暮れてゆく年
去年よりものの増えた部屋

窓から見える変わらぬ景色
空から降り行く無数の粉雪

あの人から、あの人たちからもらったたくさんの大切なもの
言葉にはできないけど、とても大切なもの

私は私の部屋でゆっくりと感じていた

- ピンポーン -


突如鳴り響く来訪者のベル
私はゆっくり席を立ち、来訪者を迎え入れた

「おでんできたから一緒に食べましょ?晩御飯はまだだよね?」
「まだ」

前のような偽りではない笑顔
紺色の長い髪

朝倉涼子を、部屋に招きいれる





            If Story

- 朝倉涼子と長門有希の日常 -


………
……


「相変わらず、殺風景な部屋ね」
「そう」
朝倉涼子は部屋を見渡し、呆れる様に語る

「ま、キョン君が来てから多少物は増えたかな」
クスクスと笑ってコタツの上におでんの入った鍋を置いた
私は台所から二人分の食器を運んでくる
「さ、食べましょ」
笑顔で私に笑いかける彼女

彼女に促されて私も席に着く

大根
はんぺん
こんにゃく
etc...

舌が火傷してしまいそうな熱さの物を、ゆっくりと口に運ぶ
そして香りと味を感じる

「相変わらずよく食べるわね?太っちゃうわよ?」
朝倉涼子が私を見てからかいながら言う

「問題ない、涼宮ハルヒの観察という任務においてエネルギー消費量は通常より高い」
私はいつもどおりの返事を返す
「そういうこと言ってるんじゃないんだけどなぁ」
「?」

朝倉涼子が少し身を乗り出す
「おいしい?長門さん」
そうやって純粋に聞いてくる

私は無言でうなずいた
「あは、よかった」
その笑顔は、とても綺麗だった

彼が来てから変わったのは私だけじゃない
朝倉涼子も同じように変化した

最初は任務の為に、その結果の為だけに動いてた朝倉涼子
しかし彼との出会いが、彼女に意思と言うものを与えた
そう、私と同じように

何事もない、静かな日常
何事もない、緩やかな日々

三年前の私とは違う

何事もない、充実した生活
決して変わることのない運命、命令、任務
しかしそれを遂行していく日常のほうが変化していく

これは決して嫌なことではない

私と朝倉涼子の間にあった距離も、確実に縮まっていた
それは、何より

そう、嬉しいことだった

「長門さん」
朝倉涼子が言葉を発する
「何」
「明日の土曜日、ヒマ?」
無言でうなずく
確か今週の不思議探検は涼宮ハルヒの都合で中止されたはず

「そ?よかった、じゃあ一緒にどっか遊びに行かない?」
「何処へ?」
「まだ行ったことない動物園とか遊園地とか」
その笑顔は無邪気で、まるで子供のようだった

でも、その笑顔が、何より好きだった

私は無言で頷く
彼女の笑顔をもっと見ていたかったから

「ホント?じゃあお弁当の準備もしなきゃね」

そのあとは適当な世間話、そしていつもの情報統合思念体に対しての定時報告
そうやっていつもの日常を繰り返す

「じゃ、私はこれで」
朝倉涼子は席を立ち、私にウィンクしながら語る

「そう」
私も、じっと彼女を見送る
彼女を少しでも長く見ていたかったから

私とは違う、私の別の可能性
彼女は私の、大切な”トモダチ”

明日の予定を思いながら、私は窓の外の景色を眺めた

大切な日常
大切な仲間
大切な友達

世界にはありふれたもの
でも、ありふれているのは、それが本当に大切なものだから

誰しもが持っていたものを、私は持っていなかった
そう、彼が来る前まで

大切な長門有希としての日常
大切なSOS団の仲間
そして、大切な朝倉涼子という友達

私はそれが嬉しかった
だから、決して離さないと、離したくないと願った

そんな、ありふれた大切な物語






 -fin-


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