…。
…。
チュンチュン
…。
……ん…朝か…。
…。
…。
時間は…7時前ですか。
…。
隣を見ると…居ない?
…。
「おはよう、古泉一樹」
…。
おや、もう起きていましたか。
…。
「おはようございます、長門さん」
…。
長門さんはすでに起きて朝食の準備をしていた。
…。
…。
「さて、今日は不思議探索ですね」
「モグモグ…コクン」
…。
朝食、僕も長門さんもパンを食べています。
ただし、僕はバタートーストを、長門さんはイチゴジャムを乗っけて……一斤丸かじりしています。

…。
「さて、どうしますかね?」
「モグモグ、また…行く?」
…。
長門さん?
…。
「モグモグ、世界移動」
…。
世界移動ですか?
…。
「良いですね。是非とも行きましょう」
「モグモグ、了解した」
…。
さてさて、今回はどんな世界に行けるのでしょうか。
…あ…一応確認しておかないと。
…。
「長門さん?」
「モグモグ、なに?」
「またダンジョンに迷い込むような事は…」
…。
前回は最後に時空の狭間にあるダンジョンに迷い込みえらい目にあいました。

…出来ればもう勘弁願いたい。
…。
「モグモグ、ない。あの時はオリジナル世界に立ち入ろうとしたので迷い込んだ…あれは私のミス。
もう失敗はしない」
「そうですか。安心しました
それじゃ、食べたら出ましょうか?」
「コクン…モグモグ」
…。
…。
…。
キョロキョロ
…。
………いませんね。
…。
「長門さん、大丈夫です」
「そう」
…。
マンションの外に知り合いが居ない事を確認して僕達は外に出た。
同じ過ちは繰り返しません。
…。
…。
…。
「珍しい2ショットね」
「そこで偶然会いまして」

「コクン」
…。
集合場所の喫茶店に着くとすでに涼宮さんと朝比奈さんが来てました。
…。
「やっぱり今日もキョンが最後ね」
「ええ、どうやらそのようで」
…。
彼も本当に学習しませんね…まぁ、集合時間の30分前にすでに集合している僕達もどうかと思いますが‥。
……ん?朝比奈さん?
…。
何やら朝比奈さんが長門さんに耳打ちしている様に見えますが…珍しいですね。
長門さんが頷いて…まぁ、何やら女同士の会話もあるのでしょう。
…。
ガラン
…。
ん?
…。
「…ちくしょう。また俺が最後かよ‥」
…。
彼が来ました。

…。
「キョン遅い!罰金!!」
「へいへい‥」
…。
ご馳走になります。
…。
…。
「それじゃ組み分け!」
…。
涼宮さんが笑顔で爪楊枝を差し出します…まぁ、長門さんの操作ですでに決まっているのですけどね。
…。
最初に僕が引いて…印ありですね。
長門さんももちろん…印あり。
予定通りです。
…。
…。
「私も印ありです」
…。
え!?朝比奈さん?

…。
「‥って事はアタシとキョンね、あ~ああんたと2人かぁ~」
「なんだその態度は、嫌なら別に良いんだぞ」
「嫌なんて言って無いでしょ!さぁ、行くわよ!」
…。
最高の笑顔で彼を掴み涼宮さんは出ていった…嬉しいくせに素直じゃ無いですね2人共‥。
しかし何故……あ……なるほど。
最初から印ありしか無かった…涼宮さんは彼と2人になりたかったから…ふふふ、それじゃ仕方ないですね。
まぁ、午後からでも遅くありませんし…。

…。
「さて、僕達も行きましょうか?」
「はい」
「コクン」
…。
…。
…。

喫茶店から出てしばらく歩いた所で…。…。
「古泉くん…ごめんなさい」
「え?」
…。
朝比奈さんにいきなり謝られました…何でしょうか?
…。
「実は…長門さんにお願いしてこの組み合わせにしてもらったんです」
…。
は?……長門さんを見るとコクンと頷いた。
…。
「別にかまいませんが…何故でしょうか?」
…。
そして、朝比奈さんの言った言葉に僕は驚く事になる。
…。
…。
「古泉くん、長門さん、今から私と一緒に過去に行ってもらえませんか?」
「はい!?」
…。
…。
…。
…。

