いつものように朝比奈さんの炒れたお茶を飲みつつ、古泉とオセロを楽しむ

今じゃアナログなゲームかもしれないが、これはこれで中々おもしろいもので…
と言っても、相手は古泉
無駄にボードゲームを持ってくる割りにはほとんど手ごたえはなく…というか弱い

まぁ家に帰って勉学に励むわけでもないし、こんな風にまったりとすごすのもいいものだと思うようになってきた
というより、涼宮ハルヒの存在で、ゆったりした時間がどれだけ希少に感じられることか…

しかし、こういう時間は一瞬にして砕かれる
こいつのせいで…

バンッ!!!

毎度の事だが、物凄い音とともにドアが開かれる
もしドアの近くに居たりなんかしたら、よくて骨折だぞ

「ドアくらいゆっくり開けろよ」
「いつものことでしょ」
さらりと言い放つと、団長の机に飛び乗った
「なんだ、演説でもするのか?」
「ちょっと違うわ。まぁ聞きなさい」
とハルヒは言い、スカートの後ろにさしていた雑誌のような物を取り出した
その雑誌はこの前俺達、鶴屋さん他etc…で作成した会誌だった

出来栄えはよく、評判も結構良いとのことだった
ハルヒは会誌を広げ、
「今回の会誌は大成功!もういろんなとこから太鼓判押されまくりよ!この調子だったら月一くらいで販売するのも良さそうね」
とまたもやあの不敵な笑みを浮かべた
が、俺は即反対する 
「そんなもん売ったりしてたら生徒会にまたなんか言われるぞ」
と言うが、
「んじゃ売らなかったらいいの?無料配布なら生徒会の連中も文句いわないでしょ?」
と一向に自分の思考を曲げようとしない
よくて有料から無料になったくらい… 作るのは俺達だぞ

それに配るたびにいつかのバニー姿みたいなことしたら、それこそ生徒会だけでなくいろんなところから目をつけられる
下手すりゃ謹慎だってありうるぞ

「まぁ作るのはいいだろうが、バニー姿とかで配るのは止めろよ」
と言うと、
「あんた、鋭いわね。なんで私の考え分かるのよ。超能力者?」

いや、少なくとも俺は普通の人間だ
というか超能力者なら俺の目の前にいるぞ

とか言ってやりたかったが、そんなこと言ってもどうせ信用されないだろ
ハルヒにとって古泉は『謎の転校生』だったくらいのもんだ
今となっちゃ転校生なんて全く関係なく、ただの男子生徒
趣味は赤い玉になって空を飛ぶことか?

「とにかく止めとけ。するんならもっとマシな衣装にしとけよ」
と言うと
「団長に指図しないの!…でも、新しいコスチュームもいいかもねぇ…」
と言い、椅子に座り考え始めた

俺はそのまま古泉とオセロを楽しみ、今日の活動は終わった

次の日、いつもと同じ登校だったが、今日は金曜日だ
明日は休みと思うだけで、どれだけ嬉しいものか

午後、いつもの様に部室に行くと、あのハルヒが満面の笑みを浮かべていた
そして、俺が入るやいなや
「キョン!あんた小説書くのよ!」
と、やたらでかい声を張り上げた
「あー。パスだパス。お前が全部作っていいぞ」
と親切にも譲ってやると
「あんたは絶対書かないとダメ!今回は私も小説を書くわよ!」
と良い、パソコンで何かをしている

正直、前回の会誌作りは本当に疲れた
あんまり良い話でもない吉村の話をほりあげられたんだからな…
それに、もう恋愛小説なんて無理だ
「何よ、恋愛小説を書いてなんて頼んでないわよ。今回は…」
と言い、ハルヒは黙った
あらかた俺に書かせたいジャンルを決めているようだが…

ハルヒは自分の髪をぐしぐしと掻き
「キョン!あんたなんか書きたいジャンルある?」
と聞いてきた

いや、別に無理に書かなくても…
というか本当に書きたくないんだが…
「それじゃあ駄目でしょ。なんか書きたいジャンル、考えとくのよ」
「じゃあハルヒは決まってるのか?」
と聞くと、口を尖らせて
「決まってないから考えてるのよ!」
俺はふと
「だったらSFでも書けばいいんじゃないか?前回の会誌はSFは無かったし」
「そうねぇ…SFは有希に書いてもらおうと思ってたけど、私も書いてみよっかな」
と言い、カチカチとまたパソコンをいじりだした
お前がSFなんて書いたらどんな作品が出来るかも分からん
ハルヒの想像力は半端じゃなさそうだからな

俺は朝比奈さんが炒れてくれたお茶をすすり、古泉の用意したオセロを始めた
「あなたの書く恋愛小説は少し楽しみだったのですが…」
と言い、おきまりの笑顔で"残念"のジェスチャーをした
「一応聞いとくが、それは嫌味か?」
「まさか、本当に興味があるんですよ」
全く、こいつの考えは全然分からん…
それになんでも笑って誤魔化そうとするな 少なくとも男の俺には効かんぞ


そのままオセロをしながら、部室のお茶を浪費していると

バンッ!!!
と、物凄い音が響いた
俺と朝比奈さんは軽くびくッと振るえ、団長の机の方を見た

ハルヒが不敵な笑みを震わせている
「そうよ!私SFを書けばいいのよ!」
と大声をあげ、うん、うんと一人頷いていた

流石に訳の分からない行動にも程があるぞ
「どうしたんだ?そんなに良い案が浮かんだか?」
「浮くもなにも、浮きまくりよ!今私の中の創作意欲がすごいことになってんのよ!」
そうか、そうか
「そう!ホント!これはいいわ!かなり書きやすいわ!早速書かないと…」
「どんな案なんだよ」
と聞くと、
「ほら、私たちって宇宙人とか未来人とか超能力者とか探してるじゃない?」
それはお前だけだろ というかもう宇宙人も未来人も超能力者も揃ってるぞ
「だからね!小説の中だけど私たちを主人公にして、宇宙人や未来人とか超能力者とか…もうなんでもいいわ!とにかく会わせるのよ!」
まぁハルヒの願いらしいからな… 小説の中で収まるんならそれでいいだろ
実際にそこのドアから足が二十本もある緑色のクラゲみたいな生き物なんぞ出てきた日には…
SOS団壊滅の危機だな それとも長門が倒してくれるか?

延々と一人創作意欲と欲望をごちゃまぜにして、演説をしているハルヒを放って、俺はオセロの続きを始めた

が、古泉が何故かハルヒの方を見つめ、眉間にしわを寄せている
こんな顔をする小古泉は珍しい 写真でも撮るか

やっと長い演説を終えると
「んじゃ、資料を調達して土日中にでも書いてくるわ!月曜には見せてあげるから楽しみにしててね!」
と言い、ハルヒはカバンを持ちドアまで走って行こうとする

すると、
「涼宮さん!」
と古泉が大声を上げた
これには朝比奈さんと俺と長門、そしてハルヒも思わずびくッと震えた
なんせ古泉が声を張り上げるようなところなんて一度も見たことがなかったからな
しかし、古泉も冗談とは思えないほど顔に力が入っている
おいおい、お前こんな顔になるのかよ

「な、なに?」
ハルヒは足踏みをしながら古泉の方に向いた
「涼宮さん、やっぱりSFは長門さんに書いてもらった方がいいんじゃないですか?よろしかったら僕でもいいです」
かなり必死に言っている
いつものクールに気取った感じは吹き飛び、どう見ても別に人格が入ったように見える
「でも、もういい案浮かんじゃったからね!早くしないと図書館閉まっちゃうし…」
と言いつつ、ドアから飛び出して行った
それを追うように、古泉がドアから出て「涼宮さん!」と叫んでいたが、ハルヒはそのまま行ってしまったようだ

