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・・・・・・なんだ。何も、見えない。
―――迷路に迷い込んだ少年を迎えましょう。
・・・・・・誰ですか!?
―――貴方は誰?私は、誰?
・・・!?
―――くすくすっ・・・何を悩んでるの。悩みの薔薇の棘は貴方に刺さって動きを阻害するのに。
さっきから何を言ってるんですか・・・!?
―――知ってる。でも、知らない。一人の少女に関わる事。そうだよね?私、知ってる。でも、知らない。
一体っ・・・・・!!
―――悩む必要は無いよ。いずれにしても、選択した先の道は直線だから。
本当に・・・何ですか、貴女は。
―――いい質問。誰ではなく何と聞いたね。私は、夢の住人。有意識の現に対した、無意識の夢。
一体何を言って・・・。
―――さぁ?言葉に意味があるのか、それさえも不明瞭だから、どうなのかな。あ、そろそろ目覚めが来る。
目覚め?
―――そう。貴方が夢から目覚める時が来るの。現の少女に会ったら言って頂戴。白い薔薇は、咲いたと。
っ・・・ちょ――待っ―――だ―――。


キミがキミで居られるように 第四話「現の世界に少女、夢の境地で少女」


「っ・・・!!」
僕が目覚めたのは、神人さんボイス目覚ましの鳴る一時間以上前。
冬だというのに、酷い寝汗。パジャマを通過し、布団まで侵食している汗。
「はぁ・・・はぁ・・・今の、夢は・・・・・」
夢は、覚めると記憶が曖昧になってしまうという。
しかし忘れる事は出来ない。あの少女の微笑みと、言葉。右眼を塞ぐ眼帯。
無意識の夢と言っていた。現と対なす、と。
その現に僕は伝えるべき言葉がある。白い薔薇は咲いた。意味は解らないが、それが必要なのだ。
少女が何を指すかはすぐに解りました。思考に安住する程の難しさでもない。
あいつは、あの夢の中で出会った奴によく似ているし、かつ対をなしている。
まだ寝ている神人さんを起こさぬように隣の部屋の呼び鈴を鳴らす。
「はぁい。・・・あ、古泉くん」
がちゃりと扉が開いて、中からシュウマイの乗った皿を手にした進藤さんが現れた。
室内から『串に刺さった団子~』という歌が聞こえてきた。
「・・・伝言を、夢の中で預かってきました」
「えっと・・・ロマンチェストとかっていうのきょどってる?」
「・・・・・・・・・・」
それを言うならロマンチストを気取ってるですね。
まぁ、ツッコミいれたってどうしようもないんでいれないんですけど。
「・・・『白い薔薇は咲いた』。これが、伝言です」
しかし、考えたらただの夢って可能性も否定できないんですよね。
今、気付いたんですけど。まぁ、その説に関しては、
「白い、薔薇・・・!?」
進藤さんは目を大きく見開いて僕を見てるあたり、その可能性は無いですね。
よっぽどショックだったのかシュウマイが箸から落っこちた。
が、それをなんと空中でお箸キャッチ。さすが、シュウマイ狂だ。
「・・・そう。あの人が・・・」