「朝にいきなり‥。」
「はい…必ず今日、古泉くんと長門さんを連れて過去に行くようにと‥」
…。
僕達は公園に移動して詳しい話しを聞いていた。
…。
「それで何をしにですか?」
「…それがわからないんです」
「わからない?」
「はい…私には知る資格が無い様で…2人をとにかく連れて行けと…」
…。
何でしょうかそれは…正直未来人に踊らされるのは本位では無いのですが…。
…。
「長門さん」
「なに?」
「思い当たる事はありますか?」
「……ない事もない」
「あるのですか!?」

「そう、でもそれが正しいのかはわからない」
…。
…ふむ…ここはどうすれば。
…。
「お願いしますぅ~うううぅ…この命令はどんな事があっても遂行しないといけないんですぅ~」
…。
最優先コード…か……よし。
…。
「わかりました、行きましょう」
…。
僕がそう言うと朝比奈さんの顔はパッと輝いた。

「ほ、ほんとですか!」
「ええ、そこまで言うのならば行かないわけにはいきません…長門さんもいいですね?」
「いい」
…。
何が待っているかは分かりませんが…逃げていても始まりません。

それに時間移動……やはり魅力的です。
…。
…。
「じゃあ早速行きます…目を閉じて下さい。」
…。
朝比奈さんの言葉に従い僕は目を瞑る……あ…肝心な事を聞き忘れていました。
…。
「朝比奈さん、いったいいつ…」
「行きま~す」
…。
ズン
…。
……くっ…話している途中で…まぁ良いですか、行けば分かる。
平衡感覚が無くなり…これは……きついですね…。
…。
…。
…。
…。
「もう目を開けて良いですよ」
…。
僕は目を開ける…ここは……夜?それに…暑い‥。
…。

「朝比奈さん、ここは…いつですか?」
…。
厚着して来た事を後悔しつつ朝比奈さんに尋ねた。
…。
「ここは3年前…じゃ無い、もう4年前ですね。
4年前の7月7日…七夕です」
…。
「4年前の…七夕…」
…。
…。
……まさか……いや……そう…か……。
僕は……体が震えた。
…。
「私2回目ですよ、この時は…ん?…古泉くん?どうしたんですか?」
「……。」
「…古泉くん?」
「……。」
「お~い。」
「……え?」
…。
僕が我に帰ると、朝比奈さんが不思議そうな顔で僕を見ていた。
…。

「どうしたんですか?」
「いえ…なぜ僕がここに連れて来られたか理解できたもので‥」
「え!?分かったんですか!」
「……はい」
…。
僕は行かなくてはならない…あそこへ。
今の時間は…あまり余裕は無いですね…。
…。
「では早速行きます、朝比奈さんはどうしますか?」
「私はこの公園から出るなと言われているので待ってます。」
「そうですか、それでは…」
…。
長門さんを見ると頷き、彼女と2人で公園を出た。
…。
…。
…。
「古泉一樹、あなたがどこに何をしに行くのか聞かせてもらいたい」
…。
長門さん?
公園を出た所で彼女はそう言った。

…。
「私とあなたの向かう場所は別。だが間違いなく関係がある」
…。
長門さんはどこへ?…あ!…そうですね…確かに彼女がアレを放っておくはずがない。
…。
「長門さん、僕は………」
…。
…。
…。
…。
「……そう。分かった。」
…。
僕の向かう所を告げると長門さんは頷きそう言った。
…。
「やはり…彼女は」
「こっちは任せて」
「よろしくお願いします」
…。
僕と長門さんはここで別れた……さて向かわなくては…。
…。
…。
…。
…。


~長門有希~
…。
…。
…。
目的の場所に向かう途中私の前に…私が現れた。
…。
「あなたは行く必要は無い」
…。
この私は私にその場所に行くなと言っている…理解不能。
…。
「なぜ?」
…。
私の任務は涼宮ハルヒの監視…そして涼宮ハルヒに危害が及ぶ時にそれを排除する事。
なのにこの私は私に行くなと…理解不能。
…。
「同期を求める」
…。
私は当然同期を求めるが…。
…。
「断る」
「何故?」
…。
「今の私は同期を禁じている」
…。

