北高の七不思議

 それは俺にとって普通の日常の他愛もない話の一つで、ただ同時にそれは改めて
自分の場所という物を再確認させられた出来事だった。
 まあ、他人には本当にどうでもいい話なのだが。


 それは、いつもと変わらぬ面子で他愛も無い無駄話しに花を咲かせながら昼休み弁当を食っている時に
谷口の一言から始まった。
「なあキョン七不思議って知ってるか?」
 いきなり谷口は前の会話と全然関係ない事を話し始めやがって。
「唐突に何だ、まあいい、音楽室の肖像画の目が動くとか、
 音楽室のピアノが夜になると一人でに鳴りだすっていう何処の学校にも良くある話のやつだろ。」
「そうそう、でよ、その七不思議が俺等の学校にもあるみたいなんだよ」
 ほお、それは初耳だな、うちの学校にもそんな物があったのか。
「何だよ知らねーのか、最近の学校の噂だぜ、涼宮と怪しい部活やってるお前なら知ってると思ったのによ」
 俺が怪しい事何にでも精通してると思うなよむしろ俺は止める側の人間だぞ、
自分から進んで厄介事を持ち込んで巻き込まれようとは思わん。
 でも、最近はいざ巻き込まれたらちゃっかり楽しんじまってる節はあるけどな。
「んで谷口お前はそれを知ってどうする気なんだ?」
「解ってねえなーキョン今の時代情報が大事なんだぜ
最新の情報を制した者がモテるこれは鉄則だぜ」
 解らんで結構だ、どうせその鉄則とやらも今は覚える必要のなくなった
円周率の3以下の数字より意味のないことなんだろうからな。
 結局こいつはモテる為に巷で噂の七不思議とやらを知りたいわけかあいかわらず欲望に
忠実というかなんと言うか。
「あ、その話なら僕一つだけ知ってるよ」
 ここで急に今まで会話に参加していなかった国木田がそんな事を言い始めた。
 なんだてっきり俺達の話に興味がないもんだと思ってたが。
「興味がない訳じゃないよ、ただ二人が楽しそうに話してたから何時話しを切り出そうか迷ってたんだよ」
 別に楽しんじゃいないさ、ただこの万年発情期の馬鹿の話しに付き合ってやってただけだ。
「おい、国木田知ってるのかよ早く教えろよ」
 さっそく食いつきのいい野郎が引っかかりやがった。
 谷口は今か今かと鼻息も荒く身を乗り出し国木田の言葉を待っている。
 そして国木田は雰囲気もたっぷりに俺達にしか聞こえないように小声で話し始めた。
「僕も噂で聞いただけなんだけど、でるらしいよ女の子の幽霊が」
 そりゃでるだろうよ、これはそう言った類の話しなんだからな。
「詳しいことは解んないんだけどどうやら夕方になると何処かの教室で
ナイフも持った女の子が誰かを待っているかの様に立っているらしいんだよ」
 ん?なんか脇腹がチクチクしてきたぞ、こう古傷が痛んでくるような…
「それでその子は後悔がどうとか観察対象がどうだとか呟いてるらしいんだよ」
 国木田はこっちの恐怖心を煽るかの様に声のトーンを下げて喋っている。
「噂によるとその子は好きな人に相手にしてもらえなくて自殺しちゃた女の子じゃないかって
言う話しなんだ、そしてその好きな人の大事な人を殺してやろうと今も彷徨ってるって噂なんだよ」
 谷口は聞き終わるとふぅーと息を吐き出し今までの真剣な表情を崩しいつもの馬鹿面で、
「なんだよ、曖昧すぎてその話しだけじゃその子が可愛いか分からねーじゃねーか」
なんて言いやがった、お前はそこにしか興味ないのかよと思いつつも俺はというと、
「キョンどうしたんだい?汗びっしょりだよ」
うお、マジだ全然気がつかなかった。
「もしかして僕の話しが怖かったのかい?」
「いいや、そんな事ねーよ、ちょっと昔のトラウマが」
「なんだよキョンお前こんな話しが怖いのかよ、情けねー」
 まあこのアホの意見は無視するとして、まさか噂の幽霊って「アイツ」の事じゃないよな?
