プロローグ・疑惑のキョン


 俺が大学に入学して初めてのクリスマスも直前に迫った街中がせわしない時期。

 初対面から約4年になるにもかかわらずSOS団は相も変わらず珍妙な活動を続け、それこそ武勇伝なのか珍道中なのか奇譚なのかわからない活動記録を小説風に書けば、すでに紹介した分だけでも息の長いシリーズ物として十分認知されるであろう文庫本8巻程度になる上に、以下続刊予定も数巻分はあろうかという数々の出来事の中、俺にとって、ハルヒとの邂逅に匹敵するぐらいの衝撃と感動を受けたある一つのエピソードを紹介しよう。ちなみにこの話の収録予定は今のところない。

 俺とその人にとっては、ハルヒとの出会い以上に記憶に残る出来事であったかもしれない。

 いつもなら俺視点の独白として語るのがお約束の活動記録だが、今回ばかりはもう一人の当事者しか知り得ない出来事や、男が踏み込むと後悔することの方が多い女の子同士の秘密、俺の頭では決して理解も説明もできない事柄を含んでいるゆえ、その部分に関してはその当事者にて記録いただいた。その点は事前に承知願いたい。



クリスマスも押し迫る年末の週末ともなると巷の飲食店では、忘年会という酒を酌み交わしつつ仕事や日頃の労苦を労い愚痴を言いながら料理をつつくという光景が至るところで繰り広げられ、例えそれが能動的であろうとも義務的であろうとも、師走というだけで取り憑かれたように慌ただしくなる12月の日常をひとときだけでも忘れさせてくれるかもしれない国民的風習である。ここで改めて注意喚起することでもないが、アルコールの一気飲みや過剰摂取は非常に危険なため禁則事項としておいた方がよかろう。

 かく言う俺も、昨夜は卓を囲みながらアルコールをあおり、全国的に冬の3大鍋に入るであろうカニ鍋をつついていたわけだが、訳あって深夜遅く帰宅し睡魔に秒殺され意識を失うこと数時間、太陽が真上に差し掛かる少し前にそれは国税の強制査察のように俺の自宅に乗り込むと説教をし始めた。

「こん…のエロキョンのアホンダラゲッ! いいえ、もうエロじゃ済まないわ。立派な犯罪よ! あーもう、どうしてこんな奴に…」

「ハルにゃ…涼宮さんの言うとおりだっ。キョンくん、どういうつもりだい!」

一人でも100Wクラスの照度を持つ物体が二人揃えば、徹夜明けのぎらつく太陽のように意味もわからず眩しく光り輝くのだが、今日の二人はまるで紫外線殺菌灯のように目に入るのもご遠慮したい異様な光を放っている。浴びているだけで体が劣化を通り越して風化していきそうだ。いや、いっそしてしまいたい。ハルヒならまだしも、何やってもたいがい笑ってる鶴屋さんまでマジギレしてるんだぜ?

 俺は二人の前で、壁に落書きして頑固ジジイに絞られるガキのように自分の部屋で正座させられ、状況証拠のみで拘束され助けのない取調室で自白を強要されてるような気分を味わっている。自分でもなぜだか解らないのだが、とりあえず発端となっているらしい昨夜のSOS団忘年会のことを思い出してみるしかないだろう。

 忘年会自体は酔っぱらったハルヒの暴走も俺の醜態もなく終了したはずなんだが…な。



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