それから十分ほどして古泉が戻って来た
さっきほど動きは荒々しくはないが、表情がどことなく落ち着いていない

「大変です。これは極めてよくない状況…かもしれません」
その言葉を聞くと同時に長門が分厚い本とパタンと閉じた

長門も古泉もただならぬ雰囲気を出している
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「何かあったなんてもんじゃありません!」
と思いっきり机を叩いた
俺は今日あまりにもいつもと違いすぎる古泉に驚いた
古泉は俺の表情を読み取ったのか
「す、すいません…つい…」
古泉がこれだけ動揺しているとは…
どんな事件なんだ…
「一体何があったんだ?詳しく聞かせてくれないか?」
と聞くと、俺の前に座った


「今から話すことは正しいとは言いきれません…ですが、確実にそうなりつつあるのです。ですから心して聞いてください」
古泉はまずそう言い、話し始めた

「今、涼宮さんのいる近辺で小さな閉鎖空間が大量に発生してきています。しかし、
 これは涼宮さんのストレスなどの影響ではありません」
「それじゃあ、ハルヒとは別の人間か?」
「いえ、今発生している閉鎖空間は間違いなく、涼宮さんによるものです。しかし、その中には私たちが入ることはできません」
入れない?
「つまりですね…閉鎖空間は存在するのですが、なんというか…」
そこで古泉は押し黙ってしまった
すると突然長門がこちらを向き喋りだした
「その閉鎖空間は今までのものとは全く違うもの」
全く違うもの?
「そう。今の世界とは別の世界を、涼宮ハルヒは創造しようとしている」
よく分からん…
それを聞いた瞬間、古泉がハッと気づいたように俺を見た
「その例えが一番簡単ですね」
何がだよ、ちゃんと教えてくれ
「今の長門さんの話を簡単にまとめると、今、涼宮さんは小説のため『宇宙人に会う自分たち』を創造しています
 これによって閉鎖空間が発生したものと思われます」
つまり、どういうことだ?
「ですから、今僕たちの居る世界とは違う世界…涼宮さんの創造する世界が出来上がりつつあるんです…」

ハルヒの創造した世界?
…ちょっと待て…ハルヒはたしか
『小説の中だけど私たちを主人公にして、宇宙人や未来人とか超能力者とか…もうなんでもいいわ!とにかく会わせるのよ!』と言った
それが今ハルヒの創っている世界?

だとしたらその世界では俺たちが宇宙人や未来人や超能力者…いや、もっと違うものに出会わなければならない事になる

つまり、ハルヒの創造によっては俺たちは未知の生物とご対面してしまうかもしれない?
ってことか?
「だいたい合ってますね。でもよくないのはその世界が出来てしまってからです」
「なんでだ?創造の世界と行っても他に何か恐ろしいことでもあるのか?」
古泉は俺の発言に呆れたようにため息をついた
「あなたが一番分かっているはずです。まずですね、その涼宮さんの創造した世界が完成してしまうと、現実の世界…
 つまり僕たちのいる世界に上書きされてしまう可能性があるんです。そうなってしまえば…」
古泉は額に手を当てつつ、言った
「僕たちは未知の生物と強制的に遭遇してしまいます…違いますか?長門さん」
と、いきなり長門に質問を投げ掛けた
「ちがわない」
「ということは…僕たち…涼宮さんが未知の生物に会ってしまえば…自分の力に気づいてしまうかもしれません…」

ハルヒが自分の力に気づく…
それはどれだけ危険なことか…俺たちSOS団と呼ばれる団に所属するものなら分かる
あの以上なまでの想像力のせいで、ありえない季節に桜が咲き、猫が喋りだし、未来人が目から光線を出してしまう…
そんなことが強く願うだけで実現してしまう人間が…自分の力に気づいたら

よく進んでも悪く進んでも、今の平凡な日常はいとも簡単に崩れてしまうだろう…

朝比奈さんのいれるお茶を飲みながら、つまらないボードゲームを楽しむことも…

5人で街を探索することも…

まだ出来て1年も経っていないSOS団が潰れてしまうかもしれない…

それも団長の手によってだ…


俺はまだゆったりと過ごすこの世界で生きていたい


俺は拳を握り締め
「古泉…何か方法はないのか…」
古泉は押し黙っている
「古泉!!」
と声を張り上げると
「わからないんです!今どうすればいいのか!何が世界を救うのか…」
と最後の方は力なく呟いていた…

俺達を見ていた朝比奈さんが心配そうに震えている
こんな時は冗談の一つでも言うのがいいのか…いや、俺は今そんなこと言える状態じゃない…
でもどうしたら…
「方法はある」
と、突然長門が言った
俺はすぐに
「何か方法があるのか?」
長門は頷く
「何をするんだ?何かしてくれるのか?」
と聞くと首を横に振り
「私たち情報統合思念体は涼宮ハルヒの行動の観測が主である。故に今の涼宮ハルヒの行動を私たちが制止させることは出来ない。」
「それじゃあ…」
「でも、今から言う方法はあなたにしか出来ない。もちろん必ず成功するとも限らない。それでも行動することを推奨する」
俺にしか出来ないこと?
「そう。あなたにしか出来ない」
俺にしか出来ないと言っても…
俺は宇宙人でも未来人でも、ましてや超能力者でも何でもない
ただの人間だ

「あなたに特別な能力は備わっていない。だが、あなたは涼宮ハルヒに一番信頼されている存在。
 今の彼女の変化もあなたのせいでもある」
俺のせい?
「あなたがSFというジャンルで書くことを彼女に推奨した。それによって涼宮ハルヒは今のように世界を創造している」
訳が分からんぞ
「つまりですね…あなたが『SFでも書けばいいんじゃないか』と言わなければ、現状のようにならなかったのかもしれません」
そうか…でも、なんで俺は攻められてるんだ?
「別に攻めている訳ではありません。事実なんです。あなたがもしあの時…」
「わかった、わかった!それで?俺はどうすればいいんだ?」

多分、俺の顔は不機嫌丸出しだったんだろうな…
遊園地にでも居れば、周りの人が即気分を害すような感じの表情なんだろうな…

「あなたが涼宮ハルヒに創造を止めさせる方法は、彼女に今の世界を必要とさせることが必要」
つまり、どういうことをすればいいんだ?
「涼宮ハルヒはあなたを信頼し、あなたに対し不完全ながら恋愛感情を抱いている。そしてあなたが出来る一番確実な方法が、恋愛の成熟」
と、いう…ことは?
「そうか!そうです!その方法がありましたか!」
と喚き、古泉は拳を震わせている
今日はよく叫ぶな 古泉

「訳が分からん…ちゃんと説明してくれよ」
古泉は笑顔で
「つまりですね!あなたが涼宮さんと結ばれればいいんですよ!恋愛の成熟です。そうです。それで世界が救われるかもしれません」
「えっと…俺とハルヒが付き合うようになればいいってことか?」
「そうです!涼宮さんが前々からあなたに好意的な態度や行動をとっているのはご存知でしょう?」
「…どういうことだ?」

俺の発言を聞いた途端、古泉の笑顔が消え、苦笑いをしている
後ろの長門も、何かいいたげな表情だ
そして朝比奈さんを見ると、明らかに呆れ顔になっている…というより少し怒っているようだが…

「ちょっと待ってください…あなた、僕の言った意味が分かりますか?」
いや、何のことを言って…
「キョンくん…もしかしてふざけてるんですか?」
と朝比奈さんが少しすごんでいるような感じで話しかけてきた
「いや、本当に何のことだか…」
朝比奈さんはその言葉を聞いて、そっぽをむいてしまった
やや、おおげさなため息が聞こえ
「いいですか?涼宮さんはあなたのことを気にしています。長門さんによれば不完全ながら恋愛感情をあなた抱いている…
 つまり、あなたの一押しでうまくいくことだってありえるかもしれないんです」
そんなことをいきなり言われてもな…
「でも、なんで付き合わなくちゃいけないんだ?」
またもため息… そんなに俺の発言が気に食わないのか?

