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「それにしても、赤ちゃんかわいかったですね。キョン君そっくりなんだもの」

「まったくです。幼いながらも達観したようなあの目つきなど、特にね」

「俺はよくわからないな……。長門はどう思う?」

スーツを着込んだ長門は、高速でキーボードを叩きながら、

「ユニーク」

「ユニークって……」

「……」

花嫁を強奪したあの日から時は流れ、先日我が家には新たな家族が増えた。

ちなみに俺とハルヒは正式に結婚して夫婦となり、やかましさの絶えることない
生活を送っている。

鶴屋さんが間に入って相手方さんと交渉を進めてくれたおかげで、思いのほか
あっさりと離婚話が進んだんだ。

鶴屋さん曰く、

「人間、話し合えばわかり合えるものなのさっ!」

と言っていたが、詳しくは聞かないほうがいいと思って聞いていない。

裕福とはいえないが、満足できる今の生活があるだけで十分さ。

話を戻そう。

古泉が言うように、おかしなことに産まれてきた子供は俺にそっくりだったんだ。

「お医者さんが勘違い、誤診したんじゃないですか?」

という朝比奈さんの意見もありえると思ったし、何より俺自身が全てを
はっきりさせたいと思ったからハルヒに訊いたんだ。

そしたら、あいつあっけらかんと言いやがった。

「勘違いだったみたいね」

聞けば、同窓会の日に聞いたできちゃった婚ってのは、少々生理がきてなかった
だけらしい。

ちゃんと医者に行ったわけでもなく、その時点で全部ハルヒの思い込み
だったそうだ。

それなのにハルヒの奴は、何の確証も無いくせに相手方に迫ったそうだ。

責任取れ、ってな。

あの旦那さんは結構本気でハルヒと付き合ってたらしく、子供が本当にできたか
どうかの確認もせずに結婚を決めたそうだ。

でも、実際にはできてなかったわけで。

その直後の同窓会で、まあ、俺とあんなことになり、そこでできちゃった、と。

俺からすれば結果的に嬉しい結末だが、なんだかなぁ。

事の顛末を会社で話したところ、

「涼宮さんらしいですね」

たった一言で古泉に納得されてしまった。

「まあな」

今は昼休み。

古泉と向かい合って、名前も知らないボードゲームに興じている。

もちろん俺が圧倒的優勢だ。

「涼宮さんの力が以前に比べて薄れているとはいえ、その力が完全に消えた
わけではありません。今のこの現実も、もしかすると、涼宮さんが望んだゆえの
ものかもしれませんね」

「……そうだな」

現実を捻じ曲げてまでってのはズルのような気もするが、ハルヒが俺を望んで
くれるというのは単純に嬉しい。

結局のところ、今という現実が全てだ。

素直に喜ぶことにするよ。

「もっとも、そのおかげで僕もこうしてみなさんと共に同じ時間を過ごすことが
できるわけですしね。これでもあなたには感謝しているのですよ」

「お前にそんなこと言われてもな……」

古泉の恥ずかしさ満点のセリフに辟易していると、メイド姿の朝比奈さんが
微笑みながら言う。

初めは「この年になって着れない」と拒んでいたんだが、ハルヒに押し切られて
着るハメになり、それ以降はずっと仕事中このお姿である。

今ではノリノリだ。

「長門さんも、口にはしませんけど喜んでるんですよ」

「長門がですか?」

「ええ。長門さんが今作ってるゲーム、幼児用の遊んで学ぶゲームなんですって。タイトルは『三歳から学ぶ相対性理論』」

「そんな無茶苦茶な……」

「……」

「本気かよ」という意味を十二分に込めた眼差しを長門に向けるが、
長門の視線はモニターに固定されたままだ。

その瞬間、

「お待たせ!」

ここはオフィスとは名ばかりの長門の家の隣室。

その玄関が勢いよく開き、俺の嫁であり、SOS団団長であるハルヒが現れた。

「お前、家にいないでいいのかよ……」

産まれて間もない我が子をおいて会社に来るバカがどこにいる。

「バカがいるとしたらそれはあんたね。ほら、ちゃんと連れてきてるんだから」

うわ、マジだ。

ちゃんと背中におぶってやがる。

「それに、団長たるあたしがいないとみんなやる気がでないでしょ」

そう。

俺たち五人は今再びこうして共に同じ時間を過ごしている。

『偶然』納得のいくゲームを開発した長門が一人で立ち上げたゲーム会社に

『偶然』流通及び宣伝経路を確保できる古泉が雇われ、さらに『偶然』

(学校の小さなサークル規模とはいえ)マスコットキャラクター経験のある
朝比奈さんを対外要因として雇い入れた結果、長門のゲームは大ヒットを
記録した。

その資金を元手に、事業拡大のため求人を出そうとしていたところで『偶然』

職を探していた俺たちに声をかけたんだとよ。

どこまでが『偶然』なんだか。

「別にいいじゃないですか。あたしも、こうしてみなさんと毎日を過ごせて、
とっても楽しいですよ」

どれだけ年を重ねようと朝比奈さんの素敵な笑顔は健在だ。

俺も朝比奈さんのエンジェルスマイルを毎日拝見できてとても気分がいいです。

「さあ、今日も張り切っていきましょ!三人はいつものようにね。キョンは
あたしと新作の売り込みに行くわよ!」

我が子を朝比奈さんに預けるなり俺に命令するハルヒ。

「またかよ……」

あんまり外回りって好きじゃないんだよな。

それに、ぶっちゃけお前の荷物持ちじゃねえか。

「何よその顔、不満そうね。仕事を兼ねているとはいえあたしとデートできる
のよ?もっと嬉しそうにしなさい。営業はスマイルが命なのよ。笑って
みなさいよ、ほら」

「こ、こうか?」

ハルヒに言われるまま無理やり唇の端を上げてみる。

きっとぎこちない笑顔だったろうな。

「……あんたねぇ、ふざけてるの?」

「そんなつもりはないんだがな」

人には向き不向きってのがあるんだよ。

俺はお前のサポートに徹するんだし、そこまで気にしなくてもいいだろ。

だが、ハルヒは納得しない。

「いい?有希のゲームがどれだけ売れるかはあたしたちの営業にかかってるの。
本物のスマイルってのはね、こうよ!」

そう言うなり相好を崩す。

「今日から一日一時間、鏡の前で練習しなさいよね。さあ行くわよ、キョン。
グズグズしないの!資料も忘れないようにね」

「へいへい……」

まったく人使いの荒い奴だ。

毎日そう思わされるんだが、ハルヒが見せる笑顔、あれのせいで不思議と
毎日頑張れるんだよな。

あれは、俺があいつに取り返したものだと信じている。

もう一年近く前、何もせずにグズグズしていたら、俺も、ハルヒも、
どんな『今』を歩んでいたんだろうな。

少なくとも、今の俺は後悔なんてしていない。

たとえうまくいかなかったとしても、それなりに納得はできたと思う。

一番怖いのは、何もしないで心にモヤモヤを抱えたまま生きている自分を
想像することだ。

今考えると怖くてたまらない。

そんなとき、ハルヒはいつも俺を励ましてくれる。

極上の笑顔でな。

その笑顔は──

「何やってんの!?おいてくわよ!」

「わかってるよ!ちょっと待ってろ」

 

 

 

 

あの頃のように、輝いているんだ。

 

 

 

 

おしまい

 

 

元ネタ「涼宮ハルヒの本当に憂鬱」

Wikiに掲載れていなかったようなので原文を引用させていただいた

ID:Iwod9cySO氏に最大の感謝と謝罪を申し上げます。

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