「ふぅ…」
久しぶりの休日は京子と『お出かけ』だったわけだが…


『お出かけ~帰路にて~』


現在俺は車を運転しており、京子は助手席で絶賛睡眠中だ。
…そう言えば昨夜は遅くまで今日の準備していたもんな。そのおかげか弁当はかなり美味かった。
普段、会社で食べる愛妻弁当も捨て難い。だが雲一つ無い青空の下、澄みきった空気の中、2人で食べる弁当もなかなかオツなものだ。


ギッ


前の車が止まっているので減速、停車、ハンドブレーキをかける。
今日は遠出をしたんだが…まさか帰りに渋滞に遭うとは思いもしなかった。
「んっ…」
ブレーキの衝撃が感じられたのだろうか…
京子は助手席の座席を倒し、窓側を向いて夢の中にいるのだが寝返りで俺の方を向く格好へとなった。


栗色のツインテール、閉じられた瞼から伸びる長い睫、可愛くツンととんがった鼻先、小さく結われた唇に傷一つない肌を…俺は見つめていた。
「やっぱり綺麗だな」
なんて呟いてみた。普段は絶対に口にしないであろうセリフだ。京子の前じゃ恥ずかしくて言えるわけない。
「ふぅ…」
どうやら前方はまだ走り出す気配すらない。シートベルトを外して軽く背や腕を伸ばし座席を後ろに引いた。


「さすがに今日はハシャぎ過ぎたか」
だってもうこんなに暗いもんな。車内の時計を見ると既に8時を廻っている。
まあ既に仕事の準備はできてるし多少は帰宅が遅れても良いか。
再び京子を見やる。
「やっぱり綺麗だよな、コイツは」
そんな呟きをこぼし小さな頭を撫でる。
「んっ…ふぅ…」
起きたか?
「…起きますよ」
過去に訓練されたからだろうか、こういった事には結構敏感だ。
「まだ寝ててもいいぞ」
どうせ暫くは渋滞を構成する歯車の一つだろうさ。
「大丈夫ですよ。十分に寝させてもらいましたから。なんなら運転変わりましょうか?」
「いや、それこそ大丈夫だ。京子は隣にいてくれるだけで俺には十分なんだぜ」
「はいはい、ご馳走様です」
んっ、と瞼を閉じ唇を突き出してきたので期待に応えてやることにした。
ただ唇を重ねるだけのキス、俺たちにはこんな簡単な事でも愛を分かち合えるんだ。
唇を解放し、頭を撫でてやる。擽ったそうに目を細めたり…肩を竦めたり…その仕草一つ一つが可愛かった。
前方はまだ走りそうにない。
もう暫くは二人だけの『こんな時間』が続くな…と感じつつも遠くまで延びる赤いテールランプが綺麗だな、とも思っていた。


END

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最終更新:2020年03月13日 01:24