こんにちは。今日はわたしこと朝比奈みくるがお相手を務めさせていただきます。
文章はうまくないと自分でも思うんですけど、最後まで頑張りました。
ちょっとおかしかったお話をお届けしたいと思います。

いつものように放課後は、部室に集合です。
今日は涼宮さんとキョンくんが遅れています。掃除当番かな。それとも涼宮さんに用があって、キョンくんが巻き込まれているのかも知れません。
そういうわけで、いま部室には三人しかいません。
いつもにこにこ笑顔を絶やさないけど、ときどき怖い目でわたしを見る古泉君。良く言えばミステリアス、悪く言えば無愛想な長門さん。
そして時をかける少女であるわたし。
その三名で、長テーブルを囲んでいます。
どうせ二人がこないと始まりませんから、それまで三人でお茶しながらお話することにしたのです。
「しかし、あのお二人はどこまでいきましたかね?」
古泉君が目を細めて、お茶を一口すすりました。
「……あの二人が、手を繋いで歩いてるところ、この前見ましたよ」
やはりここはとっておきのお話をしないとだめですよね。
「ほう。なかなかあの二人もやりますね。どこで見ました?」
「日曜日に友達とお買い物にいったんですけど、そこで」
「私も見た」
長門さんがぽつりと言いました。
「長門さんもですか?」
「公園で二人が鯉に餌をやっていた」
「それで?」
おずおずと古泉君が長門さんにたずねました。
長門さんは湯飲みに口をつけて、ぼそっと一言だけ言いました。
「それだけ」
なにが不満なのかといいたげな瞳が印象的ですね。


「ひょっとして告白したんですかね? あの二人」
「よくわかりませんね。まあ順番どおりに恋をする必要などないですけどね」
「でも、あの二人だとそっぽむいたまま愛の告白とかしてそう」
ひしと抱きしめ合って、お互いにそっぽ向いたまま熱い愛の言葉を交わす二人。
ちょっとシュールな気もしますけど、あの二人ならやりそうです。
「告白されるなら、ラブレターがいい」
珍しく長門さんが主張しています。年末の一件、忘れてないみたいですね。
「そうですね、長門さんがもらったラブレターもあるし、電話もあるし、メールもあるし、直接会うのもありだしと、告白は千差万別ですね」
「ラブレターはなんかいいですね。ちょっとロマンティックで」
好きな人からもらったラブレターなら、額に入れて飾っておきたいです。それは大袈裟としても、ずーっと取っておきますね。
もし、好きじゃない人からもらったら……禁則事項ですね、それは。
「もし涼宮さんがラブレター書いたら、どんな感じになるんでしょうね」
古泉君が面白そうな顔で言います。想像してるのかしら。
「罵詈雑言がびっしり書き連ねてあって、最後に『でも、好き』で締めたラブレター渡しそうですよね……
そんなのもらっても、本当に好きなの?って疑いそうですけど」
そう言いながらわたしはなんとなくブルーな気分になってしまいました。
「まあ彼なら大丈夫でしょう。多分」


「で、最初に手をつなぐきっかけ作るの、すごく難しいですよね」
「朝比奈さんからそういう話題を振ってくるとは思いませんでしたよ」
古泉君はすこし驚いたように言いました。
「そりゃわたしでも、そういう経験ぐらいありますよ」
禁則事項中の禁則事項ですけど。
「手をつなぐと、どのような効能が?」
長門さんはほんの少しだけ不思議そうな表情でたずねました。
「心がほかほかして、とても幸せな気分になるんですよ。
なんか、言葉で話し合うより、ずっと分かり合えるような気がするんです」
わたしはゆっくりと長門さんに説明してあげました。
もっとも長門さんはお茶をずるずる飲んでいて、聞く気はまったくないようですけど。
「あの二人が手をつなぐきっかけとして、適切な状況は?」
お茶を飲み干した長門さんが、開口一番話し出しました。わたしは新しいお茶を注ぎました。
「ややこしい言い方をしますね、長門さんは」
すこし困った顔で古泉君が言います。
「やっぱり、あれじゃないですか。迷子になると困るとかなんとか理由つけちゃうの」
「そこで『はぁ?』と言われたらかなり凹むんですよね……」
まるで過去にそういう体験があったみたいに、古泉君が言いました。
「道を歩いてる時に、車が来るからって手を貸して、そのままとか」
「そういう手がありましたね……」
「あとは、えーっと、手の大きさくらべっこしよーよって、そのままつないじゃいました」
「つないじゃいました?」古泉君がすこし驚いたように言いました。
「あ、いや、なんでもないです。忘れてください。今すぐ」
「私なら、安全のために手をつなぐことを提案する」
「甘さは一切感じられませんが、長門さんらしい意見ですね」
古泉君は苦笑しながら言いました。
「ありがとう」小首をかしげながら長門さんがいいます。
「別に褒めてません……もうすこし考えた方がいいかと」


