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昼休み、俺は昼食を食べ終えた後、する事もなかったので中庭の木の下で眠る事にした。
去年の文化祭の後、ハルヒと語り合った場所だ。
 
しばらくして俺は体が宙に浮く感覚を覚えて目を覚ました。
俺が目を開けるとそこには長門の顔があった。長門は真っ直ぐに俺の目を見つめている。
長門、可愛いな。そのままキスしてくれないか?
 
待て待て。なぜ長門は俺を抱き上げているんだ?
…抱き上げる?俺は男だぞ。身長だって長門より高いはずだ。いくら長門でも俺を抱き上げる事などできるのだろうか?そもそも長門が俺を抱き上げる理由もわからん。無意味にそんな事をするとは思えないしな。
「ねこ」
長門は言った。
シャミセンがどうかしたのか?これといってかわった所はないぞ。
しかし、いつまでも長門と見つめ合ってるわけにはいかない。このままでは石化しかねん。
俺は離してもらうために言葉を発した。
 
「にゃあ」
…どうした?俺は何を言っているんだ?俺はこんな事を言うような男ではなかったはずだ。
古泉なら言うかもしれんがな。
 
などと考えている場合ではない。どういう事だ?何度話そうとしても「にゃあ」としか話せないじゃないか。
誰かこの状況を説明してくれ。
とりあえず自分の姿を見てみるとしよう。
下を向く。
…白かった。というか猫だった。俺はいつ猫になっちまったんだ?こんな事はマンガの世界だけの話ではないのか?
なぁハルヒ。これもお前が望んだ事だったのか?勘弁してくれ。
 
そう考えていると長門は俺を抱き締めて文芸部室へ向かった。
温かいな。長門。
 
背中に柔らかい感触がぁ…
俺はなんとも言えない感触に朦朧としていると、長門は椅子に座って俺を膝に乗せた。
長門は膝の上の俺を見つめながら頭や喉を撫でてくれている。
 
いかん。ずっとこのまま長門と一緒にいたい気もするが、そういうわけにもいかない。長門にならなにわかるかも知れない。
 
俺は長門の膝に傷をつけないように引っ掻く仕草をした。
「…どうかした?」
「にゃあ」
にゃあとしか言えない自分を呪いたい。
しばらくどうやって伝えようかと考えていたが、頭を撫でられているととても気持ち良くなってしまい眠ってしまった。
長門の膝で。これは猫の習性なんだろうな。
 
どれくらい寝ていただろうか。聞き覚えのある声を聞き目を覚ました。
 
「有希、その猫私が飼うわ!良いわよね?」
俺が長門の膝で寝るという至高の一時を味わっているのになんなんだ?ハルヒ。その猫とは俺の事か?
 
時計を見ると既に放課後になっていた。どうやら長門は膝の上で寝ている俺を起こす事ができなかっようだ。すまん。
 
ハルヒの言葉を聞いて長門は無言で頷く。
「じゃあ今日は解散!必要な物を買わなくちゃいけないから!」
長門の部屋で動物を飼えないのはシャミセンの時に知っていだが、よりにもよってハルヒに飼われる事になるとは…
朝比奈さんに飼ってもらえればずっと猫でいる事を選択するのだが。
どうにかならないか?学校から帰ったハルヒの愚痴を毎日聞き続ける気はないぞ。それに人間にも戻りたい。
 
「大丈夫。安心して」
俺が助けを求めるように長門を見つめていると長門は言った。大丈夫とはどういう事だ?もしかして俺が俺である事を知っていたのか?そういうば情報なんとか素子が憑いたルソーを見るような目で俺を見ていた気がする。
お前が安心しろと言うなら安心だ。
 
ハルヒは長門から強引に俺を引き剥がした。
「ニャ!ニャー!」
俺は悲鳴を上げて長門に助けを求めた。長門、助けてくれ!このさい古泉でもかまわん!
 
抵抗もむなしく俺はハルヒに連れられて文芸部室を後にした。
扉が閉められる前に古泉が笑顔でこちらを眺めていた。許さん。子孫三代目まで呪ってやる!
 
ハルヒは俺を抱えて家に向かう。ハルヒもなかなか温かい。しかし長門に比べて抱き方が雑なのはどういう事だ?
 
