11月に入りやっと寒くなってきたわけだが、おれは暖かい春を震えながら待つ
よりも暑い暑いとぼやいている夏のほうが好きなので嬉しくも何ともない。
それにしてもなんでこの学校は暖房もないのかね。まったくやれやれだ。
「おいキョン、ジュースじゃんしようぜ」
この寒いのになんでジュースを買いにいかなきゃならんのだ
「どーせ教室にいたって暖かいわけでもないんだからいいだろ?それに
 じゃんけんで負けなけりゃいい話だ」
まあそれもそうか
「しょうがない、まあ勝てばいいんだしな。国木田もやるだろ?」
鮭の骨を丁寧に取りながら
「いいよ。負けたら奢りでしょ?」
などと分かりきったことをきいてくる
「当たり前だ。よしいくぞ・・・じゃ~んけ~んぽん!!」
[ガシャン]
まったく男なら最初はグーだすだろ、二人してパーなんかだしやがって。
しかも何でこの寒いのにコーラなんか飲むんだあのアホは、手が冷たくて
しょうがないぜまったく。早く朝比奈さんの煎れてくれたお茶が飲みたいね、
ついでに古泉からポーカーあたりでジュース代を頂くかな、あいつのゲームの
弱さは筋金入りだからな、あいつとじゃんけんしても負ける気がしないぜ。
などとどーでもいいことを考えながら寒さに耐えていると廊下の向こうから
見覚えのある人が歩いてきた。あれは確か・・・・
「喜緑さん?」
そう、コンピ研部長の元?彼女(おれは嘘と睨んでいる)の美少女上級生が
歩いてきた。
「・・・その節はどうも」
ご丁寧に頭を下げてくれた、おれもつられて頭を下げる。
せっかくだ本当にコンピ研部長と付き合っていたのか聞いてみるか
「失礼ですが喜緑さん、本当にコンピ研部長と付き合ってたんですか?」
しまった・・・途端に喜緑さんは悲しそうな顔をする
「すいません、今の質問は無かったことに」
「いえべつにいいんです、ただ・・・彼とのことはもう思い出したくないの・・・」
なんだ?コンピ研部長は喜緑さんになにをしたんだ?ことによってはドロップキック
じゃすまないぞ
「ほんとにいいんです・・・じゃあこれで」
百合のような芳香を残して喜緑さんは去っていく・・・なんだこの感じ・・・もっと
喜緑さんと話していたい・・・その時おれは自分でもまったく想定外の行動をとった。
「喜緑さん今度の休日一緒にどこかいきませんか?」
何言ってるんだおれは?おれがすぐに前言撤回しようとすると喜緑さんが振り向いて
「はい・・・」
と言った、これはOKということなのか?・・・しかし
喜緑さんを見ていると妙にドキドキするな・・・
「ええと・・・いいんですか?」
しつこいようだが確認してみる
「はい・・・」
恥ずかしそうな笑顔で言ってくれる・・・この人の笑顔は朝比奈さんに勝ってるんじゃ
ないか?少なくとも朝比奈さんの笑顔はこんなにドキドキしない。
「あの、じゃあまた連絡しますんでアドレス教えて貰えますか?」
「はい・・・でも私あんまりメールとかしないから絵文字とかつかえませんけど・・・」
始めて目をみて離してくれた、上目使いで言われるとどんなことだって問題にならないぜ
「おれも絵文字は使わないんで大丈夫です・・・じゃあまた」
「はいまた」
丁寧にお辞儀をして喜緑さんは恥ずかしそうに去っていった。
おれがその後姿をボーっと眺めていると
「おいキョン!!どこまでジュース買いに行ったのかと思って探しに来てみたら
 北高の2トップの一人の着緑さんと談笑とはどういうこった!?」
2トップなのか・・・もう一人は誰なんだ?
「そんなもん朝比奈さんに決まってるだろうが」
そうか・・・
「で何話してやがった?」
この時のおれはどーしようもなく油断してたね、まさか谷口にこんなこと喋っちまう
なんて
「喜緑さんと・・・デートすることになった」
ここまで見事な絶句をおれは始めてみた
「・・・・・・・・・・・・・」
口を開けて声が出ない谷口をよそに国木田が笑顔で
「すごいなあキョンは、どうやったらあんな綺麗な人をデートに誘えるんだい?」
とか聞いてきやがる・・・だんだん意識がはっきりしてきて
冷静になって考えてみるとすごいことをしてしまった
「いいかお前らこのことは誰にも言うなよ、誰にもだ」
「言わないよ」
こいつは信用できるが問題はこいつだ
「いいか?谷口、今のことは口外しないでもらいたい」
ようやく絶句状態から解放された谷口は
「ああもちろんだぜ、おれはそんなに野暮じゃないからな」
以外にもすんなり約束してくれる、心配だがまあ大丈夫だろうとたかをくくったおれが
馬鹿だったね、もっと硬く口止めしとくんだったなまったく。といってもこの時の
おれにわかるはずもなく
「じゃあ教室戻るか」
と言って教室に戻ってしまった・・・

