「いい、みんな!!アタシ達の辞書に敗北の二文字は無いのよ!!」
…。
ハルヒの声が響く。
…。
「やれやれ」
「ふふ、かしこまりました。元帥閣下」
「が、がんばります!」
「コクン」
「オッケ~にょろ♪」
「血が騒ぐぜ!」
「出来るだけ頑張るよ」
…。
決戦の時は来た!!。
…。
…状況がわからない?
OK
今回の出来事を振り返ってみよう。
…。
…。
…。
…。


「明日雪合戦をするわよ!!」
…。
……はい?。
…。
今日は一年生最後の日、明日から春休みだ。
終業式を終えた俺達は春休み中に行う合宿についての最後の打ち合わせを行う為部室に集まっていた。
一通り話し合いを終え
さあ帰るか…。
と思った時にハルヒの声が部室に響いた。
古泉も朝比奈さんも目を丸くして驚いている……まぁ、長門はいつも通りだが。
…。
「……ハルヒ」
「何よ!」
「……今、何をするって言った?」
「雪合戦よ!アンタ、その歳でもう耳が遠くなったの?」


…。
どうやら俺の聞き違いでは無いようだな……さて。
…。
「…ハルヒ」
「何よ?」
「その雪合戦の雪ってのは空から降ってくる白くて冷たい雪だよな?」
「当たり前じゃない!もしかしてボケちゃったのキョン?」
…。
ボケてるのはお前だ。
…。
「ハルヒ……今何月だ?」
「3月よ!……もしかして本当に…ボケ…」
「表を見ろ、雪のゆの字も無いだろ。これでどうやって雪合戦をするつもりだ?」
「したいんだから仕方ないじゃない!!」


「したいも何も雪が無いから出来ないだろ……それに雪合戦なら雪山でやっただろうが……」
…。
雪合戦って言うか一方的にぶつけられただけ…と言った方が正しいと思うが…。
…。
「アタシが求めているのはそんな仲間内での馴れ合いの様な雪合戦じゃ無くて相手側を完膚なきまでに叩きのめす……そんな雪合戦よ!!」
…。
なんでこいつは平和主義になれないんだ…。
…。
「そんな訳で明日は雪合戦ね!」


「だ~か~ら~雪が無いのにどうやって雪合戦をするんだ!!」
「そこはアンタが何とかしなさい!」
「出来るか!!お前は俺を何だと思っているんだ!?」
「アンタは団員その1よ!絶対なる存在SOS団団長の命令は何でも聞かないといけないの!!」
…。
……こいつは…。
…。
「まぁ、お二人共落ち着いて下さい」
…。
古泉の声が響く。
…。


「古泉君、あなたでも構わないわ!明日雪を降らせなさい!」
「あいにくですが雪を降らせる事の出来る知り合いは居ないのですよ……ここは一つ来年の楽しみに取っておく……ってのはいかがでしょうか?」
…。
うむ、正論だ!しかしハルヒは…。
…。
「嫌!明日したいの!絶対したいの!やだやだやだやだやだやだ!!」
…。
地団太を踏みながら叫ぶハルヒ……子供かお前は…。
…。
「まっ、いくらお前が騒いでも雪が無いからには仕方ないな。さて、そろそろ帰るか」
「そうですね。さぁ涼宮さん、帰りましょう」


「……うぅぅぅ…雪合戦…」
…。
尚もブツブツと言い続けるハルヒをなだめつつ俺達は帰路についた。
…。
…。
…。
「しかし雪合戦とはな…」
…。
俺と古泉、朝比奈さん、長門は坂を下っていた。
ハルヒ?ああ、アイツはすねて先に帰った。
…。
「あのような涼宮さんは久しぶりでしたね」
「ああ、そうだな」
…。
ここまで理不尽な事を言い出すハルヒは久しぶりだった。
…。


「でも…涼宮さんなんだか可愛かったですね。ふふふふふ♪」
…。
ハルヒの地団太踏んでいる姿を思い出したのか朝比奈さんは微笑みを浮かべている。
…。
「ったく…雪を降らせなさい…って……長門ならもしかして出来たか?」
「出来なくもない……ただ推奨は出来ない」
「ああ、後遺症がどうとかだったな」
「そう」
…。
わがまま娘の為に数百年から数万年後の人達に迷惑をかける訳にはいかない。
…。
「じゃあまた」
…。
俺達は別れそれぞれの帰路についた。
…。
…。
…。
…。