 頼む間違いであってくれ、もうあんな目に会うのは金輪際勘弁蒙りたいのだから。
 そんな事を考えてるうちに俺達のランチタイムは終了したのだった。


 時間は経ち今は放課後俺は毎日の日課である我等のSOS団の部室前に来た俺はもはや
習慣化した動作でドアをノックした。
「はぁい、どうぞ」
 朝比奈さんの返答を確認し、やっぱり朝比奈さんの声を聞くと癒されるな昼に聞いた嫌な話も吹っ飛んじまう。
 なんて事を考えながら部室のドア開けると、

「あ。キョン君こんにちは」
「お待ちしておりましたよ」
「………」
 この様な三者三様のお出迎えをしてくれた。
「おや?今日は涼宮さんは一緒ではないのですか?」
 っと古泉は無駄に爽やかなニヤケ面で聞いてきやがった。
 俺はいつもの自分の席に座りながら、
「あいつは掃除当番だから後から来るだろ、というかいつも俺とハルヒが一緒に来ているような発言は止めろ」
「違うのですか?ここの所よく御二人が一緒に部室に来るので僕はてっきり」
 てっきりなんだ、確かにここ最近はハルヒと一緒に来ることが多かったが別に意味はないぞ。
「そうですね、そういう事にしときますか、ですが残念です」
 何が残念なんだ?また俺とハルヒがどうこう言いやがったらその口永遠に開かないようにしてやる。
「いえ、違いますよ面白い話を仕入れてきたものですから」
 面白い話だと、止めとけどうせ俺達(主に俺)が疲れる様な事になるんだから。
「大丈夫ですよ今回はそんな事にはならないと思いますよ。それにもしなったとしても僕たちだって
楽しめるんだしいいじゃないですか」
 楽観的な意見ありがとよ、まあ俺が止めろと言った所でこいつはハルヒの退屈を紛らわせる為なら喜んで話すだろうからな。
「んで、どんな話しなんだ?本当に大丈夫な話しかどうか俺が審査してやるよ」
 すると古泉は、待っていましたと言わんばかりのスピードで言葉を発した。
「分かりました、僕が仕入れた話しというのは七不思議ですよ、最近の噂なんですが知っていますか?」
 おいおい、ここでもこの話しかよ流行ってる噂っていうのは本当らしいな。
「どうかしましたか?あまり浮かない顔をしていますが、もしかしてこの手の話しは苦手ですか?」
 こいつには珍しく少し心配そうな顔で俺に尋ねてきた。
「いや、そんな事はないがちょっとな」
 古泉は頭に疑問符を浮かべたまま。
「そうですか?どうやらこの七不思議の殆どがここ最近作られたらしいんですよ、
それで個人的にも興味があったので少々調べてみたんです」
 自分から進んで調べたのかよ、そんなハルヒみたいな真似お前のキャラじゃないだろ、
それともそれがお前の地か?
「自分でも少し似合わない事をしたと思っていますが、そこは涼宮さんの退屈を紛らわす為なら
自分を偽る事だってやってみせます」
 お前普段でも自分を偽ってるんじゃなかったのかそれにハルヒの為じゃなくて自分の為に調べたろお前?
「な、何を言ってるんです涼宮さんの為に決まってるじゃないですか、っと話しが逸れてしまいましたね」
 古泉の野郎強引に話しを元に戻しやがったな、まあいい勘弁しといてやるか。
 得意な笑みを引き攣らせながらなんとかいつもの調子で古泉は話しを続けた。
「それで調べてみたら面白いことが解ったんですよ」
 その面白いことが俺にとっても同じならいいのだが、まあそんな可能性はイチミクロンほどもなさそうだが。
「どうやらこの七不思議を実際に目撃した人は誰一人としていないのですよ
 皆さん友達や先輩から聞いたなどという話しばかりで」
「噂なんてそんなもんだろ都市伝説しかり実際にあった出来事かどうかも怪しいぜ」
「ですがこの学校の中だけの話しなら見た人がいてもおかしくはありません、
なのにいないという事は、誰かが意図的に噂を流しているかそれとも別な要因があるとしか」
 そんなことして誰に得があるっていうんだよ、それとも噂を流した奴は「霊感があるんです」
とかいって人気者にでもなりたいのか? そんなの稲川順二だけで十分だってーの。
「僕にもわかりませんが、参考までに調べてきた七不思議でも聞いてみますか?」
 俺には調べる気がないから参考になんかならんだろが、ちょっと気になるから聞いといてやるか。
 なんせこいつが普段の胡散臭い詐欺師の様なキャラを捨ててまで集めてきた情報だしな。
「そういや俺も一つだけなら知ってるぞ」
「どの話しを知っているか教えてもらえませんか?二度手間になるといけませんし」
「なにやら女の子がナイフを持って教室にいるとか言う話しだ」
 俺はそういうと窓際に座っている長門の方に少しだけ視線を向けた。
 当の長門は俺の視線なんぞ何処吹く風で百科事典の様な分厚い本を読んでいる。
 すると古泉は俺の視線の先に気付いたのか意味ありげな微笑を浮かべ、
「ああなるほど、どうりでこの話しを始めた時にあのような顔をしていたのか分かりましたよ」
 五月蝿い俺だって好きであんな顔した訳じゃない、大体な本当かどうか分からなくてもあいつが
この校舎にいるかもしれないと思うだけで背杉が寒くなるぜ。
「何だか二人共楽しそうですね」
 そんなことを言いながら朝比奈さんが俺達の元にお茶を持ってきて下さった。
「あ、どうも。そういえば朝比奈さん今日のお茶は随分時間かかりましたね」
「すいません。お話しが盛り上がっていたから中々お茶を持っていくタイミングが難しくて」
 確かに長門の処には既に湯飲みが置いてあった。
「そんな事気にしなくても良かったのに、それに古泉が勝手に喋ってるだけですから。」
「そうなんですか?でも楽しそうでしたよ」
 やっぱり朝比奈さんと話してると癒されるなー、さっきまでサハラ砂漠のように乾きに乾ききっていた俺の心が
あっという間に潤ったよさすが俺の天使、俺がそんな風に感謝の念を抱いていると古泉が、
「どうですか?朝比奈さんも会話に加わりませんか」
 おいおいこういう話しは苦手っぽいから無理に誘うのは止せと口に出そうとすると
「いいんですか?有り難うございます私も鶴屋さんから幾つか聞いていたので
他の話しが気になっていたんです」
 って朝比奈さん怖い話しとか大丈夫なんですか?
