眠い。昨夜は少し夜遅くまで裕さんともう一人の女の人の話を考えていたからだ。
もしも昨日の夜にも祟りがあったなら誰かが死んだことになる。だから俺は少し怖かった。
しかし、
「遅いわよ!罰金!」
「そりゃあ悪かったな・・・それじゃ今度なんかおごってやるよ!」
「あら、何か良いことでもあったの?」
「いや、別にそんなんじゃねぇよ」
とりあえず俺は昨日の胸のつかえが一つ取れた気がする。こうしていつもどおりの朝を迎えることが
出来たからな。
「おはようございま~す」
よし大丈夫だ、ここまでも順調。

       ・
       ・
       ・
ガラッ
「おはよう有希!古泉君」
「おはようございます」
「(コクン)」
いつもどおりさわやかにあいさつを返す古泉、そしていつもどおり無言でうなずく長門。
大丈夫。いつもどおりだ。
見た感じクラスメートも全員いる。いつものようにくだらない雑談をしたりして朝の時間を
過ごしていた。
「ははっ・・・」
「何よいきなり笑ったりして、よけいバカに見えるわよ」
「いや、気にすんな」
そうだよな、誰かが祟りなんかで死ぬわけない。過去4年の出来事だって偶然起きた単なる事件で
しかないのだろう。昨日の不安は杞憂に過ぎなかった。そんな俺をつい口にだして
嘲笑っていたのだ。全く馬鹿馬鹿しい。

今日の授業が終わった。やはり俺の思い過ごしでしかなく、そんなことすら忘れていてしまっていた。
「ハルヒ、今日は何をやるんだ?」
「何よ、珍しく積極的じゃない。そんなに勝つ自信でもあるの?」
ガタガタと机を動かしながら俺は聞いた。SOS団の活動の始まりだ。
「さて、今日の活動は・・・この推理ゲームをやるわよっ!!」
「なんだそれ?初めて見るぞ」
「涼宮さんは国内、国外問わず多くのゲームを持っていますからね、我々の知らないゲームもかなり
持っているようですよ」
「へーカード形式か。外国の奴っぽいな」
「ふえぇぇ、私そのゲーム苦手ですぅ」
「大丈夫よ、みくるちゃん。今日キョンもいるんだから!」

・・・
いざ初めては見たものの、、、始めて5分とかからずに俺には難しいゲームだということに
気づかされた。思ったよりも頭を使うぞこのゲーム。
「う~~ん・・・」
「わかったわ!犯人は有希!場所は図書館で凶器は毒薬!!」
「おみごと!さすがは涼宮さんですね」
「「うぅぅーーーー」」
俺と朝比奈さんは2人そろって頭を抱えていたのだ。頭の回転が速い奴は強いだろうが、あいにく
俺は自信を持って頭が良いとは言える立場ではないのだ。朝比奈さんは俺より頭が良いのは確実だが
このゲームには不向きのようだな。
このままでは2人で罰ゲームになってしまうかもしれない。よし!

ちょうど一戦終えたところだった
「悪い。俺トイレ」
「さっさと行ってきなさいよ!」
     ・
     ・
ガラッ
「あのキョン君もしかして呼びましたか?」
「はい、良かったです。気づいてくれたんですね」
席を立つ瞬間俺はさりげなく朝比奈さんにサインを送り廊下に呼んだのだ。
「あの、朝比奈さん今日のゲームの過去の戦績は?」
「あのぉ・・・実は一回も勝ったことがないんです・・・今日も多分・・・」
「俺もこのまま行くと勝てずに終わってしまいます。そこで、2人で協力しませんか?」
「えっ!?」
「朝比奈さん!団則第二条ですよ、勝つためにはあらゆる努力をする!!」
「そ、そうですね・・・キョン君!やりましょう!」
「じゃあ作戦は・・・で・・・ということでお願いします」
「はいわかりましたそれじゃ私は先に教室に戻りますね♪」
これで俺の罰ゲーム回避の確率が上がった。1人でかなわないなら2人で、よし!これなら・・・