~翌日~
…。
…。
「……くん」
「ZZZZ…」
「……ンくん」
「……ん」
「キョンくん!」
「……ん~?」
「起きてよキョンくん!」
…。
……なんだ一体…何時だ今……6時!?
…。
「起きた?キョンくん?」
「……妹よ」
「な~に?」
「なぜ、どのような理由で春休み初日に朝っぱらから叩き起こされにゃならんのか説明してもらおうか」
「えっへっへ~♪」
…。
妹は笑みを浮かべながら窓に近づく……なんだ?
…。
「じゃ~ん♪」
…。
サー
…。
妹の手により開かれるカーテン。
その先には…。


…。
「な!?」
…。
窓の外は白く染まっていた。
……これは…。
…。
「凄いね、今テレビで以上気象とか言ってたよ♪」
…。
異常気象だ。
…。
「そうだそうだ♪シャミ~♪」
…。
妹は俺の布団の中で丸まっているシャミセンを引っ張り出した。
…。
「一緒にお外で遊ぼう♪」
「ニャ!?」
…。
妹はシャミセンを抱え部屋から飛び出して行った。
…。
「ね~こは喜びにわ駆け回り~♪」
「フギャアアアアーーーー!!」
…。


妹の歌声とシャミセンの絶叫が遠ざかっていく……妹よ、犬の間違いだ……シャミセン…哀れな…。…。
「それにしても…ハルヒ…」
…。
窓を開け舞い落ちる雪に手を伸ばす……現実か…。
…。
「お前って奴は…」
…。
いくらなんでも無茶苦茶だろこれは…。
……ん?電話?
見ると…ハルヒか。
どの道俺は起こされていた訳だ…。
…。
「もしもし」
「キョンーーー!!」
…。
くぅ~…耳が痛い…。
…。
「外見た!?外!見てないなら今すぐ見なさい!」
「ああ…見た見た。見たから少し落ち着け…」


「何言ってんのよ!これが落ち着いていられる訳無いでしょ!?雪よ雪!これで雪合戦できるじゃない!!」
「ああそうだな…」
「やっぱりアタシの日頃の行いが良いから神様がご褒美をくれたのね!!アタシに感謝しなさい!」
…。
……これを本気で言っているからタチが悪い…。
…。
「いい、キョン!!10時に学校のグラウンドに集合よ!!」
…。
やるのか…しかし…。
…。
「雪合戦は分かったが……相手はどうするんだ?」
「それは大丈夫よ!今から古泉君に電話して探してもらうから!」


「今からか!?」
「古泉君ならなんとかしてくれるわよ。なんてったってうちの副団長なんだから!」
…。
……たしかに。
いや、副団長云々じゃなくて……な…。
…。
「それじゃね!遅刻したら雪玉の中に入って崖からダイブの刑よ!キョン!!」
…。
言いたい事を言ってさっさと切りやがった……やれやれ。
おそらくはすぐ古泉に電話するのだろう。
古泉も面食らう事だろうな。
…。
…。
…。


それから5分ぐらいたっただろうか?
再び携帯がメロディーを奏でだした。
思ったより早かったな。
…。
「もしもし」
「おはようございます」
…。
もちろん相手は古泉だ。
…。
「ああ」
「いやいや、さすが涼宮さん…としか言いようがありませんね。思えば予想出来たはずですが……油断していました」
…。
たしかに…あいつのトンデモパワーを甘く見ていたな……お互いに。
…。


「まぁ、降った以上仕方ないだろう……で、対戦相手はどうするんだ?ハルヒはお前に探してもらうと言っていたが」
「はい、それはおまかせ下さい。当てはありますので」
…。
さすが古泉だ。誰を連れてくるかはしらんがな。
…。
「じゃあ任せたぞ」
…。
そう言って電話を切ろうとしたら…。
…。
「あっ!待って下さい。涼宮さんから伝言があります」
「伝言?なんだ?」
「はい、雑用に使いたいから2人程どなたか連れてくるように…との事です…それでは失礼します」
「おい、ちょ…」
…。
プープープー
…。