「あの二人のラブシーンって、どんなんでしょうね」
古泉君の湯飲みにお茶を注ぎながら、わたしは言いました。
「意外と雰囲気に流されちゃうんじゃないかと思いますが……」
古泉君はなぜか遠い目をしながらいいました。
「あたしも、そういうのすごく弱いです」
そういう経験が、わたしにもあるんです。詳しくは禁則事項にかかるので説明できませんけど。
「……僕も弱くて、引かれたことがありますよ……」
古泉君は苦虫をかみつぶしたような顔をしています。きっと過去になにかあったんでしょうか?
「私は動じることなどない」
長門さんはきっぱりと宣言するように言います。
「あなたは例外です」
あきれたように古泉君が言いました。


がばっと大きく扉が開いて、涼宮さんが入ってきました。
女の子なのに、威風堂々という言葉がこれほど似合う人を、わたしは知りません。
話題の切れ目で良かったですね。危ない危ない。
「みんな、テーブルに集まって珍しいわね。なに話してたの?」
「最近の円安傾向と、長引くイラク混乱の関連性について」
長門さんがしれっと言いましたが、涼宮さんの耳には入ってないようです。
「早くいいなさい?言わないと、怖い怖い罰ゲームが待ってるわよ?」
や、やばいです。目が怒ってます。こ、怖い。
「彼はどうしたのですか?」古泉君はなぜか落ち着き払っています。
「キョンのこと?あいつはちょっと寄るところがあるっていうから、あたしだけ先に来たの。
もうじきくるわ。でも、それがどうしたの?」
「……実は彼の話をしていたのですよ」
「キョンの話?」
「ええ。彼がどんな彼女を作るかって話題ですよ」
「ふ、ふーん」
「ああ見えて、優しいところもあれば、頼りがいのあるところも見せますからね。多少とっつきにくい点はありますが、それもまたご愛嬌と」
「な、なるほどねえ」
すこし涼宮さんの表情が和らぎました。すごい。古泉君、こんな隠し球もってたのね。
いままでイマイチ頼りにならないなぁとか思ってたけど、見直しちゃいました。
「それでどういう話になってたの?」
涼宮さんは団長席ではなくて、長テーブル側の椅子に腰掛けました。ちょうど部室の扉に背を向けるような位置です。
「まぁ、具体的な人物像には踏み込んでませんよ。彼ならどういうきっかけで手を繋ぐなんてのが話題に上がってましたけどね」
「多分ねえ、あいつなら迷子になると困るからとかいいながら手を繋ぐのよ。そうに決まってるわ」
ああ、やっぱりそういう理由で繋いだんですね。……わたしはマイノリティなんですね、きっと。


「あとは雰囲気に流されるか否かが話題になっていた」
長門さんはそう言うと、空になった湯飲みをわたしに見せました。そんなことしなくても、注いであげますって。
「涼宮さんはどう思われますか?」
「あいつはそういうのホント弱い……んじゃないかと思うわ」
「実は僕もそうなんですよ……」
今度は思い詰めたような顔をしながら、古泉君が苦しそうに言いました。
自分で自分のトラウマをえぐる必要はないと思うんですけど。
「まぁ雰囲気に流されるのは仕方ないと思うのよね……」
「経験がおありで?」
古泉君が興味深げに聞きました。
「あいつの話」なぜか涼宮さんは天井を見ながら言いました。「あいつのね」
「でも、キョンくんはどんな女性がタイプなんでしょうね?」
わたしは話題を変えてみました。
「無口で、おとなしい女性がタイプ?」
長門さんはわりと都合よく考えるタイプのようです。
「やっぱりいろいろ柔らかいお姉さん。がタイプかも?」
わたしも乗っかってみました。ちょっとぐらい夢をみてもいいですよね。キョンくんなら断る理由もないし。
「涼宮さんはどう思われますか?」と古泉君。
「んーどうなのかなぁ。わかんないわね」
「我々の中で、一番彼に近いのが涼宮さんですが……」
さらりと古泉くんが核心に触れていますが、涼宮さんは上の空の様子です。
「そうねぇ……意外と、ズケズケ物を言うタイプが趣味かもしれないわね。
きっと尻に敷かれたがるタイプなのよ。キョンは」
やっぱり涼宮さんが一番自分に都合よく考えるタイプでした。