 放課後
文芸部部室
「いい?週末は不思議探しにいくから!!」
いきなり部室に飛び込んできて我が団長様が宣言した。さてなんて言い訳しようか、
まさかデートなんて言えるはずもなく
「田舎のばーちゃんが入院したんで家族で見舞いに行くからおれはパスだ」
と無難な言い訳をする、ごめんよばーちゃん今度いったときは時間無制限で肩叩きする
から勘弁してくれ
「そうなの?それじゃあしょうがないわね・・・悪いの?おばあさん」
本気で心配されると後ろめたくなるね
「いやただのぎっくり腰だからそんな悪くは無いな、ただまぁ正月と盆以外にも
ばーちゃんに会ってもいいかってな」
「そうよかった。いつ帰ってくるの?」
「日曜の夜になると思う。だから週末は無理だ」
よくここまで口からでまかせを言えるな、おれはいつから嘘つきになったんだ?
「あんたがいなくてもあたしたちが不思議を見つけとくから安心しなさい!!」
べつにそんな心配はしてないがな、むしろ見つけたら大変だ・・・ん?
長門がこっちをじっと見てる、嘘がばれたか?でもまあ長門なら誰にも言わないだろ
「今日は何をしようかしら・・・久しぶりに新しいコスプレに挑戦してみる?」
朝比奈さんがハルヒに捕まったと同時におれと古泉は部室から出た
「おばあさんがぎっくり腰ですか・・・僕の知り合いに腕のいい整体師がいますが
 紹介しましょうか?」
けっこうだ
「そうですか・・・あなたがいないと寂しいですね」
気持ち悪いことを言ってくれるなよ
「いえ変な意味ではありませんので、ただ男子が僕一人というのは嬉しいですが
 ちょっと不安ですね」
いいじゃないかハーレム状態で
「いつものあなたならそんなことは言わないと思うんですが?気のせいでしょうか」
気のせいだ
「そうですか・・・」
探るような目でおれを見てくる・・・まったくおれが休日なにをしてようと
おれの勝手だろうが
「入っていいわよ」
ナイスタイミングでハルヒの声がした
部室に入るとそこには女医さんが立っていた・・・しかしいつものような感動は無い
「とてもお似合いですよ朝比奈さん」
古泉はいつもの微笑で言っている、朝比奈さんがおれに期待するような目を向ける
「すごい綺麗ですよ」
言葉とは裏腹におれは別のことを考えていた・・・・
「ちょっとキョン!!あんた今日ちょっと変じゃないの!?そんなにおばあさんが
 心配なの?」
ハルヒが怪訝な顔で聞いてくる
「ああちょっとな」
いかんいかんバレたらやっかいなことになるだろうからな。普段どうりに
振舞わなくてはな
「そう・・・ちょっとあんたボーっとしすぎよ!?それにいつもならみくるちゃんが
 新しいコスプレするたびに食い入るように見てたくせに今日はほとんど見ないし」
おれはそんなふうに見ていたのか
「べつにただぼんやりするってことくらいあるだろう」
「ふぅ~ん」
まだ疑ってるなこいつは
「古泉ポーカーでもするか?」
ハルヒの視線から逃げるように古泉に話し掛ける
「あなたのほうから誘ってくれるとは珍しいですね」
「まあたまにはな、レートはジュース一本分でどうだ?」
「お相手しましょう」
帰り際に長門が呟いた
「気をつけて」

