出席者が全員そろったところで、私は生徒会のメンバーに思考拘束をかけた。とりあえず支障となるのは、会長と会計。この二人の発言を封じる。
 
「おやおや、随分と手荒ですね、長門さん」
 
 思考リンクを通じて、喜緑江美里が話しかけてきた。
 私も思考リンクで返答する。
 
「あなたも、各クラブに代表に対して同じことをしている」
「私は争い事は好みではないのです」
 
「文芸部に対する充分な予算分配を要求する。そちらの原案どおりの金額では不足」
「我々の基本的な任務は保全と観測ですよ。不干渉原則に基づき、我々は不必要な干渉を禁じられています」
「SOS団の存在は、涼宮ハルヒにとって重要なもの。財源不足でその活動に障害が生ずれば、我々の基本的な任務にも支障が出る」
「一理あることは認めましょう。そちらの要求額は?」
 
 私は、要求額と積算根拠のデータを彼女に送信した。
 
「過大要求ではありませんか? 不干渉原則からすれば、他のクラブに影響が出るような要求額は認められません」
「予算交渉では最初は過大に要求するものだと、本に書いてあった」
「そうですか。まずは、コスプレ代は全額却下です。これは、涼宮ハルヒの趣味の領域。自ら出費してこそ、満足感が得られるものではありませんか?」
「否定はしない」
「残る中で、主要な部分を占めるのはお茶代ですね。昨年度消費量をもとに積算したのはよろしいですが、単価がいささか高すぎます。高校生の身分で高級茶葉は贅沢に過ぎるというものです。
日本国の一般家庭で消費されている銘柄の平均価格をもとに単価を設定しなおします。超過部分はこれまでどおり朝比奈みくるが負担するということでよろしいですね?」
「了解した」
「その他の雑費を加算した上で、他のクラブとの均衡も考慮して、90%査定が妥当な線でしょう」
「95%を要求する」
「92%で手を打ちましょう」
「……了解した」
「では、この結論に沿って、情報操作を行なうことに致しましょう」
 
 情報操作開始。
 予算分配会議は、穏便に進行し何一つ荒れることなく終了したこととされた。
 
終わり。

 

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最終更新:2007年06月03日 11:40