佐々木と橘京子は、勤め先から連れ立って帰宅途中であった。

(橘京子)「佐々木さん。よかったんですか? お二人から招待状が届いていたんですよね?」
(佐々木)「いいのよ。とてもじゃないけど、そんな気分にはなれなかったから。彼は、親友のくせに薄情な奴って思ってるかもしれないけど」
(橘京子)「はぁ……お気持ちは分からないではないですけど……」
(佐々木)「それよりも、大丈夫なんでしょうね? 二人の結婚式にかこつけて橘さんの組織が何かよからぬことを企んでないか、心配よ」
(橘京子)「組織の過激派が、涼宮さんの力を暴走させて、その機会に佐々木さんに力を移し変えようと企んでいるようですけど」

 佐々木の表情が険しくなった。
 橘京子は、それをなだめるように微笑む。

(橘京子)「大丈夫です。とあるルートで『機関』の方に情報を流しておきましたから。今ごろは彼らが制圧しているでしょう。理性的な敵軍は愚昧な友軍より賞賛に値する……なんて、至言ですよね」
(佐々木)「橘さんも随分と陰謀家なのね。自ら手を下さずに、問題を片付けようなんて」
(橘京子)「世渡りの知恵です。私の属している世界はそういうところですから」
(佐々木)「あまりかかわりたくない世界ね。あなたとも縁を切ろうかしら」
(橘京子)「ああん、もう。そんなつれないことを言わないでくださいよぉ」
(佐々木)「冗談よ」
(橘京子)「佐々木さんは、相変わらず意地悪ですね。それはともかく、話を戻しますけど、本当によかったんですか?」

 佐々木は、しばらく沈黙を保った。

 橘京子が佐々木の方を見ると、ようやく口を開いた。

(佐々木)「やっぱり、恋愛感情は精神病の一種よ。その場にいたら、私はきっと耐えられない。私は、弱い人間なのよ」
(橘京子)「……」



 それ以上、会話は続かなかった。

終わり

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最終更新:2007年06月03日 11:40