そう呟くと僕の方をちらっと見るとシュウマイの入ったタッパーを渡してきた。
「食べれて美味しいから食べて」
日本語もですが、行動がまたおかしいですね。まぁ、面倒くさいので突っ込みませんが。
進藤さんは何処か重い表情をして部屋へと戻っていった。
「・・・僕も戻るとしましょうか」
パジャマ姿で外で立ち話は寒い。僕はとっとと部屋へと引き下がった。
リビングのテーブルにシュウマイの入ったタッパーを置く。
・・・よく見るとデカいタッパーですね・・・五十個は入ってますね・・・。
・・・っていうか、進藤さんこんな時間からシュウマイ作ってるんですか・・・。
そんな事を思いながら、神人さんの部屋に行く。途端に
「っあ・・・くっ!!」
という苦痛の声を聞いた。
「神人さん!?」
閉鎖空間の兆候かと思って駆け寄る。だが、違った。
それは悪夢に魘されている呻き声だとすぐに理解した。
起こそうか、起こさないか。そんなもの、決まっている。
「神人さん!起きて下さい!!」
「っ・・・!!」
かっ、と目を見開いて神人さんは起床した。
よほどの悪夢だったのか、肩で呼吸している。顔色は非常に悪い。
「大丈夫、ですか?」
僕を見つめるその目に一瞬にして、じわりと涙が浮かんだ。
そして、ぎゅっ、と神人さんは僕を抱きしめてくる。
「いっくんは、ずっと傍に居てくれるよね?」
「もちろんですよ。怖い夢でも見ましたか?」
「・・・ぐすっ・・・うぅ・・・」
「大丈夫です・・・大丈夫ですよ・・・・・」
どんな悪夢だったのか、気になる。けど、敢えて触れない事にした。
わざわざ怖さを掘り返す事は無いと思ったからだ。

「とりあえず、進藤さんからシュウマイ貰ったので食べましょうか?」
「・・・うん」
朝ご飯からシュウマイが大量。こんなシーンは何回目だろう。
玉子焼きは、普通。味噌汁は、普通。大量のシュウマイは、異常。
このずば抜けて異端である事を示す白い皮で包まれた食べ物は訳もなく美味しいのです。
進藤さんオリジナルらしいのですが、レシピを教えて欲しいところですね。
「・・・・・」
ちらっ。今日に限って、何故か神人さんが何回も僕を見る。
気になります。とても、気になります。
やがて、決心したように一人で頷いて僕を見据える。
「えっとね・・・いっくん、これ・・・あんまり、上手には出来なかったけど」
そう言って、何か包装紙に包まれたハート型の何かを渡してきた。
「今日はバレンタイン・・・だから」
そう言って凄く恥ずかしそうに俯いて、頬を紅くする。つまりは、
「・・・チョコですか?」
「うん」
「開けても、良いですか?」
「・・・うん」
神人さんからのチョコレート。包装紙を丁寧に剥がして中を見る。
そこには、確かにあんまり上手ではないけど、ハートの形をしたチョコレートがあった。
表面にはホワイトチョコレートで文字が書いてある。
Whatever happned, I will always love you forever.
意味は、"何があっても私は貴方を永遠にいつも愛します。"
「・・・ありがとうございます」
「どういたしまして・・・ひゃうっ!」
僕は、神人さんをいきなり抱きしめた。

「僕も、何があっても一生貴女を愛します」
「・・・ありがとう」
「何があっても、離しません」
「何があっても、離れないよ」
「何があっても、離れません」
「何があっても、離さないよ」
他人が見たら何てむかつくバカップルなんだろう。でも、良い。
幸せならそれで良い。まわりなんて、関係ないんですから。
僕と、神人さんがここに居る。それだけで十分なんです。
コンコン。
ふと、窓ガラスをノックされた。誰かなんて聞かなくても解る。
「どうしましたか、進藤さん?」
名残惜しいけど、神人さんから離れて窓を開ける。
「・・・これ、作ってきた」
「・・・シュウマイ?」
「バレンタイン仕様。具がチョコレート。出来立てホヤホヤ。シュウマイのたれにつけて食べる事を薦める」
「・・・・・・・・・・」
「じゃあ、それだけ」
そう言うと進藤さんは入ってきた窓から出ていった。
「・・・・・」
「・・・・・」
進藤さんが出て行った部屋で、僕達は黙り込んでしまった。
チョコレートシュウマイ。
恐ろしい未知の領域がテーブルの上におかれている。これは、中華料理かも怪しいです。
手作りだとすると、シュウマイの皮にチョコレートを入れて蒸したという事になる。
・・・中は恐らくドロドロの溶けたチョコレートが詰まっているに違いない。
冷蔵庫で冷やしていないのは、ホカホカ上がる湯気で解る。

