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「おっす、今日は寒いな」
「……」
「待ってた?」
「わりと」
「そっか、ごめんな」
「別に」
「適当にそこらのファミレス行くか」
「わかった」
───カラカラカラ
「ふぅ、二名で」
「かしこまりました、こちらの席で」
「有希、こっちだ」
「……」テトテトテト
「何か喰いたい?俺がおごるぞ」
「コレ」
「ジャンボサイズか」
「そう」
「んじゃ俺は……コレだな」
「お客様、ご注文はお決まりですか」
「コレと、コレ」
「ご注文承りました、しばらくお待ちくださいませ」

「今日は雲が濃くて余計寒いな」
「……」コクッ
「有希」
「なに?」
「これ、お前に」
「……これ」
「お前に似合うと思ってさ」
「……」
「雪の結晶のブローチ、気に入って、くれたか?」
「わりと」
「そっか、メリークリスマス」
「ありがとう」
「あ、有希、外見ろよ」
「ぁ」

肌刺す寒さと温かココア
窓の外を除き見る

舞い散る雪と静かな町並み
世界が無音で包まれる

一人の男と 一人の女
互いは互いを見詰め合う

男は笑ってブローチ差し出し
女は黙って想いを受け取る

静かに箱から取り出して
髪にちょこんと色が付く

灰色の髪に白いブローチ
まるで冬の空のように

静かに微笑む宇宙人



「はあ、明日から十月よ。一年て早いわね」
「そうだな。四月にお前と会ってから、時間が早く感じる」
「ちょっと! それどういう意味? まるであたしが悪いみたいじゃない。
キョンは何か不満があるの? 言ってみなさいよ」
「何もない。逆に毎日が面白くてしょうがないな。誰かさんのおかげでさ」
「誰かさんて誰? あんた、あたしに隠し事してるの! どこの女なの? 正直に言いなさい」
「こら、苦しい。首を絞めるな。俺は、お前以外の女に興味なんかないんだから――」
「へ? それどういう意味? キョン、分かりやすく説明しなさい! 言わないと死刑だから!」

――

ははは…。結局ハルヒに絞られて色々言わされちまった俺。まあいいか。

「もう、時間がたつのが早いわ。今を大事にしたいのに。一日が三日分ぐらいに長くならないかしら」

「「!!!」」
「?」

「異常事態。一日が七十二時間に変化した」
「僕にはどうしようもありませんね」
「ええとぉ…あたしは未来から来てるから関係ないですよね?」

badend?



「もー!!何で体育館倉庫に閉じ込められなきゃならないのよ!!」
「今回ばかりはお前と同じ意見だな……全く、人がいるの確認してから閉めて欲しいぜ」
「キョン。これからどうするのよ!あんたさっさと脱出経路探し出しなさ~い!!」
「そもそもお前が『卓球大会でるから卓球台強奪に行くわよ』なんて言わなければこんなことにはならなかったんだぞ」
「何よ!あたしのせいだって言うの!?あんたがさっさと卓球台運び出せばこんなことにはならなかったのよ!」
「まぁ今は喧嘩してる場合じゃない。携帯で古泉達を……って電池がねぇ~!!」
「あたしの携帯の電池もないわよ!どうなってるの?さっきまで満タンだったのに」
「正面は無理、携帯も電池切れ、窓は小さ過ぎて出られない……」
「どうするのよ」
「ここで一夜過ごすしかない……」
「な、何いってるのよ!!!!バカなこと言ってないでさっさと脱出方法考えなさい」
「しかしだな俺やお前は宇宙人でも未来人でも超能力者でもないただの一般人だ。一般人がこのドアぶち破ることなど出来ないし小窓から脱出もできない」
「………」

「と、なれば考えられる可能性は2つ。1つは古泉達が助けてくれるのを待つ。もう一つは明日の朝まで過ごして朝練がある部活が来るまで待つ」
「だけど……今は冬よ。寒くて凍えちゃうわ。それにキョンと一緒なんて……」
「マットならここにある。これに俺の制服をかけて寝ろ」
「あんたはどうするのよ!今日は今年一番の寒波がやって来る日なのよ」
「起きていれば問題ないだろう。いいからお前は横になってろ」
「……(ありがと)」
「ん?何か言ったか?」
「何でもないわよ!」
「そうかい」
「バカ……」
――――――――――――
「………ねぇキョン」
「なんだ?」
「その、え~とね……」
「なんだ?ハルヒらしくない。はっきり言ったらどうだ?」
「……なによ、じゃあ言うわよ!!キョン、私と一緒に寝なさい!!!」

