フラクラKの末路
*フラグクラッシャー・キョンに、このような結末が訪れないことを願いつつ……。
いつもの待ち合わせ場所にいくと、有希とみくるちゃんと古泉君が先に来ていた。
「お久しぶりです、涼宮さん」
みくるちゃんは、ほんと変わんないわねぇ。本当に41歳なのかしら? 年齢詐称なんじゃないの?
ボディラインも非の打ち所がないほど完璧。どんな秘訣があるのか、教えてほしいわね。
「お久しぶりです」
古泉君は、演技みたいな笑顔。本当の笑顔って見たことない。奥さんの森さんだったら、見たことあるのかもしれないけど。
有希は、ただ視線を合わせただけ。有希は、わたしんちの近くに住んでてよく会うから、久しぶりということはないわね。
「みんな元気にしてた?」
「はい」
「まあ、ぼちぼちです」
有希はうなずいただけだった。ホント、しゃべんないわよね、有希は。
「例によって、彼が最後ですか」
「年に一度のSOS団創立記念日に遅刻するなんてたるんでるわ!」
「まったくおっしゃられるとおりです」
キョンか……。
一年ぶりに会うあの間抜け面を思い浮かべると、とたんに胸が苦しくなってきた。
ああ、やっぱり、あたしは、まだキョンのことが好きなんだわ。
キョン以上の男なんてそうそういるわけもなく、あたしはいまだに独身。
有希もいまだにキョンのことが好きみたい。
だから、有希も独身のまま。
こんなにいい女なのに、もったいないわよね
みくるちゃんも、キョンのことが好きだったみたいなんだけど。
今は、吹っ切れたみたいに見える。
男なんかには目もくれず、海外を飛び回るバリバリのキャリアウーマン。確実に会えるのは年に一度のこの日だけ。今のみくるちゃんはそういうことになっている。
本当にそうかしら? みくるちゃんって、どこかもっと遠い世界の人みたいな雰囲気なのよね。深く追及するつもりはないけどさ。
それはともかく、みくるちゃんみたいなとびっきり性格がいい美人さんが、いまだに独身だなんて、人的資源の無駄遣いよ。
どれもこれも、あのキョンのせい。
まったく、罪作りな男なんだから。
40歳になった今だって、きっと、多くを女の子を泣かせてるに違いないわ。しかも、本人にはその自覚がないんだから、始末に終えないわよ。
正直にいうと、とても心配でもある。
キョンのことをよく知ってるあたしたちだから、笑って友達付き合いしてられるけれども、思いつめるようなタイプの女に惚れられたら、背中からナイフで刺されたっておかしくはない。
なら、今からでも告白してしまえって?
もう手遅れよ。それをするなら、大学を卒業するまでの間にしておくべきだったんだわ。
でも、あたしはそうしなかった。
キョンの日ごろのあの鈍感な態度に接していたら、告白しようなんて気持ちは徐々になくなっていって……ついには、完全になくなってしまったわ。
有希とみくるちゃんが告白しなかったのは、どうしてなんだろう?
あたしと同じ理由だったのか、それともほかに理由があったのか。
あたしに遠慮してたなんて、思いたくはないけど……。
とにかく、今はもう、告白するつもりなんて、少しもない。
有希もそうみたいだった。
そのうち、キョンも、どこかの女と結婚するのかもしれない。
その相手は、あたしや有希やみくるちゃんよりもいい女じゃないと、絶対に認めないんだから!
あいつにそんな甲斐性があるとは思えないけど、意外とあっさりその日は来るのかもしれない。
でも、それまでは……せめて、そのときまでは、団長と団員一号の関係を続けさせてほしい。
あたしは、ようやく現れたあの間抜け顔に向かって、人差し指を突きつけた。
「遅い! 罰金!」
終わり