橘・九曜と鉢合せ

何してやがる。
橘「あら、ご挨拶ね?私たちが道を歩いていたら駄目とでも?」
できればそうして欲しいな。
橘「ひっどーい!女の子に対してはもっと優しくするものよ!」
お前といい、佐々木と言い、都合のいい時は女の子なんだな。
橘「もう!それより、その佐々木さんなんだけど、もしかしてさっきまで一緒だった?」

一瞬嘘を吐こうかと思ったが、正直に答えた。

橘「やっぱり!佐々木さんたら、酷いわね!」
また佐々木に何か唆しているのか。俺としてはお前たちと一緒につるんで欲しくはないのだがな。
橘「私達だって、普通の友達として接しているわ。残念なことに、あなた程の信頼は得られてないけど」
そりゃご愁傷様。あいつに合わせるのは骨だぞ。お前たちよりも付き合いが長い俺が保証してやる。何ならコツを教えてやろうか?


橘「そうね。一緒にお昼ご飯でも食べながら教えてもらおうかしら?」
冗談だ。お前らに教える気はない。それにさっき食べたばっかだ。佐々木とな。
橘「何ですって!?そうゆうこと。わかったわ。それじゃ行きましょう」

おいお前は人の話を聞いていないのか?
橘「いいじゃない。奢るわよ」
さっきも佐々木に奢ってもらったからいい。

橘「ふーん。周防さん、そっちの手を持ってくれる?」
周「───あなたのとても──かかくて綺麗……
ちょっと待て!拉致だぞこれは!
橘「いいじゃない。かわいい女の子に挟まれて。両手に花よ」
朝比奈さんと長門ならそう呼称してやるが、お前たちの場合拉致だ!監禁だ!誘拐だ!実績あるしな!
橘「まあ、照れちゃってかわいい本当は嬉しいんでしょ?」
確かに女の子二人に手を繋いで貰うのは満更でもな……チガ~ウ!!
シャミ(ry)は俺の肩に乗って付いて来る。お前だけだ。俺の味方は。
シ「………
あの、爪立ってますよ?もしかして勘違いしてません



橘・周防と食事する事になったキョン

はああ、何でお前らと飯を一緒に食わねばならんのだ。
橘「佐々木さんとの付き合い方教えてくれるんでしょ?それに少し聞きたいことがあるからよ。あと私達ご飯まだだし」
俺は食べたばっかりだ
いや、もう諦めた。どうせ人の話を聞いて無いからな。で、どこに行くんだ?

周「タイ───料理店」
何と!?
周「イチ──推し───タイカレー
宇宙人は皆カレー好きだったのか?
橘「周防さんの推薦よ。私もまだ食べたことなかったし」

そういえば、あの生簀かねえ未来人野郎はどうした?
橘「茶番に付き合ってられっか!ですって。でも本音は周防さんから聞いたわ」
周「彼──は辛いのが───苦手…―甘い物──好き
ぷっ!それは良いことを聞いた。今度あった時はからかってやろう。

橘「佐々木さんも辛いのは苦手らしいわ。この前も人気のカレーショップに誘ったら『辛いのは苦手』って言われたわ。
 
  私は行きたかったから、甘口ならどう?って誘ったの。その店、甘口カレーの評判が高いのよ。
 
 でも『カレーは好みじゃない。甘口なら何とか食べられるがよほどのことがない限り胃の中に納めたくない』って一蹴されたわ。
 
 あ、ちなみに私はそこまで甘党じゃないわ。辛い食べ物にも興味あるからタイ料理に………

辛いのはダメだが、納豆とチーズでそれを克服できるというのか?げにをかしきものなり。ビバ!ネバネバ。
途中から俺は橘の話を聞き流し佐々木の嗜好を考察していた。
シ「 ………



タイ料理屋についた御一行

店はそれほど大きくないが、こざっぱりしている。因みにスタッフはみんなタイ人のようだ。
そのせいか、ペットについては寛大に対応してくれた。いや助かった。
実は俺もタイ料理は初めてだ。
興味本位でグリーンカレーとマンゴージュース2(一つはシャミ(ry))、タピオカ入ココナッツミルク2()を注文した。
さっきのカレーがまだ胃から動く気配はないが、橘の奢りと言うことだし、食い切れなくても俺に損はない。でも食い過ぎだな。こりゃ。

十数分後、料理が運ばれて来た。見た目は具沢山のスープである。ハーブの香りも良く、見た目辛そうには見えない。
それではいただきます。パクッ
うん、特に辛くはない。それどころかレモングラスのおかげでスーッとする……!?

