第1話
a Re-Birth in the Best Dream

 

 四月。
 先だっての学年末テストにおいて、ハルヒ大先生のお力で何とかそれなりの好成績を修めた俺は、クラス分けを発表する張り紙で同じクラス内に俺とハルヒ、そして何と長門の名までもを発見して愕然とし、とりあえず退屈だけはしないだろうと半ば現実逃避をしながら教室へ向かっていた。
 やっぱりこれはハルヒの変態的パワーによるものなのか、それとも長門が情報操作でもしたのだろうかと考えを巡らせていると、
「…ん?」
 職員室の前、見知らぬ女子生徒とすれ違う。…いや、違うな。知り合い…だったのか?
「…まぁ、考えても仕方ないか」
 とりあえず、教室へ急ぐ。新学期からいきなり遅刻したら目も当てられないからな。

「ちょっとキョン、遅いじゃないの! 新学期からいきなり遅刻したら目も当てられないわよ!」
 開口一番、相も変わらず俺の真後ろに陣取ったハルヒは、教室に入ってきた俺を見るなり怒鳴りつけやがった。
 頼むから心を読むのはやめてくれ。プライバシーも何もあったもんじゃない。
 逃げるように視線を巡らせると、教室の隅のほうでこちらも今まで通りに読書をしている宇宙人モドキを発見した。
 目が合った。
「………」
 その目は俺に何かを伝えようとしている風でもあったが、なあ長門よ、頼むから言いたいことがあるときは地球の言語を使ってくれ。あいにくと俺はアイコンタクトを読み取る術は習得してないぜ。
「ちょっと、聞いてんの!? こっち向きなさいよ!」
 なんて事をどうにかして視線に乗せられないかと試行錯誤していると、我らが団長様の馬鹿力によって強制的に首を捻られた。こいつめ、俺が鞭打ちにでもなったらどうしてくれるんだ。
「知らないわよそんなの。それよりね、キョン。スクープだわ! ビッグニュースよ!!」
 わかったから耳元で叫ぶな。
「何と、このクラスに今日から転校生が来るらしいの! ねえキョン、転校生ってどんな奴かしら?
 宇宙人? 未来人? 超能力者だったりして!?」
 はしゃぐのはいいが、その3種類は全員SOS団にいるだろうが。
 しかし、だ。転校生ねえ…。古泉みたいな奴は勘弁してほしいが、それ以外なら別にどんな奴だって構わないさ。SOS団に引きずり込まれる前に他の部活に引き取られることを祈るのみだ。
 俺のためにも、な。

「今日は転校生を紹介するぞ」
 去年に引き続き俺とハルヒの担任になった岡部は朝のHRで元気よく言った。
 ハルヒは意外とこの体育教師のことも気に入っていたのかね。
「入ってきてくれ」
 そう促され、教室に入ってきた生徒の顔を見た瞬間、室内の空気が一変した。
 それはそうだろう。俺だって、反射的に立ち上がりそうになるのを何とか堪えるので精一杯だったからな。
 思わず長門のほうを振り返る。その黒耀の瞳には、今度こそ簡潔な
  心配ないから
 というメッセージが込められていた。
 壇上に視線を戻す。僅かに蒼みがかった黒い髪、少し太めの眉がチャームポイントのとびきりの美人は、
「朝倉涼子です。皆さん、また一年間よろしくお願いします」
 宇宙に座する情報統合思念体、その対人類コミュニケート用ヒューマノイドインターフェース。
 長門のバックアップにして俺を昇天させかけた急進派、朝倉涼子その人で間違いなかった。


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