「じゃあ今から役割を決めるわ!」なんのだ?
「決まってるじゃない!」だからなんのだ?
「ホントあんたはバカキョンね!人の話を理解できないなら最後まで聞いてから質問しなさい!」はいはい。

ここはSOS団のアジトで時は放課後。
今ここにいるのは俺とハルヒと窓際で本を読んでる長門だけど。


ハルヒはホワイトボードに『キャスト』『父1』『父2』『母1』『母2』『子ども』と書き
「じゃあまず子役からね」ちょっとまて!なぜ子役がでてくる?
「あたしは有希がいいと思うんだけど、みくるちゃんがいい?」
「キャスティング以前に質問だ!今回のコンセプトはなんだ?」
「しょうがないわね、説明するからしっかり聞きなさい!」やれやれ。

「あたしはSOS団と言ったら家族のようなものだと思うのよね。実際家族だったらどんなんだろうって思ったわけ。」
まあある意味家族のような付き合いをしてなくもないが。
「だけど考えても自分ちの家族以外に家族なんていまいちわからないから、なりきってみようって訳。」
なるほどね、具体的には何をするんだ?
「そうね、明日一日家族っぽく過ごすの。呼び方も変えるわ。完全になりきるのよ。で有希が子どもでいい?」
「問題ない。」無口な子どもだな。とりあえず朝比奈さんにも聞いてみろ、と言うが早いかちょうど朝比奈さんのエンジェルフェイスと古泉ニヤケ面が同時に目に入った。
「おや、面白そうなことをしてますね。」「今度はなにやるんですかぁ?」なんて息ピッタリに言うから
「あんたたち息ピッタリね、まるで夫婦みたい!」古泉は笑っている。俺は怒っている。朝比奈さんは顔を赤くしてオロオロしながら照れている。長門は無反応。
「決めた!じゃああんたたち夫婦Bね!あたしとキョンで夫婦Aにするわ!」
「なにするんですかぁ?」まだ照れてる朝比奈さんがハルヒに聞く。
「キョン!説明しなさい!」やれやれ。ため息を大げさに吐いてから説明してやった。

「ほう、それは素晴らしい考えかと。」「私と古泉君が夫婦ですかぁ?」こいつら、狙ってるんじゃないかってくらい同時にしゃべりやがる。
古泉がこっちをみてニヤニヤしてるのが気に食わない。こっちを見るな。むこう向いてれば許してやらんこともない。
「我々よりもあなた達のほうが夫婦に見えますよ」訂正。今すぐ視界から消えてくれ。こいつとはもう話さん。
「問題は有希ね!どっちの子どもにするか決めましょう」ドラフト会議でもするのか?
「長門さんに決めてもらってはどうでしょう?」こいつはまだいたのか。だがなかなかの意見だったのでさっきの狼藉は一部許してやることにする。
「じゃあ有希、どっちの夫婦の子どもになりたい?」

長門は本をパタンと閉じて俺の袖をひっぱり「お父さん」と言い放ったので今年のドラフトは涼宮ファイターズが長門を引き当てた。
「じゃあ決定ね!明日一日やって夫婦っぽくなかったほうが罰ゲームよ!あたしのいないところでごまかしてたら罰金に罰ゲームしたあと死刑だから!」
やれやれ。明日を想像すると今からクラスの視線が痛いぜ。空気を読まない谷口なんか休まないかな。
「ちゃんと夫婦っぽい呼び方するのよ!わかった?」はいはい、俺がお前をハルヒって呼ぶことに変わりはないだろ?
「あのぉ、わたしは古泉くんの事『一樹くん』って呼ぶんですか?『あなた』って呼ぶんですか?」ああ、あなたは墓穴を掘ってることに気付いてないんですね。
「『あなた』って呼びなさい!」「ひぇぇ。」朝比奈さん、自業自得ですよ?しかしできることなら俺の事を『あなた』と呼んでほしいものだ。
「おや、では僕は朝比奈さんの事をなんと呼べばいいのですか?」
そうだ、『あなた』と呼ばれるのはこいつなんだ。それだけは阻止しないといけないので取りあえずハルヒを説得し、お互い妥協して『一樹くん』にさせた。
うらやましい事に変わりはないが今はガマンだ。
「わかりました。それで、僕は朝比奈さんの事を…「『みくる』って呼びなさい!」正直、俺に朝比奈さんを『みくる』と呼ぶ度胸はないのでハルヒとペアでよかったと思ってしまった。
「わかりました。」

「俺は『ハルヒ』のままでいいんだよな?」「他に何かあるの?」ない。あっても呼びたくない。
「じゃあハルヒは俺の事をなんて呼ぶんだ?」「キョンよ!」変わらずか。楽でいいねコレは。
じゃあ長門は俺たちと『お父さん、お母さん』って呼ぶのか?「そうよ!『パパ、ママ』でも可よ!」
「パパ」長門、袖をひっぱるな。「おんぶ」辞めなさい!古泉夫婦がニヤニヤしてるでしょう!
「ちょっとキョン!『長門』じゃなくて『有希』よ!『有希ちゃん』でもいいわ!」
はぁ。ため息しかでない。やれやれだ。
「パパ」なんだ?「有希がいい」はいはい。わかったよ。ただし、明日一日だけな?「そう」

