『長門有希の出張』

SOS団一同は、休日を利用して、彼らの住む街を離れ、とある場所に来ていた。
電車を乗り継ぎ約4時間。本とカレーとスポーツ用品の街、東京・神田神保町。
地下鉄の駅から上がり、初めての街に足を踏み入れる一同。
少し歩いて街の様子が分かった頃、キョンは長門有希に訊ねた。
「どうだ、長門。この街の印象は。」
「……いんたれすてぃんぐ。」
「interestingて。そんなに興味深いのか?」
「正直、たまらない。」
有希は、漆黒の瞳を輝かせて言った。
「大量の本と、大量のカレー店。ここまでわたしの嗜好に適合する空間は、そうそうない。」


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*つづかない
*
*保守がてら、勝手に拾わせて貰ってみる
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『長門有希の出張2』

恐ろしいことに、数メートル歩く度に、あの長門が右にフラフラ左にフラフラとしている。
カレー屋と本屋の現れる頻度の多さに、どこに入ろうか迷ってしまうらしい。
ちなみに、勝手に後から付いてきた他の3人の反応はこうだ。

「ちょっとキョン、あれ見てよアレ! あそこのエッチいお店にあったビデオのタイトル『涼宮ハヒルの憂鬱』だって!
 アレなんなのよ? 名前とか見た目とかあたしに似てない?」
「自意識過剰だろ。AVデビューでもしたいのか」
「キョンくん。あそこにあるお店、服売っているみたいなんですけど……あれも本屋さんですか?」
「あそこは服屋さんですよ。何故か本とカレーとスポーツ用品の町で服を扱う希有なお店です。
 隣にバルチックカレーがあった過去を加味して許してあげてください」
「僕としては、途中にあったボードゲーム専門店に寄ってみたかったのですが、皆さん興味がないようで残念ですよ。
 なんなら、その服屋さんの前にある本屋さんでもいいですけれどもね」
「そんなマニアックな店には行かん。ちなみにあそこの本屋さんも品揃えがマニアックだから行かん」

ちなみに何故俺がこんなにこの町に詳しいのか……自分でもわからん。


「……ここ」

唐突に、長門が店に入ったので俺達も後に続く。

「ここは何の店だ? 何か読みたい本でもあったのか?」
「ギブソンのSGを試奏する」
「な、なんだそのギブソンのSGって……」

周囲を見渡して、俺はやっと理解した。
本とカレーとスポーツ用品の町、神保町。
そこに隣接して存在するのがギターと音楽と中古楽器の町、お茶の水だ。

「ギブソンのSGのスペシャル、ニュー・センチュリーを希望する」
「あー! このギターあたしが使ったやつ! ちょっと弾かせてくれるかしら?」
「え? え? ギターってそんなに種類あるんですか?」
「おやおや。僕はSGよりストラトやテレキャスターの音の方が好みなんですがね」

馴染んでいる4人を見て、俺は深く溜息をついた。
全くこいつらにはついていけない。
なぜなら、俺の好みのギターはファイアーバードだからだ。

「キョンって、意外と変態趣味ね」


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* つづかない
*
*じゃぁ勝手に続きを
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『長門有希の出張3』


「次はここ……」
と長門は楽器屋の斜向かいの建物へと俺達をいざなった。
おいここは大学だろ?勝手に入っていいのか?
「問題無い、ここの付属博物館は誰でもは入れる、しかも入場無料」
「東京の大学ってお洒落ですね」
「東京六大学ですからね、ここは」
で長門俺達はどこに行くんだ。
「ここ……」
「刑事博物館、面白そうね!」

「……世界各地から収集した犯罪に関わる資料を収蔵している」
「とくに拷問具のコレクションは圧巻、ですよね? 長門さん」
「……そう」

「わたし……拷問とかそういうのはちょっと……」
朝比奈さんこっちには考古学博物館がありますよ。
俺達はこっちにしませんか?
「ちょっとキョン! みくるちゃんと別行動だなんてどういうつもり、みんな一緒にこっちよ」

「この中がとげとげしたのってなんですかぁ~」
「……鋼鉄の処女いわゆる『アイアン・メイデン』、魔女裁判などで使用された拷問具」
「審問時に容疑者を中に閉じ込めて内蔵された針がささるという仕組みですよね、長門さん」
「……そう」

「ひ~っ、キョン君こわいです~」
 
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*つづかない、ちなみに刑事博物館のサイト 
*http://www.meiji.ac.jp/museum/
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『長門有希の出張4』

 

「次はこっち……」
「今度はどこなの有希」
「ちょっとだけ歩く」
そうか、じゃぁいこうぜ、さぁ朝比奈さんこっちだそうですよ。
「ちょっとキョン!」
「さぁさぁ涼宮さん参りましょう」