「キョンくんって、どうやって女の子にアプローチするんでしょうね?」
わたしはだしそびれていたおせんべいを机の上に出しながら言いました。
「ちょっとづつ距離を縮めて行くってパターンでしょうかね。王道ですが」
古泉君がおせんべいに手を延ばしつつ言いました。
「そうね」涼宮さんがおせんべいと手にとって、ぱきんと割りました。「無理にでも話題作ったりして、頑張りそうね」
まるで経験を語っているかのように聞こえます。
「まあ、きっと目的を達成するまではめげませんよね」
「意外に頑張り屋さん」
長門さんはそう言って、おせんべいをひとつ取り、ちまちまと食べ始めました。
「それはまあ認めなくもないけど、キョンに引っ掛かる女の子はそういないんじゃないのかしらね」
目の前にいるような気がしてなりませんが、わたしの気のせいでしょうか?
「でも妹さんの友人とデートした実績がありますね」
「あれはデートって言わないでしょ。結局いいように使われただけよ」
馬乗りになって、相手が誰かを問い詰めてたのは、誰でしたっけ?


「でも、小4で中3のお兄さんと遊ぶってのはなかなか勇気いりますよ?」
わたしもおせんべいを一つとりながら、言いました。
「そりゃまぁ、そうかもしれないけど」
「妹の友達であっても、なかなかできることじゃないですね」
古泉君がさらりと言いました。涼宮さんの唇が一瞬、とがったように見えましたが、そのままおせんべいをかじっています。
「あいつ、ひょっとしてロリコン?」
「もうすぐ新入生も来ますからね……もしそうだったら、彼の毒牙に」
古泉君があわてて言葉を切りました。涼宮さんがものすごい目でにらんでいたためです。
「そんなことさせるわけないでしょ。このあたしが目の黒いうちは、そういう破廉恥なことは絶対させないわよ」
一生、監視するつもりなんでしょうか?それともものすごい遠回しな告白なんでしょうか? よく分かりません。
「失礼しました。その通りですね」
「そうよ。あいつがね、下級生見て鼻の下延ばしたりした日には、あたしに出会ったことを、絶対後悔させてやるんだから」
「……すでに後悔してるぜ」


その声にはっとして振り向くと、なんとキョン君が立ってました。部室の扉を支えに立っていました。眉をひそめて、かなりご立腹のようです。
涼宮さんを冷たい目で見ています。
「……いつからいたの?」
「『ロリコン?』のあたりだな」
「声ぐらいかけなさいよ」
「盛り上がってるところで、水を差すのもなんだからな」
「それより後悔してるって何よ。どういう意味よ?」
「そのままの意味だぜ?意味を知らねえんなら、辞書引け。載ってるぞ」
「な、なに怒ってんのよ。別に悪口いってないし」
「ロリコン呼ばわりされて、黙っていられるか?」
「そ、それはあんたの日頃の行いが悪いからであって」
「どの行いが悪いってんだ?」
「この前、あんた違う女の子見てたじゃないの。そういう態度が癪に障るの!もうちょっと…気つかってくれてもいいじゃない!」
「それとロリコンがどんな関係があるんだ!」
「大有りよ!」
問題発言も一部ありますが、そこに突っ込んでる場合じゃありません。
どうしましよう。できれば、口論はどっか他でやってほしいんですけど。
古泉君は微笑みを崩さず、見守るつもりのようです。まあそれしかないですよね。この場合は。
こっそり外に出ようにも、キョン君が扉の前にいるので、出れません。
長門さんが席を立ちました。ぽてぽて歩いて、無表情なまま涼宮さんとキョン君の間に立ちます。
二人がきょとんと長門さんを見守っています。長門さんが二人の手をつかみ、くっつけ始めました。
「ちょっと有希」
「なにするんだ、長門」
二人ともうろたえていますが、長門さんは動じません。そして無理矢理握手するような形にしてしまいました。
「これでいい」
長門さんは満足げにつぶやきました。そして二人を交互に見上げながら、こう言いました。
「二人の平和のため、手を繋ぐことを推奨する」
ああ、長門さんは少しだけ考えたんですね、ほんとに少しだけ。


気勢をそがれてしまった二人は、おとなしくなりました。
キョンくんは古泉君と人生ゲームを始め、涼宮さんはいつも通りネットサーフィンを始めています。
わたしはお湯がなくなったので、また沸かしているところです。
長門さんはいつものように読書を楽しんでいます。
いつもの部活です。すこしどきどきしたけど、今日も楽しくすごせました。
ずっとこんな日が続けばいいのに。


終わり


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