 ベッドに横になって考える・・・なんとかごまかせたと思う、余談だが古泉からは
ジュース10本くらいは稼がせてもらったぜ。・・・だがなにに気をつけるんだ?まあそん
なことより問題なのは喜緑さんになんてメールするかだな・・・・こんなふうに女性と
メールするのなんて始めてだからな・・・いざ送ろうと思うと全然内容が思い浮かばん、
とりあえず
『今晩は』
と送ってみた
しかしメールを待つ時間がこんなにドキドキするものとは知らなかったな
1分もしないうちに返事がきた、おれが送るのを待っててくれたのか?
『今晩は これからよろしくおねがいします』
メールでも丁寧な人だ、そこがまた魅力的だな
『土曜日は遊園地でいいですか?』
なんてゆうかおれのメールは愛想もくそもないな
『はい、あの・・・メールではなんなのでお電話していいですか?』
妙に積極的だな・・・メールするのだって相当びびってたのにいきなり電話するのは
おれにはハードルが高いが、喜緑さんが言うならそうしよう
『わかりました 一分後に電話しますんで』
やばい心臓が尋常じゃないくらい早く動いてやがる、いつからおれはこんな小心者
になったんだ?なにを話せばいいんだ、気まずい沈黙とか耐えられなくて電話切っち
まいそうだ・・・一分経った、電話しないと
[プルルルル ガチャッ]
「もしもし?キョン君?」
やっぱりあなたもその愛称で呼ぶんですね、だが不思議と幸せな気分になってくる。
「今晩は 今何してました?」
「キョン君の電話待ってました」
さっきまでの心配なんてどこかへ吹っ飛んだね、この人は電話の向こうで白魔法でも
使ってるんじゃないか?
「えっと・・・土曜日何時ごろがいいですか?」
「わたしは何時でもいいです」
「じゃあ・・・10時に駅前に集合でどうですか?」
「はいわかりました。10時ですか・・・それじゃあお弁当作っていきましょうか?」
初デートでお弁当か・・・これはもう完全に彼女と言っても過言ではないだろうが
告白するのはもう少し親交を深めてからだな
「お願いします、喜緑さんの手作りですか・・・当日は朝飯ぬいていきますよ」
「朝ご飯は食べないと体に悪いですよ?そうだキョン君嫌いな食べ物あります?」
「喜緑さんが作ってくれた物ならなんだって食べますよ」
「フフッ面白い人ですねキョン君は」
打ち解けてきてくれたようだ、始めて笑ってくれた
とかまあそんな感じの会話をちょっとして電話を切った。明後日が楽しみだぜ
 
 翌日 
 やっぱり時間ってのは早く過ぎてくれと思えば思うほどスローになっていくもので、
数学の授業は50分のはずなのに120分くらいに感じた、かといって内容が頭に
入ってるわけもなくまた期末で大変なことになるだろうがそんなこと今は問題じゃない。
今週最後の授業が終わり(今日一日だけで一週間くらいに感じたぜ)おれは
後ろの席のしかめっ面に
「今日は明日の準備があるんで先に帰るからな」
と言って教室を出た。後ろからハルヒの声が聞こえた気がするが気にしない、部室に
いるとおれの嘘がばれそうで怖いからな。
校門をくぐると喜緑さんが立っていて
「・・・一緒に帰りませんか?」
と言ってくれる、あなたとならM78星雲だってご同行させていただきますよ
「はいもちろん」
喜緑さんと並んで下校なんて北高男子の半分ほど敵に回しそうだが全然気にならないね、
明日何を作ろうかとか何を着ていこうかとか最近聞いている音楽とかの話を笑顔で語って
くれる喜緑さんを見てると、もし今カツアゲされたとしても笑顔で全財産差し出しても
いい気分になってくるからな。明日のお弁当の材料を買いに行くと言う喜緑さんは、
一緒に行きましょうかというおれの申し出を、
「明日のお弁当の楽しみがなくなっちゃいますから私一人で行きます」
とクレオパトラでさえ負けを認めるであろう笑顔で言って去っていった。
家に帰って飯を食って風呂に入って布団に入るが全然眠れない。目をつむると喜緑さん
の笑顔が浮かんでくる、これは酒でも飲まないと眠れそうにないなと馬鹿なことを
考えてしまった自分を恨むね。