「ついた……」
ここは……神社か?
「神社なの? 随分平凡ね。神社だったらあたし達の住んでる所にもあるじゃない、もうちょっと面白そうなトコないのかしら。」
ハルヒよ罰当たりなことをいうな。
「神社ですか~、巫女さんの衣装持ってきてないです~」
朝比奈さん、あなたはコスプレがデフォなんでしょうか?
確かに本職の巫女さんより似合うのはわかりますが……。
「ここは神田明神、通称明神様、江戸つまり東京の総鎮守とされ商売繁盛、家内安全、縁結びに効果があるとか」
「え、縁結び! ……そ、そうね全国制覇を目指すあたし達SOS団としては東京制覇は欠かせないから東京の総鎮守なら是非ともお参りが必要ね、いくわよキョン!」
お、おい引っ張るなハルヒ。一体どうしたんだか…。

「さぁみんなお参りするわよ!」
俺達はそれぞれに賽銭を奉納し参拝した、ハルヒは随分長いこと熱心に拝んでいるが一体なにを祈願しているのだろうか?

あぁ……ハルヒ一体何を長い間祈ってたんだ?
「な、なんだっていいでしょ…、商売繁盛に家内安全と……そ、それと全国制覇よ!」
随分物騒な願いだな、それとなハルヒ。
「なによ……」
いい加減に腕を離してくれないか? さっきから腕が痛いんだ。
「!……」

 

「ここ神田明神は時代劇『銭形平次』の舞台としても有名です、平次が名乗る『明神下の平次』の明神はここをさしています、まぁもっとも平次は架空の人物ですが」
あぁそうだな……、って古泉随分詳しいが事前に長門にコースを聞いてたのか?
「いえ違います、一応一通りの下調べをしておいただけです、そうそうこちらに確か銭形平次の石碑がある筈ですよ」
これがそうか、確かに銭形平次と彫ってあるな、台座が寛永通宝なんだな。
「隣にある小さいのが八五郎の碑だそうです、TVでは三波豊和などが演じてましたね」
あぁそれは北大路欣也版だな、でも平次といったらやっぱり大川橋蔵だろ?
あの舟木一夫の主題歌がいいしな。

「これ……」
んっどうした長門…これは? いわゆる顔出しパネル、観光地などで顔だけ出して写真をとるアレだ。正式な名称は知らないがここにあるのは平次一家のパネルらしい。
「あなたと一緒に撮影する……」
これか? 撮影用の穴は二つだから俺と長門だな。まぁ滅多に自己主張しない長門がこれをとりたいってンなら付き合うぞ。
「もうこんな子供だましがとりたいだなんて有希も物好きね」
おいハルヒ、長門がとりたいっていうんだからいいじゃないか。

ってこんな感じか? 俺が平次でいいんだよな?
「そうあなたが平次親分…私はその恋女房のお静…」
「ちょっと有希!」
「早くシャッターを……」
「チーズ!です」
朝比奈さんありがとうございます。
「自信がないのでちゃんと撮れてるかどうか確認してくださいね(ハート」
どれ……大丈夫みたいですよ朝比奈さん、ほら長門こんな感じだ。
「……そう」
心なしか長門の頬が緩んでいる気がするのは気のせいだろうか?
長門は時代劇ファンなのか?
色々な本を読み漁ってるこいつのことだから野村胡堂くらいは読んでいても不思議ではないが……
もっとも平次よりも半七の方が江戸の雰囲気がでているのでそっちの方が俺は好きだが……
今度長門に半七を薦めてみようか?

 

っん、なんだハルヒ?
「あ、あたしもとってみようかしら、せっかくだし……その……」
子供だましじゃ無かったのか、まぁいいけどな。
じゃぁかわるぞ、団長様だから親分の平次でいいんだよな?
朝比奈さんも一緒…いてっ! 何すんだハルヒ?
「女のあたしが平次だなんて頭わいてんじゃないの? あたしはお静よ。ち、丁度キョンがそこにいるんだし……面倒だからあんたが平次でいいわよ。さぁみくるちゃん撮ってちょうだい!」
「……チ、チーズですぅ」
やれやれだな、団長様の気まぐれにも困ったもんだ。
「みくるちゃん、しっかり撮れてる?」
「僕が確認致しましょう…、大丈夫ですね、とてもお似合いに撮れてますよ」
「……」
んっ長門どうした? 心無しか不機嫌オーラが出てるような出てないような……。
「……なんでもない」

「古泉君写真みせて…、まぁ中々良く撮れてるじゃない。次へ行きましょ次へ」
「あの……」
なんですか朝比奈さん?
「あたしも……写真撮って下さい!」
じゃ撮りますか、俺が平次…いてっ!
「古泉君もまだ撮ってないでしょ、アンタじゃなくて古泉君が平次でいいじゃない。」
そっそうかハルヒ、ほら古泉かわるぞ。
「残念です、あなたが平次で僕が恋女房」
古泉! 顔が近すぎるぞ!
「ずるいです涼宮さん……」
「みくるちゃん、なんか言った?」
「な、なんでもないですぅ」
「さぁいくわよ、みくるちゃんも古泉君も笑って頂戴。チーズ!」
どれどれ、あぁ良くとれてますよ朝比奈さん、悔しいが古泉も男前だしな。
「そうね、さぁ次へ行きましょ!」