「…では聞けない」
…。
私は任務遂行を優先する。
…。
「あなたは私の言う事を聞く…私はそうした」
…。
この私は…私の未来?
眼鏡がない…そして…何?この違和感は?
…。
「これからあなたを訪ねて人が来る。
あなたはその人の力になれ」
…。
情報統合思念体に確認……行く必要無しと答えが来た。
…。
「そう。了解した」
「こちらは私達が対処する、気にないでいい」
…。
私は頷き元来た道を戻る…でも…気になる‥。
私は振り返り…私に尋ねた。
…。
「あなたは本当に…私?」
…。
「私はあなた…未来のあなた。
あなたが感じている違和感は…あなた自身で知れ。」

…。
「了解した。」
…。
私はもう振り返る事なく自宅へ戻った。
…。
…。
自宅に戻った私は考える…あの私は一体…。
ピンポーン
…。
インターホン?
…。
『長門有希さんのお宅でしょうか』
…。
「……。」
…。
『あー。何といっていいものか俺にも解らんのだが……』
…。
「……。」
…。
『涼宮ハルヒの知り合いの者だ……って言ったら解るか?』
「入って」
…。
私はマンションの入り口の鍵を開けた。
…。
もう考えるまい……今はこの人の力に。
…。
…。
…。


~????~
…。
…。
俺は自販機の影に隠れ待っていた……あいつを……俺の不幸の元凶を……。
…。
「おい」
…。
ー!?
…。
振り向くと……何だこいつ?
俺の前に1人の男が立っていた。
その男は夏なのにコートを着て、夜なのにサングラスをしている…。
…。
…そうか!頭の可哀想な人だ!
相手をする必要は無い。
俺は無視する事にした。
…。
「おい…お前、今俺の事を頭の可哀想な人だと思っただろ?」
…。
なんでわかった?
…。
「うん、頭の可哀想な人」
「誰が頭の可哀想な人だ!この格好は…好きでしている訳じゃない」
…。
じゃあなんだ…!?
…。
「そうか!俺があまりに可愛いからイタズラをしてしまおう‥と考えている変態だな!」

……ん!?
…。
メキメキ
…。
「いたたたたたた!!!!!」
「誰が変態だ!!」
…。
変な人はいきなりアイアンクローをしてきた……痛い痛い!潰れる潰れる!!!…。
ぱし!ぱし!ぱし!ぱし!
…。
「…ったく‥。」
…。
俺の必死のタップにより変な人は俺を離した……ったくなんなんだ‥。
…。
「……一体なんの用だよ。」
「こんな所で何をやってるんだ?」
「……関係無いだろ、どっか行けよ!」
…。
俺には変な人に関わっている暇は無い。
…。
「そうはいかないんだな…。」

…。
変な人はそう言って俺に近づき……な!?
…。
「なにしやがる!」
…。
俺のズボンのポケットに手を入れて来た…え?
…。
「これはなんだ?」
…。
変な人は俺のポケットからソレを取り出しそう言った。
…。
「返せ!!」
…。
俺は変な人に詰め寄るが…。
…。
「答えろ、このナイフで誰を刺すつもりなんだ…古泉一樹?」
…。
な!?……こいつ‥。
…。
「……なんで俺の名前を……そうか、あんたも機関の人間だな‥。」
「……。」
…。
そいつはナイフを持ったまま何も答えない。

…。
「……俺を監視していた訳だな‥くそ!上手くやったと思ったのに‥」
…。
こいつは機関の奴だ…そして俺を‥。
…。
「まぁ、当たらずとも遠からず…って所か」
「え?」
「安心しろ、お前は上手くやったよ、機関の人間は誰もお前の行動に気づいていない」
…。
どう言う事だ?こいつは一体…。
…。
その時だ、道の向こうから女の子が歩いて来た……奴だ!!
…。
「ナイフを…返せよ。機関の人間じゃ無いなら…関係無いだろ!」
「駄目だな」
…。

くそ!…もう来る…このチャンスを逃す訳には…こうなったら素手で…。
…。
俺がそう思った時だ。
…。
ガシっ!
…。
「え?」
…。
ギュ!
…。
「ん゛ー!?」
…。
俺は変な人に押さえつけられ、口をふさがれた。
…。
「ん゛ー!ん゛ー!」
「おとなしくしろ。」
…。
俺は暴れるが…駄目だ、振り払えない。
…。
…。
その時…。
…。
…。
「なにしてんのアンタ。」
…。
俺達に女の子が…涼宮ハルヒが声を掛けた。
…。
「あんたその子をどうするつもり…もしかして人さらい?
警察呼ぶわよ。」

