第一章

その日、あたしはいつもと同じように食堂で昼食を食べていた。
学食を求めて並ぶ人の列。周囲から聞こえてくる他愛ない友達同士の会話。普段と同じ日常の風景がそこにはあった。
ふと、人ごみの中に普段見慣れない女子生徒の姿を見つけた。神聖なるSOS団のメイド兼お茶くみ係のみくるちゃんだ。
いつもはお弁当のはずなのに珍しいこともあるのね。
あたしが普段見慣れない食堂でのみくるちゃんの様子を観察していると、きょろきょろと周囲を覗っている。どうやら誰かを探しているようだ。

あたしが声をかけようかどうか迷っていると、みくるちゃんはあたしに気づいたらしく、こちらの方につかつかと歩み寄って来た。
「す、涼宮さん!たたたいへんなことが起きました!」
みくるちゃんは息を切らしてあたしの前まで来ると開口一番こう告げた。いったい何をやらかしたのかしら。でも、まあ、みくるちゃんが慌ててるのなんていつものことよね。あたしのドジっ娘メイド教育の成果かしら。などとのんきな事を考えながら
「みくるちゃん、まずおちつきなさい。SOS団員たるもの、いついかなるときでも冷静でなくてはならないわ」
そう言いながら、あたしはみくるちゃんにお茶の入ったコップを差し出した。

みくるちゃんはそのお茶を飲み干すと、
「いますぐわたしといっしょに来てください」
あたしの腕を掴み、席を立たせようとする。こんな強引なみくるちゃんを見たのは初めてだ。あたしは普段見慣れないみくるちゃんの意外な一面に驚きながらも
「みくるちゃん、落ち着いて、まず何があったか話してくれない」
あたしはみくるちゃんの肩に手を置き、落ち着かせようとした。みくるちゃんは少し落ち着いたのか、小さく深呼吸すると予想外のことをあたしに告げた。
「実は長門さんがキョン君を連れ去ろうとしています」
「え、それどういうこと。有希がキョンをいったいどこに連れ去るの。ていうか、それって有希とキョンが駆け落ちしようとしているってこと」
みくるちゃんの説明を聞いても状況が理解できなかったが、とにかくキョンと有希が関わっていることだけはわかった。あたしは直接自分で確かめたほうが早いと思い、みくるちゃんにふたりのところに案内するように言った。
まさか本当にふたりで愛の逃避行をするとかいうんじゃないでしょうね。そんなことしたらSOS団が機能しなくなるじゃない。もしそうだったら団長としてここはびしっと団員の心得というものを教育しておかなくちゃいけないわ。

そんなことを考えながら、あたしはみくるちゃんの後に続いた。しかし、あたしはいま起こっていることについて、特にそれほど心配はしていなかった。なぜなら、有希はあたしがキョンのことを好きだということを知ってるからだ。なぜ知っているかというと、以前SOS団の女性団員三人で鶴屋さんの家に泊まりに行ったとき、あたしが鶴屋さんの尋問に耐えられず、みんなの前で白状してしまったのだ。
有希はあたしの好きな人を横から盗ったりしない。あたしはそう信じていたから、みくるちゃんの後を追いかけているときも、全然不安には思っていなかった。
みくるちゃんはあたしを屋上へと連れて来た。あたしが屋上へ出ると、そこには有希の姿も、キョンの姿も無く、代わりに古泉君がポツンとひとり立っていた。

あたしはみくるちゃんを睨みつけ
「みくるちゃん!あんたあたしを騙したのね」
みくるちゃんは狼狽しながら
「ちちち違います」
と必死に否定した。
あたしたちがこんなやり取りをしていると、古泉君が近寄ってきて、あたしとみくるちゃんの手を握った。あたしは古泉君の普段には無い行動に少しびっくりしたが平静を取り戻し、古泉君の方を睨みながら尋ねた。