「涼宮さん、一つ質問よろしいでしょうか?」「どうしたの?古泉くん」
「あなた方が夫婦という事は同じ名字になりますが、『涼宮さん』と呼ぶのはいいのでしょうか?」なるほど。一理ある。
「じゃああなたたちはあたしのこと『ハルヒ』と呼ぶことを許可するわ!」「わかりました、ハルヒさん。」
「って事は、俺も『みくるさん』って呼ばないといけないのか?」「もちろんよ!」まあ古泉さんところの奥さんとか呼ばないで済むだけましか。
「じゃあ心の準備も必要だから今日はもう解散しないか?」「しょうがないわね!じゃあ今日は解散にするから明日ははりきっていきましょう!」
そうして俺は、長門に「明日古泉に会ったら『おじちゃん』ってよんでやれ」と言い残して帰った。

翌朝俺は教室にて、とんでもないものを目にした。

『一日奥様』と書かれた腕章。

やれやれ。SOS団員以外にはあまり知られたくなかったんだがな。うるさいヤツがいるし。
席に着く前にさっそく絡まれた。
「ねえキョン、涼宮さんの旦那は一日だけなの?」どういう意味だ国木田。
「キョン、お前はやっぱり涼宮と…」うるさい黙れ谷口。

直接言ってくるのはこの2人くらいだが、クラスのあちこちでうわさになってるのは鈍感な俺でもわかる。
もちろん他のクラスから見学に来てるのには気付いてない、ことにしておこう。
ハルヒに軽く挨拶して席に着くと、ハルヒに聞いてみた。
「なあ、それはなんだ?」
「腕章よ。」…不機嫌そうだな。
「それはわかるがなんd」「キョン、こいつらこそこそうるさいわね。黙らせてきなさい」ムリだ。
「腕章はずせばみんな静かになるんじゃないか?」
「いやよそんなの。まるであたしが負けたみたいじゃない。」そうだった。こいつは異常な負けず嫌いだった。
はぁ、とりあえず機嫌治してもらわないと。
「気にするなハルヒ。みんな自由に生きてるお前がうらやましいだけだ。」
「なによそれ。バッカみたい。」失敗か。

岡部の登場によってクラスと俺の心に静寂が戻った。

ハルヒの不機嫌は思ったよりも軽度で、俺はあまり気にしないようにしていたらいつの間にか昼休みになっていた。
どうやら熟睡してたみたいだな。
「キョン!!!」うおっ!!?がしっ!「部室行くわよ!!」待て!俺は今起きたばかりだ!
「知らないわよそんなの!寝てたあんたが悪いんじゃない!」
「せめて弁当だけでも」持って行かせてくれ「そんなのいらないわ!あたしが作ってきたから!!」
ああ、その気持ちはすごくうれしいがクラス中の視線が痛い。
「愛妻弁当よ!ありがたく食べなさい!有希には言っといたから!さあ行くわよ!」と掴んだ俺の右手を荷物を運ぶかのように引っ張っていった。
ああ、みなさん今日だけですので気にしないでください。なんてムダだよなもう。とりあえずカバンは掴んだが、俺の弁当はハルヒのいないところで食おう。

「ごめーん有希!待った?あんたのお父さんがぐずるから遅れちゃった!」まあここはSOS団員以外は誰もいないだろうから何を言われても平気だ。
「おや?キョンくん夫妻じゃあないですか。」ニヤケ面で古泉が「みくるさんももう来ますよ?考えてる事は同じなんですね。」とハルヒの荷物に目をやった。
「じゃああたしはみくるちゃん予呼びに行ってくるわ!」言うと同時にいなくなったハルヒを見届けると、古泉も弁当を食べにここに来たことに気付いた。
朝比奈さんの手作り弁当をこいつは食うのか。腹が立つ。そして腹が鳴る。
「昨日帰りにお昼ご飯は用意してくれる、と言われましてね。大変恐縮ですがありがたくいただくことにしたのですよ。」
もうお前の境遇の全てが嫌いになりそうだ。

「そういえばあなた方夫婦のうわさは聞きましたよ」ああそうかい。こっちは噂話でハルヒの機嫌が悪くて大変だったんだぞ。
「涼宮さん…おっとハルヒさんは今日は不機嫌ではありませんよ?」なぜだ。ハルヒは周りがうるさいのを気にしてたぞ?
「ハルヒさんは照れてるだけですよ。」もういい。
「長門」「有希」「…わかった、有希」「なに?」「こっちに座らないか?」「わかった。」
まるで親子とは思えない会話だな。

「おまたせ!!」この笑顔を見てると確かに不機嫌じゃあない気がしてきた。
「さっそく食べるわよ!」ああ、はらぺこだ。
なるほどハルヒの弁当は大量で、そのくせ味は一流だった。
ハルヒと長門が高速でたいらげて俺はあまり食べれなかったが教室には弁当がもう一つあるので気にしないことにした。