「うーん、怖い話しは苦手だけど不思議とこの話しは聞きたいんです」
 てっきり俺はこういった事に対して耐性が無いもんだと思っていたが阪中事件の騒ぎの時も幽霊という
単語に思い当たるフシが無さそうだったから、案外ただの面白話として認識しているのかもしれないな。
「私も興味がある」
 いつの間にか長門が本を読むのを止め俺達の処に来ていた。
「長門お前もか、こりゃ本当に珍しい事もあったもんだ」
「だめ?」
 首を少しだけ横に傾けてちょっと残念そうな顔をしていた。
「いやいや、全然構わんぞ、むしろ大歓迎だ」
 俺がそう言うと長門は自分の椅子を持ってきて古泉の横に座りすっかり聞く姿勢になっていた。
「それでは始めましょうか」

 その宣言と共に北校七不思議話の幕が開けた。

「さて、これから僕の話す噂ですが皆さん猫又ってご存知ですか?」
 たしか猫の妖怪だったよな。でもなんでそんなのが関係あるんだ?
「え……それって、あれ……?」
 朝比奈さんはそんな言葉を初めて聞いたかのようにキョトンとしていた。
 幽霊も知らないぐらいなんだから妖怪を知らなくても当たり前か。
 ここは昔昆虫博士と同時に歩く妖怪大辞典として有名だったこの俺が教えて差し上げましょうと思っていると。
「猫又は、日本の伝説の生物で、年をとった飼い猫が変化した妖怪とされる。
人語を解し、人語を話す。尾の先が二股に分かれているのが特徴とされるが、
先端がさすまた状になっている程度から、根元から2本生えているものまで様々に描かれている。」
 長門お前俺の好感度アップのチャンスを……
「猫さんの事だったんですか、さすが長門さん物知りなんですねー」
 そう言われた長門は自分の教えた情報が役に立ったのが嬉しいのか少し誇らしげな表情をしていた。
 まあ傍目から見れば変化はないんだが。長門のこんな顔を見れたんだ俺が教えなくて良かった…
 そうだそう思うんだ俺、この悔しさを糧に強く生まれ変わるんだなどと心に誓いを刻んでいると
「ええ、その通りです。いやー長門さんの知識量には何時も驚かされますね」
 お前が長門を賞賛する言葉なんざ毎朝鳴いてる雀の鳴き声並に聞き慣れてるんだからさっさと本題に入れよ。
「その伝説上の生物がどうやら北校周辺に出るらしいのですよ」
 何だって?馬鹿なこと言うなよそんなのがいたら町中大パニックだぞ、
それにハルヒの耳に入ったら確実に猫又捕獲作戦が開始されるぞ。
「これも実際に見たという人物がいないらしいので噂の域は出ていませんよ、
ただ噂が出回り始めた時期というのが興味深いんですよ」
「何だよもったいぶらずに早く言えよ」
「去年の文化祭の少し前かららしいのです、そう丁度僕達が映画の撮影をしていた時期に」
 文化祭の少し前で喋る猫って言ったら……おいまさか?
「そうです、あなたの想像通りまず間違いなくシャミセン氏の事でしょうね」
 まさかあいつが喋ってる所誰かに見られちまったのかよ、せっかくあの時の事はハルヒにフィクション
だって言わせることで丸く治めたのによ。
「ですが先程も言いましたが喋るところを見たという確固たる証拠を持った人物は
今のところ発見できてないのでそんなに心配することもないでしょう」
 それもそうか目撃者がいないんじゃそんな噂も近いうちになくなるだろうさただハルヒなら本気で探すとか言い出しそうだけどな。
「その点も大丈夫でしょう、あなたの家のシャミセン氏はもう喋らないでしょう?
それに今の涼宮さんなら喋る猫より皆で探すという行為の方を重視しているので
もうあんな事にはならないでしょう」
 そうだな今のハルヒを見てれば去年の二の舞になることはないだろ、
なにせハルヒを一番近くで見てきた俺が言ってるんだ間違いなんてないはずさ。
 何だよ古泉そのニヤケ面は。
「いえ、一番近くと断言できるあなたが羨ましいと思っただけですよ」
 何を勘違いしてるか知らんが一番近くというのは席の事だぞ、なんせあいつとは入学してから
ずっと俺の後ろの席に陣取っているんだから嫌でも視界に入るさ。
 古泉はまだ何か言いたそうな顔をしていたが。
「ノロケ話しはいいから早く次の話を」
 長門俺はそんな話をした覚えはないぞ?
