「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。
この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたらあたしのところに来なさい。以上」
 
 宇宙人?長門のことか?
 未来人?朝比奈さんか?
 超能力者?これは古泉か?
 異世界人?……それは見たことないぞ。
 
「あんた宇宙人なの?」
 いや、違う。
「じゃあ話かけないで。時間の無駄だから」
 ちょ、ちょっと待てよ。
「普通の人間の相手をしている暇はないの」
 じゃあ俺はなんなんだ。お前にとって俺は、普通の人間は必要じゃないのか?
でも、俺は……それでもお前が――。
 
 
 
『涼宮ハルヒの交流』
 ―第一章―
 
 
 
 放課後の誰もいない教室で目覚める。
 あれ、授業は?もう終わってたのか。くそっ、ハルヒも起こしてくれればいいだろうに。
 ……あぁ、そういえば昼間けんかしちまったもんな。
 冷静になってみると確かに俺が悪かったと思う。が、そんなに激怒するようなことでもないと思うんだがな。
 とりあえず謝るだけは謝らないと。すぐには機嫌は直らないんだろうけどな。
 で、今何時だ?きっと今から部室行っても怒鳴られるだろう。まぁそれでも行くしかないか。
 それにしてもどうやら不思議な夢を見ちまったようだ。はっきりとは覚えていないがどうやら一年前の夢か?
 入学式、出会った日のハルヒの自己紹介。その部分を見ていたことはなんとなくだが頭に残っている。
 ……懐かしいといえば懐かしいか。
 
 俺達も2年生になり、新入生を迎える立場となったわけで、それなりに勧誘もやってはみたのだが、
SOS団に入るなんて物好きなぞ結局現れなかった。 まぁ普通の人にはわけのわからない団体だしな。
 そのままずるずると入部者もないまま、もうG.Wが終わってしまった。
 ということは、我らがSOS団もそろそろ一周年ということか。
 これからも色々とめんどうなことになるんだろうか?いや、なるんだろうな。やれやれ。
 ……さて、部室に向かうとするか。
 
 
◇◇◇◇◇
 
 
 
 そういえば日も長くなったな、なんて考えながらも部室への道を歩いて行くと後ろから、
「おや、今からですか?やけに遅いですね」
 聞き覚えのある声に立ち止まって振り返る。
「古泉か。ちょっと教室で寝てたらこんな時間になっちまってた」
「それはそれは。となると涼宮さんもご立腹ですかね」
「だろうな。でもお前と一緒なら一人で行くより少しはましかもな」
「そうかもしれませんね。そのせいですか?先ほどから浮かない顔をしているようですが」
「まぁそれもないわけではないが。実は昼間ハルヒと少しばかり激しいケンカをしちまってな。
それも含めておそらくかなり怒られるだろうからな。そりゃあ足も進まなくなるさ。
閉鎖空間、大きめのやつができたんじゃないか?すまなかったな」
「おや、それは不思議ですね。今日は閉鎖空間はまだ発生していないはずですが……。
ということは実際にはそれほど怒ってらっしゃらないのではないですか?」
 ……そうなのか?
 あれで閉鎖空間ができてない?どういう事だ?
「それならそれでいいが…。どっちにしろ後でちゃんと謝っておくよ」
「そうですね、それがよろしいかと。お願いしますね」
 古泉はいつものように笑って言う。
「ああ、あとそれに加えてさっき寝てた時に一年前の入学式の日の夢を見てたんだ。
そのせいで、ああ、俺は一年間かなり無茶をやってきたな、そしてこれからも無茶をやるんだろうな。
と、さらに憂鬱な気分になってたってわけさ」
「ふふっ、まぁそういうことにしておきましょう」
 何がだよ……。古泉と並び部室へ向かいながら、思いついたことを話してみる。
 