「ですから、『この世界が必要だ』と涼宮さんが心から願ってくれればいいんです。あなたという大切な存在が必要だと思えば、
 無意識に創造を止めるかもしれません…」
「そう…か?」
「ですが、必ず成功するとは言いきれませんよ。何せ人間関係というものは私達には想定できないものです。ましてやあの涼宮さん。
 はっきり言うと悪いんですが、かなり変わった思考ですよね?」
それは…たしかだな…
学校全体でアンケートをとったら確実に『変わった人』との結果が出るだろう

「ですから、何をどう考えているかなんて分からないんです…ですから…」
「その場その場で対処の仕方がない…と?」
「そうです。ですから確実に成功するなんてことは言い切れません。ですが、あなたの気持ち次第で決まることです」

俺の気持ち次第で…か…
世界って本当に安くなったな…
俺の気持ちくらいで世界が救えるなんて…


その後俺たちはどうするかを考えた
朝比奈さんに何か出来そうなことを聞いてみたが、過去への干渉はできないらしい。
というか未来の野郎どもは朝比奈さんの要求を全く受け付けないらしい
つまり、俺のSF発言を消すことすら出来ない…
まぁ出来るのなら、未来の俺が止めに来ていたはずだが…

結局、他に具体的方法がなく、俺とハルヒを結ばせる計画で世界を救うことになった
もう、こんなことじゃ驚かなくなってきた自分を褒めてやりたい…

だが、重大な問題がある
ハルヒが小説を見せると言ったのは月曜
つまり、あと二日のうちに、ハルヒの創造を止めなければ、俺たちの世界が上書きされてしまうことになる


俺はとにかく今日は休んで、明日、明後日をどう過ごすかを考えていた
いや、過ごすなんてもんじゃない
どうやってハルヒと付き合えばいいのかを考えていた

次の日、見事なまでの晴れ
このままいけば、世界が明後日には変わってしまうなどと、どのくらいの人が知っているのだろうか…

俺はまず昨日まとめた行動をとる
単純にデートだ

まずは、電話で約束を取り付けないといけない
俺は携帯からハルヒの番号を選択した
3回のコール音の後、ハルヒが出た
「どうしたの?あんたがこんな早くに起きてるなんて珍しいわね」
俺は昨日考えておいた話をそのまま喋る
こういうのはあんまり好きじゃないんだが…
「実はだな、妹と親が映画に行く予定だったんだが…熱がでてな」
「どうしたの?もしかしてデートのお誘い?」

すごいなハルヒ お前、本当は超能力者じゃないのか?

「まぁそんなところだ。どうだ一緒に行かないか?」
と言うと、数秒あいてから
「ほ、本当に?それじゃいくわ!何時に何処集合?」
向こう側のハルヒはかなりご機嫌のようだ

というかハルヒってこんなに素直だったか?
もっとこう…俺に対しては嫌味っぽいというか…
これがみんなの言っていた俺に対しての好意なんだろうか…
ここまで明確なら、俺でも分かるんだけどなぁ…
まだ自覚が無さ過ぎる…

「そうだなぁ…じゃあいつもの駅前に10時くらいでいいか?」
「10時くらいじゃなくて10時よ!遅刻したら死刑じゃ済まないわよ!」
そう言って会話は終わった

俺はため息を吐き出しつつ、受話器を置いた
この会話は嘘が多いい…
まず、妹は熱なんてでていない
今も雄の三毛猫とじゃれている

それに映画のチケットも古泉が用意してくれた
しかも現金で2万も渡してくれるとは…
古泉いわく「男性は女性をエスコートして当然ですからね。お金が足りないなんてもってのほかです」
また、足りなくなったらすぐ言って欲しいとのことだった
というかお前、この現金の入手経路とかって大丈夫なんだろうな…

それにな古泉、もしかしたら俺の私欲で使い切ってしまうかもしれんぞ


今回の作戦は朝比奈さんも長門も古泉も来ないらしい
古泉か長門くらいは見張りに来ると思ってたが…
なんでも相手が人間…ハルヒだからな
俺が困ってたって対処なんかできやしない…
というか手助けはしない方がいいらしい…
あくまで、自然な結びつきがベストだとのことだ


つまり、今回は俺の意思を尊重するらしい…

下手をすれば世界は…というか俺のせいで『世界が変わっちゃいました』なんて絶対に嫌だからな

そんなことになったら古泉がぐちぐちと文句をたらしてくるだろうし、謎の生物に遭遇して遊ばなくちゃいけなくなる

俺はそんなこと断固拒否だ 拒否出来んのなら是非、誰かに譲ってあげたいね


俺は適当に朝食を済ませ、時計を見た
今丁度9時…
ゆっくり着替えて家を出ても十分間に合う時間だ

俺は身支度を済ませ、昨日古泉が用意してくれたチケット2枚を持って家を出ようとした
「キョンくん、もう起きてるの~?」
パジャマ姿の妹が出てきた
そうだよ 俺は今から出かけるんだ それもデートだ
いつかのみたいに小学生じゃないから
まぁデートに行くなんて行ったら、後ろから着けて来そうだからな
ここは適当に誤魔化さないとな
「ちょっと買い物だ。欲しい本があるからな」
と言うと
「それじゃあおみやげ買ってきてねぇ~」
とシャミセンで腹話術まがいをやってみせた
俺は適当に「はいはい」と流し、自転車に乗った

駅につくと、我らがSOS団 団長の涼宮ハルヒが仁王立ちでこっちを睨んでいた
俺が自転車を置いて、ゆっくり歩いて行くと
「遅いッ!なんでレディーを待たせんのよ!」
とハルヒが詰め寄ってきた
「いや…まぁこんなに早く来るとは思ってなかったんでな」
と言いつつ、笑って誤魔化したが
「私より遅かったんだから罰金よ!罰金!」
結局罰金かよ…

その後、映画の始まる時間まで2時間近くあったため、いつものファミレスに入った
もちろん俺のおごりらしい…
まぁ金は大丈夫なんだがな

ハルヒはパフェとカフェオレを頼み、俺はチーズケーキとコーヒーを頼んだ
「あんた、コーヒーなんか飲めたの?」
いや、コーヒーくらいは飲めるぞ
「そう、まぁ高校生にもなって苦いなんて言ってたら味覚がおかしいわよねぇ」
あー、俺はまだブラックなんぞ苦くて飲めないんだが…

デザート類はすぐ運ばれてくる
注文して5分も経っていないのに、ドリンクとデザートが揃った

「うん、まぁまぁじゃないこのパフェ」
ハルヒは感想を述べている
安いパフェではあるが結構なボリュームだ
「結構な量だが、食べきれるのか?」
「大丈夫よ。それよりあんたのちょっと貰うわね」
と言い、俺のチーズケーキをかなりカットして口に運んでいった
おいおい、俺まだ食ってないんだぞ というかちょっとじゃないだろ
と細かく突っ込もうとしたが、なんとなくそんな気にならなかった