切れたか…2人程連れてこいだと?しかも雑用か……もしも呼ばなかったら俺1人が雑用を押し付けるられる訳か……ごめんだな。
気の毒だが付き合ってもらうぞ、谷口、国木田。
…。
…。
…。
…。
~????~
…。
…。
…。
………ん…電話?
心地よい眠りの中にいた俺は突如かかって来た電話に起こされた。
時計を見ると……7時前だと?…ったく誰だ、春休み初日のこんな朝っぱらから…。
…。
「…もしもし」
…。


出る前に相手を確かめなかった……この軽率な行動を後で激しく後悔する事になる。
…。
「どうも、おはようございます」
…。
……誰だ?聞いたことあるような声だが。
…。
「古泉です」
…。
な!?
…。
俺はベッドから跳ね起きた…古泉だと!?
…。
「もしもし?どうされました?」
「……古泉…一体何の用だ…」
「ハッハッハ、そんなに構えないでくださいよ。実は協力していただきたい事がありまして」
「協力だと!?」
…。


嫌な予感がはじけた。いや、予感なんてものじゃ無い……間違い無くこいつは俺に不幸を届けにきやがった。
…。
「声の様子から今起きたばかりのようですね。とりあえず窓の外を見ていただけませんか?」
…。
窓の外?一体古泉は何を…。
俺は古泉の言う通りカーテンを開けた。
…。
「な!?」
…。
窓の外は白く染まっていた……ちょっと待て!今何月だ?つい先日春一番が吹いたばかりだというのに…。
…。
「なんだこれは!?」
「なんだと言われましても雪だとしか言いようがありませんね」
…。


ああ雪だ…真冬でもこんなに積もる事ないだろう…異常気象ってやつか…。
…。
「それで本題ですが…」
…。
古泉の言う本題……あの涼宮ハルヒが雪合戦をしたがっていると。そして俺…いや、俺達にその相手をしろと言う事だ……馬鹿馬鹿しい!!
…。
「悪いが……いや、全然悪いとは思わんが断る!」
「おや、断りますか?」
「当然だ!!」
…。
何が悲しくてあの集団と雪合戦などしなければならんのだ!
…。
「他を当たれ!」
…。
そう言って電話を切ろうとしたが…。
…。


「いいんですか?あなたが僕らに向けた宣戦布告……僕はまだ覚えていますよ……会長?」
「な!?あ…あれは撤回したはずだ!!」
…。
宣戦布告…あれは若気の至りとしか言いようがない……思い出す事さえも嫌な記憶…。
…。
「勝手に宣戦布告して勝手に撤回ですか?随分と虫の良いお話しですね」
「ぐっ…」
「あなたには選択肢が2つあります。
ルール無しで僕らとガチで争うか、それともシナリオに乗って僕らと争う振りをするか……どちらを選びますか?」
…。


この悪魔が!
…。
「さあ、いかがいたしましょうか?」
…。
……この不幸はもう避けようが無いのか。
ならばせめてでも痛みの少ない方を…。
……ちくしょう‥。
…。
「……わかった協力しよう」
「賢明な判断です。それでは今から3時間後に校庭でお会いしましょう」
「3時間後!?ちょっと待て、急過ぎる!」
「申し訳ありませんがこれは規定事項ですので。あなたならばそれくらいあれば人間を集められる…それだけの力は与えた筈です」
「くっ…」


「それではお待ちしております……ああ、最後に…これは涼宮さんを除く僕らにとっても急な話だった…この事は忘れないで下さい。それでは…」
…。
最後に古泉はそう言って電話を切った……自分達も被害者の一員と言いたいのか。
…。
「………はぁ‥」
…。
ピッピッピ…。
…。
「………ああ、私だ、早朝にすまない。緊急の会議を行う事になった……え?この雪が関係あるのかと?……まぁそんな所だ。9時30分に集合だ……うむ、十分な厚着をしてくるように……うむ……」
…。
…。
…。


