ある日の放課後のSOS団もとい文芸部室―

すやすやと眠るキョン
するとキョンをつっつき起こそうとする長門
「…起きて」
クークー…
キョンに起きる気配はない。
「…起きないとキスする」
彼女は彼の耳元にそっと囁く。
ガバッ!
チュッ♪
「~~~?!な~が~と~!!お前!俺ちゃんと起きただろ?なんでするんだよ!」
俺は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「…したかったから」
そんなあっさりと言うな!
けど俺だけが分かる程度に頬が少し赤いぞ。
「~~!長門…ホント頼むからさぁ、その癖は治してくれよ…」
長門は二人きりの時は何故か俺に事あるごとにキスを迫ってくるのだ。
長門ってキス魔だったんだなぁと今では半ば諦めの境地に入ってしまっている。
いつからこんな事になっていたかは思い出せないが、たぶん以前の自分がこの長門と会っていたら間違いなくまた世界が改変されてしまったのかと必死に栞を探し回っていることだろう。
…!
扉の向こう側に誰かの気配を感じたので、急いで冷静になろうと努める。
「…嫌」
あなたこんなキャラでしたっけ?有希ちゃんもとい長門さん。
最近何かホントにおかしいぞ?
「…ハァ…」
思わず溜め息が出てしまう。