「な、何を言ってるんだ!!まぁ今は落ち着け。冷静なれハルヒ」
「あたしはいつだって冷静よ。神聖にして不可侵たるSOS団団長のあたしが今まで変なこと言ったことある?」
「いやそれはもう数え切れない位に……ってそんなことはどうでもいい。お前は何を言ったのかわかってるのか?」
「わかってるわよ。『あんたと一緒に寝る』って言ったのよ!!」
「仮にも男女が一緒になって寝るんだぞ。付き合ってもない男女がそう言うことはしてはいけないだろ」
「じゃあ今付き合……(何言ってるのあたし!!)このエロキョン!!いやらしいこと考えてるんじゃないわよ!!!」
「(しかしだなぁ考えるなと言う方が無理な話で)」
「寒いのよ……」
「そんだけ騒げば少しは体も温まってるだろ?少なくとも俺よりは」
「だから凍えてるあんたもここに入れてあげようと思ったの。団長は団員には優しいのよ」
「財布には優しくないがね」
「つべこべ言わずにさっさと来なさい!!」
「うおっ!馬鹿止めろハルヒ!!」
「秘技蟹ばさみ!!」
「太ももでおれの胴体を挟むな!!」
(この後5分間格闘の後キョン降伏)
――――――――――――

「背中にひっつくなハルヒ」
「寒いのよ」
「いい加減太ももで胴体挟むの止めてくれないか?」
「寒いのよ」
「じゃあせめて耳に息吹きかけるの止めてくれないか?」
「寒いのよ」
「最後のは寒いのと関係ないだろ!止めろくすぐったい」
「やぁ、回転しないで……よ」
「(しまった!顔が近い……)」
「………」
「(これ以上ハルヒとにらめっこなんかできん。また回転しよう)」
「キョン……ダメ」
「ハルヒ……?」
「寒いのよ」
「いや、それも全く寒さと関係ないだろ」
「いいの!団長命令よ!わたしと向かい合って寝なさい!!」
「やれやれ」
この後2人は明け方に眠りバスケ部の部員にキョンがハルヒに抱きついた状態で見つかるのはまた別の話



「なぁ長門……」
「なに」
「お前の体、案外あったけぇんだな」
「……」
「あ、いや案外ってのは……すまん」
「……そう」
「……でも長門のおかげで安心して眠れるな。ありがとな」
「……いい」



「キョン、聞きなさい。重大発表よ!!」
「なんだ?また訳の分からんことに首を突っ込んで俺をこき使うことなら聞くわけにはいかないな」
「そんなことじゃないわよ。よーく聞きなさい。なんとこの度私涼宮ハルヒは古泉君と付き合うことになりました!!!」
「なっ……マジか?」
「えらくマジです。僕達は5月頃から想いを伝え合っていました。相思相愛と言ってもいいでしょう」
「やだ……古泉君」
「………(声にならないキョン)」
「どう?びっくりしたでしょう?無理もないわ。まさか私が男と付き合うなんて想像もしてなかったでしょう」
「………」
「ま、昔は精神病の一種とか言っちゃったけどあれは間違いだったわね」
「………いやぁよかったじゃないかハルヒ、古泉おめでとう」
「……えっ?」
「これで少しはハルヒが無茶することはなさそうだな。古泉しっかりストッパーになってやれよ」
「いや……その」
「もうこんな時間か……じゃあ俺そろそろ行くわ。じゃあな」
「ちょっとキョン……待っ」

バタン

「涼宮さん。『キョンにヤキモチ焼かせよう作戦』見事に失敗してしまいましたね」
「バカキョン!!待ちなさいよ!!」

「ハルヒ……なんで追ってくるんだよ。古泉とこれからの予定立ててればいいだろ!!」
「なによ!!人の気もしらないで……このバカキョン!!!!」
「それはこっちのセリフだアホハルヒ!!そもそも俺に言う理由が分からん。お前ら二人きりで密かにイチャイチャしてれば良かったんだよ。少なくとも知らなければ俺は幸せだったんだ!!」
「キョン……それってどういう……」
「あ……いや、何でもない。いいからさっさと古泉のとこに行ってやれ。」
「本当にバカキョン!!あれは芝居だったの見抜けなかったの?」
「………は?」
「あたしが古泉君と付き合う訳ないじゃない!!あれはお芝居よ、お・芝・居」
「いや、ちょっと待て。……なんで俺にそんなことする必要があったんだ?」
「キョンに……(ヤキモチ焼かせようと思ったのよ)」
「聞こえないぞ」
「だー!!もう!!あんたにヤキモチ焼かせようと思ったの!!」
「……なんで?」
「だって…………あんたがあたしを見てくれないからよ!!みくるちゃんにデレデレしたり有希を気遣ったりするけどあたしには何にもないの?」
「……それは……」
「わたしはあんたのことが……」

