キッカケは何だったかと言われたら、昼休みのこのアホ面の一言だったと答える
しかないだろうな
「ところでキョン、涼宮とはどこまでしたんだ?」
「ブハッ!」
思わず盛大にウーロン茶を吹いちまった、いきなりなんてこと言うんだこの馬鹿は
「きったねえな、なにやってんだ」
なにやってんだじゃねえだろこの野郎、おかげでブレザーがびしょびしょだ
「で、どうなんだ?」
俺にティッシュを渡しながら聞いてくる
こいつは何を勘違いしてるんだろうねまったく
「あのな俺とハルヒは団員と団長っていうだけでそれ以上でもそれ以下でもないんだよ」
嘘偽りのない真実を教えてやったのになにをニヤついてやがる
「へ~団長様がわざわざ団員のために三日も病室に泊り込むのか?」
まったくなにを・・・でも言われてみたら確かにそうだな、
でもこいつに言われて考えるってものなんかむかつくからここはとぼけておく
「さあな、あいつのやることを理解できたためしなんてないからな」
「まあそりゃそうか、涼宮の奇行は今に始まったことじゃないしな」
奇行か・・・でも確かにあいつは俺のことどう思ってるんだろう、
放課後にでも訊いてみるか

 放課後、文芸部室
「古泉、いくら考えたってお前の王将にもう退路はないぜ」
「いえ、まだ神の一手があるかもしれませんから」
なにが神の一手だよ、あったとしてもお前に打てるはずがないだろう
まあ気長に待ってやるか、朝比奈印のお茶を啜りながらぼんやりと部室を眺める。
朝比奈さんはいそいそとお茶を煎れている、長門は読書、ハルヒはネットサーフィン
いつもどおりの文芸部室だ・・・
ああそういえばハルヒに訊きたい事があったのを思い出した、
暇だし訊いてみるか
「なあハルヒ、なんで俺が入院してた時ずっと泊り込んでたんだ?」
なぜか部室の空気が張り詰める、俺なんかまずいこと言ったのか?
「・・・どういう意味?」
ディスプレイ越しに答えるハルヒ
「いや、たいしたことじゃないんだが、なんでわざわざ寝袋で寝泊りしてまで
 と思ってな」
なんで長門が呆れたような目で俺を見てるんだ?
「あたしがいちゃいけなかったってわけ?」
そうは言ってないだろ
「あんたの心配なんてして損した!!」
いきなり怒鳴るなよまったく、それに心配してくれなんて頼んだ覚えはないぞ
「・・・馬鹿キョン!!」
と言ってハルヒはどっか行っちまった、やばい言い過ぎたか
でもなんであんなに怒るんだ?
「やれやれ」
溜息をついてお茶を飲む
「やれやれはあなたですよ」
古泉が得意の肩をすくめるポーズをして言った
「本当にわからないんですか?」
なにがだ
「どうして涼宮さんが三日間もあなたのそばを離れなかったかですよ」
・・・全然分からんね
「じゃあもし僕が入院したとして涼宮さんは三日も泊まりこんでくれると思いますか?」
団長なんだからするんじゃないか
「・・・鈍感すぎるというのも人を傷つけるものですよ」
と言って古泉は部室を出て行った
まったくなんだってんだ、ハルヒがどうして俺のそばを離れなかったかだって?
あいつが普通の女なら答えは簡単にわかるがあいつはそれを精神病の一種と
言い放ったんだぞ?
・・・それにあいつに限ってそんなことあるわけがない
「ホントにそう思いますか?」
つい口からでていたようだ、朝比奈さんがこっちを向いて言った
「涼宮さんだって普通の女の子なんです」
「あいつが普通だったら朝比奈さんたちはここにいないでしょう?」
「そんな屁理屈はいいんです!」
朝比奈さんが初めて怒った
「あの三日間の涼宮さんの様子を見たらキョン君だってわかります!!」
朝比奈さんまで出て行っちまった、そんなこと言ったっておれはあの三日間
違う世界にいたわけで、ハルヒの様子なんて知る由もないじゃないか
「見る?」
無言を貫いていた長門がいきなり言った
「なにを?」
「あなたが入院していたときの涼宮ハルヒの様子」
「見られるのか?」
「可能、病室の様子はずっと監視していた、その記録をこのディスプレイに映す」
ほんとに万能だなこの無口宇宙人は
「ホントか?」
「ホント」
「じゃあやってくれ」
長門が早口魔法を唱えるとパソコンのディスプレイに病室が映った
ベッドには俺が寝ている、その傍らにはどこか疲れている様子のハルヒ
「ハルヒ一人か?」
「そう」
「そうか」
二分ほど無言の映像が流れた
「・・・これじゃなにがなんだかわからんぞ?ずっと黙ってるだけじゃないか」
「早送りする」
長門がそう言うと場面が切り替わった
ハルヒは俺のベッドに突っ伏している
「・・・いつまで寝てるつもりよ」
まるでハルヒがそばで喋っている様だ
「こんなに団長に心配かけるなんて許さないんだから・・・・起きてよキョン」
ハルヒは・・・泣いてる?
「二日もあたしを無視するなんて・・・一年は奢ってもらうからね・・・・
 う・・・う・・・・・・」
五分ほどハルヒのすすり泣きしか聞こえなかった・・・
「起きなさいよ・・・団長命令なんだからね、違反したら死刑なんだからね・・・
 あんたがいないと駄目なんだから・・・せっかく学校が面白くなったのに・・・」
ハルヒ・・・
「長門、もう分かったよ」
「そう」
映像が止まった
「ハルヒがどこにいるかわかるか?」
「教室」
「ありがとう」
俺は大馬鹿者だな、こんなに心配かけたのに、あんなこと言うなんて。
教室のドアは開いたままだった
「ハルヒ!!」
「キ、キョン!?なにしにきたのよ!!」
ハルヒの目が赤い、また泣かせてしまったのか・・・
「ごめんなハルヒ」
ハルヒを抱きしめる
「ち、ちょっとキョン!?なにしてんの?」
「もう二度と離れないから」
「え?」
「もう二度と離れないって言ったんだよ」
「・・・約束してくれる?」
ハルヒは俺の首に手を回して言った
「約束する」
ハルヒは泣き出してしまった、でも悲しくて泣いてるじゃないってわかってるから
俺は何も言わないでハルヒにキスをした・・・
どれくらいそうしていただろう、ハルヒのすすり泣きだけが聞こえる教室に
またしてもあの男が入ってきた
「ういーっす、わっすれーもの忘れ物!」
・・・・
俺とハルヒを見て数秒絶句したそのアホ面は
「し、失礼しました!!」
といって走り去っていった
なんというデジャヴ、てゆーかあいつわざとやってないか?
「明日なんか言われるわよ?」
やっと泣き止んだハルヒが言った
「そしたらこう言ってやるだけだよ・・・俺の彼女だってな」
「・・・馬鹿」
と言ってハルヒはキスをしてきた、何度も、何度も

 翌日
「昨日のあれはどういうこった?お前と涼宮は団員と団長様ってだけじゃ
 なかったのか?」
席に着くなりさっそく谷口が寄ってくる
さてどうしてやろうかなと考えていると、突然後ろからハルヒの声がした
「おっはようキョン!」
と言っていきなり抱きついてくるハルヒ
絶句する谷口、ざわめく教室、朝からなにしてんだこの馬鹿
・・・でもまあいいか、いつもの奇行にくらべたらずっとましだし
ハルヒの笑顔が見られるならな


終わり







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