逃げていくほど幸せのストックは持ち合わせちゃいないので安心だ。

最近感情が表に出ることが多くなったのは喜ばしい限りなのだがいかんせん方向性が間違っちゃいないか?
勿論嫌な訳じゃないのだが俺としてはもうちょっとTPOに気を遣って欲しい。
「ごっめ~ん、遅れてー!」
けたたましい音を立ててドアが勢いよく開く。我らが団長のお出ましだ。
毎回思うがいい加減ドアが壊れるぞ?
「こ、こんにちはぁ~」
続いてマイスウィートエンジェル朝比奈さんが入ってくる。
ああ、あなたを見られるだけでで今日この部屋に来ていた価値があります。
「おや、長門さんと二人きりでしたか。お邪魔だったでしょうか?」
そこのにやけ面うるさい。
長門もうっすらとほおを染めるんじゃない。
恐怖の大魔王に変な誤解をされかねんだろうが。
「ちょっとキョン。あんた有希に変なことをしてないでしょうね?」
ほら、いらぬ誤解をされただろうが。
ハルヒは眉をつり上げ、視線で、何をしてた?と尋ねてくる。
「何もしてねぇよ」
肩をすくめていつものように「やれやれ」と未だにジトーッとした目をしてくるハルヒに返す。
なんだか最近ハルヒのあしらい方が上手くなってきた気がする。
嬉しくも何ともないが。
「あっ、じゃあお茶を入れますね」
朝比奈さんがいつものようにお茶をみんなにだそうとする。
しかし今日の俺はどこかおかしかった。
毎回朝比奈さんはみんなにお茶を出したり、メイド服に着替えたりしていて大変なのではないのだろうか?
いつも健気に振る舞っているが本当は少し疲れていたりするんじゃないか?
「あ、あの~、キョン君どうしたんですか?恐い顔してますけど?」
麗しき天使が俺のことを心配そうに見つめてくる。
いかん、つい考え込んでしまって心配させてしまったみたいだ。
「朝比奈さん、今日は俺にお茶を入れさせてくれませんか?」
それにいつも世話になっているのは悪いしな。
「「「えっ!?」」」
これにはハルヒ達も驚いたようだ。
長門も本から目を離しこちらを向いている。
古泉はどうでもいい。
「いつもお茶を出してもらうばっかじゃ悪いと思いまして。たまには朝比奈さんに休んで欲しいんです」
「えっ…でも…」
「面白いじゃないキョン!ちゃんと私たちを満足させるようなお茶を出して見せなさい!それこそみくるちゃん以上のをね!」
突然のハルヒの発言により今日のお茶だし係は俺に決定した。
朝比奈さんを席に座らせてからお茶を作り始める。
といってもお湯を沸かしてお茶っ葉をいれるだけだ。
たまに朝比奈さんがお茶を作っているところをぼーっと見ていたのでこんな感じだと思うのだが。
…よしできた。
少し飲んでみたが朝比奈さんの入れてくれるお茶までとはいかないがなかなか上手くできたんじゃないかと思う。
早速皆に出しに行く。
まずはやっぱり団長様だろう。
本当なら朝比奈さんに最初に渡したいところだが、こいつに一番先に渡さないと後がうるさそうだ。
「おっそいキョン!早くよこしなさい!」
こいつお茶を入れてやったのに何て言いぐさだ。
しかし俺はここであることに気がついた。
朝比奈さんはいつも笑顔でお茶を俺たちに渡してくれていたな。
ここは俺もいらつく気持ちを抑えて笑顔で渡すべきだろう。
「おまたせしました。どうぞ」ニコッ
「!!?ゴ、ゴホッ!!(な、何で急にそんなかわいい笑顔で見てくんのよ!お茶吹いちうじゃない!)」
いきなりどうしたこいつは?
そんな勢いで飲むからむせこむんだよ。
せっかく入れたんだからもっと味わって飲んで欲しいね。
そういえば味はどうなんだろうか?
自分では結構上手く入れられたと思うのだが。
「味はどうだ…?おいしいか…?」少し心配そうな顔をして上目遣いでのぞき込んでくる
「?!!?(そ、その顔は反則よキョン!胸がキュンとしちゃうじゃない!)ま、まぁ、キ、キョンにしては上出来なんじゃない?!」
「そうか…良かった。ありがとなハルヒ」ニッコリ
(!!?き、今日のキョンって何かすごくかわいい!!)
ハルヒは顔を真っ赤にして何やら悶えていた。
そんなにお茶がおいしかったのだろうか?
だとしたら嬉しい。
案外お茶を入れるって楽しいな。
これからもたまにはやらせてもらおうかな?
さて、やっと愛らしい未来人にお茶が出せる。
俺が今このようなことをしているのはこのお方のためだからな。
「はい、朝比奈さんどうぞ」ニコッ
「ふ、ふえぇっ?!(キ、キョン君かわいい…)あ、ありがとうございますぅ!!」
「あの朝比奈さんどうですか?朝比奈さんほどは上手く入れられていないと思うんですけど…」
「………(そういえば私っていつもキョン君に名字で呼ばれてるんだな…名前で呼ばれてる涼宮さんがちょっと羨ましいなぁ…)」
「?どうしたんですか朝比奈さん?」
まさかまずかったのか?
「あ、私も涼宮さんみたいに名前で呼んで欲しいなって…ってす、すいません、何でもありませぇん!」
「名前で…ですか?」
「あ、あのっ、さ、さっきのは本当に何でも―」
「みくるさんお茶の味はどうですか?」ニッコリ
「ふ、ふええぇぇ??!!(い、いきなり名前を呼んでくれてその笑顔だなんて、そ、そんなの反則だよぅ!!)あ、あの、すすすすごくおいしいですぅ!!」
「そうですか?みくるさんに褒めていただけるとは嬉しいです」ニッコリ
(はわわわわわ、なんだか今日のキョン君すごくかわいいですぅ…)
朝比奈さんはお茶を飲んだ後何故か真っ赤になってフリーズしてしまった。
俺朝比奈さんに何かしたっけ?
とりあえず読書好き宇宙人にお茶を出すことにする。
「ほら、長門。味わって飲んでくれよな?」ニコッ
「!?(彼の顔を確認、大量のエラーが発生した。何故?)…ありがとう」
「どうだ?うまいか長門?」
「…(涼宮ハルヒと朝比奈みくるの二人は彼に名前で呼んでもらっていた。それを見て私は先ほどとは違うエラーが発生した。私も彼に名前で呼んで欲しい…何故かは分からない…だがこれは最優先事項)」
「…長門?おいしくないのか?(長門にまずいってはっきり言われたら俺はたぶん今すぐ窓から身を投げることだろうな…)」某ア○フルのCMのチワワのごとく長門を見つめる
「!!??(またも大量のエラーの発生を確認。胸部が締め付けられるような感覚を覚える。更に顔面の急激な温度上昇、心拍数の著しい増加も確認。標準設定に戻そうとするが戻せない。何故?)…そんなことはない。わたしはおいしいと感じている。ただ…」
「ただ…何だ?」
「あなたは先ほど朝比奈みくるのことを名前で呼んでいた。私という個体もあなたに名前で呼ばれることを望んでいる。しかしあなたが嫌なら私は―」
「有希ありがとな(正直名前なんてキスに比べたらどって事はないからな…)」ニッコリ。そしてナデナデ
「?!??!?(彼が満面の笑みで私を個体名称の名前部分で呼んだのを確認。そして頭部に彼の手による圧力を感じた。これまでにないくらいの大規模なエラーの発生を確認。しかし心地よいエラー。思考力が低下する。速やかにこの状況を打破しようと本に目を向ける。しかし本の内容が全く頭に入ってこない。彼の先ほどの笑顔が何度も浮かんでくる。何故?)」
嬉しかったのでつい頭を撫でていたら突然長門は本を読み始めた。
ちょっと調子に乗りすぎたか?
いつもキスしてくるからちょっとした仕返しのつもりだったんだが。
何か長門も顔が普段じゃ考えられんくらい赤くなっているし。
あの鉄面皮が珍しいな。
さて次はにやけエスパーか。
「(やっと僕の番が来ました!さぁ、早く僕にお茶を出してキョンたん♪そして一樹と呼んでね♪ハァハァ…)」
うっ!?なんだこいつ?
何か鼻息荒いぞ。いつもながら気持ち悪いな。
「ほらお茶だ」
「…ありがとうございます(あれ?何か僕にだけすごく素っ気ないよキョンたん?)」
古泉はどうでもいいので適当に渡す。何か気持ち悪かったし。
あっ、何故か少し涙目になってるぞあいつ。
そして今日の本題について朝比奈さんに聞いてみる。
「どうですか?俺も少しは役に立てましたか?」
「あっ、は、はい!もちろんです!(あんなかわいいキョン君が見られるなんて…正直毎日でもやって欲しいですぅ…)」
「そうですか…お役に立てて良かったです」ニッコリ
「?!?!?(だ、だからその顔は反則だってばぁ~!!)」
「あ、あと皆俺の入れたお茶本当においしかったか?ちょっと気を遣ってくれたのかなと思ってさ…そういうの気にせずに正直に感想を言って欲しいんだ。」
「なかなかおいしかったわよ!キョンにしてはやるじゃない!」
「そうです!とってもおいしかったです!」
「…私もあなたの入れてくれたお茶をおいしいと感じた。これに嘘偽りはない」
「僕もこれはおいしいと思いましたよ」
「そうか…良かった…」本日最高の笑顔でニッコリ
ズキュ――ン!!
((((か、か、かわいいっ!!!))))
そして俺は一日お茶だし係の任を無事に終えた。
俺以外の4人が最後まで赤くなって悶えていたり、固まっていたり、にやにやしていたりしたが。正直気味が悪かった。
しかし皆にお茶を出してみんなにおいしいと言われるは確かに楽しかった。
だが俺はやっぱり朝比奈さんのお茶を飲みながらのんびりとするほうが性に合っているようだ。
明日からはまた朝比奈さんのお茶を感謝しながらいただくとしよう。


