「もう あっついわね」

季節は夏、昼間の炎天下にあぶられて夜になっても
気温は一向にさがらない、風でもあればまだ幾分
気持ち的にも楽になろうかというのに、風鈴も宝の持ち腐れ

でもなんといっても一番の問題は、家の電気系統が壊れてしまった現実

そう 冷房が効かない

   最悪

それでも しばらくは窓を開け放って部屋で我慢大会の参加者のごとく
がんばってはみたものの

  も う 限 界

    【夏の夜の・・・】

夜で人目もないだろうから、寝巻きがわりにきているT-シャツに短パンの軽装で
私は夜の散歩へでることにした

別段にあてがあっての散歩ではない、とくかくあの蒸し風呂のような部屋から
逃げ出したいだけ

適当に角をまがって進んでゆく

歩いていると多少なりとも風を感じるのか、結構な距離をあるいたと思う

気がつくと中学校の前にたっていた

そしてそこに人影があった

    誰 こんな時間に

    もう何年も前の  わすれられない 

    ジョン・・・


「ハルヒ なんだ こんな時間に」

 へっ

いきなり現実に引き戻されて、あほみたいな声がでる

「キョン! あんたこそ なんでこんな場所にいるのよ」

「ああ、中学時代の友達がこっちの方にいてな、遊んでた帰り
おまえこそ、こんな時間に散歩か?」

「暑くて ねむれなくって」

「元気の塊みたいな おまえでも そんなことがあるんだ」

「失礼ね 家のクーラー壊れちゃったのよ まったく でも あっついわね」

「そうだな、

  街灯の光の加減だろうか、あの日のジョンと今のキョンの姿がだぶる
  時間の経過をすっとばして、あの日の続きを
  
  そこまで思って、気がついた、あの日の思いはちゃんと届いていたんだって
  3年ばかりの遅刻だったけど

「ねぇ キョン 泳ぎ行こう!」

「ああ いいな 明日何時に集合する」

「違うわよ、い ま か ら」

「どこで」

「あるじゃないプール、目の前に」

  今度はキョンが へっ て 顔

「ハルヒ 暑さでとうとう 」
  
  とんでもないこといいだした

「目の前にあるじゃない 中学校のプール」

   絶句しているキョンをひっぱって、校門をよじのぼる

「やっぱ まずいんじゃないか」
  
  変なとこ常識的な奴である

「卒業生の私がいるんだから問題ないでしょ」

「いつぞやの傘とはわけがちがうぞ」

「無理にとは いわないわよ」
  
  ぶつぶついうわりには あいつもしっかりついてくる
  いくつかの柵をすこし手伝ってもらって、プールサイドへ

月の光は しょぼい中学校の25メートルプールでもちょっと幻想的にしてくれる

「さあ 泳ぎましょ、少しは涼しくなるわ」

「泳ぐっておまえ」

  キョンの声を背中で聞いて、私はそのまま プールに飛び込む

「気持ち いいわよ」

  呆れ顔で肩をすくめたあいつをプールサイドに置いてきぼりにして、私は泳ぐ
  ひとしきり泳いで水からあがり あいつのそばにゆく
  
  ん あきらかに眼が泳いでいる

「おまえ、俺のこと棒っきれかなんかと思ってるだろ」
  
  質問の意味を考えあぐねていると なにか聞こえる 足音

「やばい 見回りが、いいわけつかん 逃げるぞ」
  
  いい終わらないうちに あいつは私の手首をとって走り出す
  ん 前にこんな夢みたことがあったけ

  途中なんどが身をかがめ、見回りをやりすごし なんとか外へ

「おまえといると本当 退屈だけは しないな」
  
「なによ それ」

「これでも 褒めているつもりなんだが」

  あいかわらず 眼が泳いでますけど

「あの その なんだ、もしよかったら、 家にこないか、妹の部屋でよきゃ、クーラーあるし
そもそも その格好で もどるもの   」

  ん なにいってんのこいつ

「まあ そこまで いうんなら」

  キョンから誘ってくれるのって、ひょっとして初めて?

「おまえ 俺の後ろ歩けな その 上 つけてないだろ 水に濡れてだな 」

  そこまでいわれて はっと きづく 眼が泳いでいたのはそうゆうわけか
  はずかしくて顔まで真っ赤になるのが自分でも判る

「ばか! すけべ! 変態!」

  私はキョンの背中をおもいっきりひっぱたいた
  いいわけをくりかえすあいつの背中をみながら

  もう少しゆっくりでもいいよね まだ時間はあるんだから ね キョン

おしまい

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