(『分裂』ネタバレ注意!)
あたしは橘京子。超能力者。
これまでごくごく普通の学校生活を送ってきたのだけれど、ある日、本当に突然、あたしは 「ある事」に気がついた。
この世界には、かみさまがいる。
朝、目が覚めてベッドから起きて、カーテンを開けるより早く、その感覚はあたしの中に宿っていた。まるで瞬きや呼吸をするくらいに当たり前に。
県立北高。
ここはあたしの通っている学校じゃない。それに、今日は休日。
だけど、この学校は今日文化祭なのだ。
あたしはある人を確かめにここに来た。
「へい彼女! どうよ? 俺とこのすんばらすぃ文化祭を見て回ったりしてみないかい?」
誰かに肩を叩かれた。振り向くとこの学校の知らない男子生徒がひょっとこのお面をねじったような顔でにんまりとあたしに話しかけていた。
「あたしと……ですか?」
あたしは自分を指差した。まずいわ京子。今回の潜入は極秘なんだから。
魔女がいた。
真っ黒な衣装に三角の山高帽子をつけて、心の奥まで見透かされてしまいそうな目でこちらを見ている。
「あのっ! ななな何でしょうかっ!?」
「……」
話しかけてから手遅れであることに気がついた。
さっきの彼といい、どうしてこうも重要人物とあたしは出くわしてしまうのでしょうか!?
長門有希。情報統合思念体のインターフェース。
「……それ」
「ははははいっ!?」
長門さんはあたしの足もとを指差した。見下ろすと先端に星のついたステッキらしきものが立てかけてあった。慌てて拾って渡す。
「……」
長門さんはしばし黙って星型ステッキの先端を見つめていたものの、やがて何事もなかったかのように振り向いて、無言のまま立ち去った。
何も気づかれてませんように何も気づかれてませんようにっ……!
早くも半分くらいエネルギーを削られた気分になりつつ、あたしはフラフラと校内を歩いた。
今日の目的を思い出さなきゃ。
三年前――。
そう。忘れもしない、あのよく晴れた日の朝。
最終更新:2009年06月21日 13:11