プロローグ

 
 高校2年の足音が春休みの終わりを告げに来る頃、俺は制服姿でハイキングコース級の坂を登っていた。春休みなのに何故制服姿なのか。学生の方なら解って頂けるだろう。
 今日は3月31日、離任式というヤツである。
 長期連休に入って平穏モードになっていた━━━つい先日、キテレツな出来事はあったのだが、それはまたの機会に話すとしよう━━━俺の体にはハードルが高いようで、少し息が上がる。
 「やれやれ・・・」
 このセリフもそろそろ俺の専売特許じゃないのか?━━━なんてくだらない疑問が浮かび上がるくらい呟いているこの言葉も、12月のあの日以来だいぶ意味が変わっている。が、今日は元気印健康優良女にとやかく言われるのかと思うと、呟きたくもなるのさ。
 そう。元気なはずの涼宮ハルヒに。

 教室に着くと、久しぶりの再会を喜ぶクラスメート達に混じらず、1人不機嫌そうな顔で窓の外を眺めているハルヒがいた。うむ、どうしたものか。
 何をそんなに悩んでいるのかというと、俺は昨日行われた不思議探索をすっぽかしたのである。しかも寝坊で。我ながらあっぱれだ。ハルヒが不機嫌そうなのは、つまりはそういう事である。とりえず謝らねば。
 「ハルヒ・・・あー、昨日の事なんだが・・・」
 「何よ」
 ハルヒは窓の方をむいたまま冷たい反応。
 「・・・すまん。次回の探索には必ず参加する」
 俺は手を合わせて頭を下げる。俺が席に座らず、ハルヒの横で立って謝っているのは俺の良心とハルヒの不機嫌顔がそうさせたと思ってくれ。だが、この程度じゃ許してくれないだろう、一体どんな罰ゲームが飛び出すのやら・・・などと考えていると、
 「・・・いいわよ、別に。で?昨日はみくるちゃんとどこで、何をしてたの?洗いざらい吐いたら許してあげる」
 意外にも恐ろしい罰ゲームは飛び出してこなかったが、代わりに聞き慣れた固有名詞が飛び出してきた。
 ・・・朝比奈さん?俺は昨日起きてからずっと妹とシャミセンの相手をしていたのだが。
 「昨日は朝比奈さんも来なかったのか?」
 と、俺が尋ねた所で谷口が話に割り込んできた。
 「何言ってんだ、キョン。お前昨日川のベンチんとこで朝比奈さんと一緒に座ってたじゃねーか。羨ましいったらねーぜ」
 何ですと?俺が朝比奈さんと一緒にいた?馬鹿な。
 「何よ。やっぱりみくるちゃんと一緒にいたんじゃない。これは後でたっぷりお仕置きしなくちゃねぇ」
 ハルヒが不気味に微笑む。どうやら罰ゲームは飛び出してくるみたいだ。いや、今突っ込むのはそこじゃないだろう。谷口が俺に何か言いつつ国木田の方へ行ったところで岡部が入ってきた。
 俺は自分の席に座ってハルヒよろしく窓の外を眺め、疑問を浮かべた。冒頭の疑問なんかより遥かに重大な疑問。ハルヒにしても谷口にしても嘘をついているとは思えない。

 俺の記憶が間違ってるのか・・・?


 第1章へ


|