…橘・周防と別れたキョンとシャミ(ry)…
くそ、やっぱり嫌な奴だ。意味不明な言葉ばかり並べやがって、挙句に少し悩んだ方がいいだと?ふざけるな!
それでも俺は話を整理していた。だが、考えても何がなんだかさっぱりだ。
…くそ、どうやら俺は橘の謀略に嵌った様だ。忌々しい。何とかしてあいつを見返す事はできないだろうか…
「キョン―」
ふと見上げると、そこにいた見知った顔があった。
―谷口!?
谷「キョン、話がある」
なんだ。
谷「お前、今日は忙しかったみたいだが、スケジュール管理は優秀なんだな」
何だ藪から棒に。
谷「…お前、何股デートをしてたんだ?」
はあ?何を言ってやがる。
谷「とぼけるな。涼宮はお前の管轄だから何をしていても構わん。良しとしよう。
だが、白昼道々抱き合っていたあの女の子は誰だ!?」
あの時の佐々木のことか。あれは事故だ。お前が考える様な疚しい事は何もしてない。
谷「うそつけ。それだけじゃ飽きたらず別の女の子二人と仲良く手をつないでいたじゃねーか!」
橘と周防か。そんなところまで見られたのか。
谷「極めつけは朝比奈さんと長門まで連れ回していたな。
二人共イヤに楽しそうだったぞ?涼宮と吊るんでいる時と違って。」
朝比奈さんはともかく、谷口に長門の表情が理解できるとは知らなかった。
いやそれより、俺は谷口にストーキングされているのか?今度警察に相談しよう。
谷「全く、お前がこんなにプレイボーイだとは知らなかったぜ!」
全部誤解だ、といいたいが、俺の回りには俺の話を聞かない奴が多い。こいつもその例に漏れないだろう。
谷「しかも全員Aランクを超えてやがる」
で、何がいいたい?ハルヒにチクって制裁されている姿を見て楽しむ気か?実は全て見ているんだがな。
谷「キョン、お前に頼みがある」
なんだ?ナンパなら行かないぞ。
谷口はやおら顔を伏せ、地面に頭を擦り付けたかと思ったら、両手を付いた。何をする気だ?
谷口は言った。
谷「キョン、いや師匠!」
…は?ししょう?
谷「弟子にしてください!」
…はい?
谷「どうやったらそんなにうまいこと女の子と仲良くできるのか、そのナンパテクニックをご教授下さい!」
…こいつ絶対勘違いしてやがる。俺をどうゆう目でみてやがる?
谷「師匠!今度一緒にナンパ行きませんか?絶好のスポット知ってるんですよ!そこでコツを教えてください!」
嫌だ。それにコツなんてねぇ。いつも向こうから勝手に話しかけ来るんだ。
谷「おおっ!逆ナンされるとは流石師匠!お見それ致しました!」
谷口は再度頭をアスファルトに擦り付けていた…もういい。言い訳する気にもならん。
谷「それでしたら是非お願いがあるのですか、一人くらいおこぼれに預かる事はできませんか?自分としては、あのツインテールの子がいいんですが…」
橘か。丁度良い。好きにしろ。お前とお似合いだ。
谷「有難う御座います!師匠!!」
…谷口は泣いていた。
橘よ。俺を悩ましてくれたお礼だ。谷口を進呈しよう。せいぜい楽しんでくれ。
そう思うと気分がよくなって来た。さぁ、帰るか、シャミ(ry)。
シ「………」
シャミ(ry)は爪こそ出して無いが代わりに不機嫌オーラを見に纏っていた…
はあ、何とか谷口をまく事ができた。今日は色々あり過ぎて疲れた。早く家に帰って休もう。
俺とシャミ(ry)は何ごとも無く帰宅できた。…良かった。これ以上ややこしい奴は増えないみたいだ。早く家に入ろう。
…おや、女の子物のシューズがある。妹のより大きいな。お客さんか?
妹「あ、キョンくん、シャミー、お帰りー!」
ああ、誰かお客さんが来ているのか?
ミ「あっ…!こんにちは…。ご無沙汰しております」
ミヨキチか!?こんにちは。久しぶり。また大きくなったね。
ミ「は、はい、ありがとうございます。それから、以前はお世話になりました!」
もう大分前の事だが何度謝礼されたかわからない。俺に会う度に言われるからな。
…ミヨキチは見る度に大人っぽくなっている。もはや見た目の年齢なら、朝比奈さんと変わらないかもしれない。
まぁ、朝比奈さんほどの巨乳じゃないがな。だが小学生でこの大きさは…
グサッ
痛ってぇ~!!何しやがる!