なんでだろう…今日のハルヒはいつもよりご機嫌に見える
いや、いつも元気はいいんだが…

にこにこ顔でチーズケーキを頬張っている
なんだか、見ているこっちも微笑ましくなってきた
「何?人の顔見て笑うなんて変な趣味ね」
どうやら顔が少し緩んでいたようだ
「あー。お前の食べっぷりがあまりにいいんでな。少し関心してたところだ」
「そんなとろこに関心しなくていいのよ」
と言い自分のパフェを楽しみだした

結局2時間もだらだらと会話を楽しみ、ファミレスを出た
もちろん俺のおごりだ
しかしそのくらいじゃ俺の財布はびくともせん
今の財布は豚の如く肥えてるからな

俺たちは今日のメインである映画館にやって来た
まだ上映まで15分ほどあるが、丁度いい時間だろ
俺は二人分のチケットを受付に私入場した

適当にポップコーンでも買おうかと思ったが、ハルヒはいらないらしい
俺はハルヒの分と自分のコーラを買い、席についた

位置は丁度真ん中の真ん中
つまり映画を観る位置じゃ首も疲れなく、観れる位置だ

一度だけ一番前で観た自分なら分かる
あの2時間たった後の耐え難い肩と首のこりは1500円も払ってまでして食らいたいものではない
「映画なんて久しぶりよ。中学生以来かな?」
なんだ SF映画ばっか観てると思ってたのに
「何言ってんの?映画なんてただの作り物でしょ?なんのリアリティーもない映画なんて観る時間が勿体無いくらいよ」
とスパッと言い放った
だったらなんで俺の誘いにのったんだ
「だって…映画の券が勿体無いでしょ?キョンの親だって妹だって、無駄に捨てちゃうくらいなら使ってもらった方が嬉しいに
 決まってるじゃない」
まぁそれはもっともだな
と言ってもこれは親が買ったわけでも妹が買ったわけでもない
超能力者古泉がどこからか引っ張り出してきたチケットだ
ちなみに入手経路は本当に分からん
偽造チケットなんかじゃないだろうな…

ブーッという音はもう鳴らず、いきなり映画のCMが始まった
もう上映の合図の音が鳴る映画館というのはないのだろうか…

延々続きそうな映画紹介が終わり、本編が始まった
内容はものすごく単純
簡単にまとめると…
強い男がいて、その近くにヒロイン的女性がいる
んで、二人がSFチックな紛いごとに巻き込まれて…
女性大ピンチ!男が必死になって救出!
最後は結局ハッピーエンド…

まるでこの手の映画を探したら何本出てくるのやら…
内容はまるっきり…
というかアクション映画の王道過ぎて、どこまで真似物なのか分からん
最近のCGとかの技術はすごいもんだ…という感想くらいしか思いつかず、頭の中では『B級の上』程度に収まった

ハルヒは映画が終わるなり
「あんた…こんな映画…妹が観たいって言ってたの?」
いや、妹は…
「あー。親父が観たいらしくてな。それでついでに妹も…ってことで2枚買ったらしい」
「ふ~ん…でも何かあれね。どっかで観た感じ。もうアクション映画なんて見飽きるからね。
 でも最近の技術ってすごいわね。爆発とかかなりリアルだったじゃない」
まぁそれなりの評価らしい 少し安心だ
「でも…評価するなら…『B級の上』くらいじゃない?」
と俺の目の前で人差し指を立てて、言った

全くもってその通り
というか俺の考えを読むな 本当に超能力者かお前…

無事映画も終わり、時間は午後2時
丁度腹も空いていたので、どこかによることになった

と言っても中々良い場所がない
ハルヒも
「もうどこでもいいわ。私お腹空いてきちゃったし」
と言うので、近くのファミレスに入った

いつも集まっているファミレスとは違うファミレスだ
まぁ大して変わらないのだが、ここは大きなドリンクバーがあって、最初にドリンクを頼めば飲み放題らしい
「飲み放題っていいわね!駅前のファミレスもここと同じことすればもっと売り上げが上がるのに」
いや、そんなことしたらあそこが俺たちの部室に変わってしまう
毎日毎日5人が来て3,4時間も…だらだらと飲み物を消費されたんじゃあ、店側の利益も下がったりだろう

ハルヒと俺は和食セットとドリンクを頼んだが
「私と同じの頼まないの。あんたは違うのにしなさい」
と言われ、ドリアセットに変えた
飯くらい好きな物食わせろよ…

俺がドリンクバーに飲み物を取りに行こうとすると
「私お茶でいいわ」
お前俺に行かせる気かよ
「当たり前でしょ。団長だもん」
今は部活中じゃないぞ お前の団長命令は無効化だ

と言わず、俺はお茶の入ったカップを2つ持ってきた
「ありがと」
と言ってハルヒはお茶をごくごくと飲む

数分経ってから、和食セットとドリアセットが運ばれてきた
ここは注文してからも結構早く運ばれてくるな
案外ここの方が駅前のファミレスよりいいかもしれん
ドリンクも飲み放題だし

さっそくドリアを食べようとすると
「私もちょっと食べたいわ」
と言い、俺のスプーンを取り上げ、ドリアを一口食べた
だから、勝手に食うなって…俺まだ一口も食べてないんだぞ
「熱ッ!」
と言い、はふはふと口を動かしつつ、スプーンを返してきた
「うん、結構おいしいじゃない」
感想を述べ、自分の料理に手をつけ始めた

まったく…と言い、俺はドリアを食べ始めた
…たしかに熱い…少し冷まさないと火傷するな…

一口だけ食べてスプーンを置くと、ハルヒがこちらを見ている
どことなく頬のあたりがほんのりと赤い
「どうした?」
「い、いや…なんでも…それより食べないの?」
少し動揺気味のハルヒ なんだ 俺何かしたのか?
「いや、熱くてな。もう少し冷めてから食べる」
「そ、そう」
ハルヒはそう言うと、顔を下に向け和食セットを食べていった

結局俺とハルヒは食事が終わるまで全く会話がなく、俺が話しかけても
「そう…」「うん…」
程度に、あいづちくらいしかうってくれなかった
なんだよこの空気 俺何かしたのか?

食事を済ませ、ファミレスから出る
まだ、うつむいてるっぽいハルヒに
「どうした?大丈夫か?」
と話しかけると
「何が?別に何もないわよ。それよりどっかに行きましょ!」
と言い、ズンズンと歩いていく
なんだあれは…訳が分からん

その後、近くにあったゲームセンターにより、適当に暇を潰した
格闘ゲームやレースゲームでハルヒから挑戦を受けたが、見事に惨敗
こいつ、勉強だけじゃなくなんでも出来るのか…
俺にも何か一つくらい才能とやらを分けてもらいたいね

一通りゲームをすると、ハルヒがUFOキャッチャーがやりたいと言いだした

さっそくハルヒがコインを投入し、挑戦してみるが…あっけなく失敗
その後5回も挑戦するものの全て失敗
というか一度も人形をつかめていない

どうもさっきからやたら大きい人形を狙っているよだ
だが普通に考えてあんな大きい獲物は無理だ

だが6回目もハルヒはそれを狙っていた
見るにみかねた俺が「一回やらせてくれ」といいコインを投入
ハルヒが
「そこのおっきいのよ!それよそれ!絶対それよ!」
耳元でがなり声を上げるな
俺はハルヒの指示通りでかい熊の人形を狙う
が、これは確実に無理だ アームだってさっきから見てたが弱すぎるだろ

