「今回は、わたしと、みくるちゃんと、古泉君ね。
キョン、分かってると思うけど、暑いからってサボっちゃダメよ?
これは不思議探しなんだからね!」

時は、期末テストも終わり、あとは夏休みを待つだけとなった1学期の終わり。
俺たちは、例によって例のごとく、朝の喫茶店で不思議探しのメンバーを決めるくじを引いたところだ。
今回は、俺は長門とのペアだ。

喫茶店を出て、ハルヒたちとは別行動を取る。

「さて、長門…どこか、行きたい所とかはあるか?」

長門は、ゆっくりと視線を俺に向ける。
その首が、左右に僅かに振れる。否定を示すジェスチャー。

「とくにない」

ふむ、と俺は考えを巡らせる。
前に長門と組んだときは、図書館に行ったんだったな。
あの時は、本棚の前で本を広げ、時間になっても全く動こうとしなかった。
とくにない、とは言ったが、こいつはやっぱり図書館に行きたいんじゃないだろうか。

「じゃ、図書館でいいか」

相変わらずの無表情。
質問を投げかけた3秒後、1ミリほど首を縦に振ったのを見とどけた後、
俺は図書館に向かって足を動かし始めた。


「…あちぃ」

駅前まで自転車を漕いでいたときも思ったが、なんて暑さだ。
まだ10時過ぎだってのに、俺の皮膚の温度センサーは気温34度を示している。
こんな中で、日向を歩くなんて正気な人間のすることじゃないな。

「なあ、長門。暑くないか?」

俺は長門に問いかける。
長門の首筋には汗一つ浮かんでいない。
…こりゃ愚問だったか。

「わたしには自動温度調節機能が備わっている。問題ない」

やっぱりそうか。まあ、こいつは対有機生命体インターフェイス、
いわゆるアンドロイドであって、人間じゃないからな。
そういう類のもんがついてるほうが自然ってもんだ。
…しかし、ほんっと、暑いな。

コンビニを発見した瞬間、俺は長門に、コンビニに入って涼をとる事を提案した。
数秒の後に了承が出た瞬間、俺はコンビニに向かって走り、ドアを開ける。
冷房のよく効いた店内はまさに天国の一言に尽きる。
しかし、コンビニまでやって来たはいいが、何も買わずに出るってのもアレだな。
ここはアイスでも買うか。
俺は店内のアイス売り場に向かい、種類を確認する。
ここは、やはり定番のガリガリ君にするべきか…

「………」

気がつくと、長門が俺の横まで来ていた。
じっと俺の胸を、いや俺の持っているガリガリ君を見つめている。

「…食いたいのか?」
「…べつに」

ならいいか、と思った俺だったが、一瞬後にふと思いついた。
こいつはアンドロイドである。
そして、映画とかで出てくるアンドロイドよろしく、こいつには感情というものが希薄だ。
なら、これから様々な経験を積んでいく中で、少しづつ感情を獲得していく、ってのが王道ではなかろうか。
そう、例えばアイスを初めて口にする、何ていうのでもいい。

「長門。お前、アイス食ったことあるのか」
「ない」

ほらきた。

「じゃ、これは俺がおごってやる。一緒に食おう」

俺は長門の返事を待たず、レジに向かう。
ガリガリ君2つ、しめて126円なり。

コンビニの外に出て、俺はアイスの片方を長門に渡した。
俺が袋を破って中身を取り出したのを見てから、長門も中身を取り出す。
うん。やっぱり、暑い日はアイスに限る。
ちら、と横に視線を向けると、

「…長門。お前、もう食い終わったのか」

幾らなんでも早すぎるだろう。まだ30秒も経っていない。
ガリガリ君を30秒完食ってのは何の罰ゲームだ。

「あー、どうだった?」
「……冷たい」
「…美味かったか?」
「………」

答えずに、長門は再びコンビニへと入っていった。
俺は食いかけのアイスを齧りつつ待っていると、袋いっぱいのアイスを手にした長門が出て来る。
どうやら、相当気に入ったようだ。



後日。
長門の部屋に行ったとき、ふと気になって冷凍庫を開けると、
そこにはアイスの山が鎮座していたのは、また別の話だ。

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