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 おそらく誰もが憂鬱であろう週の始まりの朝、俺はいつものように北高がゴール地点に設定されているハイキングコースをのろのろと歩いていた。
「よっキョン」
「…よう谷口。」
 朝っぱらからあまり会いたくない野郎に遭遇しちまったな。
「なんだぁ? シケた顔してんなー。」
 お前みたいにいつもヘラヘラしてるほど俺は能天気じゃないんだよ。悩めるお年頃なんだよ。
「なーに気色悪いこと言ってやがんだ。悩みだぁ? けっ。彼女持ちがよく言うぜ。」
 その彼女のことで悩んでいる…んだがな。
「昨日だって涼宮とよろしくやってたんだろーが。」
 おい、なんでお前が知っているんだ?
 確かに昨日、俺の部屋でハルヒとふたりで勉強会をしていたが。
 まさかお前ストーカーか? それとも覗きか? どちらも犯罪だぞ。
「ちげーよ。そんなことするわけねーだろ。昼頃コンビニ行った帰りに涼宮を見かけてな。妙に嬉しそうにお前ん家の方角に歩いてったもんだから、ははーん、これは…と思ったわけさ。」
 お前にしては良い勘してるな。褒めてやらんが。
「ふたりっきりで勉強会か。どうだかな。どうせ違う勉強でもしてたんだろ。」
 違う勉強ってなんだよ。違う勉強って。
「俺に言わせるのかよ。どんな屈辱プレイだそれ。いい加減にしろよな。ただでさえ半年前にお前らが付き合い始めてから…いやもっと前からか? お前ら夫婦の惚気には飽き飽きしてるっつーのによぉ。」
 俺がいつのろけたというのだ。
 言っておくがのろけるほど俺たちはラブラブバカップルじゃねぇぞ。
 あと、付き合い始めてから半年じゃねぇ。半年と4日だ。
 それから俺たちはまだ夫婦じゃないと何度言ったらわかるんだ。
「無自覚かよ…。最悪最低最強だなお前。」
 谷口は呆れるような、諦めるような目で俺を見た。なんだその目は。
「あーあ。もうただでさえ憂鬱な月曜の朝なのにお前の惚気のせいでテンションガタ落ちだぜ。もうその話はすんな。」
 お前から話を振って来たんだろうが!



 以上の谷口との会話でわかる通り、俺とハルヒは付き合ってる。まぁいわゆる「恋人同士」っていうやつなわけなんだが。付き合ったキッカケ、なんてものはほんの些細なことなので…これはまぁ置いておく。
 俺とハルヒが「恋人」として付き合い始めて、今日で半年と4日。
 問題はこの半年と4日の間、俺たちがキスした回数なのだ。
 ちなみにいつぞやの閉鎖空間でのアレは、ハルヒが夢だと思ってるはずなのでノーカウントだ。

 1回目は、お互いの気持ちが通じ合った時。ほぼ勢いだった。
 2回目は、付き合い始めて3ヶ月と17日目のことだった。些細なことで大げんかしたあとだったな。
 3回目は、付き合い始めて半年と3日目。つまり昨日だったのだが、アレはちょっと状況的にマズかったんだ。あとでちゃんと謝らねばならないんだが。
 それはまぁいいとして。

 改めて言っておく。
 今言ったのはキスした回数だぞ。もちろんその先のコトなんて0回だ。本当だぞ。
 これはちょっとどうなんだろうかと思うのは俺だけか?
 それというのもハルヒときたら普段はネジが5本ばかり外れた宇宙ロケットみたいにハチャメチャなくせに、イイ雰囲気になると二重人格かお前って疑いたくなるくらいしおらしくなっちまってな。
 ちょっと肩抱いたくらいで耳まで真っ赤になるんだぜ。いつの時代の純情乙女な箱入り娘だよ。
 だからなんかこう…うっかり手ぇ出せねぇんだよな。
 下手なことしでかしたらそれこそなんかの法律で裁かれそうっつーか。
 ま、実際は神人大暴れする程度だろうが古泉を巻き込むのはいくら俺でも気が引けるんだよ。
 しかしだな…ほら、わかるだろ? もうちょっとこうさぁ…なんというか、なぁ。
 ええい! 言ってしまえ。

 そう、俺はもっとハルヒに触れたいのだ。もう一歩先に進みたいんだよ。

 つまり、ハルヒを大切にしたいと思う一方、一秒でも早く俺だけのものにしちまいたいという衝動があってだな。よって俺は日々悶々とそんな本能と理性との戦いを繰り広げているわけなんだ。
 もちろん毎回理性が勝利をおさめるんだが、たまには本能が勝ってもいいんじゃねぇのって理性も言ってるような気がするんだ。
 …俺、エロいのか? エロくないよな。普通だよな?
 健全な男子高校生として普通のことだよな。な、お前もそう思うだろ?


「…どう聞いても惚気にしか聞こえねぇぞキョン。それから…四発くらい殴っていいか?」


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