「私も聞いてるだけでお腹一杯なので次の話をお願いします」
 あ、朝比奈さんまでこの部屋には俺の味方はいないのか
「そうですねこんな話をしてても喜ぶのはお二人ぐらいなものですからね」
 誰も喜ばねーよ、だいたい俺とハルヒはだなお前らが思っているような
「今度も文化祭に因んだ話しなんですよ」
 って誰も聞いてないのかよまあ話が逸れるに越した事はないさ、ほれ早く続きを話せ古泉。
「文化祭の前日には見た事もない人物や生徒ではない奇妙な格好をした人達が現れると言うんです」
「一説によると活気に溢れる生徒達に引き寄せられた良い霊だという噂もあるらしいですよ
これも例によって目撃者はいません、誰か一人ぐらい見ていても可笑しくは無いんですがね」
 おい、俺はそいつ等を見たぞ異世界ファンンタジーっぽい衣装を着ていた奴らだろう。ちょっと待てよ
「古泉確かお前初めに誰も目撃者がいないって言ってたよな、可笑しくないか猫の話しも今の話しも
実際に俺やお前達も体験した事じゃないか?まさかと思うが他の噂も同じような話しじゃないだろうな」
 俺がそう言うと三人共少し複雑そうな顔していた。
「あのぅ、私が知っている話しにも少しだけ見に覚えがある話しなんですが…」
「私も同じ」
「ええ、僕もですねどうやらほとんどの話しが僕達SOS団が関わった事件から発生した噂だと思います」
 ちょっと待てよ古泉お前ハルヒに話しても大丈夫だって言ったよな?滅茶苦茶不味いじゃねーか
もしハルヒが全部SOS団絡みの出来事だって気付いたらそれこそ取り返しのつかない事になるぞ?
「幸いにも涼宮さんに殆んど気付かれずに行動した事件ばかりなのでまずばれる事はないでしょう」
だが万が一という事もあるぞ、第一ハルヒに知られないように努力してきたのはお前等だろ?
 それをなんで急にばれるような事を、なんか変だぞ今日のお前達は
「安心して下さい下手を打つような事はいたしませんよ、それに切り札もありますし」
「何だよその切り札って言うのそんな物があるなら早く教えろ」
「それはですね」
 古泉が言葉を発しようとした瞬間、部室のドアが爆発したんじゃないかというような音を立てて
開かれたそしてそこから現れたのは。
「みんなお待たせーあんた達の団長が到着したわよー」
 北校一の有名人にして我等がSOS団の涼宮ハルヒ団長閣下のご登場だった。
 ハルヒはどうしても行きたいコンサートのチケットが念願叶いようやく手に入ったかの様な
満面の笑みを浮かべ、入室してすぐに
「みくるちゃん、お茶頂戴飛び切り熱いのでよろしく」
 っといつものお決まりの常套句を告げた。
 朝比奈さんはハルヒの言葉に即座に反応しイスから飛び跳ねて、
「は、はい今すぐ用意します」
 いそいそとお茶の準備を始めた。自分の言葉に従いすぐに行動するそんな様子に満足したのか、
うんうんと頷くと俺達のほうに目線を寄越した。
「皆で近くに集まって何の話してるのよあんた達?それに有希まで混じってるなんて珍しいじゃないの」
 意外そうな顔を一瞬したかと思うとすぐさまニヤリと笑い。
「なんか面白そうな話ししてるみたいじゃないあたしにも教えなさいよ」
 まあハルヒがこんな珍しい状況を見逃すはずはないよな、ハルヒがいない所ではこうして四人で集まって
話してるなんて事は結構あるのだが、裏事情を知らないコイツからしてみれば珍しいのも当然か。
 そんな事を思いつつどう誤魔化そうか思案していると止める間も無く古泉のやつが
「皆さんとこの学校の七不思議について話していたんですよ」
 なんて直球ど真ん中な事を言い出しやがった、言っちまったよこうなったらもう止まらんぞハルヒの奴が
こんなおいしい餌に飛びつかないはずないんだからな、俺が古泉の言葉に絶句していると案の定ハルヒは、
「何それ?そんなのあたし初耳よ、このあたしが見逃してる不思議がまだ在ったなんて今すぐ詳しく事細かに教えて頂戴古泉くん」
 デッカイ瞳を爛々と輝かせ面白い事を見つけたと言わんばかりの表情で矢継ぎ早に質問をしている。
「では先程まで話していた事をお教えいたしますね」
 古泉は少し前まで俺達が話していた三つの不思議をハルヒに教えた。勿論SOS団が絡んだ事件だという事は伏せてだがな、
ただ今のコイツは何処か変だからうっかり喋っちまうんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたがさすがにそんな事は無かった様だ。
 話しを聞き終えたハルヒは考え込むかのように顎に手をやり
「うーんそんな噂があったなんてねあたしとしたことが不覚だわ、この話しを全部聞いたら早速調査行くしかないわね
