エピローグ
ところでキミは一昨日の夕飯の献立を何一つ間違うことなく思い出せるだろうか?だからどうしたと思われるだろうが、それができない俺は本日とても困ることになってしまうのだ。思い出すものが献立ならよかったものの、そうではないのが厳しい。
翌日の休み時間、俺は古泉と中庭にいた。
「あなたのご要望通り、佐々木さんの自宅周辺には『機関』の者を数名配置しておきました」
相変わらず対応が早くて助かるな。
「いえいえ。こちらのためにもなりますし、お互い様ですよ」
俺はあの日、古泉に電話で部室の件と佐々木の護衛を頼んでいた。佐々木にはもう関わらせたくない。こんな電波なことは俺たちで片付けりゃいいんだ。SOS団団員としてな。
ちなみに、ハルヒは俺がジョン・スミスと名乗ったことはすっかり覚えていない様子だった。どうせ今から言っても信じはしないだろうし、俺も言う気はない。藪をつついて世界の物理法則を捻じ曲げるわけにはいかんしな。
もう一つ言っておくと、例のオーパーツはすっかりその光沢を失ってしまい、鶴屋さんも不思議そうに受け取っていた。そういえばあの人はどこまで知ってるんだろうな。
「さて」
俺は空き缶をゴミ箱に投げ入れ、軽く背中を伸ばした。
藤原の挙動や橘京子の言っていたことも戻ってきた朝倉も気になるが、それよりも眼前の問題だ。
四月の桜が舞う中、俺はすっかり忘れていた数学のテストに備えてハルヒに教えを乞うべく教室へ戻った。
完