~校庭、キョン~
…。
…。
…。
「遅い!罰金!!」
…。
集合時間の10分前に集合場所の校庭に到着すると…まぁ当然とばかりにみんな集合していた。
…。
「なぁキョン」
…。
話しかけたのは谷口だ。国木田と一緒に3人で校庭に着いた訳だ。
…。
「なんだ谷口」
「集合時間は10時だろ?10分前に着いたのに何で罰金なんだ?」
「これがSOS団のルールだ。たとえ時間までに来ようと一番最後の者は罰金…いまさらの事だ」
「お前…いや、何でもねぇ…」
…。


俺を同情の目で見る谷口……あえて口には出さんがお前にだけは同情されたくない…色々な意味で。
…。
「しっかし…何が悲しくて俺らがお前らに付き合わされないといけないんだ…」
「何言ってるの谷口、誘ってもらえて嬉しいくせに」
「馬鹿!国木田お前!」
…。
まぁ、せいぜい2人共ハルヒにこき使われてくれ……ああ、俺もか…。
……ん?あれは!?
…。
「やあキョンくん!清々しい朝だねっ!」
「おはようございます鶴屋さん」
…。
朝比奈さんの隣に居るのは鶴屋さんだった。
…。


「いやぁ~、みくるから電話があってねっ、面白そうな事をやるって聞いたから参上したわけさっ。アタシが来て良かったかなっ?」
「当然ですよ。大歓迎です鶴屋さん」
…。
この人のテンションの高さはたとえ雪が降ってようとも変わらないらしい。
…。
「おはようキョンくん。まさか本当に雪が降るなんて思いませんでしたよ」
…。
そう言って声をかけてきたのは朝比奈さんだ。
この人の愛らしさはたとえ雪が降ろうと槍が降ろうと変わることは無いだろう。
…。


「おはようございます朝比奈さん…まぁ、降った以上仕方ありませんね。怪我だけはしない様にして下さい」
「はい」
…。
さて…。
…。
「長門、どうだ?」
…。
俺の声に長門は頷き
…。
「問題ない」
…。
とだけ答えた。うん、いつも通りだ。
…。
「やあ、どうも」
「古泉、対戦相手はどうなっているんだ?」
「ええ、あちらでスタンバっておられます」
…。
古泉の指し示す方を見ると……なるほどな。ハルヒにとってはうってつけの相手だ。
生徒会の面々が揃っていた。
…。


「ふん、生徒会ごときがアタシ達に喧嘩を売ろうなんて一万と二千年早いのよ。いい!みんな!完膚なきまでに叩きのめしてやるのよ!!」
…。
ハルヒの声が響く……なんだ?向こうから喧嘩を売って来た事になっているのか?
古泉を見ると笑顔を返して来た……そうか……生徒会も気の毒な。
まぁ、その為だけに存在していると言っても過言では無いだろう……せいぜい頑張っていただこう。
…。
…。
…。


~校庭、会長~
…。
…。
…。
……寒い。
視線の向こうではあの集団が騒いでいる……忌々しい。
それにしても寒い…気温もそうだが一番寒いのは…。
…。
「会長……これは一体どういう事ですか?」
「会議するんじゃなかったんですか?」
「なんであのSOS団が目の前に居るんですか?」
…。
部下達の視線の方だった。
…。
「諸君」
…。
俺は振り向き言葉を発した。
…。
「これからSOS団と雪合戦を行う」
『はい!?』
…。
俺の言葉に驚きの声を上げる面々…当然か…。
…。


「正気ですか会長!?」
「奴らに手を出すのは中止するって言ったじゃないですか!?」
「SOS団だけじゃなくあの谷口と鶴屋もいますよ!」
「谷口を見て下さい!この寒い中でもチャック全開…本気ですか!?」
「恐ろしい…」
…。
非難GOGOだな…気持ちはわかる、しかし…。
…。
「黙りたまえ!確かに私は中止すると言ったが再開しないとは一言も言っていない…一度苦汁を舐めただけで引いてしまって良いのか?あの集団を野放しにしてて良いと言うのかね?」
「うっ…」