何事も思い立ったら吉日って言うし、でも準備とか…」
 ハルヒが一人でこれからの計画を語っているのを尻目に、俺は古泉に小声で
「本当に隠し通したまま話を続けられるんだろうな、どうも今のお前は信用に欠けるぞ」
「安心してください」
 と言い微笑んでいた。俺がまだ文句を言おうとしていると
「ちょっとそこの二人男同士の内緒話しは気持ちが悪いだけよ、そんな事してる暇があるなら新しい話を教えなさい」
 お前が一人で計画を立ててたから暇してたんだろうが、それに俺だってしたくて男と密談してた訳じゃないわい。
「それでは次は階段に潜み生徒達を襲う霊の話しをしましょう」
「今度は悪霊っぽいわね、これはSOS団ゴーストバスターズの出番のようね」
「何時そんなものができたんだよ、第一俺達には怪しげなレーザー光線がでる武器や幽霊を閉じ込めるタンクなんか持ってないぞ。」
 ハルヒがレイ・パーカーJr. の『ゴーストバスターズ』を歌っているのを見ながら、
俺は頭の中でハルヒを除く四人で巨大なマシュマロマンと戦ってる姿を想像しげんなりしていた。
 そんな俺の気持ちを知るはずも無く
「この霊は間抜けそうな顔で階段を下りている人を見つけると、後ろから突き飛ばし怪我をさせるそうなんです。
後ろから誰かに突き飛ばされ階段から落ちて頭を打ち死んでしまい、強い未練と恨みを持っている幽霊が
自分を殺した犯人を同じ目に合わせてやろうとしてるのではないかという噂らしいですよ」
 どうやらこれは俺が十二月にあった階段から転げ落ちたという事件に関係してるっぽいな、まあ実際体験したわけじゃないから
いまいち実感がわかないしむしろ俺にとっては世界が変わっちまったって印象のほうが強いからな。
 なんて事を思いながら一番危惧すべき人物の反応を見るために目をやるとハルヒは、今まで上機嫌だった姿と打って変わって
何か嫌な事を思い出してしまった様な暗い顔をしていた。
 ハルヒに暗い顔は似合わないなこいつにはいつも笑顔でいてもらわないと俺の精神衛生上に悪いし俺の所為で
こんな顔をされてるなんて寝覚めも悪いしな。俺は何か言葉を掛けようとハルヒのほうを向くと、ブツブツと声が聞こえてきた。
「もしかしてあれって……いえでもそんな馬鹿な事が……でももしかすると」
 不味い不味いぞ、そういやハルヒはあの時幻の女とかいうのを目撃しているんだった。テメー古泉大丈夫とか言ってるそばから
導火線に火をつけるような危ない話ししやがって。どうにか話しを逸らさなければ、そうだ
「朝比奈さんも七不思議知ってるんでしたよね?古泉だけに喋らせるのも大変そうだし良かったら
今度は朝比奈さんの知っている話教えてくれませんか?」
「ふ、ふえ?」
「ほら、鶴屋さんから聞いたって言ってたじゃないですかーこれなら自分も面白しろ可笑しく話せる自身があるって、
俺もう気になって仕方が無かったんですよー」
「みくるちゃんも知ってるの?しかも自身満々ねーあたしが面白いかどうか審査してあげるから早速教えて。
言っとくけどあたしは厳しいわよ」
「え、えーそんなキョン君」
 すみません朝比奈さんこんな無茶振りしか手がなかったんです。恨むならあそこで我関せずで
お茶を飲んでるペテン師野郎を恨んでください。
 俺が心の中で涙を流しつつ話しを逸らせて安堵していると、朝比奈さんはもうどうにでもなれといった
捨て鉢的な表情で語り始めた。
「私が知ってるのはドッペルゲンガーの話しです」
 確か自分と瓜二の姿をしていて「見ると死ぬ」や「死期が近いと見る」などと言ったものだな。
 一説によると、脳腫瘍を患っている患者が、自己の認識の感覚を失い、あたかも肉体とは別の
「もう一人の自分」が存在するように感じることがあると言われている。
 幽霊か妖怪かどちらかと言われたら難しいとこだが、不思議な存在である事は間違いないな。
「へえ、あんた意外と物知りじゃないの。珍しく役に立ったわね」
 ふ、俺を嘗めるなよこの程度の知識まだまだ隠し持ってるぜ。
「まあその知識が勉強に生かせないのがあんたの悲しい所だけどね」
 き、貴様人が気にしている事を。言っとくが俺がやる気を勉強に向けたらすごいぞ?
今はわざと勉強してないだけなのだ。
「あっそう、じゃあ今度のテストの時は家庭教師してあげなくても大丈夫そうね。
安心したわこれで自分のテスト勉強に集中できるわね」
 すいません調子に乗りすぎました。反省してるのでどうかそれだけはご勘弁を、
今度悪い点取ったらお袋に塾に叩き込まれるんだよ、お前も雑用がいなくなったら困るだろ?
