― ん…?ここは?…昨日と同じ空間か?
回りはなにも見えないが、閉鎖空間というわけでは無さそうだ…
― ………
― あれはハルヒか?おい、ハルヒ?
― ……なによエロキョン…
― い、いきなりエロキョンは失礼だろ?
― 何言ってんのよ。今日一日の行動はエロキョン以外何物でも無いわ。いきなりレディの前で服を脱ぎ出して、どうゆう神経してるのかしら?
― 風呂に入るためだからしょうがないだろ。それに前にも言ったが、お前は今は猫だ。
― いきなりだったからびっくりしたのよ!恥ずかしいったらありゃしない。
― 人前で着替え始めるお前に言われたくないな。それに顔を隠しながら覗いてたくせに。
― なっ、の、覗いてなんかないわよ!
― 俺の背中にほくろは幾つあった?
― し、しらないわよ!この変態!…変態ついでに言っておくわ。
あんた、このあたしと一緒にお風呂入るなんて、どう言うつもり!?軽犯罪法違反の現行犯で逮捕してやるわ!
― もう現行犯じゃないだろう?それにお前、最初は嫌がってたわりに最後は気持ち良さそうにしてたじゃないか?そうか、あれが噂に聞く『嫌よ嫌よも好きのうち』ってやつか?
― …あ、あんた言葉遣いが卑猥よ!あれは…そう、風呂に浸かってたら気持ち良くなるのは当然でしょ!この変態ドS!
― ドSはお前だ。お前が昼間爪を立てたり引っ掻いたりした場所、大分痛かったんだがな。
― 何言ってんのよ。首周りと肩甲骨のあたりがちょっと赤くなってたけど、血は出てなかっ…
― なんだ、バッチリ見てるじゃねーか。
― へっ?あっ!しまっ、…いいえ、そんな気がしただけよ。あた、あたしが覗くわけないじゃい!
― そうかい。
― エロい理由はそれだけじゃないわ。あんた今日、女の子を取っ換え引っ換えしてデートしてたのは何?SOS団にあるまじき行為よ!遺憾を覚えるわ!
― あれのどこがデートだ?佐々木とは偶然会って飯を食べただけだし、橘と九曜には監禁されただけだし。お前も一緒にいたから分かるだろう?
― 何が偶然よ!何が監禁よ!佐々木さん、あんたを付けていて、一人になるのを待っていたって橘さんが言ってたじゃない。偶然を装ってるけど明らかにあんた目当てで昼ご飯誘ってるわ!
― …横断歩道の一件は偶然だったかもしれないけど、抱き寄せた時、佐々木さん凄く嬉しそうだった。恋する女の子の顔してた………とても可愛かった………
― ………。
― …それにあの二人と手をつないでいる時も、やたらとニヤニヤしてたじゃない!自分のデザートをさりげなく渡すなんて、よっぽどの軟派物じゃないとできないわよ!
― あれはあいつらに借りを作りたくn
― まだあるわ!妹ちゃんの友達!あの子ね。会誌で書いてた子は。確かに可愛い子ね。『汚れを知らない笑顔』とか『どこまでもおとなしい』とか『クラスにいる男子半分くらいから惚れられてる』とか書いてあったわね。よ~くわかったわ!
― …(こいつは俺の書いた駄作を一字一句違わず覚えているのか?)
― でもよくもまぁ、ゲームごときで『良い奥さん』だとか『夫になる奴は幸せだ』なんてクッサイ台詞言えるわね!あんなこというからミヨキチちゃん、動揺して咄嗟に行動できなかったのよ!
― あたしに言わせればあれはあんたが悪いのよ!それなのに自分が悪いってずっと謝ってたじゃない!
― ………。
― みくるちゃんや有希を見てニヤニヤしてるだけじゃなくて、他の女の子を歯牙にかけようとしてたなんて。
それもこれもあんたのエロっぷりが悪いのよ!全部!!わかってるの!!?
― …ああ、すまない。
― …なによそれ。何謝ってるのよ?