しばらくしてハルヒの家に到着して、ハルヒの部屋に連れて来られた。
綺麗な部屋だな。ゴミなんか落ちているはずも無く、ホコリすら落ちていなかった。
 
「今からあんたに必要な物を買って来るから適当に待ってなさい!」
そういってハルヒは部屋を出て行った。
俺はする事もなく、部屋を歩き回っていた。その時ベッドが目について飛び乗った。
猫の体とはなかなか良いものだな、とても軽く感じる。人間の体とは運動するのには向かないんだな。
 
しかし、ハルヒがいつも寝ているベッドを毛だらけにしてしまうのは少々気が引ける、ベッドで寝るのは諦めるとしよう。
というか何故俺は寝る場所を探しているんだ?猫とは睡眠欲が強いんだな。
しかし今の俺は猫だ。猫らしく生きよう。長門が安心しろと言うのだからなんとかしてくれるのだろう。
 
その思いながらうろついていると良い場所を発見した。
勉強机と共にある椅子だ。そういえばシャミセンもよくそこで寝ていた気がする。俺もそこで寝るとしよう。ところでハルヒは俺にどんな呼び名をくれるのだろうか?
そんな事を考えつつ眠りに就いた。長門の膝が恋しいな。
 
「…さい!起きなさいよ!あんたのためにいろいろ買ってきてあげたんだからいつまでも寝てるんじゃないわよ!」
長門は起こさないで撫でてくれていたというのに。
長門の優しさを思い出しながら俺は不機嫌そうに顔をあげた。
 
ハルヒは猫用のミルク、キャットフードやタオルなど必要な物を買ってきてくれていた。誰に聞いたんだ?古泉か?
 
「お腹が減ったら言いなさい。とりあえず今はミルクを用意してあげるわ」
猫用のミルクでいいのか?猫であるとはいえ、元は人間だ。少々抵抗がある。しかし猫は牛乳を飲むと腹を壊してしまうからな。とりあえず飲むとしよう。
 
なかなか美味い。さすが猫用ミルクだな。猫の味覚にピッタリだ。
ミルクをペロペロ飲んでいるとハルヒが話かけてきた。
「あんた、名前はなんて言うの?」
さぁな。人は俺をキョンと呼ぶ。
しかし伝える事はできないので、視線をハルヒから再びミルクに戻す事にする。
 
「冷たいわね」
ハルヒが何か言っているが無視だ。シャミセンに話かけても何も反応してくれないからな。これが猫らしい反応なのだろう。
 
「あんた、キョンに似てるわねぇ…今日からあんたの名前はキョン!わかったわね!?」
俺は驚いてハルヒの顔を見た。本当は俺の正体知ってるんじゃないのか?
とりあえず返事をしてやる。
 
俺がミルクを飲み干すと、ハルヒが声をかけてきた。
「キョン!あなた少し汚れてるわね。一緒にお風呂入りましょう!」
 
ハルヒに抱えられるて風呂場へやって来た。一緒にお風呂か?は、裸が…!
と思った次の瞬間、とても怖くなった。
濡れるのなんかごめんだ!風呂なんか絶対に入りたくない。
 
猫は自分の体を舐めるグルーミングと言う行動で体を綺麗にしているので、本来風呂に入る必要はないのだ。
朝比奈さんとお風呂なら我慢できるのだが…
 
俺は全力で抵抗した。
「いたたたたっ!痛い痛い!痛いってば!暴れないで!」
「ニャー!」
「ちょっと!もう!キョン!いい加減にしなさい!下っ端なんだからおとなしくしなさい!」
鬼の形相をしたハルヒが俺を睨み付けていた。
観念しよう。これ以上抵抗したら殺されてしまう。
長門…助けてくれ…
 
もちろん長門が来てくれるはずもなく、俺はハルヒによって風呂に入れられる事になった。
 
もちろんハルヒは服を着ている。いろいろ想像していただろう諸君!済まない。もちろん謝って許してもらおうとは思っていない。かといってサービスは無いが…
 
ハルヒは優しく俺を洗ってくれている。
濡れるのに抵抗はあったが、これがなかなか気持ちよかった。動物には優しいんだな、ハルヒ。
 
ハルヒが服を着ていたのを残念に思いながら体を拭かれている。タオルは柔らかくてとても気持ち良かった。人間に戻れたらシャミセンも洗ってやるとしよう。
ドライヤーに不快感を覚えながらそんな事を考えていた。
 
「乾いたわ。フカフカね!気持ち良いわ!」
ハルヒが頬ずりしながら言った。ハルヒ、激しいスキンシップはやめてくれないか?いや、今すぐやめなくともいいが…
「あたしはこのままお風呂にはいるわ!あんたは部屋に戻ってなさい!」
一瞬出て行こうかと思ったが、良いことを思い付いた。理解していないふりをしてその場に居座ってやろう。
 
「なにやってるの?早く出て行って」
「にゃあ」
「このエロキョン!さっさと出て行きなさい!」
放り出されてしまった。猫になら見られても気にしないのではないかと思っていたが、作戦は失敗に終わった。大佐!申し訳ありません!
 