「あの~続きを話してもいいですか?」
 朝比奈さんはちょっと困ったように聞いてきたので、俺はハルヒとの会話を中断した。
 どうぞどうぞ気になさらないで下さい。
「それでですね、なんでもドッペルゲンガーさんは学校の掃除用具入れから誕生するらしいんですよ」
 なんですかそれは?掃除用具入れから人がポンポン出てきたら堪ったもんじゃないな、
それにしてもそんな事件あったかな?俺は頭の中の記憶の欠片を集めながら話の続きに耳を傾けた。
「その偽者さんは本物さんに会うのを頑なに拒否するらしくて、それに挙動不審で何かを探したり
意味の分からないイタズラや、山に登って奇妙な行動をしたりするらしいんですよ、
時には変装し街中にも現れ花壇を荒らしたり川で亀と戯れてるって噂なんです。
そういえば鶴屋さんがこの話をしてる時は何故かずっと笑っていたんですが皆さんはどうしてか解りますか?」
 朝比奈さん人事の様に話してますが、どう見てもそのドッペルゲンガーはあなたの事ですよ。
あの時は印象的な事件が多かったから、すっかり掃除用具入れから現れたのが事件の発端だった事を忘れていた。
 鶴屋さんが爆笑しながら話しをしてる姿が簡単に想像できるな。
 先程まで俺と一緒に話しに耳を傾けていたハルヒはイスから立ち上がり、呆れ顔をして
「十五点ね、話しの要領を得ないし笑いどころが全然ないうえになによりオチが弱すぎるわ」
「な、何の話しをしてるんですかー涼宮さん?」
「これは徹底的にやる必要がありそうね。さあみくるちゃん特訓よ」
 そんな事をほざいて朝比奈さんと緊急漫談を開始する為に衣装を選んでいた。
 お、これはハルヒが違う事に興味を持ち始めたぞ。これでなんとかばれる前に話しを切り上げられそうだな。
などと安心していると意外な人物からの言葉により元の話しに引き戻された。
「今度は私の番」
 お前もかお前もなのか長門。今度のバグはなんだ、実は喋りたい事が沢山あるのに、
一度決定した無口キャラの所為で言いたい事も言えない為に溜まったエラーかおい。
「何?有希も話してくれるの」 
 ほらハルヒの奴が興味を取り戻し始めたぞ、頼む今のは冗談と言うんだ、
お前がいいならこれからは毎日溜まった鬱憤の捌け口になってやるから、この話は終わりにしようぜ、な。
「私の入手してきた話しは生徒会室の不気味な声という噂」
 当然俺の願いは通じることはなく、勿論ハルヒは興味を七不思議に戻して長門の方を楽しみで仕方ないといった顔で長門を見ていた。
 長門は平坦な声で自分の知っている話しを語り始めた。
「夜になると生徒会室から低い声で『ヤニ臭いくせえんだよ』 『調子に乗んなよエセ眼鏡が』 
『消そうと思えば何時でも消せんだからな』 などといった恨み言が聞こえるだけで、
不気味に思い生徒会室に入っても緑色の髪が落ちているだけで他に何もいなかったという噂」
 生徒会で緑の髪っていったら……あの御方しかいないよな、こえー何時も笑顔で優しそうな御方だと思ってたのに、
いやむしろ優しい人ほど怒らせると怖いってことか。何はともあれ生徒会長に合掌だな。
「ふふん、やっぱりあの生徒会には何か裏があると思ってたのよまさかそんな物を潜ませてるとわね。
やっぱりここは正義のSOS団が退治にいくしかなさそうね。有希貴重な情報ありがとう」
 長門はハルヒからのお礼に首を少しだけ縦に傾けると、話しを始める前同様じっと次の話しを待っていた。
「ここまで黙って聞いてきたけど、今までの話しを一から調べ直す必要がありそうね。
現段階じゃ分からないことが多すぎるし。まず手始めに何がきっかけで噂ができたのかを調査するわよ」
 やばい恐れていた事が現実になっちまう、七不思議を探す行為自体に問題は無いのだが
(霊を発見するより皆で探す事に重点を置いてるため)このまま調査の途中でもし
ハルヒが殆どがSOS団が発生させた事件だって気付いてしまったら、今までの苦労が水の泡どころか取り返しのつかない事になっちまう。
「涼宮さん調査を始めるのは最後の話を聞いてからでも遅くはないと思いますよ?」
 古泉お前はこれ以上ハルヒを煽るつもりか?もう勘弁ならんぞ元はと言えばお前がこんな話しを持ち込んだのが全ての原因だ。
 俺が講義の声をあげようとした瞬間古泉は俺にだけ聞こえるような小声で
「言ったでしょう切り札があるって」
頭に血が上りかけた俺を宥めるかの様に微笑みハルヒに自分の提案を呑んでくれるよう頼んでいた。
「古泉くんがそこまでそこまで頼み込むなんてよっぽど重要な話しみたいね。いいわ聞いてあげるから話してみなさい」
「有り難うございます。これはとっておきの話しだったもので聞かれずに終わってしまったらどうしようかと内心ヒヤヒヤしていましたよ」
 このとっておきという言葉にハルヒどころか長門と朝比奈さん、そして俺も話しの内容に意味も無く期待してしまった。
 この場を丸く治める話しが本当にあるのか分からんが、そこまでお前が自信を持って言うなら信じてやろうじゃないか。

 そんな俺の思いを乗せて、こうして北校七不思議最後の噂が語られ始めた。

「この話しだけは最近の噂ではなくこの北校に古くから伝わる伝説の様な話しです」
 これだけはどうやら俺達絡みの話しじゃなさそうだな、なんたってSOS団ができたのは一年ちょっと前だからな、
昔からあるような話しに該当するわけない。
「昔この北校にはとても仲がいい男女がいたらしいのです。その二人は誰が見ても公認の中で学校一のカップルだったそうです」
「ただのカップルの話しかよそんなの珍しくないし、不思議でもなんでもないぞ」
 余計な事を言わなくてもいいのについツッコミを入れちまった。習慣て恐ろしいね。
「不思議なのはこれからですよ。確かに傍から見れば何の変哲も無い唯のカップルですが唯一他の人達と違う所があったのです。」
 まあ可笑しな所がなきゃ長い間噂になんかなりゃしないよな、それでそれは何なんだ?