…。
涼宮ハルヒは変な人を睨みつけてそう言った……そうか、この状況を見ればそう思うのが当然だ。
しかし変な人は慌てる事無く……。
…。
「人さらいだなんてとんでもありません」
「じゃあ何よ」
「この子は僕の弟なんですよ。喧嘩して飛び出した所を僕が捕まえた…そう言う事です」
…。
誰が弟だ!それになんだその別人みたいな声は!?
…。
「弟?」
「ええ、ほら」
…。
変な人はそう言ってサングラスを外した……くそ、顔が見えない!
…。

…。
「ふ~ん、嘘じゃないみたいね」
…。
ちょっと待て!なぜそう判断した!?
…。
「全く…人騒がせね」
「申し訳ありません」
「帰る」
…。
涼宮ハルヒはそう言って俺達に背を向ける……ちくしょう…待て!
…。
「お嬢さん、夜道は危険です、良かったら送りましょうか?」
「おおきなお世話よ」
…。
涼宮ハルヒは去って言った。
…。
「やはり姿は小さくても涼宮さんですね…」
…。
何呟いてんだこいつは…いい加減に離せ!
…。

涼宮ハルヒが完全に見えなくなった頃にようやく拘束が解かれた。
…。
「くそ!待て!!」
…。
俺は涼宮ハルヒを追う為走り出そうとするが…。
…。
-!?
…。
「ぐっ!」
…。
俺は何かに引っかかり派手に転んだ。
振り向くと変な人が足を伸ばし俺を見ていた……足を引っ掛けやがったな‥。
…。
「何で涼宮ハルヒを殺す?」

「自由になる為だ!あの女が居なければあの閉鎖空間に行かなくていい!毎日新川や森に殴られなくていい!
俺は普通の中学生になれる!」
…。
あの女のせいて俺は…。
…。
「殴られるって…まぁ…あの2人は厳しいからな…」
「…厳しいんじゃ無い…新川や森は俺を殴って憂さ晴らしをしているだけだ!」
「…なんだと?」
…。
-!?
…。
なんだよ…急に怖い声を出すなよ。
…。
「お前それ…本気で言っているのか?」
「……あいつらは…訓練と言って俺に暴力を振るっているだけだ‥。」
…。
変な人は俺を睨みつけて近づいて来た。
…。
「おいクソガキ、お前に教えてやる」
「え?」

「これが暴力だ!」
…。
ー!?
…。
顔面に衝撃が走った……俺…殴られた?…痛い…。
…。
俺は状況が理解できず地面に手をついたまま呆然としていた。
…。
「これも暴力だ!」
…。
ー!?
…。
「うげぇ!!」
…。
腹を蹴り上げられ俺は悶絶した…痛い…さっきと同じく全く容赦の無い暴力…。
…なんで…訳わからない…。
…。
「まだ足りないか?」
…。
そう言ってさらに近づいてくる。
…。
「…やめて。」
…。
…怖い…怖い…。
…。
俺は涙を流しながら首を何度も振った。

…。
「これが暴力だ、お前が新川さんや森さんから喰らったのはこれより痛かったか?」
…。
……痛くない。
…。
「……たしかにあの2人は厳しいかもしれない。でも一度たりともお前を殴るときに憎しみの目をした事があるか?」
…。
……無い。
…。
「甘ったれたクソガキが…自分に向けられた善意を見ようともしないて…悲劇のヒーローを気取りやがって」
…。
…くそ…くそ…悔しい…悔しい…泣きたくないのに涙が…くそ!
…。
「あんたに…何が分かる…。」
…。
俺は立ち上がり変な人を睨みつける。
…。

「勝手に人の心の中に入り込みやがって……あんたに俺の苦しみがわかるか!」
…。
あの日……突然変な力が俺に現れて…。
…気が狂いそうになって…友達もみんな離れて親さえも…俺を腫れ物でも触るような扱いを…。
自殺を考えた時…機関の人が現れて…。
…やっと救われた
と思っていたらあの空間で化け物と闘わされる毎日と厳しい訓練……もう嫌だ‥。
…。

「なんで俺ばかり…くそ!くそ!…もう嫌なんだよ!!」
…。
…。
「……わかる。」
…。
え?
…。
「つらいよな…苦しいよな…俺にはわかる。」
…。
何がわかるだ!
…。
「ふざけるな!俺の苦しみがあんたにわかる訳無いだろ!
知ったふうな口聞きやがって…」
「……。」
…。
そいつは無言で近づいてきた。
…。
「…なんだよ…また殴るのか…。」
…。
そいつの手が俺に伸びる……殴られる!!