「ところでさっき見てた夢のせいで今ふと思ったんだが、宇宙人、未来人、超能力者は簡単に現れたくせに
結局のところ異世界人は現れなかったな」
「おや、あなたは現れて欲しいのですか?」
 そんなばかな。これ以上の騒動はごめんだぜ。
「いや、そういうわけじゃないが。どうしてなのか少し気になってな」
「どうしてだと思いますか?」
 予想外の返答に思わず足が止まる。
「わかるのか!?」
「わかる…、とは言えませんね。あくまで仮説です。それでもよろしければ」
 古泉に促され、再び歩き出しながら話を続ける。
「とりあえず聞かせてもらおう」
 古泉はどう話そうか少し考えているようだったが、すぐに話し始めた。
「涼宮さんはこの世界の神のようなものであると僕が言ったのは覚えていますか?」
「……そんなことも言っていた気はするな」
「僕達には認識しえませんが涼宮さんの神性はあくまでもこの世界でのものと考えられます。
その根拠、とまでは言えませんが、宇宙人、未来人、超能力のどれもがこの世界の中での者です。
もし、……そうですね。この場では異世界としておきましょうか。異世界にもその力が及ぶのであれば、
我々と同様に涼宮さんの側に呼び寄せられているでしょうからね。おそらくは、SOS団の6人目として。
あるいは、……あなたが異世界人なのでしょうか?」
 ニヤリと笑い古泉は言う。
「っ!?おいおい、そんなはずはないだろ?」
 たちの悪い冗談はやめろ。頼んでやるからやめてくれ。
 思わず慌てふためいてしまった俺を横目に、あいもかわらず涼しい顔で続ける。
「ふふっ、冗談です。前にも言ったように、あなたはれっきとした普通の人間ですよ」
「やれやれ、勘弁してくれよ」
 俺の少し大きめのリアクションも気にせず、古泉は続ける。
「異世界人というのは少し特殊でして、未来人や超能力者のように力を与えれば良いというものでも、
宇宙人のようにその存在を創造すれば良いというものでもありません。
異世界に存在している、という条件が不可欠になります。となると、まずは異世界から創らねばなりません。
その気になればできるかとも思えますが、そこから人を連れてくるとなると、それは誘拐に近い行為です。
さすがにそこまではできないのでしょう。涼宮さんの良心が咎めるのかもしれませんね」
「あいつにそんな常識が通じるとは思えないがね」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。以前にも言ったように涼宮さんはちゃんと常識を持った方です」
 ……ほんとかよ。
「あるいは、異世界というものがすでにあるとしても、そこにも涼宮さんのような力を持った者、
つまり『神』が存在して、涼宮さんからの干渉を防いでいたりするのかもしれませんね」
 なるほど、それならありえるかもな。
「それだと向こうの神様も必死だろうな」
 ハルヒから再三に渡って人員を要求されている異世界の神様には同情を禁じえない。
 とりあえず面識もないが謝っておく。うちのハルヒが迷惑をかけてすいません。
「まぁ、全て僕の仮説ですけどね。もちろんそれなりに自信はありますが。
どちらにせよ、この説がある程度でも当たっているならば、異世界人が現れる可能性は低いと思われます」
 
 確かに、話を聞いている限りにおいては、なるほど、と納得させられるような内容だ。
 まぁ、別に俺にとっては現れて欲しいわけでもないしな。いや、むしろ現れないで欲しい。
「あなたに言うべきか、少し判断に迷いますが、あなたも興味があるようですので話しておきましょう」
 古泉は少し考え込むような仕草を見せた後、立ち止まって話し始めた。
「実は過去に3回、涼宮さんは異世界人を呼ぼうと試みています」
 な、なんだって。どういうことだ?
「それが元から存在した世界なのか、涼宮さんがわざわざ創り出した世界なのかはわかりません。
ですが実際にここではない世界に干渉した力の発現を感じました」
「それは、例の『なぜだかわかってしまうのです』ってやつか?」
「そうです。根拠はありませんがそう感じました」
 なるほどな。
「でも、それじゃあ異世界人ってのはもうどこかにいるんじゃないのか?」
「いえ、それが成功したことはありませんので、異世界人はまだいません。それに……」
 古泉は笑顔になり、再び手で促し歩き出す。
「一年前、あなたと出会ってからは一度もありませんのでご安心を」
 
 
◇◇◇◇◇
 
 
 古泉の話について深く考える間もなく、すぐに部室に到着する。
 少し考え込む俺を後ろに古泉がドアをノックすると、
「はあぁい、どうぞぉ」
 と、いつものように朝比奈さんの可愛らしいボイスが出迎えてくれる。
 古泉はいつものようにドアを開け、いつものように
「すいません、遅くなりました」
 と挨拶を交わした後、いつものように入って……は行かずに、ドアを閉めてこちらに向き直る。
「ん?なんだ?」
 古泉は珍しく真剣な面持ちで
「申し訳ありませんが、少しこのままここで待っていてもらえませんか?」
「あ、ああ、構わないが?」
「すぐに戻りますので」
 
 そう言葉を残し、部室の中へと入って行く。
 一体なんだってんだ。異世界人でもいたのかねぇ。けど俺が入れない理由にはならないか。
 部室の中からは微妙に声が聞こえる。
「――いえ、たいしたことではありませんので」
「そう、まぁ別にいいわ。まぁ古泉君は優秀だし、色々あるんでしょ。誰かさんと違って」
 どうやらハルヒと何かしらの会話をしているようだ。
 っておい!誰かさんて誰だよ?俺か?……まぁ俺のことなんだろうが。
「それで申し訳ありませんが、まだ少しやることがありまして、今日はこれで失礼させて頂きたいのですが」
「そう?まぁ仕方ないわね。古泉君は優秀だし、色々あるんでしょ。誰かさんと違って」
 くそっ、また言いやがった。そんなにダメか?ダメなのか俺は?
「すいません。それと、彼もお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「えっ、俺か?」
「んー、別にいいけどこいつ使えないわよ。古泉君と違って。」
「ったく……。そのことは悪かったって、謝ったろ?勘弁してくれよ。
あ、古泉、少し待ってててくれ。これ片付けるから」
 って、また言った。普通3回も言うか!?さすがにそれは酷いだろ?
 ……じゃなくて、ちょっと待て。中で今俺が返事しなかったか?いや、間違いなく俺だよな。
 落ち着け。そんなはずはない。俺はここにいる。……でも確かに今のは俺だ。
 何が起こってるんだ?どうなってるんだ?と、考えていると古泉が顔を出し、
「すいませんが屋上で待っていてもらえますか?すぐに向かいますので」
 と、小声で簡単に告げる。
 色々と聞きたいことはあるが、ここは仕方ない。とりあえず屋上に向かうとするか。
 
 
◇◇◇◇◇
 

 

第二章
 


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