「今回は雪合戦だ…人数ではこちらが勝っている。我々が勝利する確率は高い。
それに君達は優秀だ、必ず勝利すると私は信じている」
…。
俺の渾身の演説……騙されてくれるか?
…。
「…会長」
「目が覚めました!」
「今回こそあの集団に鉄槌を下してやりましょう!」
…。
うん、見事に騙されてくれたか!
しかし今言った事は全て嘘では無い……古泉からは
『必ず負ける様に』
とは言われていない。
こうなった以上一泡吹かせてやろう。
…。


…。
~キョン~
…。
…。
…。
10時になりお互いに調印が結ばれた。
…。
・決着は戦闘不能になるか、降参するかのみ。
・悲しみしか生まないので核兵器の使用は絶対に禁止。
・勝者は敗者に一つだけ言う事を聞かせる権利を持つ。
…。
…。
これだけだ。
後は勝手に…って事か。
開戦は11時から、それまでの1時間を準備期間って事だ。
…。
「キョン、古泉君、谷口、国木田は壁を作りなさい。有希、みくるちゃん、鶴屋さんは雪玉作りね」
「ああ」
「かしこまりました」
「わかったよ」
「雪玉ですね」
「了解」
「わかったよっ!」
…。


それぞれの声の響く中に空気の読めない愚か者の声が響いた。
…。
「ちょっと待てよ涼宮!」
「何よ」
「お前は何をするんだ?もしかして俺達だけに作業させて1人だけ見ているつもりか?」
…。
谷口!?…馬鹿が…。
…。
「あんたにはこの腕章が見えないの?」
…。
ハルヒは腕章を掲げた……『元帥』と書かれた腕章を…。
…。
「谷口」
「なんだよ」
「あんたは上官に対する抗命の罪で軍法会議にかけるわ……そうね、本来なら銃殺刑だけど…うん!スクワット100回ね!」


「なに!?」
「さっさとやりなさい!!」
「おい、キョン」
「さっさとやれ」
「ええ!?」
…。
…。
…。
…。
「高さはこんなもんか?」
「そうですね、後少しだけ高くしましょうか」
「そうか、国木田、こっちにもう少し頼む」
「うん」
「……62…63…64……」
「涼宮さん、玉の大きさはこれくらいですか?」
「そうね、それくらいで良いわ、じゃんじゃん作ってちょうだい」
「有希っ子、雪って見てたら美味しそうに見えて来ないかい?思わず口に入れたくなるよ」
「それは推奨できない。雪には様々な有害物質が含まれており食用には向かない」
「ハッハッハ、そいつは残念だね」
…。


着々と準備が進んでいる、それなりにみんな楽しそうだな……1人を除いて。
…。
「……98…99…100…終わったぞ涼宮!」
「なら次は腕立て100回」
「ええ!?」
「さっさとやる!!」
…。
…ああは成るまい。
…。
…。
「ハルヒ、こんなもんでどうだ?」
「上出来じゃない、ならキョン、古泉君、国木田は雪玉作りに加わって」
…。
俺達3人の作った壁はハルヒのお気に召したようだ。
万里の長城8号と名付けられた……何故8号かって?……知らん。考えたら負けだ。
残りの時間、ハルヒと罰を終えた谷口も加わり皆で武器となる雪玉を作っていた。
…。


「ハルヒ」
「なによ」
「強く握りすぎだ。雪玉じゃなくて氷玉になっているじゃないか、殺す気か?」
「…わかったわよ」
…。
「国木田!」
「どうしたの?」
「中に石を入れるな…ってかそれほとんど石じゃねえか!人畜無害そうな顔して恐ろしい事をするな!!」
「仕方ないね」
…。
「谷口!?」
「どうした?」
「核兵器の使用は絶対に禁止だと言っただろ!!犬の糞を入れるな!!」
「ちぇ…」
…。
「…鶴屋さん」
「なにかな?」
「スモークチーズを入れるのは止めて下さい……意味が分かりません!」
「にょろ~ん」
…。
…。
これだけの人数が居てツッコミが俺しか居ないというのが恐ろしい……そろそろ時間か…。