― いや、お前の機嫌を損ねちまったかと思ってさ。悪かったよ。
― じゃあ、全部あんたが悪いって認めるわけ?あんたのナンパ癖が悪いって認めるわけ?デートだって認めるわけ?
― いや、そうゆうわけじゃないんだが…
― どっちなのよ!!あんたのニブさと優柔不断さのおかげでどれだけの人が迷惑してると思ってるのよ!!違うなら違うって言い通しなさいよ!ナンパでもデートでもないならそう貫き通しなさいよ!!
―
…言い方が悪かったな。俺はそんなつもりであいつらと会ったわけでも、飯を食いに行ったわけでもない。全部偶然だったんだ。決して疚しい事のために付いて行ったわけじゃない。…これでいいか?
― …あんた、本当に命かけて違うって言い切れるわね?
― ああ、誓うよ。
― …少し不満はあるけど、まあいいわ。許してあげる。またあんなことしたら、死刑だから!
― 死刑って…俺は偶然だといったのに…
― なによ、折角人が大岡裁きをしてあげたのよ?情状酌量の余地があるから執行猶予を付けてあげたのに。
それとも今直ぐ死刑にして欲しい?
― いえ、結構でございます。流石は我らが団長様でございます。
― 当然よ!
…やっぱりハルヒだな。どんなに理不尽でも自分の意見を押し通す。
だが、今回は俺も自分の意見を押し通さなければいけない。
約束もあるし…
―いや、俺自身が望んでいるからだ。
俺は、今の気持ちをハルヒにぶつける決断をした。
― お前にお願いがある。なあ、早く元に戻ってくれないか?
― 何よ。命令する気?
― お前がシャミセンと入れ替わって、みんなあたふたしているんだ。
さっきおは前は俺がみんなに迷惑をかけていると言ったが、このままだとお前も俺と一緒だ。
― あたしは団長よ!あたしの英断をみんながフォローするのは当然じゃない!
― …正直に言おう。みんなに迷惑をかけているから戻って欲しいんじゃない。俺がお前に会いたいから戻って欲しいんだ。お前が猫になっても人間の時とは変わらず忙しい、そして面白い時間が過ごせた。それはそれでアリだと思う。
― ………。
― だが俺はいつも家にいて、風呂も寝る時も一緒で、俺の飯を横取りして楽しんでいる猫でいて欲しいんじゃない。我儘で猪突猛進で、俺たちに厄介事を背負込む、でも退屈する事のない生活を与えてくれる涼宮ハルヒでいて欲しいんだ。俺は授業中事あるごとにシャープペンで俺の背中をさし、不思議探索で何も見つからずブータレる―
― …………。
― ―そしてイベントや厄介事が起きる度にしゃしゃり出て、太陽の様な笑顔を振り撒く、そんなお前に会いたいんだ。…だから、戻ってくれないか?
― ………………
― …おいハルヒ!?どうした?
― ……ぷっ!何それ!?奥さんに愛想尽かされただらしない夫みたいなセリフ!あら、それともあたしを口説いているのかしら?
― なんでそうなる?
― 言い回しが変よ。そんなんじゃあたしは落とせないわ!それにあんた、ナンパ癖治ってないじゃないの?
― だから、お前をナンパしたわけじゃない。
― …あたしだっていつまでも猫でいたいなんて思ってないわ。そのうちもとに戻るわよ。…いつかはまだ未定だけど。
― 早く戻ってきてくれよ。そうでないと、俺…
― 『俺…』なによ?
― な、なんでもない!
― ふーん、まあいいわ。とりあえずもう少し猫で遊んで見るわ。あんたの部屋の探索終わってないし。
― な、何!?
― 人間だと直接見えないところでも、猫だと小さいからいろんな隙間に入れて見る事ができるわ。
暗くて分かりにくかったけど、タンスの裏に1冊、ベッドに挟んでいる2冊。
― あと机の奥にタイトル無しのDVDボックスがあったわね?
― こいつ、いつの間に…!
― まだありそうだったから、全部調べてから人間に戻ってじっくり見聞させてもらうわ。
いかがわしいものだったら、どうなるかわかってるわよね?