俺は目を瞑った……しかし予想した衝撃の代わりに………え!?
…。
…。
俺は……抱きしめられていた‥。
…。
…。
「!?なにする……ん?…」
…。
「………」
…。
なんで?…そいつは俺を抱きしめ泣いていた……訳わからない…。
…。
「……何であんたが泣いてるんだよ?」
「…わかるんだよ…俺には…俺にだけはお前の苦しみも悲しみも…」
…。
ぜんぜん理解出来ない……さっき俺を殴った男が今は俺を抱きしめて泣いている…。
…。

「おい…泣くなよ…おかしいよ…何であんたが泣くんだよ‥なあ?」
…。
状況が全く理解出来ないが……一つだけわかる事。
…。
この人は俺の為に泣いている…。
…。
…。
…。
…。
なかなか泣き止まないこの人を連れて近くの公園に来ていた。
…。
「もう泣くなよ…」
「……ああ」
…。
今はベンチに2人で座っている。
…。
「わかんないよ…さっきは殴った癖に今は…」
「……殴ったのはお前がふざけた事を言ったからだ」
…。
…ん‥。

…。
「新川さん、森さん…あの二人はお前をけして憎んでなんかいない…あの2人はお前に人殺しの技術を教えながら、お前が一生その技術を使わない事を祈っている…」
「え…?」
「機関には敵が多い。
能力者であるお前は狙われる可能性が高い…わかるな?」
「…うん」
「お前がつらいのはわかるが…さっきみたいな事は今後‥絶対に言うな」
「……わかった」
…。
なんでだろうか?
さっきまで怖かった…憎かったこの人が今は全く怖くない……むしろ親しみを感じる。
…。

「それに体術だけは真剣に受けておけ、今後必ず必要になる」
「たとえば?」
「たとえば……ナイフを持った宇宙人て闘う事になるかもしれない」
…。
……は?
…。
「ナイフを持った宇宙人…って…」
「さらにだ!!」
…。
さらに?
…。
「……肉じゃがを持った宇宙人と闘う事もあるかもしれない‥」
…。
はい!?
…。
「いやいやいやいや!有り得ない有り得ない!一体どんなシチュエーションなの?全く思い浮かばないよ!」
「それがあり得るから人生は恐ろしいんだ!!」
…。

だって…ナイフはともかく…肉じゃがって…。
…。
「良いか覚えておけ!人生とはどこにエアポケットが潜んでいるかわからない……悪い事は言わん、しっかり戦闘訓練は受けておけ!!」
「わ…わかったよ兄ちゃん‥」
…。
なんでこんなに必死なんだ?
…。
「話は変わるがお前…最近寝てないだろ?」
「……うん」
…。
実際にまともに寝ていない…いつ閉鎖空間に呼ばれるか…いつも怯えている。
…。
「お前には切り替えが必要だ」
「切り替え?」
「ああ、日常と緊張の切り替えだ。お前はそれが出来ていない」

「うん…でもやり方がわからない。」
「俺のやり方で良いなら教えてやるぞ」
「教えてよ!」
「将棋やオセロ…ボードゲームだ」
「……地味」
「地味とはなんだ地味とは!……1人で詰め将棋や詰めオセロをやってみろ、スーっと気持ちが切り替わり…日常に戻れる」
「本当に?」
「だまされたと思ってやってみろ」
「ああ、やってみるよ」
…。
将棋か…爺臭いな…。
…。

「それとな……」
…。
…。
…。
この後も色々話してくれた。
新川さんにダンボールについて質問したら機嫌が良くなる。
森さんは実はお菓子作りが趣味。
神人との闘いでは体当たりよりも切り裂く方が有効。
…。
時間を忘れて聞き入った。
…。
「あとな…お前のその口の聞き方……早めに何とかした方が良いぞ‥。」
「…なんで?」
「森さんに矯正……いや…言っても無駄か‥頑張れよ」
…。
兄ちゃんは何かつらい事を思い出したかのように……なに?なんなんだよ?
…。
「さて、そろそろ時間だな」
…。