「長門」「有希」「そうだった、有希」「なに?」「口の周り汚れてるぞ?」「わざと。」
ああ、拭いてくれってことか。ハンカチでさっと拭いてやる。「感謝する、お父さん。」調子に乗って頭を撫でてやる。
「本当の親子みたいですね」うるさいニヤケ面。一応勝負だって覚えているのか?
「一応じゃないわよ!れっきとした勝負よ!!」お前は口を挟むな!何て言えたらどれだけ楽か。
「うふふ、キョンくんもう尻に敷かれてますね。」俺はあなたのような人と結婚したいですよ。
「一樹くん、食後のお茶はどうですか?」「ああすみません。ではいただきましょうか、みくるさん。」
一樹くんにみくるさん、幸せそうですね。くそ、朝比奈さんはともかくこのニヤケ面は許せん。復讐だ。

長門にアイコンタクトをする。長門はわかってくれるか。
「おじちゃん、ニヤニヤしてる。」と言ったのは長門。「有希、目を合わせたらダメだ。あのおじちゃんは危ない人だからね」
「ニヤニヤしてる。」「指をさしたらダメだ。あのおじちゃんは危ない人だからね」
「おじちゃん」「話しかけてもダメだ。あのおじちゃんは危ない人だからね」
「おや?何があなた達の気に障ったのでしょう?おじちゃんと呼ばれる年齢ではないのですが。」「おじちゃんの境遇の全てだ。」
ハルヒは爆笑してる。朝比奈さんも笑ってる。古泉は苦笑いしてる。
「有希、よくできました」といってまた頭を撫でてやる。
そんなやりとりをしていたら昼休みの終わる時間になっていた。さて、教室に戻るか。
「有希、また後でな。おじちゃんとお姉さんにあいさつしなさい。」
「おじちゃん、お姉さん、またね。」さて、我が家じゃなくて教室に帰るか。「そうね!帰りましょ!」

教室に戻った俺はハルヒとなんでもない会話を少しした後眠りについた。

「起きて。」もう少し寝させてくれ。「ダメ。起きて、お父さん」 がばっ!!「起きた。」「長門か」「有希。」「そうだ、有希か。」ここは学校だよな?
今は休み時間らしい。クラスの視線が一層痛い。ハルヒはもう気にしてないみたいだが俺は今さら気になってきた。

「どうしたんだ?有希。」「忘れもの。」ああ、部室にカバン忘れたのか。俺は何しに学校にきてるんだろう。
「ありがとう」と素直に礼を言うと、長門はじっとこっちを見ている。なんだ?何かあるのか?
ハルヒはニコニコ顔で言った。「頭撫でてほしいんじゃないの?お父さん」「そう。お父さんは鈍感。お母さんは迷惑している。」そうか、悪かったな。ナデナデ。
「まったくよ!キョンはどうしてこんなに鈍感なのかしら。」周りの視線には敏感だけどな。
「悪かった。お父さんは疲れてるんだ。ハルヒのところへ行きなさい。」「そう。」
この会話で取りあえずクラスメイトは俺とハルヒの子どもが長門で理解したような会話が聞こえる。もう寝るしかないな。おやすみ。


「キョン!あんたは本当に寝てばっかね!起きなさい!」「ハルヒか。今何時だ?」「もう放課後よ!部室行って勝負を決めるわ!」やれやれ。
「やるからには、勝つ。お母さんが言ってた。」と長門が言うと「あんたよりこの子の方がわかってるわね!行くわよ!」と教室をでた。
俺は谷口以下数名教室に残ってこの会話を聞いていた生徒の顔を忘れないだろう。

みんなで帰る道すがらハルヒに聞いてみた。
「どうだった?」「そうねぇ。思ったよりは普通だったわ。あんたは?」
「ハルヒとのやりとりはほとんど普通にしてたからな。よくわからん。」
「それは普段から夫婦のようなやり取りをしてるからですか?」断じて違う。
「そうなのかもね。」こら、同意するなハルヒ。
「じゃあキョンくんは長門さんの事も子どもみたいに思ってるんですか?」「どうでしょう。そうなのかも知れません。」ただし、俺より頼りになる娘ですが。
「…。」「すまん有希。子ども扱いするつもりはないんだ。ただ自分の子のように可愛がってるってことだ。」「いい。それにやぶさかではない。」
「そうか。まあ俺はハルヒにも、有希にも普段通り接してただけなんだがな。正直、特にあまり家族を意識しなかった。」
「無意識でそれだけ夫婦らしければ実際に夫婦になってはどうでしょう?」意味がわかりかねる。
「僕たちはあなた方に負けてしまったのでこんな者を用意させていただきました。」ん?なんだこれは?
「婚姻届けです。」あほか?「どうぞ、涼宮さん。いえ、奥様。」ハルヒに渡すな!受け取るな!
「貸して」有希!お前だけは信じてたぞ!って何している!
「筆跡を真似て印鑑も偽造する。これはあなたが作成した物と同じ扱いを受ける事が予想される。」そこでハルヒに渡すな!
「じゃあキョン、あんたが18歳になったら出しにいくわよ!」お前はなんてヤツだ。
「それから、」「なんだ?」「よろしくね!」やれやれ。

おわる

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