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──プロローグ──

『夜になったら、星をながめておくれよ。ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、

きみに見せるわけにはいかないんだ。だけど、そのほうがいいよ。きみは、
ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだと思ってながめるからね。すると、きみは、
どの星も、ながめるのがすきになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ。
それから、ぼく、きみにおくりものを一つあげる……』
 俺は今、自分の部屋で絵本『星の王子さま』を読んでいる。その俺の話に
隣でじっと耳を傾けているのは、無口で読書好きなあの長門有希である。
長門は俺と一緒にベッドに腰をかけて、俺の持つ絵本の挿絵を食い入るようににじっと強い眼差しを向けている。
 この『星の王子さま』は、長門の普段読んでいた本からすると、だいぶ幼稚ともとれる内容だが、
なぜ長門はこの本を読みたいと言い出したのだろうか。
いつもと同じ起伏の無い表情からは、感情と思しきものは何も読み取れない。
長門は俺の話しに静かに耳を傾けながら、ただじっと本の挿絵を見つめていた。
しかしそんな中にもほんの微かにではあるが、目元が楽しそうに見えるのは、俺の思い上がりであろうか。

 なぜ今俺が長門のために絵本を読んであげているのかというと、長門は今、文字を読むこ
とができなくなっているからだ。いったい、この長門はどこまでこの話を理解できているの
だろうか。ひょっとしたらほとんど理解できていないかもしれない。複雑な事情があるよう
だが今はまだその理由ははっきりとはわかってはいない。
 ここに至る経緯を話すには、まず今置かれている状況から、順を追って説明していかなけ
ればなるまい。

 どこから話そうか……そうだな、話は今から4日前に遡る。


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