『辛ー!!!』

俺と橘の声がハモった。こいつは参ったな。日本のカレーとは全然違う。
橘「こ、こんなに辛いとは思いませんでした
橘はイエローカレーを一口食べてその後進まない様だ。
周「辛──こん──なに───おいしい──のに?」
片や周防は生唐辛子が入ったレッドカレーをペースを落とさず食べている。化け物かこいつは。いや、化け物以上の存在だったな。

などと思いつつ、実は俺も辛さの後にあるレモングラスの清涼感が心地よく、つい口が進んでしまった。
あれだけ食べた後なのに。タイ料理恐るべし。遂には完食してしまった。汗は止まる気配が無いが。

橘「よかったら食べます?もう限界です」
橘は自分のカレーを俺に差し出していた。半分以上残っている。
味を見たいし、少しだけもらうぞ。
橘「ふふふっ、あーん」
橘は俺のスプーンを使い、橘のカレーを俺の口の前に持って来た。何の真似だ?
橘「いえ、ずっと機嫌が悪かったのでデートごっこしたら治るかな、と思って」
ふざけるな。自分で食う。俺は橘の皿を奪い、自ら口に運んだ。
橘「あっ、私のスプーン
ごはっ!しまった!失念してたがこのカレーは橘のカレーで、つまりスプーンも橘のだった!!
スマン、悪かった!
橘「別にいいですよ。気にしませんし
暑さによる汗と冷や汗を同時にかいてしまった。おかげで味がよく分からない。
俺のカレーよりは甘く感じたのは唐辛子が少ないからに違いない。ないったらない。
周「───ん」
周防お前もか!
周「お口──開けて──────ん」
勘弁してくれ

余談だが、シャミ(ry)はずっと俺の肩の上だ。爪は服を突き抜け、皮膚にまで達していた。
俺は辛さと痛みのデュエット、いや、さらに恥ずかしさと気まずさが加わったアンサンブルに耐えるはめになった



カレーは橘の皿に少し残ったが、橘は食べるのを諦め、全員食後のデザートとジュースの時間となった。
なお、シャミ(ry)は俺たちの様子を見ていたせいか、佐々木の時のように食べようとはしなかった。
タピオカ入りココナッツミルクは橘と周防に分けてやった。カレーをもらったからな。

何を勘違いしたのか、「優しいのね」とか「素敵───」とか言われた。
お前らに借りを作りたくないし、カレーを食べ過ぎてデザートなど食えん。それに元々橘の奢りだ。変な意味で受け取るな。

そんな姿をシャミ(ry)は物凄いジト目でこちらを凝視し、凍て付く波動を迸らせながらデザートを食べていた。
こいつが一番勘違いしている、間違ない。

橘「それで、佐々木さんとうまくつきあう方法は何?」
何のことだ?
橘「とぼけないでもらえる?教えてくれないと、奢りの約束解消するわよ?」
それでいい、と思ったのも束の間、ここは一品一品の値段が以外と高いことに気付いた。
デザートもジュースも二人分というのも失念していた。仕方ない、適当なことを教えて煙に撒くか。

判った、教えよう。あいつが良く分からない思考をしているのは分かっただろう
。意味の分からない問い掛けもしてくる。
そこで適当に相槌を打ってはダメなんだ。むしろ言い返すんだ。ツッケントンに。
佐々木は反論する筈だ。とことん言い争うんだ。
そして敢えてこっちが折れるんだ。さっきとは逆に持ち上げるんだ。
そして照れたように『べ、別にあなたの意見が正しいとは思ってないからね!』っていうんだ。
名付けて『ツンデレ口論』だ。
あいつはああ見えてツンデレ萌えなんだよ。わかったか?

橘「………

うーん、余りに嘘っぽかったか?
橘「素晴らしいわ!」
橘は俺の手をとって目をキラキラさせていた。
信じちゃったよ、おい。



橘「私、佐々木さんの機嫌を損なわない様にしてたから、その境地には達して無かったわ!流石『親友』ね!見直したわ!」
少し後ろめたい。自分で言うのも何だが、こんなに簡単に信じるとは
橘は手を一層握り締める。
同時にシャミ(ry)の爪も俺の皮膚を突き破ろうとしている。
もう少しで橘を騙し通せるので声には出さないがかなり痛い。やめてくれ。

橘「今度実践して見るわ。有難う。じゃあこちらも良い事を教えてあげるわ」
橘「今日、私達は昼まで佐々木さんと一緒だったの。
お昼ご飯を食べようと商店街を歩いていたら、いきなり予定を忘れてた、とか言って帰ちゃったのよ」
ん?佐々木は気儘に散歩してたとか言ってたが?
橘「それを言い出したのはコーヒー専門店の近くだったわ。佐々木さん、何かを見て思い出したというより、思い立ったみたい」
コーヒー専門店?まさか?
橘「何を見たのかしらね?そうそう、約束ってあなたとの約束だったのね?お昼ご飯を一緒にするという」
あ、いや
橘「でも佐々木さん、私たちの予定ですらきちんと覚えてるのに、『親友』のあなたとの予定を忘れるなんて、おかしわね」
………

橘「それが気になって少し尾行してたの。そうしたら佐々木さん、あなたとお連れの二人を、ジッと影で見ていたわ。
 
普段の佐々木さんから想像も出来ない位不安そうな顔で」
俺は佐々木に付けられ、佐々木はこいつらに付けられてたのか
橘「あなたが二人と分かれてから、タイミングを見て出て行ったみたい」
………

橘「そこで周防さんが付いてこないのに気付いて、尾行は中断したんだけど。そういえば、どこのお店に行ったの?」
ココイチだが
俺は言葉を漏らしていた。
橘「え?………あははっ、ふーん、へーぇ
橘は意味あり気な視線と声を発していた。何が言いたい?
橘「私がこの店にはいる前に言ったじゃない。佐々木さん、辛いものは苦手だって」
ああ、確かにあいつは甘口を食べてたぞ。
橘「ねぇ?わざと言ってる?それとも話を聞いて無かった?」
何のことだ?
橘「もういいわ。少し聞きたいんだけど、あなたココイチ好きでしょ?そしてそのことを佐々木さんにも言ったんじゃない?」
ああ、最近の一番お気に入りだ。佐々木にも同じ事を言った様な気がするがなんでわかるんだ?