いくらシュウマイ好きとは言え、これはどうなんでしょうか。
つい一週間ぐらい前の節分の時だって、中に豆の入ったシューマイ投げてましたしね。
「・・・食べてみますか」
僕はチョコレートシュウマイをわざわざ、シュウマイのタレをつけて口に入れてみた。
感想は、カルニチンの数十倍燃焼能力がありそう。
タレ無しでも、新食感じゃない新食感でしたね。
神人さんは泣きながら食べてましたね。これは駄目だよ、って呟きながら。
仕方が無いので残り全部僕が食べる事にしました。
ホワイトデーにはホワイトチョコレートのシュウマイでも送りつけて見ましょうか。
・・・いえ、あの人はシュウマイなら何でも食べそうですね。
なら、具がホワイトチョコレートのコロッケでも送りつけてみましょうか。
決定ですね。えぇ、もう決定です。
僕は、神人さんのチョコレートを口の中でよく味わいながら、ホワイトデーに向けて思考を回転させていた。
「・・・いっくん」
「え?あ、はい、何ですか、神人さん?」
「私のチョコ、どうだった?」
「美味しかったですよ」
「本当に?」
「えぇ」
「えへへ・・・良かった」
まぁ、良いか。別にシュウマイチョコなんてどうでも。神人さんの笑顔を見て、僕はそう思った。
・・・しかし、心と体は裏腹。お腹がギュルギュルと嘶き始めた。
「ビ●フェルミン・・・飲む?」
「お願いします・・・」

その頃、機関。

「何!?あいつが現れたのか!?」
「えぇ。薔薇す・・・ごほん、進藤日和からの報告で古泉一樹の夢の中に現れたという話です」
「あの能力者が・・・出てきた・・・」
「古泉一樹は超能力者が一種類しか居ないと思ってるから事をまだ悟ってはいないようだ」
「それが良い。あいつには教えるな。あぁ見えて、とてもナーバスな奴だからな」
「現の世界に居る少女と夢の境地で立つ少女、ですか・・・」
「あいつが出てきたという事は、閉鎖空間が発生しないよう努力しないといけないな、我々で」
「と、言っても結局は彼に頼るしかないですがね」
「どうすればよいものか・・・」
「万が一の場合には進藤日和に要請するしか無いな」
「むぅ・・・」
「『神』の起こしたエラーを解決出来るのは、我々だけだ」
「とりあえず、進藤日和には引き続き古泉一樹と神人の監視をさせます」
「そうしてくれ」
「それにしても、反機関組織より厄介なのが出てきてしまったな・・・」
「今頃、反機関組織も混乱してるでしょうね。それが彼女の力であり、任務ですから・・・」
「任務に忠実ではあるが、気紛れなのが傷だな・・・」
「まったくだ」

同じ頃。
北高の生徒会室。
「ふぅ・・・やっと仕事が終わった」
「お疲れ、喜緑くん」
「会長もお疲れ様です」

「ふふふ・・・人間のお仲間になるっていうのも大変そうね、喜緑江美里?」

「!」
「朝倉涼子・・・!?」
「久しぶり、喜緑さん」
「・・・消されたはずの貴女が何の用でしょうか?」
「ん?任務よ」
「任務?」
「うん。古泉一樹を殺せって命令なの。今回来たのはただの挨拶よ」
「なんだと・・・!」
「重要人物の一人を殺すと知って、簡単に逃がすと思いますか?」
「ううん。思ってない」
「朝倉涼子を敵性と判だ―――」
「だけど、今日は逃げないといけないから、バイバイ」
「逃がさないって言・・・っ!これは・・・会長、伏せ――――――!!」
轟々とした爆発の輝きが巨大なる爆音とともに北高の生徒会室から夜の街を一瞬だけ照らした。

 

 

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