「ハルヒ……そりゃあ、お前には朝比奈さんの様なアイドル性も長門の様な気遣ってあげたくなる様なこともない」
「なによ!!!せっかく人が告……」
「いいから最後まで聞け」
「…………」
「だがなハルヒ、俺はお前に何もしたくないわけじゃない。お前に何をしていいか分からんのだ。なんでも自分でやっちまうし下手に介入すると『邪魔よバカキョン!!』だろ?」
「………」
「話は変わるがさっき古泉と付き合ったと聞いたとき正直物凄い虚無感を味わった。ストレスゲージが一気に臨界点を越えたね」
「……」
「いつまでもあると思ってたものを捕られた気分だ。朝比奈さんや長門が誰かと付き合うと言ってもこの感じは味わうだろうがハルヒがとられるほど虚無感は感じないだろうな」
「はっきり言いなさいよ……」
「じゃあ言うぞ――俺はハルヒの傍にいたい――いや、いなきゃいけない。ずっとな」
「……プロポーズじゃない」
「そうとも。もうこんな変な感覚を味わうのは御免だ。なら一生お前の傍にいればこの感覚を味わうことはないしな」
「キョン……男に二言はないわね?あんたを一生離さないわよ」
「覚悟は出来てるよ」
「(ありがと……キョン)」
――――――――――――
谷口「キョン、ついにやったか!いやぁ見ているこっちとしてはハラハラドキドキな展開だったがまさか最後プロポーズまでするとはな……」
国木田「たまたま通りかかったらキョンが告白しててびっくりしたよ。お幸せに」

この谷口と国木田が大声で話したおかげで俺達はクラスから夫婦扱いされたのはまた別な話



ある日のキョンの家にて
「なぁハルヒ……ひとつ聞きたいんだが」
「何よ」
「この紙はなんだ?」
「婚姻届よ」
「そりゃわかってる。俺が聞きたいのはそこじゃない。何でハルヒの名前がはいってるんだ?しかも何故に俺に渡す」
「いいじゃないの………」
「よしよし、まぁ落ち着け。お前と俺の年はいくつだ?16だろ?お前は結婚できても俺は18まで無理だ」
「あんたが18になるまでSOS団耐火金庫に保管しとくのよ」
「いや待て、そもそも何で俺とお前が結婚しなきゃならんのだ」
「いいじゃないの!!あたしが決めたの」
「しかしだなぁ、付き合ってもないのに結婚とは突拍子過ぎないか?それならまだハルヒと5分だけ付き合ったことのある谷口にでも……」
「あんたはあたしが谷口にとられてもいいって言うわけ?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「だ~~!!!!つべこべ言わずにさっさと名前書けばいいのよ。妹ちゃん!!いるのわかってるわよ。ちょっと来てちょうだい」
「(ハルにゃん積極的)な~にハルにゃん?」
「この家の印鑑貸してくれない?」
「わかったよハルにゃん。ちょっと待っててね」
「いい、義妹ね」

「ハルヒ、俺と結婚なんてしてもつまらん日常がさらにつまらなくなるだけだぞ。お前は世界中飛び回ってる方が似合ってると思うが」
「だったら二人で世界中飛び回わればいいじゃない。つまらない日常?あんたがいたおかげで…………」
「なんだよ」
「あんたがいたおかげでつまらない日常なんか無くなったのよ!!更につまらなくなるなんて考えられないわ。あんたと一緒にいればね」
「ハルヒ……」
「はい、義姉ちゃん。印鑑持ってきたよ」