~会長~
…。
…。
…。
「準備は出来たみたいだな」
「はい、万全です」
…。
高い壁もでき、雪玉も大量に用意できた……完璧だ。
…。
「それでは作戦会議をおこなう。皆に聞きたい、あの中で誰に一番注意すれば良いと思うかね?」
…。
こちらの方が人数が多い。危険人物に複数人つけると有利になるだろう。
…。
「そうですね…涼宮ハルヒを始めとしてクセのある人達ばかりですからね…」
「私はやはり古泉一樹が一番の危険人物と見ている」
「いや、涼宮ハルヒの方が危険かと…」
「キョンも侮ってはいけないと思いますが…」
…。
やはりそれぞれ驚異に思っている人間は別か…ふむ…。
…。


「それでは古泉一樹、涼宮ハルヒ、キョンに複数人マークにつける…それで構わないな?」
「はい」
「よろしい、では会議を終…」
…。
会議の終わりを告げようとした時…1人の女子生徒の声が響いた。
…。
「待って下さい!」
…。
その声の主は喜緑江美里…生徒会役員筆頭で俺の片腕だ。
…。
「どうしたのかね喜緑君?」
「一番の危険人物は古泉一樹でも涼宮ハルヒでもキョンでもありません……長門有希です」
…。
長門有希?…たしかに長門有希も危険人物の1人と言えよう、あの集団の中で危険人物で無い奴など居ない訳だからな……しかし…。
…。


「君が長門有希にこだわるのは分かるが…古泉一樹よりも危険人物には見えないのだが?」
…。
前回もそうだったが喜緑は長門有希に思い入れが強すぎる様だな…しかし俺はそこまでは思わない。
…。
「悪いがこれ以上人間をつける訳にはいかない」
「いえ、別に長門有希にマークをつける様に言っている訳ではありません……ただ侮らない様に…」
…。
…ふむ。
…。
「それに人間ごときでは彼女は止められませんし…」
「ん?何か言ったかね?」
「いえ、なにも」
…。
…空耳か…人間ごとき…とか聞こえた様な気が……気のせいだ。
…。
「とにかく長門有希は私に任せて下さい」
…。
…。
…。


~キョン~
…。
…。
…。
「作戦会議を始めるわよ。作戦は…勝ちなさい!以上!!」
…。
実にシンプルな作戦だなおい…それ以前に作戦かこれ?
まあ良い。所詮これはお遊びだ、それに必ず勝つようになっているんだろ。
…。
「そういえば…」
「なんだ古泉?」
「勝敗については何も言っていませんでした」
…。
なに?
…。
「もしかしたら向こうは本気で勝ちにくるかもしれませんね、ハッハッハ」
「なに笑ってんだ……まぁ、だとしても負ける気はしないけどな」
「おや?凄い自信ですね」
「昔から雪合戦は得意だったんだ」


「ええ、僕も同じです。こう見えても僕の幼少の頃は雪合戦の鬼と呼ばれていましたから」
「…お前は一体いくつ異名を持っているんだ」
…。
ハルヒも居るし、鶴屋さんも居る。極めつけに長門が居る訳だ…負ける要素が見つからない。
…。
「油断しないほうが良い」
…。
長門!?
…。
「それはどんな意味だ?」
「喜緑江美里が居る」
…。
喜緑さん?
長門を見ると……冗談で言っている訳では無い様だが…。
…。
「しかし長門よ、喜緑さんだぞ?」


「そうですよ、あの温厚そうな喜緑さんです。そこまで警戒する必要は無いでしょう」
…。
古泉と俺との意見は一致しているみたいだな。
喜緑さんは驚異にはならない…しかし長門は…
…。
「…あなた達は一つ誤解をしている」
…。
誤解?
…。
「喜緑江美里はああ見えてかなり負けず嫌い」
…。


「みんな集合!」
…。
ハルヒ?
ハルヒの呼びかけに皆集まる…いつの間にか時計は11時を指そうとしていた。
…。
「いい、みんな!!アタシ達の辞書に敗北の二文字は無いのよ!!」
…。
ハルヒの声が響く。
…。
「やれやれ」
「ふふ、かしこまりました。元帥閣下」
「が、がんばります!」
「コクン」
「オッケ~にょろ♪」
「血が騒ぐぜ!」
「出来るだけ頑張るよ」
…。
時計の針が11時となり決戦の時が来た!!
…。
「撃ち方始め!!」
…。
…。
…。
…。

 


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最終更新:2020年03月11日 21:26