シ「フー!」
また怒ってやがる。まてよ、この声と顔は長門が教えてくれた時と同じ気がする。確かあれは…
『マヌケ面』
そうかい、確かにちょっと変な顔をしてたかもな。済まなかったな。
シャミ(ry)は暫く俺を睨んでいたが、ぷいっと顔を背けて妹の方へ向かった。
許してくれたんだろう。…多分。
…ミヨキチinキョン宅…
シャミ(ry)は妹とじゃれあってた。シャミセンは普段妹に無関心だが、シャミ(ry)は遊んでくれるため、妹は大はしゃぎである。
ミ「あの、ゲーム、しませんか…?」
遊び相手をシャミ(ry)にとられ、やや呆然としていたミヨキチが語りかけていた。
遊び相手を取られたもの同士だ。相手をしてやろう。
ゲームは対戦格闘から始まり、シューティング、パズルなどゲームを換えながら遊んでいた。
ミヨキチが気に入ったのはやっぱりというか、ホラー系だった。
グロテスクな怪物を銃などの武器で退治していくアクションゲームだが、二人が協力しないとクリアは難しい。
妹「ミヨキチ頑張れ~」
いつの間にか妹とシャミ(ry)もゲーム観戦をしていた。
実はこのゲーム、まだクリアしていなかった。正確には二人プレイで、だが。
妹とゲームをやっても何も考えず敵を撃つだけで、玉切れを起こしゲームオーバーになってしまう。
その点、ミヨキチは上手かった。家にゲーム機は無いそうだが飲み込みは早く、少なくとも妹とやるよりよっぽど楽しかった。
ゲームは順調に進み、いよいよ最終面となった。一人プレイで一度クリアしている俺はミヨキチにアドバイスをし、ラスボス戦へと挑んだ。
ラスボスは、触手を破壊しつつ本体を攻撃しなければいけない。
また、突然消えてプレイヤーのどちらかの背後を襲うため、二人の協力が必要不可欠になる。
とはいえ、ここまで順調に来れた俺たちにとって、さほど厳しいものでは無く、ラスボスもいよいよ最終形態となった。
最終形態といっても、スピードと攻撃力が上がるだけで、同じパターンで攻撃すれば問題ない。
妹「ミヨキチ凄い~!キョンくんのサポートばっちりだね~!」
確かにサポートがうまい。内助の功というやつだ。
妹「ないじょのこお?」
夫を影ながら手助けする妻の働きっぷりのことだ。ミヨキチはいい奥さんになれるぞ。夫になる奴が羨ましいな。
ミ「……!」
ミヨキチは声にならない声をあげ、俺の方を見た様な気がする。
一瞬の事だった。ミヨキチが目を逸らした隙を狙ったかの如く、ラスボスは俺の後ろに回り込んだ。
つまり、俺は攻撃を食らってしまったんだ。
ミ「あぁ!!」
ミヨキチは今度こそ悲鳴をあげた。
その一撃で形勢逆転、一気にゲームオーバーを予想していた。
ミヨキチから俺の場所まではそこそこ離れており、助けに行くのも時間が掛かる。
しかも俺は初心者のミヨキチに回復薬を全て渡しており、自分で回復できない。絶望的だった。
しかし、俺は信じられない光景を目の当たりにした。
ミヨキチは俺の所まで駆け抜けてきた。ラスボスの攻撃を物ともせず。
それどころか四方八方から迫る攻撃を避け、あるいは撃墜していた。オールレンジ攻撃を全てよけるとは、あなたはニュータイプですか?
心の中で『そこっ!』とか『見える!』とか叫んでいるに違いない。
ミヨキチは確実に攻撃を跳ね除け、俺のダメージを回復させてくれた。
本当にこのゲーム初めてなのか?俺よりうまいぞ?
その後体制を持ち直し、クリアする事ができた。
いや、一時はビックリしたけど無事クリアできて良かったよ。流石ミヨキチだ。
「………さい」
ん?
ミ「…ごめんなさい…」
??…なぜ謝る?