 翌朝
「キョン君いつまでねてるの~?もう10時だよ~」
[ガバッ]
 布団から飛び起きて時計を確認するとまさに約束の時間、昨日調子に乗って飲みすぎ
たか・・・一生の不覚、などと考えてる時間がもったいない、超高速で身支度を整え
家から飛び出す。11月の風邪が頬を刺す、だが急がなくては、喜緑さんをこんなに
待たせるとは・・・ことによっては切腹するからだれか介錯をたのむぜ
そんなことを考えているうちに駅前についた、時計は10時40分 まだ待っててく
れることを祈りながらおれは自転車を停めて走る・・・・待っててくれた、そこには
いいとこ育ちの清楚なお嬢さんがはじめてのデートでがんばりましたって感じの
スーパー美人が立っていた。この人を40分も待たせるなんておれはどうしようもないやつだな。
「ハァハァ・・・すいません喜緑さん、寝坊しました」
おれが正直に謝ると喜緑さんは
「遅くなるなら連絡してくれてもいいんじゃないですか?」
ちょっと寂しそうな顔で言われるのはものすごい可愛いけどこたえるな。
「すいません、寝坊してちょっとパニックになりまして」
「・・・・遊園地に着いたらアイス奢ってください、それで許してあげます」
ちょっと怒ったような笑顔で言ってくれた・・・ほんとなに食って育ったらこんな人に
なれるんだろうね。
ハルヒもこんな性格だったら彼氏の一人や二人簡単にできるだろうに
「ホントすいませんでした・・・それじゃいきましょうか?」
喜緑さんと電車に乗り込む、切符はもちろんおれが買ったよ、それくらいの甲斐性は
持ち合わせてるんでな。電車の中で喜緑さんと何を話したかよく覚えていない、もし
かしたらおれがずっと見つめてただけかもな、それくらいこの人の笑顔には魅力が
あるね。
 世界で一番有名なネズミのいる遊園地についてさっそくアイスを二つ買う、土曜日
だってのにあんまり人がいないな・・・神様のプレゼントか?
「おいしいですね」
ほんとにうまい・・・そーいえば今日なにも食ってなかったな、それを胃が思い出す
と同時に腹が鳴った
「おなか減ったんですか?お弁当食べます?」
時間はまだちょっと早いが腹が減っていては思いっきりエンジョイできないからな
「はいいただきます」
近くのベンチに座って喜緑さん特製弁当をほおばる・・・なんてこった・・・
喜緑さんは料理までうまいとは・・・この人に欠点といえるものはあるんだろうか?、
いや完璧な人間ってのもいてもいいじゃないか
おれがあまりの美味さに感動して黙っていると
「あの・・・おいしくなかったですか?」
喜緑さんは心配そうに聞いてくる
「感動してしまって声がでなかったんですよ、最高にうまいです」
喜緑さんは微笑んで
「がんばってつくったかいがありました」
と言って胸をなでおろした。こういう動作一つ一つがグッとくるね
完食したところで
「それじゃ・・・どこかいきたいアトラクションはありますか?」
喜緑さんは恥ずかしそうに
「あの・・・ここにくるの始めてなんでキョン君の行きたいところでいいです」
と言った、うーんおれの行きたいところね・・・
「それじゃあ行きましょうか」

喜緑さんは意外と絶叫マシンが気に入った様子で、何度も乗るハメになったが
隣にいる人が楽しそうなので疲れなんて微塵も感じなかったね、
それに異様にすいていたのでほとんどのアトラクションがほとんど待たないで
乗れたしな・・・

楽しい時は時間が早く過ぎるってのも決まりきったことで、時計を見るともう6時を
回っていた
「そろそろ帰りますか?」
「もう帰るんですか?」
この上目使いは反則だね、キラウエア火山の火口に飛び込めと言われても実行して
しまいそうな魔力を秘めている
「パレードも見ていきますか?」
途端に喜緑さんの顔が輝く
「いいんですか?」
「喜緑さんが見たいというなら朝までだって付き合いますよ」
我ながらいいこと言ったぜ
「ありがとうございます」
深々とお辞儀をされるとなぜかつられてしまう
「それじゃその前に腹ごしらえでもしますか」
喜緑さんは少食なようでサンドイイッチとコーヒーしか食べなかった
 
8時半
そろそろパレードも終わったようだ、喜緑さんの顔ばかり見ていてほとんど見て
いなかったが
「それじゃ帰りましょうか」
「はい」
電車に乗っていつもの駅に着いた
「門限大丈夫ですか?」
「わたし一人暮らしだから門限とかないんです」
・・・・・
「送っていきましょうか?」
もちろん下心なんて一欠けらもない
「大丈夫です、一人で帰れますから・・・今日はすごく楽しかったです」
・・・・ちょっと残念だ
「あの・・・明日はお暇ですか?」
「はい」
「映画でもいきませんか?」
「はい」
「それじゃあまた10時にここで・・・明日は絶対遅刻しませんから」
「はい・・・また明日ねキョン君」
そういって喜緑さんは歩いていった・・・
この日は今まで生きてきて最高の一日になったね、確実に距離は近づいてると思う、
少なくともあんなに笑顔を見せてくれたのはおれに少しづつ心を
開いてくれたからだろう・・・・SOS団の不思議探しじゃあ
こんな幸せな気分には到底なれないだろうな
 
