仕方が無いので車が向かって行った方向に歩いていくはいいが標識もない建物もないないないないない。
ないないづくしで仕方が無いので逆に戻って誰かを待とうと思ったが俺は迷ってしまった。
当然だ。何もないんだから。
しかし俺は思う。これは本当に迷ったと言えるのか?
分からない。道がないんだから。

 

「おやおや、お困りのようですね」
…お前が来ても嬉しくも何ともない。
「そうですか。残念です。僕にはここと向こうとを行き来する手段がある。だからこうしてここにいるんです」
じゃあ俺も向こうに連れてってくれよ。
「できなくはないですが…本当によろしいんですか?」
何が言いたい古泉。こいつの顔から0円スマイルが消える時にはロクなことがありゃしない。
「正解です。だって、僕の言う向こうとあなたの言う向こうとは違う可能性があるんですから」
どういう意味だそりゃ。
「じゃあ聞きますが、僕が言う向こうとはどこでしょう?」
知るかんなもん。
「あっちですよ」
古泉が指をさしたのは俺が立ってる地面だった。おいおい、どうやって来たんだよ。
「それは禁則事項、というやつです。どうです、一緒に来ますか?」
…悪寒がしたので断った。古泉は残念です、と言った。

 

そこに先ほどのと同じ車がバックしながら来た。運転席に森さん、後ろに多丸さん兄弟(×2)、その上に新川さん。
「…古泉、そろそろ時間です」
「そうですか。でも、いざとなったら僕だけでも」
「そうなればわたしたちが埋められることに、」
「分かってますよ、冗談です。それでは」
そう言うと古泉は助手席に乗った。かと思うと件の赤い球となり、車を真っ赤に染め上げる。
これじゃあ古泉はガソリン扱いか?
「まあ言葉で説明するのは難しいのですが、そのようなものです。あなたも乗りますか?」
そう言われて助手席のドアを開けると何故か森さんがいて「どうしますか?」と聞いてくる。
ばたん、とドアを閉めて結構です、と言うと車は超スピードで飛んでいった。
ピカーン。
星になった車は今頃古泉の言う「向こう」に着いてるのだろう。
俺は古泉の機関絡みの言動に関してはあまり信用ができないしとりあえず車と反対側へ向かって歩き出す。
さて、車はどこに行ったんだろうね?
俺は結局、地面に穴を掘って進むしか手段がないことに気づいてしまったのだった。

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最終更新:2007年03月31日 20:53