ミ「ごめんなさい!私が気を取られた隙に怪我を負わせてしまって…危ない目に会わせて…」
ミヨキチは涙目だった。…いや、ゲームだからそんなに謝ることはない。真剣謝れても、こっちが困るぞ?
それにゲームオーバーになっても、それはそれで良い思い出だ。
ミ「ごめんなさい…」
ミヨキチはひたすら謝り続けていた。さて、どうしたもんか…。
…こうしよう。もう一回挑戦して、今度同じミスしたらジュース一本俺に奢ってくれ。
しなかったらオレが奢る。そんな条件で良いか?
ミ「え…?」
汚名を返上するチャンスだ。やるか?
ミ「…はい!やります!」
ミヨキチは力強く答えた。
俺たちはもう一回、つまりミヨキチのリベンジ(逆襲のミヨキチ?)プレイを楽しんだ。
因みに、ミヨキチが同じミスを二度とやるわけが無く、それどころか一回目で敵やトラップのパターンをほぼ把握していた。
むしろ俺が足手まといじゃないかというくらいほぼ完璧にクリアした。
…再三言うが、このゲーム、本当に初めてなのか…?
ミ「今日は本当に申し訳ありませんでした」
本日何度目か分からない謝罪をするミヨキチ。
そして俺も同じ数だけ気にするな、と言った。
ミ「また、遊びに来てもいいですか…?」
もちろん大歓迎だ。だが、もうミヨキチとのゲームで賭け事は止める事にする。俺の財布が持たないからな。
そう言うとミヨキチくすくす笑い出した。どうやら笑顔を取り戻してくれたようだ。
ミ「さようなら…」
そう言ってミヨキチは帰って行った。こちらを振り返り、何度も頭を下げながら。
シ「……ャ…」
シャミ(ry)、どうした?
シ「………」
ミヨキチが帰った後、俺は自分の部屋に戻り、くつろぐ事にした。ハルヒ(ry)はまだ寝ていた。
ハ「スゥ……スゥ……」
…はぁ、こうやって寝てるだけならハルヒも可愛いんだがな。俺はハルヒ(ry)の頭を撫でてやった。
ハ「……にゃ?」
うおっ、起こしたか。
ハルヒ(ry)は身を起こしたものの別に何をするわけでも無く、『にゃあ』と鳴いた。
…そうだ、ハルヒにして欲しいことがあったんだ。本人には言えないが、このハルヒ(ry)なら可能だ。チャンスは今しかない!
近くにシャミ(ry)がいないことを確認し、洗面所にある妹のゴム紐を一つ頂戴してきた。
そして部屋に戻り、ハルヒ(ry)の髪をゴム紐で束ねた。
ポニーテールである。ハルヒは髪が長くなる―大体肩甲骨辺りの長さか―と、定期的にカットしていた。
今は丁度肩甲骨辺りまで伸びている。カットする直前、髪の毛が一番長い時期だ。
あの閉鎖空間から無事帰還した日にしてきたポニーテールもなかなかだった。
だが今回はそれより数センチ長い分、より魅力的に見えた。…ロングの頃には劣るがな。
俺はしばし恍惚と眺めていた。
―似合ってるぞ…
…思わず声が出たかもしれない。その時。
ギィー
開いていたドアの隙間から、シャミ(ry)が入って来た!やばい!
俺はハルヒ(ry)のポニーテールを解き、ゴム紐を慌てて隠した。
シャミ(ry)の目線からは見えなかったはずだ。
内心の動揺を抑えつつ、俺は何事もなかったかのように座布団の上に座り、胡座をかいた。
シャミ(ry)が睨んでいる気がする。ミヨキチを泣かせた辺りから不機嫌になりつつあったからな。
それとも今のを見られたからか?
シャミ(ry)は俺の側まで来て俺を凝視していた。俺は素知らぬ顔で雑誌を読んでいる。
…もしかしたら季節外れの、一線の汗を見られたかもしれない。
睨み続けるのに飽きたのか、シャミ(ry)は俺の膝の上で丸くなった。
…見られてはなかったようだ。やれやれ。
俺はシャミ(ry)を軽く撫でてやった。尻尾の様子から、機嫌が良くなりつつある事が分かった。不機嫌オーラも消えている。
それを見ていたハルヒ(ry)も俺の側でまで来て甘えてきた。こっちも撫でてやった。
…一人と一匹が俺の膝の上で寝息を立てたのはそれから少し後の事だった…
※ハルシャミ保守 2日目(古泉編)につづく