「それは席の位置です」
 はぁ?なんだよその二人は教室で隔離でもされてたのか?確かにイチャ付くカップルなんざ有害以外の何者でもないが。
「違いますよ。二人は入学してから卒業するまでずっと同じクラス同じ席関係にあったのですよ。
それこそこの世の確率なんて無視するかのようにずっと。男性が前で女性がその後ろという
まるで愛し合う二人にしか許されない位置であるかのように」
 ただ名前の順が近くて席替えをしない時代だっただけじゃないか?
それなら三年間同じクラスってだけですむし、在り得ない話しじゃないだろ。
「席替えをしていたかしていないかは分かりませんが、話しはまだ終わりじゃないんですよ。
その二人はその後同じ大学に行き、同じ職場に就職し、そして結婚したそうです。
結婚後も仲睦まじく暮らしそしてお亡くなりになる時も同時というつまり高校から生涯ずっと一緒だったというわけです。
この話しからこの学校で三年間ずっと同じ席関係のまま過ごす男女は永遠に幸せになれると言う伝説ができたらしいです」
長門はちょっと頬を緩ませたような表情で、朝比奈さんはウットリとした顔で、
「素敵」
「なんか理想的ですねそこまで一緒にいられるっていうのは」
 などという感想を漏らしていた。
 確かに亡くなる瞬間までが一緒だなんて凄い確率だな、だけどえらくロマンチックな伝説だな聞いてるこっちが恥ずかしくなる。
まあ今の北校は月に一度行なってるし三年間同じ位置だなんて在り得ないだろ、しょせんは伝説だってことだな。
 というかこんな恋愛の与太話しでハルヒの行動を止める気だったのかよ、やはり俺がどうにかするしかないようだな。
「おい、ハルヒ調査の話しだがな」
 俺がなんとか止めさせるよう説得しようとハルヒの方に体ごと向くとハルヒは何故か顔を真っ赤にさせて
「え?な、何よキョン急に」
 どうしてお前うろたえてるんだよ、俺なんかビックリさせることしたか?
「う、うっさい。あーなんかもうどうでも良くなってきたわ今日の調査は中止よ中止これにて解散」
 早口で捲くし立てると自分の鞄を取りさっさと部室から出て行ってしまった。いったい何だってんだ?
「どうやら僕の切り札は成功したようですね」
「どういう事なんだ古泉俺にはさっぱり理解できないんだが」
 古泉は俺の言葉に一瞬驚きそして微苦笑をすると
「それは涼宮さんが今実際に不思議体験中だからじゃないですか」
 そんな意味の分からない言葉に助けを求めるように他の二人を見ると二人とも何処か呆れ顔で
「キョン君それを本気言ってるんなら鈍感を通り越して少し不味いですよ」
「天然記念物」
 などとさらに意味の分からない事を言われた。そして俺の頭から疑問符は消えることなく
今日の部活は終了した。家に帰り寝る間も惜しんで考えても答えは当然出る事は無かった。


 次の日の朝昨日一日考えても出せなかった答えと共に欠伸を噛み締めながらいつものハイキングコースを
登っている途中朝から見るには少々忌々しい男が俺を待っていた。
「おはようございます。昨晩はよくお休みなられましたか?」
「お前達のお陰で寝不足だよ」
「でしょうね目の下のくまを見れば分かります」
 だったら聞いてくるなよ。何しに来たんだまったく朝からテンション下がりまくりだ責任取れよ。
「すみません。それでは良い話と大事な話しお聞かせしましょう」
「ほお、せいぜい俺のテンションを上げられるよう頑張ってみろ」
「ではまず大事な話しからにしましょう、それは昨日の七不思議の件なんですが、
今考えると自分が何故あんな危ない事をしたのか不思議でしょうがないんですよ」
 今更になって何言ってんだよ、ノリノリで話しを進めていたのはお前じゃないか言い訳なんか聞きたくないぞ。
「本当です、それで可笑しいと思い今朝長門さんにご連絡を取り二人で話し合ったところある事実が判明したのです」 
 判明した事ってのはなんだよ。
「それはこの噂が出回った原因は涼宮さんの力の所為ではないかという事です」
 今度はハルヒの力に責任を押し付けようってわけか、さすがに温厚な俺でもキレるぞ。
 俺が胸倉を掴んで睨み付けると、古泉は慌てて
「落ち着いてくださいこれは間違いないんですよ。長門さんに調べて貰ったところ噂が急速に広まり皆が誰かに
