付き合って3ヶ月目の俺とハルヒ。今日は日曜日。
 昨日は探索をこなし、今日はデートの予定だ。天気は快晴、気候もよし。
「なのに、なんでお前の部屋で二人で寝てんだろうな」
「知らないわよ、そんなの。あ~、良い天気ね」
「ハルハル~、外にデートに行こうぜ~」
「行かない、疲れてるもん。それとキョン、その呼び方やめなさいって何度言ったかしら?」
 自分だって、俺を名前で呼ばないじゃないか。とは言えない。
 だから、俺は何度でもそう呼ぶことで反抗するのさ。
「ハルハル~。昼飯も食べないといけないだろ~?」
 やはり、ポカポカ陽気のせいか話し方までダラダラしてしまう。
「後であたしが作ってあげるわよ。……今度『ハルハル』って言ったら別れるわよ」
「そんなこと言うなよ、ハルハル~」
「あ、もう怒った。二度と口きかないんだから」
 ハルヒは俺に背を向けるように寝返りをうった。……本気で怒ったか?
 しかし、この呼び方は意外に気に入ってたりする。
「ハルハル? 怒ったのか?」
「……………………」
 返事はない。ただの屍のようだ。とか言ってみる……無理。本気で殺される。
「ハルハル、こっち向かないと……キスするぞ?」
「……………………」
 返事はない。OKの証だ。俺はハルヒの首を捩じり、優しく口づけた。
「ちょっと! 勝手に何してんのよ!」
「いや、こっち向かないとキスするって言っただろ?」
「言ったけどさ……もっとほら、雰囲気とか……」
 ハルヒは拗ねたように唇を尖らせた。その唇にもう一回キスしてみる。
「だーかーら!」
「今、キスして欲しかったから唇を尖らせたんだろ?」

 大きな溜息の後、ハルヒは無言でまた背中を向けた。そろそろマジギレか?
「……………………」
 ……遊ぶのは終わりだな。背中から『あんたなんか嫌いオーラ』が出てる。真面目に謝ろう。
「ハルヒ、俺が悪かった。俺はただ、お前とデートがしたかったんだよ」
「……あたしはただあんたと一緒に居たいだけなのに」
 背中を向けたまま放たれたその言葉は、どこか『いじけた感』を感じさせる発音だった。
 あぁ、やっぱり怒ってるな。しかしその理由がまたかわいい。
「俺が悪かった。だから機嫌直せよ、な?」
 ここで後ろから抱きついてみる。これで機嫌直してくれるか?
「……離してよ、別れるって言ったじゃない」
 まだ機嫌は直らない。しかし、伊達に3ヶ月も付き合ってるわけじゃないぜ。
 こんな時の対処法もバッチリだ。ハルヒが頑なな態度を崩さない、そんな時は……突き放す。
「あぁ、そうか。勝手に抱きついたりしてわるかったな、『涼宮』」
「……え?」
「じゃあ、俺帰るから。また明日学校でな、『涼宮』」
 ここで足早に立ち去る。……フリだけどな。
「え、ちょ……ま……待ちなさい!」
 ほら来た。

「う~……ごめん。あたしが調子に乗りすぎた」
 付き合って初めて見たハルヒの謝る姿。これがまた、意外にかわいいんだ。やみつきになるね。
 それに考えてみろ。あの、何者にも屈しないハルヒが自分に謝ってくるんだぞ?
 ある一種の征服感を感じないわけにはいかないだろ?
「だから……もっかい」
 仲直りのキスを求めてくるんだ、こいつは。まぁ、キスとか抱き締める以上のことはしないんだけどな。
 ハルヒが求めてくるまで、俺はそれ以上をしようとは思わん。それに今のままで充分満足だ。
 俺は一言、「しょうがないな」と言ってベッドに戻り、ハルヒに口づけた。
 まったく、可愛らしい奴だ。ハルヒに気に入られた俺は幸せ者だな。
「あたし、ご飯作ってくるわ!」
 そして、仲直りの後はいつものことだが、照れ隠しのために理由をつけて目の前を去るんだ。
 ここら辺、ハルヒらしいなと俺は思う。


 ハルヒの作ってきたかなり美味い昼飯を食べ、再びゴロゴロダラダラの時間へ。
 いい加減どっか行かないか? と言おうと思ったが、やめた。
 これはこれで幸せだからな。特に買い物がしたいわけでもないし、どこかでイベントがあるわけでもない。
 ハルヒにうで枕をして、たまに言葉を交わす。そして、たまに抱き合ったり、唇を重ねたりする。
 これが幸せだと思えない奴がいたら俺に教えろ。俺の幸せそうな表情を見せてやるから。
「ねぇ、キョン。どっか行きたいなら行ってあげてもいいわよ?」
 おっと、これは予想外だ。いつもはこんなことは言ってこないんだけどな。
 あらたなパターンを知るイベント発生か? ……まぁ、俺の選択肢は決まってるがな。

「いーや、遠慮しとく。お前は行きたいのか?」
 するとハルヒは、こんなことを言いだした。
「違うけど……あんたがしたいことがしたいからさ」
 ……フラグ成立か? 俺がここで一言、「ちょっとエッチなことがしたい」とか言うとどうなる?
 さすがに断るよな。「あんたキモすぎるわ」とか言われて。
 しかし、初めての展開ならやってみる価値はある。もちろん、最後までやる気は毛頭無いが。
「俺がしたいこと? ん~……お前とちょっとやらしいことがしたい」
 さぁ、どう出る? 困るだろ、顔真っ赤にして……かわいいんだよ、バカ!
「……い、いいわよ」
 ハルヒは小声で言った後、強く目を瞑った。ヤバい、このまま突入だけはヤバい。
「や、優しくしなさいよ……」
 なんでこいつは予想外のことをするんだよ……。しかも「優しくしなさいよ」ってなんだよ。
 ……我慢できなくなるだろ、バカ。
 とりあえず、ハルヒを跨いで座り、上からキスしようと顔を近付ける。
「……っ」
 あ~、やっぱダメだ。こんな顔をしてる奴とやるのは無理。あたし我慢してます、みたいな顔するなよ。

 俺はハルヒの額に頭突きをかまして、再び横に寝転んだ。
「あたっ! ……キョン、なんでやめるのよ! あ、あたしは全然怖くなんてないんだから!」
「冗談だよ、冗談。無理しなくても、ずっと俺は好きでいてやるよ」
 ハルヒに対して優位に立っているとこんなセリフが出るもんさ。
 今の俺はなかなかカッコいい部類なんじゃないか? あ、勘違いか、すまん。
「キョン、ありがと……」
 ケンカ(もどき)の後のハルヒは完全に言いなりだな。ま、他の奴等といる時は完全に俺が下だが。
 それくらいのサービスをもらってもいいよな?
 普段は俺がこき使われ、二人なら俺が優位。これが俺達のバランスの取りかたらしい。
 つーか、幸せなら何でもいい。バランスもいらん。ただ二人だけの時間が増えさえすればな。
「すー……すー……」
 おっと、うで枕が気持ちよかったのか、眠りはじめやがった。これでまた、俺の腕は痺れることになるな……やれやれ。
 しょうがないから俺も寝るか。それじゃ、おやすみ……。


おわり

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最終更新:2020年08月22日 14:15