が、アームが上に上がってくると、うまく熊の手を絡めとっていた
こんだけでかい人形がこうもうまく引っ掛かるとは思っていなかったのでびっくりしていたが見後ににキャッチ
しかもそのまま落ちず難なく手に入った
「やるじゃないキョン!さすがね!何か新しい階級を与えないといけないわね!」
と大喜びしながら熊を抱えるハルヒ
ああ、是非とも新しい階級が欲しいね もう雑用係はごめんだからな


俺の取った熊に大満足で笑みを浮かべるハルヒ
なぜだろう…いつもは見慣れないからか、ハルヒの笑顔を見るとドキッとしてしまう
今日の俺は変だな…


やはり昨日の古泉や長門の発言のせいだろう…


ハルヒは熊の人形を両手で抱えながら俺の隣を歩いている
時間は5時…
もうすることもなくなったし適当に散歩だ

俺たちは何気なくあの通りに来ていた
初めて朝比奈さんが自分の正体を明かしたあの場所だ

俺は近くのベンチに座り、昨日のまとめた考えを浮かべていった


デートが終わった後、俺はハルヒに告白をする

これだけだった…

でも不安だった…

俺はノリで人を好きになんてなる方じゃない
むしろ好きになったとしても告白なんてな…
そんな度胸は持ち合わせてはいない

それに俺の中では、ハルヒへの想いがまだ決まっていなかった

だが、ここで俺がハルヒと付き合わなければ…
世界は必ずと言っていい 変わってしまうのだ

平穏な生活が砕かれ、未知の世界へと変貌を遂げてしまう…

俺はそのことを肝に命じ、どう告白をしようかと考えていた

すると突然
「何か来たわよ…」
とハルヒが言う
俺が顔を上げると、にたにたと笑う谷口と国木田がこっちに歩いて来ていた
やばい、やばい…
こんな状況を見られたら…いやそれは別にかまわん…
いや…そうじゃなく…あいつらが来たら告白なんて不可能だ…絶対無理だ…

頼むからどっかに消えてくれ…と願ったが、その願いも虚しく二人が目の前まで来た
「キョン…お前コイツと付き合ってたのか…?」
唐突に谷口が言う
お前、あからさまに楽しんでるな

内心かなりムッとした
まぁ今から告白するところだったんだが


だいたいなんでこっちに来るんだよ

「あんたには関係ないでしょ。どっか行ってよ」
いきなりハルヒが谷口に向かって言った
少し怒っているようだが…
「おいおい、涼宮がマジになるってことは…」
谷口は手を口の前に持っていき不敵な笑みを浮かべている
お前は中学生か

あからさまに俺とハルヒが一緒に居ることを楽しんでいる
その笑みは微笑ましいというより、変わったものを見て楽しんでいるような感じだ
…お前はそんなにハルヒが嫌いなのか?

俺は思わず
「お前は関係ないだろ」
と言うと
「おやおや、キョンまで怒るのか?…あ、それとも今から告白するところだったか?」
こいつ…なんでこんな時に鋭いんだよ…
いっつも馬鹿みたいな考えしか持たんくせに…

「まぁまぁ、そうだったら僕達はお邪魔みたいだし、そろそろ帰ろうよ」
と国木田が谷口を静止させよとする

「キョン、言っとくが涼宮は変わり者だぞ。前も言っただろ?」


谷口がそう言った瞬間、俺の中で何かが弾けた


なんでお前が変わり者なんていうんだ?

変わり者? ああ、そうだ ハルヒは確かに変わった女子高生だろう
自己紹介で『宇宙人、未来人、超能力者がいたら私のところに来なさい』と言うくらいの筋金入りの変人だ
そう変わり者…だから?
だからどうした? そんな発想があるだけいいじゃないか
少なくとも谷口 お前はそんな夢のある考えを持っているのか?
いつもいつもハルヒの行動にケチをつける割りにはお前は何かしているのか?

そりゃ周りから見ればただの奇行かもしれん…
でもな、お前のようにへらへらしてるだけの女好きにそんなこと言う資格なんてないだろ?
それにな、俺はハルヒと一緒にいる今が一番楽しいんだよ!
それを何もしていないお前に言われるのは腹が立つんだよ
なんで自分のやりたいことをやってる人を馬鹿にするようなことを言うんだ
何もしない人間が何かをしている人に対して愚痴をたれるのはいかなる場合であってもいいはずがない
それを本人の前で言うなんてもってのほかだ

お前のようなやつがハルヒのことを悪く言うのは許せんぞ

俺がそう考えているうちに、勝手に体が動いていた

今、考えていたことが声にでていたのかは分からない…

だが、今俺の目の前には顔をゆがめている谷口の顔があった

俺は今谷口の首元を掴み、目の前に引き寄せている
そして右手が拳を作り、今にも殴りかかろうとしていた

「ちょ、キョン落ち着いて」
国木田が静止させようと俺の左腕を掴んでいる

俺は…谷口を殴ろうとしていた?

「ッ……」
谷口が俺の手を振り払うと、国木田に引っ張られ、去って行った

その後ろ姿を呆然と眺めていると、

「えっと…その…」
ハルヒが何かを言おうとしている…
「ごめん…帰る!」
と言い、ハルヒがベンチから離れ駆け出した
「おい!ハルヒ!!」
と叫んだが、ハルヒは振り向いてもくれずそのまま去って行った

一人自宅へ帰り、部屋に戻った…

あれはよくなかったかもしれない…

だがあまり後悔はしていない
というか殴ってやるべきだったろうか…

谷口がハルヒを馬鹿にした
それが俺の勘に触っただけだ

そしてさっきの考えと行動をまとめ…俺は自分の思いに気がついた

『ハルヒのことを好きになりつつある』

いつもいつも周りのことを考えず、半場やけ気味になっても突っ込んでいく
俺も朝比奈さんも長門も古泉も…
全員がハルヒの思いつくがままに動いてきた

たまには、本気で嫌になったり、こんなことも楽しいじゃないか、とも思ったり…
俺もハルヒに会って色々と変わったのかもしれない

俺がもし『曜日で髪型変えるのは宇宙人対策か?』とあの日話しかけなかったら…
今頃、谷口と国木田で馬鹿三人組みになっていただろう

それに朝比奈さんにも、長門にも、古泉にも会わなかっただろう

だから今、俺がSOS団に所属しているのは本望なのかもしれない


だらだらと過ごす毎日

ただそれが、4人といるだけの生活が当たり前の様になってから気づいた

この非日常的な『当たり前』こそが俺の望んでいた高校生活なんじゃないか?

巨大カマドウマに襲われたり、クラスメイトに殺されそうになったり…未来に飛ばされたり…

こんな非日常が楽しい…そんな気持ちがどこかにあったんじゃないか?