「もしかして古泉君がみくるちゃんを使ってあたしを騙すように仕向けたの?」
そこまで聞いて、古泉君がいつもの笑顔ではなく、真剣な表情をしていることに気づく。この時、ようやくいま起きていることの重大さに気づいたような気がした。
「失礼、まず涼宮さんには今の状況を見てもらいます。眼を閉じていただけませんか」
「え、それってどういうこと」
「言葉で説明するのは時間がかかります。

ここは僕を信じて言うとおりにしていただきたいのですが」
「まあ、いいけど」
まあ、古泉君なら変なことはしないわよね。そう思い、あたしは眼を閉じた。
「もう、結構です」
あたしが眼を開けると、周囲にはかつて夢で見た灰色の世界が広がっていた。
驚きのあまり、声をあげることもできず、あたりをきょろきょろと見回すと、屋上の向こう側に人影があった。
それは意識を失って横たわっているらしいキョンの姿。
そして、その周囲には三人の女子生徒、長門有希、喜緑江美里、朝倉涼子の姿があった。

「長門さん、あなたの役割は涼宮さんと彼の観察であってこんなことではなかったはだ。いまならまだ間に合う。だから止めてください」
一番に口を開いたのは古泉君だった。
「ふふふ、古泉君だっけ。長門さんはね、キョン君のことを愛してしまったのよ。だから彼といっしょにいたいと思うようになった。涼宮ハルヒの意思に反してでもね。そう思ったことによって、わたした
ち急進派と利害が一致したわけ。いま、情報統合思念体は一枚岩ということよ」
朝倉はまるで『無駄よ』と言わんばかりの表情で古泉君の有希への説得に反論した。でも、正直あたしには何が起きているのかまったく理解できなかった。ここは確か北高の屋上のはずよね…。なのになぜカナダに転校になったはずの朝倉がここにいるの。それよりも、いまあたしのいる暗い空間はいったいなんなの。だれか教えて。
あたしが状況を把握できずにうろたえていると、朝倉があたしに声をかけてきた。
「涼宮さん。どうやらあなたはいまの状況を理解できていないようね。ひとりだけ置いてきぼりというのは可哀想だから、わたしが教えてあげるわ」
そういうと朝倉はあたしの方を指差した。その指から光のようなものが発射され、あたしの頭を貫くとキョンや有希、みくるちゃん、古泉君があたしに隠していた事実があたしの頭の中に流れ込む。
「そんな……」
あたしは絶句した。

あたしがずっと探していた不思議がこんな身近にあったなんて。有希が宇宙人で、みくるちゃんが未来人で、古泉君が超能力者だったなんて。あたしが予想外の事実を知らされ呆然としていると、宇宙人の三人があたしたちを無視してしゃべりだす。
「あなたはいま重大なミスを犯した」
有希の指摘に朝倉が反論する。
「なんで、わたしたちの目的は涼宮ハルヒから噴出する異常な情報フレアの観測よ。そのためには涼宮さんには全てを知ってもらった方が都合がいいわ」
「いえ、長門さんの言うとおりよ。あなたは涼宮ハルヒの能力をあなどり過ぎているわ」
あたしは有希を睨みつけて大声で叫んだ。
「有希!止めなさい!あんたはあたしがキョンを好きだってことを知っているはずよ。あたしからキョンを盗らないで!」
「わたしも彼が好き。だからその命令は聞けない」
「だったらこんな方法をとらずに正々堂々勝負すればいいじゃない」
「それはできない。わたしにはその権限は与えられていない」
有希はすまなさそうな目でこちらを見つめてきた。しかし、その目には決して説得には応じない決意が宿っていた。

古泉君があたしの耳元で小さな声で話し掛けてくる。
「涼宮さん。どうやら説得は無理なようです。最悪の事態も想定しておいてください」
そんなやり取りが気に入らなかったのか、朝倉が不適な笑みを浮かべながらこう言った。
「どうやら邪魔者を先に始末したほうがいい様ね。

