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 えっと……ど、どうしよう……。
 わたしは今、涼宮さんに押し倒された状態で部室にいます。もちろん、二人きり。
「もう、いや……」
 そして、涼宮さんは泣いてます。どうしたらいいのか、わたしはわからない。
 ……なんでこんなことになっちゃったのかなぁ?


 わたしの知ってる未来は、SOS団はみんな幸せそうに暮らしていた。
 キョンくんは涼宮さんと、わたし達3人はそれぞれ幸せを見つけていた。
 ……でも、それが変わっちゃったのが三日前だった。
「悪い、ハルヒ。お前とは付き合えない」
 嫌だけど監視・盗聴をしてた涼宮さんの告白シーンで、キョンくんはそう言った。
「そ、そう。……なんで? あたしのこと、嫌い?」
「嫌いじゃないけどな。好きでもない……って訳じゃないが、俺が中途半端な気持ちじゃ付き合いたくないんだ」
――つまり、友達のままで――
 それがキョンくんの出した結論だった。
 もちろん、わたしの上の人達は慌てて、古泉くんの機関の人達も警戒した。
 ……でも、何も起きなかった。力が消えたわけじゃないみたいだけど。

 多分、キョンくんにフラれちゃって、心が空虚になったんだと思う。失恋ってそんなものなんだもん。
 でも、次の日。涼宮さんは普段通りに学校に来た。そして、いつものように振る舞うように見せて、空元気を振りまいていた。
 そんな様子が、わたしは可哀相で見ていられなかった。……だけど、見なきゃダメなんだよね。

「付き合って……くれない?」
「申し訳ありませんが……」
キョンくんにフラれた次の日、涼宮さんは古泉くんに告白した。
 たぶん、心に空いた穴を埋めたかったんだと思うんだけど……。
「貴女のことはとても魅力的に感じます。……ですが、いろいろと事情がありまして……すみません」
 そして、古泉くんも涼宮さんをフった。理由はわからないけど。
 涼宮さん……何やってるんだろう……。

「キョンがダメだったから古泉。そして、次は俺か? 断るね。お前にゃ振り回されたくないしな」
 そして、さっき。この言葉と共に、谷口くんにもフラれちゃった。
 涼宮さんは、完全に空虚な、生気の無い顔立ちになって、部室に来た。
 その時、みんなは帰っていて、わたしは着替えてた。そこで、押し倒されちゃったの。……どうしよう。


「あたしさ、そんなにダメな女かな? スタイルにも気を使ってるし、髪も綺麗にしてるのよ? ほら……」
 涼宮さんは、押し倒したわたしの手を掴み、髪、そして胸へと運んだ。
「い、いいいえっ! 涼宮さんは羨ましいくらい素敵ですっ!」
 これは本心。わたしも、何度涼宮さんみたいになりたいって思ったかなぁ……。
「……みくるちゃんみたいにかわいかったら、あたしも幸せになれたかも」

 涼宮さんは、わたしの頬を撫でてきた。冷たい掌が、ヒンヤリ気持ちいい。
「古泉くんも、谷口も……そして、バカキョンも。バカキョン……キョン……」
 とうとう、涼宮さんは涙が零れるくらいに泣き出して、その滴がわたしに当たり始めた。
「なんでみんな……。あたしは幸せになれないの? これが、みんなに迷惑をかけてきた罰なの?」
 涼宮さんの心が不安定になってる。どうしよう……わたしは何をすればいいんだろう……。
「ひぐっ……もう男なんかいい。……みくるちゃん、ずっとあたしといてね?」
 涼宮さんの顔が近付いてきて、わたしの唇と涼宮さんの唇は触れ合った。とても柔らかくて、震えてる。
「涼宮さん……やめて下さい……お願いします……」
 そう言うしかなかった。だって、わたし達は女同士だから。
「みくるちゃんも、あたしのこと嫌いなのね……」
 ち、ちが……。
「いいの。あたし、そういう性格だもんね。あたしは必要ない人間なのよ」
 違いますよぉ……。
「あーあ。また、一人ぼっちに戻っちゃうんだ……」
「違いますっ!」
 わたしは、涼宮さんを抱き締めていた。だって、涼宮さんが悲しいことばかり言うから……。
「無理しないでいいわよ。震えてるじゃない」
 涼宮さん……わたしだけは、ずっとあなたを好きでいますよ?
 そして、口付けた。涼宮さんの唇は、やっぱり柔らかくて、震えていた。
「はぁ……。みくるちゃん……大好きぃ……」
 唇を離すと、涼宮さんはわたしにしがみついて、再び泣き始めた。
「みんなキライ……もう、ずっと二人でいい……」
 ……え?
「みくるちゃんと二人で、あいつらなんていないとこに行きたいな……」