そして、昨日の長門と古泉の発言で、俺はまた変わってしまった

『涼宮ハルヒはあなたに恋愛感情を芽生えさせている』

『涼宮さんはあなたのことを気にしています』

この二言で十分だった


俺は今日一日、ハルヒの見方が変わった

あいつの何気ない笑顔、褒めるとそっけなくする態度

そんな仕草が愛らしく感じれるようになっていた…

いや、今気づけばずっとそんな感じだったのだろう…

ハルヒが俺に向ける笑顔…

今思い出せば、俺はハルヒの思いに気づいていたのかもしれない…

だが、気づいてしまえば日常が変わってしまうかもしれない…

そんな思いがどことなくあった気がする…

でも、そんな思いでは終わらせない


俺は世界を救うためではなく、自分のためにハルヒに告白をする


勝手かもしれんが、これは譲れんぞ

文句があるんなら出て来い

俺は何がなんでも自分の意思でハルヒに告白するからな

俺は一旦風呂に入り、自分の考えをまとめていった

まず、俺はハルヒに連絡を取らなければいけない…

風呂から上がった俺は、すぐさまハルヒに電話を掛けた


何回かコール音がなって『留守番電話サービス』が流れ出した

一度切り、もう一度掛け直す


…だが、ハルヒは出てこない…


なんでだよ

俺は古泉に電話を掛けた
コール音が一度鳴る前に古泉の声が聞こえてきた
「どうしたんですか?何かあったんですか?」
俺は古泉に分かる限りのことを説明した

「そうですか…」
と力なく声が返ってきた
「実は組織の者が涼宮さんを目撃しているんです。少し元気の無さそうな顔で家へと帰って行ったようですが…」
「そうか…」
でも何故俺の電話に出てくれないんだ?
「分かりません…でも、電話に出てくれない以上会うしかないでしょうね」
「会うって…今すぐか?」
俺は窓の外を見る とっくに日は沈んで空を黒い雲が包んでいる
「今日はもう遅いですからね…明日にした方が懸命でしょう…」
俺はその言葉を聞き、ため息をついた

俺は何をしてしまったんだ…
ただハルヒのことを思って…

「あなたは今自分の気持ちに気づいているんでしょう?」
ああ、お前らのおかげでな
「だったら簡単な話です。あなたがちゃんと自分なりに想いを伝えればいいだけのことです」
こいつ、そんなことさらっと言うなよ…
「今から涼宮さんの自宅の住所を言います。明日必ず涼宮さんに想いを伝えてください」
お前…いつハルヒの家なんか調べたんだよ
「そんなこと、転校してくる以前から知ってますよ」
「それで、直接会うのか?」
「当たり前でしょう。電話に出てする告白なんて意味を成しません」
そりゃ…電話で言う気はなかったが…
「明日の行動はおまかせします。ですが、間違ってもいつものように嫌味っぽく言ってはいけませんよ」
俺はそんなに嫌味っぽく喋ってるのか?
「いえ…明日くらいは涼宮さんを女性として見てあげてください」
そんなこと言われなくても分かってる
「そうですか…それじゃあ住所を言います」
そう言って古泉はハルヒの家の住所を言っていった
俺は机の近くにあった紙に住所を書いていく

ハルヒの家は案外遠くなく、自転車で30分も掛からない場所だった
「私から言うことはもう何もありません。あとはあなた次第ですよ」
俺は「ああ」とだけ答えを返した

ベッドに仰向けに倒れ込み、俺は考える


もしかしたら俺の告白で今までの日常が全くの別物になってしまうかもしれない…


告白とはこんなに自分を追い詰めてしまうものなのか…と思ったが、あいつに想いを伝えることができればいいんだ


駄目なら駄目 新しい世界を満喫してやろうじゃないか

どっちにしたって俺はお前の近くにいてやるぞ

次の日、目が覚めたのは午後3時だった
空は異様なまでに分厚い雲に覆われている

夜中まで色々と考えていたからだろうか…頭が重い…

だが、今日は必ずしないといけないことがある

世界のためでもあるが、俺のためでもある


『ハルヒへの告白』


俺は身支度を済ませ、ハルヒの家へと向かった

色々な考えが頭に浮かび上がってくる

告白した後はどうなるんだ…

ハルヒはどう答えてくれるんだ…

もし駄目だったら…

そうこう考えているうちに着いてしまった

2階建ての家

なんとなく俺の家の形に似ているような…


俺は深く深呼吸をし、扉の前へと向かった

大丈夫…落ち着こう、俺

 

そう言い聞かせ、俺はチャイムを押した

誰か出てくるまでが異常に長い…
早く誰か出てくれ…

俺は掌に汗を握りつつ、ひたすら待った

まるで何十分も経ったのかと思うほど長い間

尋常じゃないくらいの心音が体中に響いていく

すると、突然扉が開いた

出てきたのはハルヒだった

俺の顔を見て、一瞬驚いていたがすぐ目を逸らし
「何よ。ってかなんで私の家知ってんのよ」
と小声で喋っている


「少し、大事な話があるんだが…いいか?」
と聞いてみる
ハルヒは下を向いたまま…
少しくらい目を合わせてくれよ…
本当に大事な話なんだ…

ハルヒはそのまま数十秒黙ってから…
「今忙しいから…」
と言い、勢いよく扉を閉めた
「ハルヒッ!!」
大声で呼んだが、もう遅かった…
ガチャッという音とともに扉の鍵も閉められた…

悪態をつくしかなかった
自分の自転車を蹴り、自分の不甲斐なさに腹が立った…

俺がハルヒに何かをしてしまったのかは分からない…
でもあいつを悩ませるようなことを俺はしてしまった

そんな自分にどうしようもなく腹がたち、それすら覚えていないという自分に自己嫌悪の念がのし掛かってきた

でも、悩んでいてもしょうがない

俺はハルヒに電話を掛けた

だが、何度コールしてみてもハルヒは一向にでようとしない
仕方なく古泉に連絡を入れると
「分かりました。僕からも掛けてみましょう」
と言い、一旦切られた

と同時に雨が降り始めた
このくそったれが…
思いっきり追い討ちじゃないか
っていうか雨なんか降らないでくれ…振られたみたいで…やりきれなくなる…

数分後、古泉から着信がきた
「駄目でした。僕からの連絡に出てもらえません。一応朝比奈さんと長門さんにも頼みましたが、駄目でした」
そんな…俺以外のみんな連絡すら受け付けてくれないのか…
「俺は…何をしたんだろう…」
「それはあなたにしか分からないでしょう…」
古泉はため息をつく…
「今のところ閉鎖空間は消えています。たぶん昨日のあなたが涼宮さんに何らかの影響を与えたのでしょう。
 今涼宮さんはSFの小説を書いていませんし、創造も全くしていません」
そうか…
「ですが、このままではいけません…」
「どういうことだ?」
「今、涼宮さんは精神的にかなり不安定な状態で留まっています。このままならまだ大丈夫なのですが、
 このままの状態を保つことはできないそうです」
出来ないそうです?って誰が言ってたんだよ
「さっき長門さんに聞きました。長門さんによれば、今涼宮さんは閉鎖空間をすぐにでも作れる状態にまできています。
 簡単に言うと、コップにいっぱいの水が入っている状態です」
例えが良く分からんぞ ちゃんと説明してくれ

「ですから、そのコップに入っている水が涼宮さんの…今は何か分かりませんが、
 まぁ『憤りや悩みの塊』のようなものだと思ってください。これが今ふちいっぱいまで溜まっています」
だから?
「この中の水が溢れなければ、それでいいんです。ですが、あなたと今度会った時、あなたの行動によっては…その水が溢れ出します。
 つまり閉鎖空間が作られることになります」
「でも、閉鎖空間が出来たとしても、お前ら超能力者が処理するんじゃないのか?」
「そうです。ですが、今回は訳が違う。長門さんによると次の閉鎖空間が発生するのは地球全体規模なんです」
地球全体?
「つまり、地球全体に閉鎖空間が出来てしまいます。そして…」
古泉がここまで喋って一旦間をおいた
そして
「私たちでも片付けきれない神人が出現する可能性があります。そして対応できなくなった神人が…現実世界に現れるでしょう」