P.S.
その日の団活終了後キョン以外の皆は部室に残りある会議を開いていた―
「ちょっと今日のキョンはあり得ないくらいかわいかったわ…(うっとり)」
「ホントですね…また見たいですぅ。あのキョン君のかわいい笑顔…(同じくうっとり)」
「…それについていい考えがある」
「ほう?一体どんな考えが長門さん?」
「彼はどうやら朝比奈みくるの疲れを気遣って今日のような行動に出たと思われる」
「つまり朝比奈さんが疲れるようになれば彼はまたあのような行動に出ると?」
「そう」
「…みくるちゃん」
「はいぃ?!」
「ごめんなさい!私たちのために疲れて!明日の放課後はまず部室に向かわずに10キロ走るわよ!もし逃げたら死刑だからね!」
「ひえぇぇぇ!!」
「朝比奈みくる…あなたに拒否権はない。諦めて」
「そういうことですので。頑張って下さい」
「(しょ、しょんなぁ~!あっ、でもそしたらまたキョン君に私を一番気にしてもらえる…)…はいっ、がんばりますぅ!」
「?みくるちゃんにしてはえらく積極的ね?」
「しょ、しょんなことないでしゅよ~」
「まぁいいわ。今日はこれにて解散!明日が楽しみね!(ああまたキョンのかわいい顔が見られるのね♪)」
(明日もまたキョン君に一番優しくしてもらっちゃおう♪)
(…また彼にあの笑顔で頭を撫でてもらいたい…そしてまた彼にキスしたい……ジュル)
(明日こそは僕もキョンたんに!ハァハァ…)

―SOS団、またの名をKOM団(キョンに大いに萌える団)


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