情報フレアも観測できて一石二鳥だわ」
言い終わると、屋上の周囲にある柵が折れ曲がり、槍に姿を変えてみくるちゃんと古泉君のを目掛けて飛んできた。
「やめてええ!」
あたしが叫ぶと、槍は消え去り、柵は元通りに戻っている。
「彼らを傷つけることは不可能」
「どういうことかしら長門さん。わたしたちは手を結んだはず。お互いの意思を尊重しあうべきではなくて。それとも彼らにも情がわいたとでも言いたいのかしら」
「わたしは許可しないとは言っていない。不可能だと言った」
「長門さんの言うとおりよ。わたしたちの能力がどれだけ万能であっても、決して絶対ではない。絶対の存在である涼宮ハルヒの意思に反して行動することはできないわ」
あたしは三人のやり取りを聞いて、思い浮かんだ疑問をみくるちゃんと古泉君にぶつけた。

「どうして、どうしてこんなことになったの。もし、あたしの意思が絶対なら有希はこんなことはできないはずなのに」
あたしの疑問に古泉君が答える。
「それは涼宮さんの心に迷いがあるからです。もしかして彼は涼宮さんではなく長門さんに好意を抱いているのではないかという。その心の隙を巧みについて彼女達は行動を起こしているのです」
たしかにキョンはあたしより有希やみくるちゃんを見ている時間の方が多い気がする。でも、でもキョンを想う気持ちだけは有希にも、みくるちゃんにも負けないわ。その想いを伝える前にあたしの前からいなくなるなんて絶対認めないわ。
「それより涼宮さん。重大な話がありますのでよく聞いて下さい。長門さんの能力は我々三人の中でも飛び抜けて強力なため、我々では太刀打ちできません」
「じゃ、じゃあこのまま黙って諦めろってこと」
「いえ、涼宮さんの能力はそれ以上に強力なのです。あなたの意思に逆らって行動を起こすことは例え情報統合思念体でも容易ではないはず。おそらく全能力を集中して彼を連れ去ろうとするでしょう」
そう言うと、古泉君は懐から巨大な銃を取り出した。
「その瞬間であれば、長門さんを止めることができます」
あたしは古泉君の持っている銃を見ながら、顔から血の気が引いていくのが分かった。

「これは機関が開発した対TFEI専用の兵器です。これで長門さんを撃てば長門さんという端末を通じて情報統合思念体本体に直接ダメージを与えることができます。情報統合思念体はウイルスに蝕まれるように崩壊するでしょう」
「でも、じゃあ有希はどうなるの」
「消滅します。情報統合思念体本体を失ってしまえば、その端末であるTFEIはその機能を維持できないはずです」
「すす、涼宮さん。な長門さんが」
あたしたちの会話にみくるちゃんが割り込んできた。
有希の方を見ると、有希の両隣にいた朝倉涼子と喜緑江美里が光の粒となって有希に吸収されていく。
ふたりの姿が完全に無くなると、空に一筋の光が走り、そこからゆっくりと左右に空が割れていく。
空が割れた空間には深淵の闇が広がっていた。しかし、あたしにはなんとなく、その闇の中に膨大な情報が詰まっているように感じられた。
「これが、情報統合思念体」
みくるちゃんが驚愕の表情で割れた空の狭間にある闇を見上げている。
「本来、情報統合思念体に形はありません。宇宙全体に広がっている存在だからです。涼宮さんの意思に反して行動するためにここに力を集中しているのです」
そう言うと、古泉君は銃を構え、銃口を有希の方に向けた。
「涼宮さん!決断してください。このまま彼と長門さんを行かせるか。それとも長門さんを撃って彼を解放するか」