「おっ!ちょうど良かった、今お前を呼びに教室に行こうとしてたんだ」
「先生、どうしたんですか?」
「お前にお客さんだ。玄関で待っているから早く行け」
「あぁ、はいわかりました」
なんだいきなり。ったくこれから朝比奈さんとのコンビプレーが待ってるっていうのに。
しょうがない、手っ取り早くそっちの用事を終わらせるか。
     ・
     ・
     ・
「こんにちは、私、興宮警察署の新川と申します」
「は、はぁ」
なんかやけに渋めの老紳士がそこには立っていた。
「少しお話がしたいのですが、どうでしょうか私の車はエアコンが効いておりますのでそちらに
移動するというのは」
「はぁ」
とりあえず俺も外の暑さには耐えられず、この新川という男の人について行った。
なんて不用心なのだ。

ガチャ
「今日はまた暑いですね」
「はぁ、あの俺に何の用ですか?」
「・・・」
早く教室に戻りたいがために話を促したことに後悔することになった。
「この写真の男性はご存じですか?」
「(ん?誰だ?この人)えーと・・・」
「この方の服にはあなた達の名前が入った落書きがございました」
「えっ?ってことは・・・裕さん!?裕さんがどうかしたんですか?何かあったんですか?」
「・・・では、こちらの女性はどうですか?」
「名前は知りません、でも昨日裕さんと一緒にいた人です」
「最後にこの2人にお会いしたのはいつですか?」
「昨日の晩ですけど・・・何かあったんですか?」
「・・・昨夜この男性が亡くなりました」
は?・・・何を言ってるんだこの人は??昨日の晩にどうしたって?死んだ?誰が?裕さんが?
「・・・し、しんだ?」
『毎年綿流しの晩には必ず人が死ぬのです』昨日あの女の人に言われた言葉がよみがえる。
起きてしまったのだ、オヤシロさまの祟りが。連続怪死事件が。
「それで死因が奇妙でして、遺体を見ると喉が引き裂かれておりました」
「えっ・・・?な、ナイフとかでですか?」
「いいえ、どうやらご自分の爪で引っ掻いたようです」
爪?この、手についている爪で?自分の喉をガリガリと引っ掻いたっていうのか? 
「うっ・・・」
吐き気が・・・
「ほかにも奇妙な点がありまして、裕さんは死ぬ直前に複数人と争ったような外傷がありました。
 そばに角材が落ちていましたので、恐らくそれで対抗したのではないかと」
「・・・」
俺は未だに言葉に出せないでいた。
「これは自殺ではございません。れっきとした殺人事件なのです。それも村ぐるみによる事件である
可能性が高い」
「村ぐるみだって!?」
「・・・殺された時刻はあなた方と別れた後すぐであると思われます」
そんな、俺たちと別れた後にはもう裕さんは、、殺された?
「それじゃ、この女の人は?」
「行方不明です」
「どうして裕さんが殺されたんですか?」
「おそらく裕さんがよそ者だったからではないかと」

「よそ者!?なんだよそれ!」
「落ち着いてください。この連続怪死事件のそれぞれの年の犠牲者を挙げていくと、
1年目はダム工事の監督、2年目はダム誘致派の夫婦、とここまでは村の敵であると考えられます。
しかし、3年目はダム工事の反対運動に消極的だったというだけ。4年目には誘致派の夫婦との親戚
というただそれだけ。つまり、年々殺される理由が段々と希薄になっていくのです。ですから5年目の
今年の理由がよそ者だったからという理由は十分考えられます」
「そ、そんな・・・」
「そこであなたに協力をお願いしたいと思いまして」
「きょ、協力って何をすれば良いんですか?」
「あなたが普段通りの生活をしている中でおかしなことを聞いたり見たりしたら私に教えて欲しいのです」
「はぁ・・・」

「あと、このことは他言無用でお願いします」
「わかりました」
「特にご友人のみなさんには」
「えっ?なんでだよ!あいつらが事件に関わってるって言うのかよ!!」
「そうではございません。今回の事件が村ぐるみで行われている可能性が高いため誰がどこまで
関わっているのかが不明なので黙っていて欲しい、というだけのことです」
「で、でも仲間に隠し事をするなんて・・・」
「それではご友人には心配をかけたくないから、というのではいかがでしょうか?」
「・・・・・・」
    ・
    ・
    ・
バタン
「それではよろしくお願いいたします」
「・・・」
なんだかうまく丸め込まれた感じだ。
村ぐるみで行われた可能性、そんなのあるわけ・・・ないだろ。
でもどうしてハルヒも朝比奈さんもあのとき事件のことを教えてくれなかったんだろうか。
この後教室に戻った俺だったがゲームに夢中になることはできなかった。


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