おいおいおい、いくらなんでもそりゃないだろ
あんな神人のオンパレードなんかされたら半日で地球は穴だらけだぞ

「どうやったら止めれるんだ?」
「神人の行動は私たちだけでは対応しきれないでしょう…もって一日…いや、二日も経つ前に…」

今俺の近くに神様とやらがいるのなら、これが全て嘘だと言って欲しい

「じゃあ、逆にその水を取り除くことだって可能なんだろ?」
「たしかに出来るかもしれません…ですが、あなたは何故涼宮さんが悩んでいるのかが分かっていないのでしょう?」
そうだ… 俺はハルヒが何故あの日帰ってしまったのが分からなかった…
ただ必死に谷口に迫っていって…
「あなたが涼宮さんの『憤りや悩みの塊』の元であるそれを思い出さない限り、難しいかもしれません…
 とにかく明日は必ず学校へ来てください」
当たり前だ こんな気持ちのまま終わらせるつもりはない

絶対にいつもの日常に戻してやる

そして俺の想いを…

ハルヒ、お前に伝えてやる

次の日、俺はいつもよりかなり早く学校へ来た
何故か、鍵は開いているのだが教室には俺一人だけ
一人席につく

そのまま外を見つめ呆然とする
ハルヒが来ないと何もできないからな…

しかし、いくら待ってもハルヒは来ない
クラス全員の椅子が埋まり、そろそろ担任が来る時間だと言うのにハルヒは来そうにない…

結局ハルヒは来ず、岡部が入ってきた…
一体どうしたんだよ ハルヒ…

俺はふと、自分の机の中にあった紙に気づく
小さくて気づかなかったが、どこかで見たことのある字だった


    『今日、午後5時 屋上に』


たったそれだけ…
いつも書く字とは違い、少し丁寧な字…
あいつの字がノートの切れ端に書かれていた

俺はその紙を見てから何度も今までのことを思い出していた
SOS団が出来てから…
そして今日までのことを…

気づけば、午後の授業が終わり、皆下校している時間になっていた
どれだけの間呆けていたのだろう…

俺はあの切れ端を一度見たあとポケットにしまい、屋上に向かった
屋上の扉を前にして時計を見る

ちょうど5時…

ふぅっ…と息を吐き、自分に言い聞かせた

『俺はハルヒに想いを告げる』
もちろん自分のためにだ
世界のことなんか俺にはどうでもいい

俺は屋上への扉を開けた

夕焼けをバックに、仁王立ちでこっちを見ていた
「ぎりぎりセーフよ」
と言い、俺の前までやってくる
表情はどことなく寂しげだ

「あんた…怒らないの?」
なんで?俺が怒るんだ?
「だって…私、電話出なかったでしょ?」
「ああ、でも怒るほどのことじゃないだろ?」
「そう…なの?」
とハルヒは少し表情をくずした

「実はね…ずっと悩んでたのよ…あんたの言葉を聞いてから…」
俺の言葉?
「そうよ…正直、びっくりというか…」
そう言ってハルヒは俯いた

ちょっと待て? あんたの言葉って…何かいったのか?俺

「何って…谷口に言ってたでしょ?」
「ハルヒ…俺何か言ってたか?」
その言葉を聞いてハルヒは
「あんた自分で言ったことも覚えてないの?私のことを変わり者って言った後、あんたすごい顔で谷口に言ってたじゃない!
 なんか…その…私のことを…」
ハルヒはかなり本気で怒っているようだが…後半はまた俯いてしまっている

谷口に…言った?

あの時の…全部…声に出てたのか?

「ハルヒ…あー…どこらへんまで覚えてるんだ?」
と不安げに聞いてみると
「全部に決まってるじゃない!!あんたがあんなこと言うなんて思ってもみなかったわよ!!」

あんな台詞を全て口に出してたなんて信じられない
俺は熱くなると、そんなに思考が回らなくなる人間だったのだろうか…
いや…頭は回ってたんだ…

後悔しつつ、思っていたことを既に言ってしまっていた自分が恥ずかしかった

「でね…私…どうすればいいのかなって…結局答えが見つからないであんたを呼び出しちゃったんだけど…」
ハルヒが今まで見たことのないような表情で俺に言う
「私はね…あんたのことが好きだったのよ」

突然の告白…に俺は驚く

「最初はね、私に空気みたいに一緒についてくれててさ。どんなわがままを言ったときだっていつも一緒に居てくれた。
 本当に頼りになるなって…中学校じゃそんなやつは一人もいなかったからね」
「でも、キョンは違った。いっつも文句言いながら私の側に居てくれる。ひどいことをしたって許してくれる。
 そんなキョンがあの日…階段から落ちた日…私は本気であんたの心配をしたわ」
「自分でもびっくりするぐらい。何故かキョンを失いたくないって…思ったの…でね、気づいたらキョンのことが好きだったのよ」

あの日俺が階段から落ちた日…
古泉によれば、ハルヒの焦りようは尋常じゃなかったらしい

「でも…キョンはいつも私の行動に文句をつけてたでしょ?だから告白して付き合えるなんて思えなかったの」
それは違う…俺は…

「それに…もし告白したら、今までの日常が壊れちゃうんじゃないかなって…」

…ハルヒは…俺と同じことを悩んでいたのか…?

「キョンが一緒に居てくれるのは嬉しい。でも、今のみんなで街を探索したりする…何気ない活動も楽しくて仕方が無かったの…
 だから…告白も出来ないくらいなら…そんな気持ちを忘れたいって思うようになったの…」
「でもね、昨日のキョンの一言で私の考えが変わっちゃったの。好きって気持ちを忘れようとしてたのに…
 あんたのせいで…しかもあんなこと言うなんて思わなかったし…」
「だから勝手に…その、びっくりしちゃって…顔なんか合わせられなかったのよ…」
ハルヒはここまで言い切って、ふぅと息をついた

ハルヒがここまで俺のことを想っていてくれた…
驚いていたが、物凄く嬉しかった…

それに俺は答えたい…お前の告白に…

そして、俺の想いを伝えた

「俺はな、お前のこと好きだとは思ってなかったんだ」
その言葉を聞いてハルヒがこちらを向く
お前…もう涙目になってるぞ…

俺は落ち着いて続きを言う
「最初は…変わってるなぁ…としか思わなかったんだ…それにいきなりSOS団だって立てちまうし…
 あまりにも突然過ぎる行動が多かったんだよ」
さらに不安げな表情になっていくハルヒ
大丈夫だ 安心してくれ
「けどな、俺もお前と同じで非日常的な生活を望んでたんだよ。そしてそれを叶えてくれたのがハルヒ…お前なんだ」
その言葉にキョトンとした顔をこちらに向ける
「お前の行動はいつも突然で、おかしいことばっかりだった。でも、お前と一緒にいるとそれが楽しくて仕方が無かったんだ。
 だから俺はいつもSOS団に顔をだしたし、お前がバカなことやってたって味方だったんだ」
そうだ…俺は今の生活が楽しくて仕方が無かった
「でも、俺は自分の気持ちに気づかなかった。いつもお前といることが楽しいと感じているだけだと思ってたんだ…
 でも違った…俺はいつからかお前の気持ちに気づいていた…気がする…」
「俺はお前の笑った顔にびくついてたんだ…なんでお前の笑顔を見てこんな気持ちになるのか分からない…
 だから頭の中で必死に言い訳を続けたんだ。『ハルヒが笑っているだけだ』と…俺がお前に恋心とやらを抱いているんじゃないと…
 そうやって、俺はお前の想いから逃げてたんだ」