 ふとケータイを見ると不在着信が7件も入っていた・・・・全部ハルヒか、
なにがしたいんだあいつは。リダイアルしようか迷っていると
丁度ケータイが鳴った。どっかで監視してるんじゃないだろうな
「もしもしハルヒか?」
「ちょっとキョン!!せっかく団長様が心配して電話してやったのになんででないの
 よ!!」
まったくいきなりでかい声を出すんじゃないよ
「病院にいたんだ、電話にでられるはずがないだろう」
「・・・・それもそうね、おばあさんの様子はどうだった?」
「まあまあ元気たったよ」
「・・・なんでそんなめんどくさそうに喋るのよ」
実際面倒だからな
「べつに」
「あんたなんか嘘ついてない?」
いやに鋭い奴だな
「ただちょっと疲れただけだよ」
「・・・・ああそう」
「用件はそれだけか?もう切るぞ」
「あちょっと・・・」
なんか言ってたが切ってやった
[プルルルル]
まったくうるさい奴だな
「まだなんか用か?」
「あたしが喋ってるのに切るなんてどうゆうつもりよ!!」
だからいちいちでかい声をだすんじゃないよ
「用があるなら早く言え」
「・・・・・・」
沈黙とは似合わないことをしてくれるなよ、気味が悪い
「・・・・あんたあたしのこと嫌いなの?」
ほんとに今日のこいつはおかしいな
「ああ?なに言ってんだお前、悪いもんでも食ったのか?」
「・・・答えてよ」
はぁ
「好きか嫌いかって言われたら好きなんじゃないか」
「・・・・・・・そう・・・じゃあね」
切っちまった、なんなんだ?あいつは・・・まあいいか早く帰って寝よ・・・

 翌日
時計を確認する8時28分よし今日はばっちりだ、先に行って待ってるとするか。
ゆっくり身支度を整えてゆっくり朝飯を食って駅前に着いたのが9時40分、なんともう
待っててくれているじゃないか。遅刻したわけでもないがおれは謝らなければいけない
ような気分になった
「すいませんお待たせしました」
「わたしが早くきすぎちゃったみたいで、ごめんなさい」
深々と頭を下げる喜緑さん・・・・・ん?この髪型は
「髪型昨日と変えてみたんですけどどうですか?」
なんと喜緑さんはポニーテールにしていた
「・・・・・・・・・」
あまりの似合いっぷりに声が出ないおれ
「変でしたか?」
俯いてしまった、そういえばこの人に始めて会ったときほとんど下を向いていたから
顔がよく見えなかったな、あの時は存在感の希薄な人だと感じたが今は間違いなく
ミスユニバースより輝いてるぜ
「よく似合ってます・・・いや似合ってるどころか最高ですよ」
「よかった」
そう言って胸を撫で下ろす。デジャヴだな・・・いやデジャヴとは違うか。
しかし良く似合ってるな、この髪型は喜緑さんのためにあるんじゃないかと思う
ほどだ・・・おれが穴があくほど見つめていると
「そろそろ行きませんか?」
喜緑さんが恥ずかしそうに言った
「そうですね」
電車にのって街に向かう
「どんな映画がいですか?」
「ごめんなさいわたし映画もほとんど見た事無くて・・・」
「そうですか・・・ホラーなんかどうです?」
「はいそれで」
 
 我ながらグッドチョイスだったぜ。隣に座った喜緑さんは悲鳴こそあげないが
ずっとおれの手を握り締めててくれた、恋人同士がやる指と指をからませる感じで。
映画館を出ておれの手を握り締めたままだったことに気付くと喜緑さんは
「ごめんなさい」
と手を離してしまった。ずっと握り締めててくれたらよかったのにな
この後は昼食を食べてウインドウショッピングをしたり喫茶店に入ったりと普通の
デートコースを回った
 そしていつもの駅、時刻は6時半
「それじゃあまた」
おれがそう言って帰ろうとすると
「あの・・・夕飯作りますからわたしの家にきませんか?」
鼓動が一気に早くなる
「いいんですか?」
一応確認
「はい・・・昨日と今日とっても楽しかったのでそのお礼です」
この寒いのにこめかみから汗が流れた
「それじゃあ・・・遠慮なく」
喜緑さんの後を黙ってついていくおれ・・・・ん?なんかこのへん何度も来た気がする
な・・・・って喜緑さんが立ち止まったのは長門と同じマンションじゃないか
「ここです」
・・・・まさか喜緑さんが宇宙人製アンドロイドってわけもあるまい、親が金持ちで
娘にいいところに住んで欲しくて買っただけだろう。喜緑さんがオートロックを開けて
おれを促す、エレベーターで二人きり・・・会話ができないくらい緊張してきたぜ。
「あんまり綺麗じゃないけど・・・どうぞ」
部屋に入って確信する、この人がアンドロイドのわけないね、喜緑さんの部屋は
長門の部屋と違ってなんていうか生活感がある。リビングに通されてソファーに
座る、このソファーも軽自動車くらいは買えるんだろう。
「お茶どうぞ、それじゃご飯作ってくるからテレビでも見て待っててください」
微妙に敬語が減ってきてるな、嬉しいことだ。じゃあお言葉に甘えてこのでっかい
プラズマテレビをつけさせてもらうか・・・