 ダメ、そんなこと言ったら……ダメですよ!
 このままじゃこの世界が消えちゃう。なんとかしなくちゃ。
「だって、みんないなくちゃ楽しくないですよ? たった二人で生活しても……ほら、学校にいると楽しいですよね?」
「あたしは楽しくない。去年まではよかったけど……もう、キョンや古泉くんに笑いかけたり出来ない」
 わたしも、人並みに危険を察知出来る。その本能が言ってる、このままじゃ世界が……って。
「だからね、みくるちゃんと二人がいいの。ずっと一緒にいれるし、あたしのことも理解してくれる」
 わ、わたしは……何にも出来ないから、みんながいなくちゃ……。
「大丈夫よ、あたしがぜーんぶしたげるから。だから……ずっと、あたしの笑顔の向く先になってね」
……………………………
 その言葉を聞いた瞬間、わたしは暗闇に包まれ、すぐに明るくなった。
 そして、その世界は……。


「おっはよー! みくるちゃん、今日もかわいいわっ! キスしちゃうんだから!」
 時間は、午前7時半。わたしは涼宮さんにキスされて、それから一緒に学校に向かうのが習慣になってる。

「あ、朝からやめて下さいっ! もう……人に見られちゃったらどうするんですかぁ?」
「あたしは見られてもいいわ! それに、みんな知ってるわよ。『北高一の美少女カップル』なんて言われてるじゃない」
 この世界では、わたし達が付き合ってることが完全に自然になってる。
 それに、他にも違う点がある。涼宮さんが、無意識に拒絶したと思う、キョンくん、古泉くん、谷口くんはいなかった。
 長門さんは、普通の、静かでかわいい人間で、鶴屋さんは二人の共通の親友。
 未来とも連絡が取れない、普通の世界になっていた。
「ねぇ、みくるちゃん。大丈夫? 元気ないわね……休もうか?」
 涼宮さんも能力はなくて、少しわたしに優しい。
 大丈夫ですよ、涼宮さん。わたしは元気です!
「む~、それならいいわ。でね、涼宮さんはやめてって言ってるじゃない! 名前で呼んでよ、あたし達の仲でしょ!?」
 怒る時も、うれしそうにする涼宮さんを見るのはうれしい。でも、家族やキョンくん、古泉くんに会えないのは寂しいな……。
 それでも、わたしはわかっていた。元の世界に戻る術がないことを。
 だから、涼宮さんに選ばれたわたしは、涼宮さんと生きることにしよう。世界でただ一人、キョンくんと古泉くんを知る人間として。
 わたしの愛する涼宮さんと一緒に。決して一つにはなれないけど、彼女はわたしを愛してる。
だから、わたしも彼女を……。
「みくるちゃん? いきなり黙っちゃってどうしたのよ?」
 でも、下の名前で呼ぶのは恥ずかしい。だからわたしはこう言います。
「なんでもないですよ? 行きましょう、涼宮さん!」
 そして、怒りながら楽しそうに追いかけてくる涼宮さんから逃げながら、もう一つ呟いた。
「バイバイ……お世話になった、わたしの世界の人達……」


おわり

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