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*つづかない?、ちなみに神田明神のサイト 
*http://www.kandamyoujin.or.jp/
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 「ねぇ有希、次はどこなの?」
「次は古泉一樹に任せている」
んっ、次は古泉お前の案内なのか?
「古泉君、次はどこ? 期待してるわよ」
「古泉君頑張ってください」
俺は別に構わないが下手なところだとハルヒがヘソを曲げてまた閉鎖空間だぞ、東京まできてそんなことだなんてとんだ間抜けだからな。

「…ご期待に沿えますかどうか…、この明神さまの前の通りは国道17号線、昔の五街道の一つ中仙道です」
ほぉこれが中仙道か……。
「こちらの南東が秋葉原を経て起点である日本橋、一方北西へ向かうと本郷を経て江戸四宿の一つ板橋となります」
本郷……すると古泉、こっちへ進むと『かねやす』があるのか?
「流石は貴方ですね、アキバよりも本郷しかも『かねやす』に反応するとは……」
おいっ顔が近いぞ、古泉。
「ちょっとちょっとキョンに古泉君! 男二人だけで何通じあってるのよ、あたしはいいけどみくるちゃんや有希が置いてけぼりじゃない、ちゃんと説明しなさい。」

 「……本郷も かねやすまでは 江戸の内」

おう長門よく知ってるな、そのかねやすだよ、流石は長門だ。
「あっあたしだって…そ、そのくらいは…知ってるわよ…」
「えー、知らないのわたしだけですか、なんだか悲しいです…」
あぁ朝比奈さん別に『かねやす』のことは知らなくても日常生活に支障はないですよ。
そうだハルヒお前が『かねやす』のことを説明してくれ。しかしお前がそんなことまで知ってるとは驚きだな。
「!…あ、あたしが説明しても…その…団長としては部下に花を持たせて…古泉君は案内係だし…その・・・」
なんだハルヒ、随分……おまえホントは知らないんじゃ……。
「ごちゃごちゃうるさいわねキョン、古泉君さっさ説明して」
「『かねやす』は江戸時代から続く老舗の小間物屋です、本郷三丁目に今も健在でその繁盛ぶりは先ほど長門さんがよまれた川柳にも謳われています」
「みくるちゃん、そういうことよわかった?」
「コマモノ屋さん? ですか…」
あぁ朝比奈さん、小間物屋というのは雑貨屋さんのことですよ、化粧品や櫛、簪などの小物類が商品です。
「ちなみに『かねやす』は乳香散という歯磨き粉で有名でしたね」

ちょっと歩いたがここが『かねやす』か。なるほど案内看板にさっきの川柳も書いてあるぞ。
「見たところ普通の洋品店ね」
「いえいえ涼宮さん、こう見えても創業は享保年間つまり享保の改革で有名な八代将軍吉宗の時代です。300年弱の歴史を誇る老舗ですよ」
「そうなの、でも建物は普通ね、老舗っていうからもっと古い感じかと……」
「まぁまぁ、せっかくきたんですからお店に入りましょう」
「まぁいいわ、遅刻の罰ゲームとしてここの買い物はキョンの負担ね」
おっおい、只でさえ乏しい俺の財布が!
「キョン君、コマモノ屋さん楽しみですぅ」
……やれやれ…。

おっ長門どうしたなにか珍しいものでもあったか?
「……どっち?」
あぁハンカチか……そうだな……長門には……この白いのがいいんじゃないかな?
「そう……」
「あら有希、もう決まったの?」
「彼が選んでくれた…」
ハルヒお前もこの色が長門には似合うと思うだろ?
「!……、そ、そうね有希には……そ、そうだキョンあたしはどれがいいかしら?」
「あ? どうせどれ選んでも文句いうくせに……ほらこの黄色のにしとけ」
「あ、ありがと」
なんだかやけに素直だな……、ん、長門どうした?
「……なんでも……ない」

「さぁみんな買い物も決まったしお会計しましょう、キョンお財布よ」
「ふぇぇ待ってください、わたしまだ決めてません」
「早くしなさい、みくるちゃん」
「キョン君、どっちが…」
えぇと朝比奈さんなら……このピンクのが…。
「あぁもううるさいわね、あたしが決めてあげるわ、ほらみくるちゃんはこの黒いので決まりね。さっさとお会計して貰うわよ」
「……いつもずるいです……」
「僕は何色が……」
古泉! 顔が近いぞ。

 

「キョン君ありがとうです」
「……ありがとう」
いやいつも色々世話になってますし、気にしないでください。
「買い物も終わったし。さぁ、次へいくわよ」

 

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*つづかない?、『かねやす』についてはこちら
*http://www.city.bunkyo.lg.jp/_4582.html

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最終更新:2020年10月21日 11:39