恒例の不思議探索パトロール、午前中は俺と長門のペアになった。
そしていつも通り図書館に行き無駄に時間を浪費してからいざ帰ろうとした時に事件は起こった。
外から機関銃の総射のような轟音が響きだす。
「雨か…」
昨日のニュースでは雨が降るなどとは一言も言ってなかった、だから傘なんて持ってない。本当に当てにならねぇな良純は!
「仕方ない。小降りになるまで少し待つか…」
俺がハルヒにその旨を伝えようと携帯を取り出した腕を長門が掴んだ。
「時間厳守」
どうでもいいが今日初めて喋ったな…
そう言うと長門は俺の手を引っ張り豪雨の中に踊り出す――って待てよ長門!
俺は物凄い力でグイグイ引っ張る長門を制しなんとか図書館のエントランスまで引き返すことに成功した。
「お前はどうか知らんが俺はこんな雨の中傘も差さずに出歩いたら風邪引いちまうよ」
「そうなの?」
そうなの。ほら、ハンカチ貸してやるから拭きなさい。
長門はハンカチを受け取ると素直に髪を拭き始めた。その仕草が妙に艶っぽくてドギマギしたのは秘密だ。

俺はハルヒに電話しようとしたが携帯が水に濡れて壊れちまった。長門は携帯持ってないし…どうすっかなぁ…
「返す」
長門は髪を拭き終わらないうちにびしょびしょのハンカチを俺に差し出してきた。
分かりきっていたことだが、こんな小さなハンケチで今の濡れネズミ状態の俺達をフォローできるはずがなかったのだ。
まぁ、こういうのは気持ちの問題だしな。と、誰に言うでもなく自分の心に言い聞かせる。
そして長門からハンカチを受け取り――とんでもないことに気づいた。慌てて目をそらす…

「雨止まないな…」
肯首
「服が肌にまとわり付いて気持ち悪いな」
「………」
沈黙
「俺達ずぶ濡れだな…」
肯首

そうなのだ俺達はずぶ濡れなのだ。女と雨…お察しの通り長門のセーラー服が透けて見えていたのだ!
しかも下着じゃなくて二つのサクランボが…

しばしの沈黙。だが今はこの沈黙が心地よい…
「あなたは…」
うおっ、ビックリしたぁ!長門から話しかけてくるなんて珍しいな。何かあったか?
「あなたは濡れることがまるで悪いことの様に言う」
なに言ってんだこいつ?
そう言うと長門はまた俺の腕を引っ張り雨の中に突撃して行く。
「だからこんな雨の中出歩いたら体壊すって!」
俺は必死に抵抗を試みるが
「平気。もし風邪を引いたら私が看病する」
無駄だった。てゆーか集合場所の駅前とは全然違う方向に向かってるんだがこのちんちくりん宇宙人はどこに向かっているんだろうね?
「濡れることは悪いことばかりではない」
はあ…?
「それを私が教えてあげる」
そう言って長門は熱っぽい視線を――って、なんだその熱視線は!?離せっ!離せって!俺はまだ子供でいたいんだよおぉぉ…

てっきりご休憩三時間4500円のところに連れ込まれると思っていた俺は拍子抜けした。
だってそうだろ?いきなり増水して氾濫している川を見せつけて「どう?」といったどこか興奮しているような視線を投げ掛けられても「すごいな」としか言いようがない。
まったくもって意図が掴めん。
でもってこの絶妙な空気を作り出した当の本人はというと…
「この強さなら洪水になる?」
とか聞いて来やがる。
「通り雨だと思うぞ」
「そう」
事実、雨足は弱くなって来ている。
「残念」
何がだよ?
「楽しそう…」
その言葉に俺は自分の子供の頃を思い出していた…
あの頃は本当にガキで、大雨が降る度に母さんに「洪水になるかな?」と聞いていた。
洪水になればイカダを作って大冒険が出来るのに…そんなことを考えていたっけ。
お前もそう言うことなのか長門?にしても高校生にもなってガキっぽい奴だなお前は。あ、三歳児だったっけ?

「そろそろいいか?」いつまでも川を眺めていても仕方ないし。
俺の問いに長門は肯首で答えたのでハルヒが待つ駅前へと向かった。

ハルヒは遅れて駅前に着いた俺達を――というか俺をどやすかと思ったが「この雨じゃ仕方ないわね」と言って見逃してくれた。
濡れネズミが功を成したようだ。

で、結局いつもの喫茶店で少し遅めの昼食取っている間に雨が上がったので不思議探索パトロール午後の部は開催される運びとなった。
さっさと家に帰って熱いシャワーを浴びたいんだがなぁ…やれやれ。

恒例の不思議探索パトロール、午後は俺と古泉のペアになった。
くそっ、忌々しい…
「いや~ずぶ濡れですね」
そう思うならお前の上着と交換してくれ。
「いいですよ」
良くねえよ。てか服を脱ぐなっ!顔を近付けるな!キモイんだよホモ野郎!
「冗談ですよ」
「その割には目が血走ってないか?」
「気のせいです」
即答かよ。しかしこいつと二人っきりか…なるべく人が大い所にいた方が無難だな…
「あなたは濡れることがまるで悪いことのように言う」
は?
「濡れることは悪いことばかりではない……僕がそれを教えてあげるよキョンたん」
そう言うと古泉はその細い身体のどこにそんなすさまじい力があるのかって感じで俺を引きずりだした。
いや本当に参ったね。
俺の抵抗も虚しくご休憩三時間4500円の看板が見えた時なんか涙出てきたし……


結論から言うと掘られた。


終わり

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