「けど、俺はお前の前で無意識にあれだけのことを言ったんだ」

あれだけのこと…
自分で言えば、分かって当然だ
俺はハルヒへの想いを必死になって隠していた
「でも、もう隠すのは嫌なんだ。だから…」
そこまで言って、黙ってしまった…

俺…続き言えよ…

ラストだぞ ラスト

『好きだ』って言えばいいんだって…

目の前のハルヒが顔を真っ赤にしている
「えと…その…」
ハルヒも何かを言いたげにしている…

あと一言だ あと一言

そして目をつぶり深呼吸をした瞬間あの一言を言った

「俺は…
「私は…


その言葉に俺とハルヒは絶句
なんてタイミングなんだよ
俺は狙ってやってないぞ…だいたいそんなに器用なことはできん


二人の言葉が重なるなんて…

おいおい…こんなことはドラマの中だけで十分だろ…

俺はハルヒの前で思いっきり深呼吸し
「えっと…ハルヒ聞いてくれ」
唐突に口を開いたが、
「ちょっと待って、私が先よ!私に言わせなさい!」
と、ハルヒに発言の権を取られた
ハルヒは俺のネクタイをわしづかみ顔の前まで引き寄せた

顔を真っ赤にした、涙目のハルヒ
思わず『可愛いよ』と言ってやりたいところだが、今はハルヒの一言を聞こうじゃないか
さぁ、ハルヒ 思いっきり言ってくれ


    「私…あんたのこと好きだから」


言ってしまった…
ハルヒはそんな顔をしながら俺の顔を見つめる
だが、ネクタイは離してくれない

俺は少し腰をおったままの姿勢で言ってやる


    「俺もだ…俺もお前のことが好きだ」

そう言った瞬間、ハルヒは声を上げて泣き出した
それも泣き方がすごい…
お前、どんな泣き方だよ…
ああ…鼻水でちゃってるし…

俺はハルヒを引き寄せて、腕で包み込んだ

俺の胸あたりで、子供がぐずるような声をだしつつハルヒが泣いている

胸元がじんわりと暖かくなっていく

そんな姿がとても愛おしく感じられる

ああ…なんか最近俺の思考が変になってきたな…

おかしいぞ 俺

どのくらい泣いていたのだろう…

ハルヒは顔上げて何か言いたげにしている

「どうした?」
と聞くと
「びっくりして…ちょっと…」
照れくさそうに笑うが涙でてるぞ あと鼻水

ティッシュが無いので、制服の袖で鼻を拭いてやる

そして、少し落ち着いてから
「あんたがそう言ってくれるなんて…思ってなかったから…」
「でも、そう望んだんじゃないのか?」

ハルヒにはその力がある
願えば、そんなことは簡単に叶ってしまう
だから俺はハルヒにちゃんとした答えを出してあげられた…

いや、でもこれは俺の想いだ

ハルヒが想ったからじゃなくて、俺が勝手にハルヒを好きになっただけ そんだけだ

ハルヒはひたすら泣いている

なんだが俺が泣かせてしまったようで…たしかに俺が泣かせてしまったんだけど…


俺はハルヒの肩に手を置いた

そして、おでこにキスをする

ハルヒは…まるでバカを見るような目で俺を見ている

あー… やっちゃったよ 俺
これもあれか? ハルヒの想像力ってやつか?

っていうかなんでおでこにしたんだよ…
普通口だろ?

「口じゃないの?」

お前、やっぱり超能力者だろ…

なんでそうやって俺の考えが読み取れるんだよ…

「普通は口でしょ?」

ハルヒは潤んだ瞳で俺見つつ言った


俺の答えを待っているようだ

いきなり指摘される…やはり照れる…

俺がどうしようかと迷っていると

唇に暖かい物が触れた

ちょうど人の体温くらいの…たぶん唇だ

確証はないが自身があるぞ

というか反則だ…攻撃側は俺だろ?

俺は呆けた顔でハルヒを見た
「仕返しよ。あんたにやられっぱなしじゃ嫌だからね」
と言い、意地悪っぽい笑顔を俺に向け、抱きついてきた




後日談


昨日の告白の後
ハルヒはハルヒじゃなかった
異常な程ハイテンションになるのかと思っていたが…
まるで長門のようにおとなしくなってしまい

「あー。嬉しい」

と小声で喋りつつ俺をやたらと叩く

その後普通に帰宅しようとしたが、
「キョン。家まで送ってよ」
とのご命令があったので、団長様を家まで送ってやった

自転車に二人乗りをしている途中
「明日からは、私もあんたの家に行くから」
とハルヒが喋りだした
「ん?」
とわざと呆けてやると
「だから!あんたの家まで朝行くから!一緒に登校!」
「はいはい。時間は?」
そんなことでムキにならんでくれ 可愛くないぞ
「そ、そう?」
「嘘だ」

こうやってからかうとすぐムキになる
ちょ、痛 お前殴りすぎだ
俺はどさくさに紛れて

「冗談だ、冗談。可愛いぞ」

この一言で我らが団長は顔を真っ赤にして
「バカ…」
の一言

「明日は…7時くらいでいいか?」
「うん…」

やけに素直なハルヒもまた珍しい
俺はそう約束をとりつけ、家へと帰宅した



結局ハルヒは閉鎖空間を生み出さなかったらしい
とのメールが古泉から届いていた。

ハルヒに告白してから次の日
俺はいつもより早く目覚めた
まぁそれなりの目的があるからな

適当に身支度を済ませ、早々に家を出た

今日はいつもの登校とは違う

家を出るとすぐそこにハルヒがいる

「あんたってホントに女を待たせるのが好きね。その趣味直した方がいいわよ」

告白したって俺への態度はいつもとなんら変わりない
というか変わって欲しくないな
「あー。まぁ今後は直すように気をつける」
俺はそう言い、自転車を引っ張り出してきた
というか俺にはそんな趣味はないぞ
「だったらさっさと直してよ」
ハルヒは俺に指をさしつつ言った

今日からはハルヒと一緒に登校になる
しかし何故か、ハルヒは俺と全く同じ自転車に乗ってきた

「昨日近くに売ってたからね。親に買ってもらったのよ」
って自転車まで一緒にするなよ
「いいじゃない。ペアルック?みたいなもんでしょ」
「だったらキーホルダーとかの方がいいんじゃないか?」
「まぁなんでもいいじゃない」

今日のハルヒはいつものハルヒだ
こいつはこの2日間に何があったかなんて知らないんだろうな…

他愛のない会話を女の子と楽しみつつの登校…
男子学生なら一度は夢見る一時だろ

今となっちゃあのハルヒが俺の隣にいるわけだが…
俺はこれはこれで…というかかなり満足している

学校への道がこんなに短く感じたのは、生涯初めてかもしれん…

俺達は自分たちの教室へと入る

少し早く来すぎたらしく、まだ一人もいない
俺とハルヒは教室の端にある席へと座る

「今日から活動再開か?」
という問いに
「もちろんでしょ!」
と満面の笑みを浮かべた

やっといつもの日常が戻ってきた

でも今日からは少し違うな

俺はハルヒの彼氏になったんだし…

「なぁ、ハルヒ」
「何?」

なぜかハルヒは…俺の問いに嬉しそうに反応する

「俺、ポニーテール萌えだから」
「は?」
と呆けた顔のあと
「それどっかで聞いたことあるわよ」
「そうか?」
「たしか…夢でみた…気がする…」

それは夢じゃない…はずなんだけどな…

「だからさ、髪が伸びたらポニーテールにしろよ」




<END>


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