長門の液体窒素よりも冷たい視線を想像しつつハルヒの部屋へと戻る。しかしドアは閉じられており、入る事ができない。ドアノブに手が届くはずもなく、ハルヒが戻ってくるのを廊下で待つ事になる。
腹が減ってきたぞ、ハルヒ。
今ごろ家族はどうしているのだろうか?
長門か古泉がなんとかしてくれていると思うし、心配する必要はないと思うが。
 
少し寒くなってきた頃にハルヒが戻ってきた。
「あら、ドア開いてなかったの?」
ハルヒに抱き締められて部屋に入った。風呂上がりのハルヒはとても温かかった。ずっとこのままで居たい。
 
もう少し抱いていてほしかったが下ろされてしまった。とりあえず俺はベッドに座るハルヒの隣に行く事にする。
 
ベッドに飛び乗った俺にハルヒが話かけてきた。
「あんたの名前の事だけどね、キョンってやつがいるのよ」
ああ。よぉく知ってる。ごく普通の一般人、特別なプロフィールはない。なんの変哲もない高校生だ。
 
そんな事より膝に乗せてくれないのか?長門は乗せてくれたぞ。
まぁいい、自分から膝に乗ることにしよう。
膝の乗った俺を撫でながらハルヒは続けた。
「そのキョンってやつはね。あ、その前にSOS団の事から話さなきゃね」
それも知ってる。宇宙人と未来人と超能力者と変な能力を持ったやつの集まりだ。それと一般人が一人な。
「でね、そのキョンって人は…」
ハルヒは突然黙ってしまった。悪いが膝の上で撫でられては起きている自信がない。すまないな。
 
しばらくしてハルヒに起こされた。いつの間にか俺はベッドに寝ており、ハルヒはパジャマになっていた。
くそっ!なんで寝ちまったんだ!
…これってデジャヴか?
 
「キョンご飯食べてないわよね?ご飯用意してあげたから食べなさい」
キャットフードと水が用意されていた。
キャットフードか?食って大丈夫なのか?しかし空腹には勝てずにキャットフードを口にした。…美味い。
俺は本当に猫なんだなと思った瞬間だった。
「ふふん。美味しい?たくさん食べて良いわよ!」
ハルヒはそう言っているが、量が多かったので残す事にする。
「あら、もういいの?小食なのね」
ハルヒ、人間から見たら少なく見えるかもしれないがな、猫から見たら多すぎるぞ。
 
ハルヒは誰かに電話をかけた。
そういえば明日は土曜日だ。市内探索の集合でもかけているんだろう。
俺に電話したらどうすりゃいいんだ?
 
「あ、有希?部活の時に言い忘れたけど明日9時に駅前集合ね!じゃあ!」
長門の返事を聞かずに切りやがった。ずっとこうだったのか?長門は気にしてないと思うが。
「みくるちゃん!明日9時に駅前集合。わかったわね?遅刻しちゃ駄目よ」
電話の向こうから微かに朝比奈さんの声が聴こえてきた。朝比奈さん、可愛いですね。
「あ、古泉くん?明日9時に駅前集合よ!…キョンに?まだ電話してないわよ?……そうキョンは来れないのね?わかったわ。じゃ!」
古泉がなんとかしてくれたようだ。ナイス!
「キョンはなにやってるのかしら。月曜日に会ったら聞き出してやるわ!…行く意味無いじゃないの…」
 
「まぁいいわ、今日は寝ましょう!」
ハルヒはそう言うと電気を消した。さすが猫だ。暗くてもまわりが見える。
とりあえず俺は再び椅子で寝る事にする。
寝てばっかりだな、俺。
椅子に飛び乗ったところでハルヒに抱き上げられた。
「なにやってるの?キョン。一緒に寝ましょう!」
なんだって?ハルヒと俺が一緒に寝るのか?ハルヒは何を考えてやがる!?
 
俺が猫である事を思い出した時には既にハルヒの隣に寝かされていた。ハルヒと俺の顔はとても近い位置にある。それはしょうがない。同じ枕を使っているのだから。
 
「キョン、あんたあったかいわね。気持ちいいわ」
ハルヒの髪はとても良い香りがした。
ハルヒ、お前は猫と寝ているんだろうがな、俺はハルヒと寝ているんだぞ?あんまりすりすりしないでくれないか?緊張して眠れん。
 