ある日の部室

「ハルヒ……やっぱり俺は思う訳だ。いくら文化祭準備だからって泊まるのはどうかと思うぞ」
「去年も泊まったし別にいいじゃないの。今回も編集頼むわよ」
「編集自体はもうすぐ終わりそうだ。今は……9時か。終わるのは大体9時半くらいだから帰っても大丈夫だろ?すぐ終わるから帰……」
「嫌よ!!!」
「何でだよ。お前も家に帰ってシャワー浴びて寝たいだろ?」
「それはそうだけど……ダメ」
「それと、もう一つ言いたいことがある。なんで布団が1枚しかないんだ?」
「夫婦はひとつの布団で寝るものよ」
「まだ夫婦になった覚えはないが?」
「あんたも婚姻届に判押したじゃない。あれは夫婦になりますって言う同意書なのよ」
「そんなことはわかってる。ただ役所に提出してない以上まだ俺達は夫婦じゃないわけだ」
「どうでもいいじゃない!!!夫婦になるための予行演習よ。編集が終わったらさっさと来なさい」
「やれやれ」
―――30分後―――
「おい、ハルヒ終わったぞ」
「すぅ~~」
「寝ちまったのか。まぁ連日走り回ってれば疲れもたまるか……ハルヒも寝たことだし俺はあっちで寝るか」

ガシッ(腕を掴まれる)
「えっ?」
「キョン捕まえた」
「おい馬鹿、ハルヒ何するんだ。布団に引きずり込むな!お前は海坊主か?」
「つべこべ言わずに布団にはいりなさい!!!」
――――――
「ハルヒ、抱きつくな。寝られん」
「あたしは抱き枕ないと寝れないの。今日はキョンが抱き枕の代わり」
「抱き枕……まぁいい。然るにハルヒ、俺と夫婦になって本当に後悔しないんだな?」
「する訳ないじゃない!!あたしがあんたを選んだのよ」
「そうか……俺も腹くくらなきゃな。ところでハルヒ、なんで夫婦が一緒に寝るか知ってるか?」
「いきなり何よ……」
「いや……なんでもない。気にするな。よし、寝るぞ、うん明日は早いしな」
「キョン……あたし達ずっとこのままよ……」
「わかってるさ」



昼休み、
ハルヒ「放課後に大事な会議があるから!遅れたら死刑ね!」
とか言っておきながら…
放課後、チャイムと同時に全力疾走で出て行きやがった。
おいおい、俺を死刑にしたいだけなのか?

死刑にならないように、なるべく急いで部室に行くと、そこにいたのはハルヒだけだった。
キョン「ほかのみんなはまだなのか?」
ハルヒ「今日はあんたとあたしだけよ」
何だって?っていうか何ニヤニヤしてやがるんだ?

ハルヒ「遅れたら死刑って言ってたわよねぇ…」
キョン「俺はまだ死にたくないんだが?」
ハルヒ「じゃああんたには窒息死の刑になってもらうわ!」
キョン「何だその刑は?その年で殺人犯になっちま「死ねーーーーー!!!!!」
キョン「ちょっ!なにすんd ブチュッ!!! んっ?!ん~~~~っ????!!!!」

1分後
ハルヒ「…………ップハァ!あんたなかなか死なないわねぇ!てことで死刑再開!!!」
キョン「ハァハァ…っていきなしなにすんっ?!んんっ??!!ん~っ???」

その後、死刑された俺と死刑執行人のハルヒが「昇天」したのは言うまでもないだろう。



キョン「あれ?ハルヒだけか?」
ハルヒ「そうよ。なに?私だけだったら悪いの?」
キョン「ああ」
ハルヒ「!?な、なによそれ!団長に向かって失礼じゃない!」
キョン「ごめんごめん。ついつい」
ハルヒ「な・・・なによそれ・・・私がどれだけ・・・」
キョン「ん?どれだけ・・・なんだ?」
ハルヒ「な、なんでもないわよ///!」
キョン「いや、気になる。是非教えてくれ、団長様」
ハルヒ「私のこと嫌いな人に教えるわけないじゃない!」
キョン「ん?誰がハルヒを嫌いって言ったんだ?」
ハルヒ「え・・・だって私がいたら悪いって・・・」
キョン「ああ。確かに言ったな」
ハルヒ「そうなんでしょ!だったらこんなこと言ったって・・・」
キョン「お前だけだったら、気持ちを抑えられそうにないからな」
ハルヒ「!?キョン、それって・・・?」
キョン「で、何が言いたかったんだ?」
ハルヒ「そ、それは・・・。」
キョン「それは~。な~に~?」
ハルヒ「・・・私がどれだけキョンのこと好きかなんてわかんないでしょ!って言いたかったのよ!!」
チュッ
ハルヒ「!!!!!!!?」
キョン「わかってるさ」
ハルヒ「バカ・・・///」