有希の方を見ると、有希とキョンはゆっくりと宙に浮き上がっている。
このまま有希を行かせると、もう二度とキョンには会えなくなる。でも、でもそのためにあたしは有希を殺せるか。有希だってSOS団の一員。あたしの大切な仲間のひとりなのに。それにキョンの本心が分からない。キョンはあたしと有希ならどっちを選ぶの。
考えあぐねるあたしに古泉君が非情な声をかける。
「涼宮さん!」
「難しい選択だわ。あたしに選べって言うの」
「団長としてご決断を。僕はあなたの選択に従います」
どうして、どうしてこんな重い選択を唐突に迫られなきゃならないの。人命のかかった選択なんて。あたしは有希にもキョンにも生きていてもらいたい。あたしの傍にいてもらいたい。そういう選択肢は無いの!
「涼宮さん………」
古泉君が困ったような顔でこちらを見る。
ごめん。わがままを言っているのはわかるわ。でも、でもあたしには決められないよ。
「涼宮さん!」
突然、みくるちゃんが真剣な表情であたしに語りかけてくる。
「このまま行かせていいんですか!確かに撃てば長門さんが……。でも、でも撃たなければキョン君も長門さんもふたりとも失っちゃいますよ」

あたしは普段見せないみくるちゃんの真剣な姿に一瞬だけ唖然した。そして、小さな声で古泉君にこう告げた
「撃って」
その後、大きな声で叫んだ。
「撃って!有希を撃ってキョンを助けて!!」
あたしがそういい終わるや否や有希の小さな身体が後ろに吹っ飛んだ。古泉君の方を見ると、構えた銃の銃口から煙が出ているのが分かった。有希の身体は後ろに吹っ飛んだ後、屋上の転落防止用の柵にぶつかって跳ね返り、前のめりに倒れた。空の割れ目にあった深淵の闇に一筋の雷光のような光が走るの
が見えた。言葉では言い表せない感覚で、情報統合思念体が崩壊していくのが分かる。
そして割れていた空がゆっくりと元に戻り始めた。
「有希」
あたしは有希のもとに駆け寄った。
「有希、大丈夫…じゃないよね。ごめん、ごめんね。でも、でもあたしどうしてもキョンを盗られたくなくって……」
「いい」
有希はそう言うとあたしの方を向き、ほんの少し微笑んだ。
「わたしにはあなたの観察以外の権限は与えられていなかった。だからわたしの今回のこの行為は越権行為。しかし、わたしは自分の中にある衝動をどうしても抑えることができなかった。朝比奈みくるに相談しても。古泉一樹に相談しても。だから、あなたに止めてもらえて、わたしは満足」

「有希……」
あたしは泣いていた。有希の頬にあたしの涙が落ちる。
「最後にひとつあなたにお願いがある」
「何」
「今回のわたしの行動を許して欲しい」
「わかった許す、許すわ。だから、だから死なないで」
「情報統合思念体が消滅した今、私単体で存在することはできない。だが、わたしは自ら選んだ行動に悔いは無い。あなたが彼と幸せに過ごすことを祈っている」
そう言い終わると、有希の身体は光の粒となって消えていった。
「長門………」
振り向くといつのまにかキョンがあたしたちの後ろに立っていた。
「おい、ハルヒこれはどういうことだ」
キョンはいま目の前で起こっていることが理解できないといった表情をしている。あたしはどう言って説明しようかと困惑し、キョンから目を逸らして古泉君とみくるちゃんに視線を向けた。キョンは古泉君の持っていた銃を見つけて古泉君に質問の矛先を変えた。
「古泉、なんだおまえの持っているその銃は。まさか、その銃で長門を撃ったのか……」
古泉君は意を決したようにキョンの方を向いて説明を始める。