俺がそっぽを向いているとハルヒは寝てしまったようだ。寝付き良いんだな。
ハルヒの寝顔はとても可愛かった。ずっとこの顔を眺めていたい。
気がつくと俺も眠っていた。
 
次の日、目を覚ますとハルヒは居なかった。市内探索に行ったようだ。
猫である俺の話を聞いてもつまらないだろうからな。ハルヒが帰って来るまで時間をすすめるとしよう。
 
20:00
ハルヒが帰ってきた。
「ただいま!寂しいかったでしょう?」
そういってハルヒは俺を撫でた。暇だったぞ。
「今日はキョン来なかったのよ」
俺はハルヒが用意してくれたキャットフードを食べながら話を聞いている。
「なにやってるのか知らないけれど、SOS団の活動をサボるなんて信じられないわ!」
お前の帰りを待っていたんだ。それにサボったんじゃない。連れて行ってくれなかっただけだ。
「まぁいいわ、みくるちゃんと服を買ってきたしね」
不思議な物を探してたんじゃないのか?
 
「ご飯食べてお風呂入ってくるから」
ハルヒは部屋を出て行った。もう少し何があったか聞きたかったのだが…
きっといつもと変わらないのだろう。何もみつからなかったに違いない。みつかったらそれはそれで困るのだが…
 
2時間程でハルヒは戻ってきた。遅かったな、ハルヒ。
「今日は疲れたわもう寝ましょう」
電気が消された。
今日もハルヒ一緒に寝ることになる。
 
「キョン…」
ハルヒが何か呟いたが、俺は聞き取れなかった。
俺がハルヒを見ると疲れていたのか、既に寝息をたてている。俺も寝るとしよう。猫のままハルヒと暮らすのもいいかもしれない。
 
 
朝。
目を覚ますとハルヒは居ない。早起きなやつだ。
そう考えていると何か異変に気づいた。
ハルヒの部屋ではない、俺の部屋だ。体を見てみると人間に戻っていた。制服でベッドに寝ている。
 
なんだ?俺は猫になったんじゃなかったのか?理解ができずに上体を起こすと携帯が鳴り、我に帰った。着信はハルヒからだった。
 
「キョン!?」
「なんだ?どうしたんだ?」
「キョンが居なくなったのよ!」
「何を言ってるんだ?俺なら自分の部屋に居るぞ」
「あ、そうじゃないわ!猫よ!」
それはそうだな。猫だった俺は人間に戻っちまったんだからな。
 
ハルヒの家にいくと既に全員がそろっていた。いるはずのない猫を捜しに集まったのだ。
 
俺と長門と古泉は近所を捜す事になった。朝比奈さんとハルヒは家の中を捜すようだ。
 
「俺を助けてくれたのは長門か?」
「違う。私は何もしていない」
「そうなのか?じゃあどうして俺は人間に戻れたんだ?」
「昨日の市内探索にあなたはいませんでしたね」
「ハルヒの家に居たからな」
「そうでしたね。涼宮さんは昨日、どこか上の空でした。あなたが居なかったのが寂しく思ったんじゃないでしょうか」
「それで涼宮さんはあなたが戻ってくる事を望んだ。その結果、あなたは人間に戻る事が出来たのでしょう」
「とりあえず人間に戻れたのは良かったな」
「ところであなたは涼宮さんと2人っきりで何をしていたんですか?もしかして同じ布団で寝ていたとか?」
「な、そ、そんな事はない!断じて!」
「では何故そんなに焦っているのでしょうか?」
妙にカンが良いヤツだ。ほうっておけ。
「…………」
長門が軽蔑の眼差しをこちらに向けている。やめてくれ、お前にそんな目で見られたら俺は立ち直れなくなっちまう。
 
猫は見つかるはずもなく、俺達はハルヒの家へ向かった。
ハルヒは今にも泣き出しそうな顔で下を向いている。
「ハルヒ。きっと飼い主のところ戻ったんだ。安心しろ」
「でも…キョンが…」
「ところでその猫にはキョンってつけたのか?」
「あ、あんたに似てたのよ…」
俺だもんな。
「ずっと一緒に居れると思ってたのに…」
そう言うとハルヒは泣き出してしまった。
ハルヒは『キョン』を失って悲しんでいる。そして『キョン』は俺だ。今すぐそれを伝えたかった。しかし俺はそれを伝える事はできない。そう思うと急にもどかしさを感じた。
 
ハルヒと過ごした2日間はとても楽しかった。ハルヒもきっと楽しかったはずだ。
しかし俺は人間に戻った。ハルヒは昨日までの2日間ではなく、今までの日常を選んだという事になる。
確かに昨日までの2日間は楽しかった。けれど、今までの日常のほうが幸せだったろ?
 
 
こいつといると俺達は幸せになれるんだ。
これからもSOS団として歩んで行こう。
 
 
「ハルヒ」
「なによ」
「俺達はずっと一緒だ」
 
 
終わり
 

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