― いや、あれはだな…
― 言い訳はいいわ。じゃあ明日、楽しみにしているわ。それじゃあね………
― おい、ハルヒ…!………
………
……
…
ペロペロペロッ…
……んーもう少し…
ペロッペロペロペロッ…
…まて、この感触は…?ムクリ
だーっ!やっぱりお前か!ハルヒ(ry)!
ハ「にゃあ」
だからその起こし方は止めてくれ。刺激が強すぎる。
…やっぱり、まだ戻ってないのか…
そう言えば、シャミ(ry)の姿が見えないが…まさか、俺の隠し財宝を探しに行っているのか?やばい!探さなくては?
ギュウ
ん…?お、おい!何をしている!ハルヒ(ry)!抱き付くな!なんだか柔らかいものがあたってる!
ハ「にゃあ」スリスリ
そして頬擦りするな!いろんな意味で我慢できん!!
ハ「ペロペロ」
耳を舐めるなあー!
俺は鋼の自制心を持ってハルヒ(ry)の肩を持ち、遠ざけた。
一日前の俺だったら、獣になっていたかもしれない。ん?そういえば最初は気絶したんだっけか?
ハ「むー!」
何やら怒っているのだろうか?鳴き方が変だ。それに気のせいかもしれんが、肌もやや赤みを帯びている気がする。
しばらく俺とにらめっこをしていた。顔がさらに赤くなった気がする。熱でもあるのか?
おでこに手を当てようと身を乗り出した瞬間、ハルヒ(ry)もまた身を乗り出してきた。
―チュッ―
………
ハ「にゃあ」
……バタン
………………
にゃあ?スリスリ
………………
にゃあ?ゴリゴリ
………………
…気絶…してるわよね?
っはぁぁ!緊張したー!
キョンったら、私が戻った事に全く気付いてないみたいね。
シャミセンの真似をして見たけど大成功だったわ!
…ちょっと恥ずかしかったけどね///
顔が赤かったの、ばれなかったかしら?
実は私の体でシャミセンがキョンを舐めたり、あたしの髪型をポニーテールにしているのはバッチリ見てたのよ!
全く、私の体をさんざん弄んでいたとは、許せないわ!エロキョンのくせに!
…猫になればキョンと一緒の時間が多くなるからいいかな、って思ったけどそうでもなかったわ。
しかも休日だからまだ長い方だったけど、平日だと会えない時間の方が多いわね。
それより何より、キョンの回りにあんなに親しい女の子が多かったなんて思っても見なかったわ!
ずっと猫のままだったら誰かに取られちゃうわ!そんなことさせない!
だからあの時はああ言ったけど、人間に戻ることにした。猫のままだと同じ土俵にすら上がれないものね。
…アプローチがうまい人程有利、か、その通りね。
昨日偶然とはいえ、佐々木さんが見事にアプローチショットを決められて、あの時は焦ったわ。
いくらグリーンに、キョンに近いからって胡座をかいてちゃ先にホール…何とか?つまり捕られちゃうってことよね。
橘さんが佐々木さんのキャディをやるって言ってたから、ますます不利になったみたい。
でも、グリーンに近いっていうのは最大のメリットよ。
だからせいいっぱいアプローチを……キス…しちゃった…////
それにあの時の『お前に会いたいんだ』って言葉、クサいけど嬉しかったから…
本当はキョンから迫ってきて欲しいけど、キョンはあんな調子だものね。
だから待つのは止めたわ。自ら進んでアプローチしていかなきゃ、先を越されるわ。
他にもライバルが多いみたいだけど負けるわけにはいかないわ!
…でもその前に、もう少しキョンをからかいましょ。
疑惑の本とかDVDとか、いかがわしいモノだったらすべて処分よ!
…全く、ちゃんとあたしの気持ちに気付いてくれたら、そんなモノ要らなくなるくらい張り切ってあげるのに////
あ、でも、昨日のあれ、告白だったのかな…?もう少しストレートにいって欲しいわ。
…クサい言葉なんて無くても返答は決まっているのにね…/////
…あ、キョンが起きそう!猫のフリ猫のフリ…
おしまひ
おまけに続く