ハルヒ「くんくんくん…」
キョン「!な、何しやがる!」
ハルヒ「いいから前向いてなさい!」
キョン「はぁ…?」
ハルヒ「くんくんくん…スーハースーハースーハー…くんくん…スーハースーハースーハー…(キョンの匂いキョンの匂いキョンの匂い)」

キョン「ったく…(ああ!ハルヒかわいいなあちくしょう!愛してるぜこの野郎!)」



 これはある晴れた日のことだ。
 大学も無事卒業し、いっこうに生活水準を改善してくれない国家権力に使われる仕事に
大変屈辱的と思いつつも、谷口のアホから安定していると言うだけで
羨望のまなざしを向けられるのも悪くないとごまかしている社会人一年目に突入している。
 で、へとへとになってようやく迎えた休日ぐらい休ませてほしいものだが、それを決して許さない奴が約一名。
週末になると決まって俺のところにやってくる超大型台風のお出ましだ。
『キョン、とっとといつもの喫茶店に来なさい。私より遅かったらおごりの上に罰金だからね!』
 突然、電話が鳴ったかと思えば、それだけ言って通話終了だ。30秒もかかっていない。
経済的って良いよな。俺の体力・精神力ももっと経済的に扱ってくれればいいんだが。

 結局、疲れた身体に鞭を打ちながら、のこのこといつもの場所に向かう俺。
「遅いわよ、おごりだからね」
 やっぱりすでに喫茶店に到着しているハルヒだった。つーかハルヒ、グラスの中身が空になっているが、
まさかここから俺を呼び出したんじゃないだろうな?
 ただ、ほかのメンバーはいないようだ。ハルヒだけとは珍しい。
「で、今日は何の用だ? 悪いが疲れているから、明日また得体の知れないツアーに行くなら拒否権を発動するぞ」
「その拒否権は、あたしの拒否権で上書きね。反論は一切認めないわよ」
 まさに横暴。しかし、日本は民主主義国家だぞと言ったら、明日からハルヒ総統による独裁制になりそうだからやめておく。
 その後、しばらくハルヒは黙ったまま俺をじっと見つめていたが、やがて意を決したように頷き、一枚の用紙を俺の前に差し出した。
「とっととこれにサインしてよね。他の必要なところはあたしが全部書いておいたから」
 差し出されたものをみて俺は唖然とした。
「おいハルヒ」
「何よ?」
「これはなんだ?」
「見たままでしょ」
「だったら、ここに書いてある文字を読んでみろ」
 俺は差し出された紙の『意味』がストレートに表現されている部分を指さす。
「イヤ。そのくらい自分で読みなさい」
「いいから」
「あんた、それくらいも読めなくなったわけ? 五月病……じゃなかった、社会人ボケなんじゃないの?」

「あのな……」
 あくまでもしらを切るハルヒをさらに追求しようとするが、
「いいからとっととサインしなさい!」
 と俺の顔面につきだしてきた。やれやれどうしてこうストレートな奴なのかね。ものがものなんだから
もっとロマンチックなムードを演出しつつ、雰囲気のある会話でさりげなーく言う努力とかしろよな。
ほかの連中を連れてこなかったのはハルヒなりの配慮なのか、ただ単に気恥ずかしかっただけなのかは知らんが。
 差し出されたのは、婚姻届けだった。つまり、あー、なんだ、ハルヒなりのプロポーズとでもいえばいいのだろうか?
しかし、俺の名前以外は全部書いてあるし、手際の良いことに誰だか知らない証人のサインまできっちり書き込まれている。
これじゃ、タチの悪い詐欺の契約書へのサインを迫られているみたいだぜ。
「……嫌なわけ?」
 不満たらたらな俺にアヒル口になるハルヒ。こういうリアクションは器用だと思うよ。
 そんなハルヒにちょっと意地悪したくなるのも、男なら当然だろ?
「俺が拒否したらどうするんだ?」
「却下。拒否権を発動するわ」
「なら、俺の拒否権で上書きな」
「ダメ、団長であるあたしは拒否権は3回使えるの。平のあんたは一回だけ。一回でも使えることに感謝してほしいわね」
 なにがなんでも俺の拒否は認めるつもりがないようだ――別に本気で拒否する気もないけどな。
「やれやれ……」
 俺は溜息を吐きながらサインしてしまった。まさか、こんな唐突に結婚しちまうとは。さらば、独身の俺。
こんにちわ、既婚の俺。
「ほらよ、書いた――」
 サインを終えて、顔を上げた俺の目に入ったのは、発光していそうなほどのハルヒの笑顔だ。
しかも、俺に向けられると必ず厄災が降りかかるあの満面の笑みときている。
「やっぱやめた!」
「遅い!」
 ハルヒに渡すまいと、あわてて婚姻届を取り上げようとするも、こいつが一瞬の隙を見逃すわけがない。
超高速な手さばきであっという間にそれを確保されてしまった。きっとカルタとか百人一首とかは無敵の強さを誇っていたにちがいないと確信するほどの手さばきだ。

