涼宮ハルヒ争奪戦』開催よ!!」
ああそうか頑張ってくれ。
俺はそう言い残し、部室に戻ろうとした瞬間、つんのめった。
「何言ってるのよ。あんたが試験官、あたしの彼氏候補のふるいわけをするのよ。それで最後まで残った奴があたしと付き合う権利を獲得するのよ。
いい、手抜きなんかして見なさい。死刑じゃ済まさないわ。三代先まで耳元で『ナントカ還元水のおかげで人生が開けました』って言ってあげるわ。」
それは勘弁してくれ。でもなんで俺がハルヒの彼氏候補を選定しなければいかんのだ?
「あら、あたしに彼氏がいたら不満?」
やけに嬉しそうにハルヒが問い掛けてきた。全く持って不満は無い。いつも振り回されている俺の肩の荷が降りる。
だがお前の彼氏候補を俺が決める必要はないだろう?
そういった途端、ハルヒは本日最高級の曲率で口を曲げ、「いいからやんなさい」と言い放った。

やれやれ。面倒ごとはごめんだぜ。

二年目の七夕に続く

 


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