 30分後
キッチンからいい匂いがしてきたのでちょっと覗いてみるとそこにはエプロン姿で
ポニーテールという最強スタイルの喜緑さんが立っていた
「もうすぐできますから待っててください」
「おれもなにか手伝いますよ」
「それじゃあこのお皿をテーブルに持っていってもらえます?」
「はい」
これはエビチリか、匂いだけで美味いとわかるな、多分そこらの店で食うより美味いん
だろうな

あらかた料理をたいらげお茶を飲んで時計を見てみると、いつのまにか9時を過ぎてる
じゃないか、いつのまにそんなにたったんだ?ちなみに喜緑さんの料理は横浜の中華街の
名店の料理人が作りましたと言われても納得できる出来だった。
そろそろ帰るかなとおれが立ち上がると喜緑さんは
「もう帰っちゃうんですか?」
と言って悲しい顔をする
「いえちょっとトイレに」
「トイレは廊下の突き当たりの右のドアです」
トイレに入って考える・・・・喜緑さんはおれに帰って欲しくないのか?こんなとき
どうしたらいいのかおれの経験値じゃ答えは出せないぜ。助けてくれフロイト先生!!
いつまでもトイレに入ってるわけにもいかず5分程してからリビングに戻ると
いつのまにか喜緑さんはセーターにロングスカートというTHE部屋着になっていた。
髪型はやっぱりポニーテール
おれが何も言わないでソファーに座ると喜緑さんは無言でおれの隣に座ってクビを
ちょこんと傾け、おれの肩に頭を乗せた・・・・なんでこんなにいい匂いがするんだ
この人は・・・おれが理性を総動員させて固まっていると
「キョン君あたしのこと好き?」
おれが黙っていると
「嫌いなの?」
涙声で聞いてきた
「好きに決まってるじゃないですか」
おれが答えると
「じゃあキスして」
喜緑さんは目をつぶってしまった
こうなったらおれも健全な高校生だ、我慢なんてできるわけがない
おれは喜緑さんにの唇に唇を重ねてそのまま押し倒した・・・・・