「んふふふふふ~♪ キョン、あっさりサインしちゃったけど、これがどういう意味だかわかってる?」
 ……一体何をたくらんでやがる? 背筋に冷たいものが走り、そこへ冷や汗が流れるもんだから余計に気持ち悪い。
「これからあんたとあたしは夫婦。当然、隠し事もなし、財産も共有って訳ね。つまりこれからあんたの財布のひもはあたしがにぎるって寸法よ」
「げっ!」
 やっぱりタチの悪い詐欺だった。してやられたな、こりゃ。
 ……でも、どうしてすがすがしい気分なんだよ、俺? why?
 とっとと婚姻届を鞄にしまい込むとハルヒは、
「さて、さっき言ったとおり、明日の日曜日は休んで良いわよ。来週に向けてたっぷり休養をとって起きなさい」
「ってことは、来週は何かあるのか?」
「来週は3連休じゃない! こんな活動のチャンスを逃してたら、いつやるって言うのよ! あ、みんなもちゃんと呼んであるから、安心して」
 相変わらずハイテンションな奴だ。俺も少しその元気を分けてほしいもんだね。
 と、ハルヒは何やら妙に慎重に鞄を持ち上げると、
「さて、あたしは来週の準備があるから帰るわよ」
「おい、さっきの婚姻届、役所に届けなくていいのかよ?」
「どうせ、今日はやってないでしょ。あたしが平日暇なときに出しておくわよ」
 本当にムードもへったくれもない奴だ。二人でなかよく届けるのが、一般的かつ俺の理想的な夫婦というものなんだが。
「じゃあ、俺も帰るか。来週はいろいろあるようだからな」
 俺はそう伝票を持って――って俺何も注文してねえよ――喫茶店を出ようとしたが、ハルヒに突然それをひったくられる。
 ハルヒはそれを持って背を向けたまま、
「まあ、こんな日だもんね。たまにはあたしがおごるわ」
 こんな日がどんな日なのかは知らないが、俺は何も飲んでも食ってもいないんだからおごりじゃないだろ。
でもまあ、せっかくのハルヒ様のおごりだ。無粋なつっこみは控えておこう。
これもきっとハルヒなりにムードを出しているんだろうからな。そうだよな、そう思わんとやってられん。
 でも、ハルヒがいつも通りに振る舞っているという気持ちもわからなくない。だってそうだろ?
たかが紙切れ一枚で俺たちの関係がかわっちまうってのはゴメンだしな。
 そんなこんなで喫茶店を出る俺たち。そして、ハルヒはびしっと俺の顔を指さして、こう言った。
「これからもよろしくね、キョン!」
 ああ、こっちもよろしく頼むぜ。
 そんなある晴れた日のいつもと同じ日常だった――



ある晴れた日の昼休みのこと。

キョン「…なあハルヒ」
ハルヒ「なに」
キョン「お前って入学当初からずっと学食みたいだけど…いつも一人で食ってんのか?」
ハルヒ「そうよ。それがどうかした?」
キョン「…いや。別に」
ハルヒ「何よそれ。だったら聞いてくんな」
キョン「あ、ああ。スマン」


その後、わたしが学食でいつものように一人で食べているとキョンが来ました。
キョンってば
「たまには学食も良いなと思ってさ。…えっと…他に席空いてないみたいだし…隣り良いか?」だって。

そのときは「勝手にすれば」なんてついキツイこと言っちゃったけど、本当はすごい嬉しかった。

次の日バカの谷口から聞いた話によると、「昨日キョンはお弁当を忘れたらしく、それで学食に行った」みたい。

…だとしたら昨日キョンの机の奥に入ってたお弁当。…あれは一体誰のだったんだろう?


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