話したかったり聞きたかったりするようになった時期と涼宮さんがある話を知った時期がまったく同時期なんですよ」
「なんだよハルヒが知った話しってのは」
「それは昨日の話した最後の七不思議ですよ」
 何だって?その話しとハルヒの力がどう関係あるんだよ
「その事について話しますからその前に手を放してもらっても良いですか」
 あーすまんすまんつい勢いで。
 古泉は服を調えながら、
「ここからは僕の推測になるのですが、涼宮さんは席の話しを特定の人物に聞いて欲しかったのではないかと、
だから噂が広まったのではないかと思っているのです」
「聞いて欲しいならそいつに直接話せば良いじゃないか、わざわざ噂で伝えるなんて回りくどい事しなくても
そっちの方が早いし、なによりハルヒの性格上すぐに教えに来ると思うがな」
「ですが涼宮さんは恋愛感情は精神病の一種だと言う様な方です。そんな人があのような
恋愛の話しを嬉々として教えに来るようには思えませんが」
「確かにその通りだが、精神病の一種だと考えてる奴がどうして恋愛の話しを聞かせたいなんて思うんだよ。
それこそ可笑しいだろ」
「前にも言いましたがただひねくれたポーズをつけたがっているだけなのですよ、そして自分の気持ちに気付かない
鈍感な特定の人物にいい加減業を煮やして告白のキッカケでも作らせようとしていたんじゃないですか?」
「告白のキッカケだ?あいつに好きな奴でもいるっていうのかそれこそ想像の範疇外だぜ」
 俺は何故かイライラする気持ちを抑え古泉の言葉に反論すると、
目の前の男は呆れを通り越し何処か怒った表情で俺に衝撃の事実を告げた。
「これでは涼宮さんがあまりにも可哀想なのでこの際言ってしまいましょう、
いいですか特定の人物というのは間違いなくあなたのことです。
入学してから今までの自分達の席の関係を思い出してみてください。
そうすれば自ずと答えはでてくるでしょう」
「今までの席の関係って前と後ろだが……てまさか」
「答えは出ましたか、それでは遅刻するといけないので先に行きますよ」
「お、おい待てよ頭の中がまだフリーズ状態なんだ。だからもっと詳しい話を聞かせろよ。」
 俺が情けない言葉をあげると、古泉は振り返りニヤリと笑い
「初めにいった良い話とはこの事ですよ、それではご健闘をお祈りしています」
 無責任だぞ古泉お前の所為でこの後どんな顔してハルヒに会えば良いんだよ、
俺が発狂したらお前の一族末代まで呪ってやるからな。


 そうして火照る顔と追いつかない脳味噌に鞭を打ちなんとか遅刻寸前に学校に着いた俺は自分のクラスのドアを開けた。
そして窓際の一番後ろの指定席に座っている奴を見た途端今まで悩んでいたのが嘘のようにスッキリした頭である決心を固めた。
「おはよキョン」
「よう、今日も早いな」
「あんたが遅いだけよ、ん?どうしたの妙にスッキリした顔してるけどなんかあったの」
「まあな、後でお前にも教えてやるよ」
「ふーんそう、それより今日席替え毎月この日がくるとワクワクするわね」
「小学生かお前は、まあいいそれでお前はどの席に座りたいんだ?」
「いつもと変わらずこの席に決まってるじゃないここは日当たりも良いし授業中に寝るのにも最高だしもうここはあたしの専用の席ね」
「そうだな席替えでそこ以外に座るお前なんて想像付かないしな」
「あたしに聞いてくるって事はあんたも狙ってる席があるってことよね、一応聞いてあげるから言いなさい」
「俺もお前と同じでいつもと変わらずこの席だよ」
「まああんたもその席以外想像が付かないわね」
「なあハルヒ俺達このままずっと同じ席関係のままだったらどうする?」
「な、何よ急に、もしかして昨日の話しを真に受けちゃったりしてるの?馬鹿ねあんなのただの伝説じゃないそんなの気にするなんてあんたらしくないわよ」
「俺はただの伝説にしとくつもりなんてないぜ」
「え?…それってどういう事」
「ハルヒ、俺はお前の事が……」

 どうやら俺は永遠にこいつの傍から離れる事はできないみたいだな。まあそれもいいさ、
なんたってこいつといれば毎日退屈せずに済みそうだしな。だからこれからも宜しく頼むぜ俺の愛しいハルヒ

おわり

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最終更新:2007年05月14日 14:01