「キョン君・・・・」
まだ眠い
「起きないと遅刻しますよ?」
なんだ今日の妹はやけに大人しいな、それにとってもいい匂いがする・・・
おれが目を開けるとそこにはエプロン姿の喜緑さんがいた
「今日は月曜日だから学校ですよ?」
ああそうかおれは昨日喜緑さんと・・・・・
「おはようございます」
時計を見るといつもよりは早いが家に帰って制服に着替えることを考えると
あまりゆっくりしている暇はなさそうだ
「朝ご飯作りましたから一緒に食べましょう」
リビングにいくとそこには日本の朝ご飯はこうあるべきだとTVで紹介したく
なるほど完璧な朝食があった
「こんな朝食を毎日食べられたらこれ以上の幸せはありませんね」
おれが率直な感想を述べると喜緑さんは
「ありがとうございます」
と言って頬を染めた
ゆっくりしてる暇はないのでおれは朝食を食ってすぐに玄関に向かった
「じゃあお邪魔しました」
おれがそう言うと喜緑さんは背伸びをしてマフラーを巻いてくれて
「いってらっしゃい」
とキスをしてくれた・・・ここに永住したいね心から
「じゃあ」
と言ってマンションを後にして自宅の玄関をあけると
「あれーおかーさーんキョン君帰ってきたよー」
見つかっちまった
「キョン君どこいってたのー?キョン君女の人の匂いがするー」
馬鹿そんなこと大声で言うな
「まったく連絡もしないで朝帰り?」
母親が静かに喋る時は大概怒っているってのは長い付き合いだから嫌でも分かるさ
「昨日は友達の家で寝ちゃったからさ、ごめん説教なら学校から帰ってからきくから」
と言って自室に逃げ込む、女の人の匂いか・・・まずいなシャワー浴びてる
時間はないし・・・まあ着替えればわからんだろ
制服に着替えて家を出る
予鈴ギリギリで教室に駆け込むと、席に着くなり
「なんで昨日電話でなかったのよ」
普通まずおはようだろ
「・・・おはよう」
なんだ今日はイヤに素直だな
「別に・・でなんで昨日は電話にでなかったのよ」
昨日は家に帰ってすぐ寝ちまったからな
「そう・・・なんか他に言うことないの?」
ばあちゃんは元気だったぞ
「そんなんじゃないわよ」
じゃあなんだ?
「もういい!!」
振り返るといつものアヒル口で窓の外を見ている・・・・
ああ今日はポニーテールか
前より髪が伸びていい感じだが喜緑さんにはかなわないな
おれがすぐに前を向くとハルヒは
「こんの馬鹿キョン!!」
とかなんとか言ってる・・・しばらくすると後ろからツンツンつついてきた
「なんだよ」
「あんた女物の香水つけてんの?」
気付かれた・・・やばいどうするなんか言い訳を・・・・
「今日の朝妹が母親の香水を面白がっておれにつけたからそれだろ」
「ふーん・・・」
なんとか納得してくれたみたいだな
HRの後の休み時間谷口がニヤケ面でやってきた
「おいキョンどうだった?デートは」
この馬鹿それは口外するなっていっただろ
「いいじゃねーか涼宮はいねーんだし」
そうゆうことじゃなくて一度約束したんだからそれは守れよ
「わかったからどうだったんだ?」
ぜんぜんわかっとらんなこのアホは、おっとやばいハルヒが入ってきた
谷口もハルヒの前でそんな話をするほどアホじゃないらしくそのまま席に戻ろうと
して急に立ち止まった・・・
「ん?キョンなんか女の匂いがするぞ・・・お前まさか」
おれが谷口の口をふさぐ寸前に
「喜緑さんちに泊まったのか!?」
教室中に聞こえる声で言いやがった、とたんにクラスにざわめきが走る
「あっ・・・わりいキョン、わざとじゃないんだただちょっと・・・あまりにも
 衝撃的なニュースだったもんでな・・・」
どう責任を取ってくれるんだこの馬鹿やろう
後ろを見るとハルヒが鬼の形相で睨んでいる・・・これは言い訳しても無駄だな
運良く始業の鐘が鳴り教師が入ってきたためクラスの噂話は止まった
しかし後ろのハルヒはまだおれを睨んでやがる
授業中ずっとうなじに焼き鏝を当てられてるような感覚だったね
授業が終わるや否やハルヒはおれの襟を掴んで階段の踊り場に引っ張っていく
「どうゆうこと?」
いまのこいつは半分踏んだ地雷みたいなもんだ、下手に刺激したらまずいことになる
おれが沈黙を貫いていると、ハルヒはおれのネクタイを掴んで
「黙ってたらわからないじゃないの!!さっさと白状しなさい!!」
とか学校中に響き渡りそうな声で叫んでいる
「なんのことだ?」
仕方ないのでとぼけてみる・・・これは失敗みたいだな
「あんたは土日おばあちゃんのお見舞いに行ってたんじゃないの!!」
どうしたもんか、こうなったら開き直ってみるか
「おれが休日にどこで誰となにしてようとおれの自由じゃないのか?」
火に油だったようだ
「じゃあなに!?あんたはあたしに嘘ついてデートしてたの!?」
「ああそーだよそんで昨日は喜緑さんの家に泊まったんだよ、悪いか?」
ここでハルヒは予想外の反応を見せた・・・泣いている、これはおれの目が
どうにかなっちまったのか?こいつがおれの前で泣くなんて・・・
しかもなんにも言わないで走ってどっかいっちまった。
あんなリアクションされるとなんかおれが悪いことしたみたいじゃないか
その日ハルヒは早退してしまった・・・

 放課後
一応文芸部室に顔を出してみる
「いやはやまったく大変なことをしてくれましたね」
ずいぶんなご挨拶だな
「はっきり言って非常にまずい状態です、このままではおそらく世界は作り変えられる
 ことになるでしょう、どうするんですか?」
なんでもかんでもおれのせいか
「実際の原因があなたなのだから仕方ないでしょう、しかし不思議探索をさぼって
 デートとは・・・・あなたは何を考えているんですか?」
おれは普通にデートの一つもしちゃいけないのか?
「今はそのことについて議論している時ではないでしょう、問題はあなたがどうするか
 です」
「長門、ハルヒの記憶を消したり出来ないのか?」
万能宇宙人に聞いてみる
「不可能」
どうして?
「涼宮ハルヒの力が私の能力を超えているから」
そうかい・・・ところで怒りの視線をくれるのは気のせいだよな?
「朝比奈さんどうしたらいいかわかりますか?」
「ん?朝比奈さん?」
「キョン君がそんなことする人だとは思ってませんでした」
なんでこの人が怒ってるんだ?今はそんな場合じゃないんじゃないか?
「とにかく未来と連絡がとれなくなってしまったからわたしは知りません!」
朝比奈さんが怒るなんてめずらしいな
「じゃあぼくもそろそろいかないといけませんので」
と言って古泉はいつになくシリアスな顔をして行ってしまった
いったいおれにどうしろってんだ!?おれがちょっとデートしたくらいで世界が
崩壊するって神様はなに考えてんだ?・・・ああハルヒがその神様だったな・・・
まったくふざけた世界だ、とりあえず部室にいても何故か怒っている二人の視線が
痛いので帰るとするか・・・校門で声をかけられる
「キョン君」
ん?なんか変だな・・・感情のない声と顔だ・・・
「大事な話があります」
長門のような無表情だ
「ここじゃなんだからわたしの家でにきてください」
そう言って喜緑さんは歩き出した・・・
 