「ええ、そうです。長門さんが暴走をしたため仕方なく僕が……」
「古泉!貴様!!」
キョンは古泉君の胸倉を掴み、いまにも殴りかかろうとした。その腕をみくるちゃんが掴んで止める。
「キョン君、聞いて下さい。古泉君が悪いんじゃありません。涼宮さんが、涼宮さんが古泉君に撃つように言ったの」
ちょ、ちょっとみくるちゃん。それじゃあ、あたしが一方的に悪いみたいに聞こえるじゃない。
「ハルヒは長門を、仲間を撃て、などという奴じゃない。そのことは俺が一番よく知ってます」
「キョン君、落ち着いて話を聞いて。長門さんはキョン君のことが好きだったの。だからキョン君を連れ去ろうとしてたの。涼宮さんはそれを許さず、長門さんを撃つように古泉君に命じたの」
みくるちゃんが涙目でキョンに訴える。でも、なにかこの説明、悪意に満ちてない?
キョンはあたしの方を睨んで
「いま、朝比奈さんの言ったことは本当か」
怒気を帯びた声であたしに問い掛ける。
あたしはそんなキョンの様子を見て一瞬答えるのを躊躇した。でも、みくるちゃんの説明に間違いは無かったから咄嗟に反論が見当たらない。
「そうよ、有希があんたをさらおうとしたから――――――」

パァン!

そこまで言ったところで、あたしはキョンに叩かれた。

「ハルヒ、俺はおまえのことが好きだった。だが、俺が好きだった涼宮ハルヒはどんなことがあっても仲間を見殺しにするようなことはしなかったはずだ。まして、仲間を撃つようなことは決してしなかったぞ」
そう言うキョンの目は怒りというより信じていた者に裏切られた悲しみを帯びていた。
「ハルヒ、おまえいったいどうしちまったんだ」
あたしはこのときの返答をいまでも後悔している。このとき素直になれたら違った結果があったのかもしれないと。
「う、うるさいわね。あんたはいつもどおりあたしの言うことを聞いていればいいのよ」
「なにい!」
キョンがもう一度あたしを叩こうと振り上げた手をみくるちゃんが掴んで止めた。
「キョン君、まって、いまは落ち着いて。後で、後でゆっくり話し合いましょう」
みくるちゃんは掴んだキョンの腕を引っ張ってキョンをあたしから遠ざけようとしている。
キョンは最初は抵抗してたものの、みくるちゃんに連れられて、あたしのもとから離れていく。
あたしは俯いたまま泣いていた。
どうして、どうしてこんなことになったの。キョンはあたしのことを好きだったのに。これが有希を殺した罰だっていうの。たぶん、たぶんキョンはあたしのことを許してくれないだろう。そう思うと、後から、後から涙が溢れてきた。もし、あのまま行かしていれば、キョンと会うことはできなくても、嫌われることは無かったのに。

そんな悔恨に思いを巡らしているあたしの意識を古泉君の一言が現実に引き戻した。
「しまった」
あたしが古泉君の方を見ると、古泉君は罠にはめられたといった表情でキョンとみくるちゃんが去っていく方向を見ている。あたしがそちらに視線を移すと――――――
みくるちゃんが振り向いてこちらを見ていた。その目を見て、あたしは全てを理解した。
あたしを食堂に呼びに来たのは誰
最後にあたしに撃つように促したのは誰
キョンに経緯を説明したのは誰
全部みくるちゃんがしたこと。それに有希は自分の中にある恋心についてみくるちゃんにも相談したと言っていた。でも、そんなあやふやな状況証拠よりも確信できる確かな証拠が目の前にある。みくるちゃんのあたしを見る目。その目が今回の事件の首謀者がいったい誰であるかを如実に物語っていた。
みくるちゃ、いや朝比奈みくるは有希の恋心を踏み躙り、古泉君やあたしを利用して、あたしから有希を奪った。そしていまあたしからあたしの最も大切なひとまでも奪おうとしている。

許せない!絶対!

あたしはかつて無いほどの怒りが胸に込み上げてくるのが分かった。だが、その怒りを抑えて冷静に声をかける。
「古泉君」
いきなり声をかけられた古泉君は少し戸惑ってこちらを向いたが、あたしの顔を見て次のあたしの言葉を的確に読み取り、準備した。
あたしはそんな古泉君を横目で見ながら、朝比奈みくるの方に視線をやり、冷酷に、静かな声でこう告げた。
「みくるちゃんを撃って」


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