橘「了解。すべて納得しました」
何をだ。
橘「今日は色々教えて貰ったし、楽しかったわ。今度は佐々木さんも一緒にこの店へ連れて来ましょう」
あいつは辛いもの苦手だから来ないんだろう?
橘「大丈夫。誘える方法がわかったから。賭けても良いわ」
大した自信だ。あんまり期待せずに待ってやる。ご馳走になった。それじゃあな。

帰ろうとした俺を引き止めるように橘は言った。

橘「そうそう、涼宮さんはお元気?」




ああ、元気すぎて困ってるがどうした?
橘「その後どう?何か進展はあった?」
後ろの猫が震えた。何のことだ?

橘「……私、最近ゴルフ始めたの。ゴルフって、ティーショットでかっ飛ばしても、どんなにグリーンに近づいても、アプローチショットが下手だとだめなの。逆に遠くてもアプローチがうまいとホールアウトするのが早いわ」
なぜいきなりゴルフの話だ?
橘「グリーン手前のバンカーから力任せに打つ人と、離れていてもフェアウェイから自然状況やスイングを計算して打つ人。どっちが有利かしらね?」
そんなことは知らん。ゴルフとハルヒがどう関係するのかわからんが、変な事企んでいるんじゃないだろうな?
俺だって抵抗するくらいはできる。変な真似は許さんぞ。

橘「あらあら、力任せのバンカーショットでOBだと思ったのに、突然のアゲインストね。おかげでグリーンに乗ったみたい。ナイスオンよ」
くそ、人の話を聞いちゃいねぇ。

橘「私はキャディになることにしたわ。佐々木さんの。私もプレーヤーをしてみたいけど、面白半分で参加したら怒られちゃうし、第一このトーナメントで競い合う自信はないわ。こちらもグリーンオンできるように作戦を練らなきゃ。また突風が来ると困るしね。そうゆうわけだから涼宮さんにせいぜい一人で頑張る様に伝えてね。」
いまいちよくわからんが、お前が佐々木を使って何かしでかそうって言うのか?なら俺がハルヒのキャディをしてお前の企みを止めてやる。
橘「あなたは立場上キャディになれないわ。だから涼宮さんは一人で挑む事になる。ゴルフはキャディがいないと苦しい戦いになるわ」
なら他の奴、古泉あたりに頼む。
橘「彼なら確かにキャディは務まるわ。でもあなたがちゃんと今日の会話を伝えられるならね」
簡単だ。
橘「そうかしら?じゃあ、あなたの役割は何?」

さっきの会話からすると、俺の発言は『アゲインスト』になったようだな。
お前の発言内容からすると自然災害、予期せぬアクシデントみたいだな。
俺はそれを起こす事ができる。つまり、俺がその事象の『鍵』になっている、ということだ。

橘「うーん。間違いじゃないけどその回答じゃ30点ね。良かった。こちらのアドバンテージは崩れないし、彼がこの会話を理解してもキャディになってくれないわ。もう少し点数が上がればキャディになってくれるわよ。100点満点を取るのは難しそうだけど」
ゴルフの話だと解りにくい。ヒントをくれないか?
橘「そんなに考え込まなくても大丈夫よ。悪巧みを考えている訳じゃないし。どっちが勝ってもあなたは損をしないわ」
俺は、ってことは他の奴はどうなんだ?
橘「他の人にも特に影響はないわ。」
何が目的なんだ?悪巧みじゃないって事は、わかった。
二人で俺をドッキリにハメる気だな?それをハルヒが止められるか、とか。そんな感じだろ?

橘「グリーンは霧で視界不良、おまけに気紛れな風が吹いているわ。芝生の手入れもしてないから、ホールがどこにあるかも分からない。最悪なコースね」
いい加減その喩えをやめてくれないか?
橘「これはあなた自身の問題よ。さっきの言葉は取り消すわ。あなたは少し悩んだ方がいい。そうしないと二人とも可愛そう。せめて、グリーンオンするまでピンいいえ、フラグは立ててよね。折る物じゃないわ。そう言う訳だから、ここいらでお暇させてもらうね」
周「──────


二人は去っていった。
何がそう言う訳だ。結局何がなんだかさっぱり解らなかった。
しかも悩んだ方がいいだと?ふざけるな!

シ「………ゃ」
シャミ(ry)は未だ俺の肩に乗っている。ただし爪は引っ込めてくれたようだった。

ハルシャミ保守 2日目(谷口・ミヨキチ編)につづく

 

 


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