え?……あ…もうこんな時間か‥。
…。
「もう帰って寝ろ」
…。
もっと話していたいけど……まぁまたすぐ会えるか。
…。
「わかった。もう帰るよ。」
「ほら…」
…。
兄ちゃんは俺にナイフを差し出した。
…。
「…いいの?」
「ああ、もうお前は馬鹿な事は考えない」
「うん」
…。
俺はナイフを受け取りポケットに入れた。
…。
「それとだ…今日から3日間閉鎖空間は発生しない」
「え!?本当に?」
「ああ、だから安心して寝ろ」
…。

なんでわかるんだろう…俺には今は発生しない…って事ぐらいしかわからない……まあ良いか。
…。
「うん、じゃあ俺もう帰るよ」
「ああ……最後に良いか?」
…。
へ?
…。
俺はまた抱きしめられていた。
…。
「これからもつらい事はたくさんあると思うけど……がんばれ…お前は沢山の人に守られているだからな…」
「…うん」
…。
兄ちゃんが俺から離れる。
…。
「最後のアドバイス…つねに笑顔でいろ。」
「笑顔?」
「こんな感じで…」
…。
兄ちゃんは笑顔を作った…何その0円スマイル?
…。
「作り笑顔で良いから…笑う門には福来るってな」
「うん、わかった」
…。
俺も0円スマイルを浮かべてそう言った。
…。
「上手だ…じゃあな」
「うん、じゃあまた」
…。

俺は兄ちゃんに背を向けて駆け出した。
…。
…。
…。
変な人だったな…でもなんなスッキリした。
今日は久しぶりにゆっくり寝れそうだ。
…あ!名前聞くの忘れてた……まぁ良いか、どうせまたすぐ会えるだろうし…。
…将棋か…やってみようかな…
おっと!スマイル♪スマイル♪
…。
…。
…。


~古泉一樹~
…。
…。
…。
僕は元気に駆けて行く少年を見つめていた。
…。
「…忘れてくれるなよ」
…。
「終わった?」
…。
長門さん?
…。
「ええ、終わりました」
「あの少年は…」
「はい、4年前の僕です……色々な物に裏切られ信じる事を忘れた口の聞き方知らない…不器用なクソガキです」
「可愛かった…ん?…古泉一樹?…泣いてるの?」
…。
「あの少年はこの後も沢山つらい目にあいます…悔しくて眠れない時も…でも彼はもう逃げません。
自分の為に泣いてくれた、生き方を教えてくれた人を思い…歯を食いしばって笑顔で耐えます。」
「…古泉一樹」

「そしていつしか、信じる事を思い出し、皆の心を知り、信頼で結ばれ……機関の外にも信頼できる仲間を得る事となります。」
…。
「……。」
「僕はもっとあの少年を抱きしめてあげたかった…」
…。
僕はしゃがみ込み自分を抱きしめた…。
やっと会えた…。
…。
「まさか…自分だったなんて‥。」
…。
…。
兄ちゃん俺頑張ったよね?
…。
…。
「ああ…よく頑張った…えらかった‥」
…。
…。
ん?長門さん?
…。
僕は長門さんに抱きしめられていた。
…。
「古泉一樹…よく頑張った…えらかった」
…。
…。
…。

それから僕達は朝比奈さんの居る公園に戻りました。
ああ、途中で中1の谷口君を見ましたよ…ええ、チャック全開でした。
家族で食事だったのかお父さんやお祖父さんと思われる方と一緒でした。
驚いた事に三代そろって全開でした…これは谷口家に伝わる呪いの可能性が出てきましたね…。
…。
…。

「朝比奈さん」
「…zzz」
「起きて下さい。」
「……ふぇ?」
「おはようございます」
「え!?」
…。
朝比奈さんは慌てて飛び起きた。
…。
「あ‥あ‥ごめんなさい…あまりに暇だったので‥」
「謝るのはこっちの方ですよ、遅くなって申し訳ありませんでした」
「え‥え‥そんな…それでどうでしたか?」
「はい、おかげさまで1人の少女の命と1人の少年の心が救われました」
「そうですか~良かった~」
…。
もうここには用は無い。
…。
「帰りましょうか」
「あ…帰還許可でてます。はい、帰りましょう」
…。
僕は瞳を閉じた。
…。
…。
…。



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