 玄関を開けてリビングに入る、そこは朝と何も変わっていなかったがなにか違和感が
あった
ソファーに座ると喜緑さんは言った
「わたしは人間じゃないんです。長門さんと同じ情報統合思念体の端末」
まさか・・・・そんな・・・
「わたしは長門さんとは違う派閥で涼宮さんに少しだけ情報爆発
 を起こしてもらうためにキョン君に近づいたんです。でもわたしのなかにバグ
 が発生してなぜかこのような事態になってしまった。今回のことはキョン君には何の
 責任も無いんです、わたしがキョン君の脳に情報操作をして恋愛感情を持たせただ
 けですから。
 解決するために時間を五日前に戻します、涼宮さんの記憶を消すのは不可能ですが
 その記憶を夢だったと思わせることは可能ですから」
はっきり言って信じたくなかった・・・それに淡々と語る喜緑さんはどこか寂しげだ
「ようするに世界を救うためにあなたの事を忘れろと?」
「そうです、今回のことはわたしのバグのせいですから」
「喜緑さんはそれでいいんですか?」
「それが情報統合思念体の意志ですから」
「じゃあどうして泣いてるんですか?」
喜緑さんの両目から涙が溢れていた
「これがバグですね・・・キョン君を見ていると止めることができません、
 ここまでバグが進行してるのは・・・危険ですね・・・早く対処しないと」
「それはバグじゃなくて感情ですよ・・・あなたが人間に近づいてる証拠ですよ」
「バグです・・・じゃなとキョン君とずっと一緒にいたいと思う説明がつきません
 から・・・」
おれはもう耐えられなかった・・・何度も喜緑さんと唇を重ねる・・・泣きながら
「だめです・・・・だめなんです・・・・」
喜緑さんは泣きながら唇を重ねてくる・・・そのままなんども愛し合った・・・


 「やっぱり思念体の意志には逆らえません・・・」
喜緑さんが泣きながら笑顔で言った
「ごめんなさいキョン君・・・これが感情と言えるのか分からないけど・・・・
 キョン君のこと好きです・・・」
止めても無駄なのは分かってる・・・
「おれも喜緑さんのこと大好きです・・・・」
これくらいしか言えない自分が情けない・・・・
「そろそろ時間ですね・・・涼宮さんが就寝したら時空改変が
 始まってしまうから・・・・」
涙が止まらない・・・
 「最後に一つだけ・・・・」
 「なんですか?」
 「キスして・・・・」


[ガバッ]
今日はやけに早く目が覚めたな・・・ん?なんで泣いてるんだ?そういえば
なんか悲しい夢を見ていた気がするな・・・
[ガチャ]
「あれー?キョンくん今日は早いねー」
妹が入ってきた、なんとなく妹に泣き顔を見られるのは嫌だったから枕に顔を埋める
「起きてるなら早くおりてきてねー」
部屋から出て行った・・・どんな夢を見てたんだっけ?・・・思い出せない
思い出そうとすると涙が出てくるのはどうしてだ?まあ時間の無駄だろう・・・
たまにはゆっくりと朝飯を食うとするか・・・・

 
「おいキョン、ジュースじゃんしようぜ」
この寒いのになんでジュースを買いにいかなきゃならんのだ
「どーせ教室にいたって暖かいわけでもないんだからいいだろ?それに
 じゃんけんで負けなけりゃいい話だ」
まあそれもそうか
「しょうがない、まあ勝てばいいんだしな。国木田もやるだろ?」
鮭の骨を丁寧に取りながら
「いいよ。負けたら奢りでしょ?」
などと分かりきったことをきいてくる
「当たり前だ。よしいくぞ・・・じゃ~んけ~んぽん!!」
[ガシャン]
まったく男なら最初はグーだすだろ、二人してパーなんかだしやがって。
しかも何でこの寒いのにコーラなんか飲むんだあのアホは、手が冷たくて
しょうがないぜまったく。早く朝比奈さんの煎れてくれたお茶が飲みたいね、
ついでに古泉からポーカーあたりでジュース代を頂くかな、あいつのゲームの
弱さは筋金入りだからな、あいつとじゃんけんしても負ける気がしないぜ。
などとどーでもいいことを考えながら寒さに耐えていると廊下の向こうから
見覚えのある人が歩いてきた。あれは確か・・・・


終わり





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