今日もハルヒの声が聞こえる。
「風邪を引くなんて、気合いが足りないのよっ!」
おいおい、その台詞は医者の言う台詞じゃないぞ、ハルヒ。
「その程度の風邪で薬なんか要らないわっ!気合いで寝て治しなさい!」
もう少し、優しく言った方がいいんじゃないか? 「今の段階では、安静にして養生するのが一番です」って感じで。

「まあまあ、ああいう話し方こそ涼宮さんらしくていいんじゃないでしょうか?」
お前はいつまでハルヒの太鼓持ちをするつもりか? 俺が言っているのは「ハルヒらしさ」の問題じゃなくて、「医者らしさ」の問題だぞ?

「ははは、でも、あなたも随分医者らしくない感じですよ?」
確かにな。「キョン先生」はないだろう。院内放送でもそう呼ばれたぞ。いつまでこのあだ名がついて回ることやら。やれやれ。

説明しよう。
高校時代、ハルヒの特訓のおかげで成績を持ちなおすどころか、大飛躍させた俺は、何を考えたのか近くの医大になんか受かってしまった。なぜかハルヒも一緒だがな。
だが、一年先に卒業した、麗しのマイ・スウィートエンジェル・朝比奈さんは何故か看護学校に行っていた。 打ち合わせ不足が原因だろう。なにより、俺の成績が医学部に行けるほど上がるとは、俺自身も思わなかったしな。
朝比奈さんに「ひどいですぅ、、なんで教えてくれなかったんですかぁ?」と涙目で言われたときには、何とも言いようがなかったな。

 で、朝比奈さんの方が先に卒業して看護婦として就職したわけだが、就職先が例の機関の病院とはな。古泉が手を回したのか。

 俺たちもなにやらかにやらやらかしながら、どうにか医大を卒業し、医者になったわけだが、研修医としてつとめたのが、機関の病院だぜ?そのときのあいつの台詞を思い出すな。
「そちらの方が何かといいのではないですか? 我々にとっては涼宮さんの監視には非常に都合がいいわけですし、なにより、あなた自身が涼宮さんと.....」
これ以上言うな。大体お前の言いそうなことは想像できる。

 と言うわけで、冒頭の台詞に戻るわけだ。
ちなみにハルヒも俺も長門も古泉も内科だ。ここまで合わせなくてもいいだろうとは思うがな。
ああ、言っておこう。朝比奈さんはハルヒの診察室付きだ。あのコンビで良く診療が出来るものだ。いや、心配なのは朝比奈さんのことじゃないぞ。ハルヒの方だ。
まあ、どじっこナースな朝比奈さんが今まで医療ミスを起こさずに来れたのも奇跡としか思えないがな。さて、ハルヒ大先生の診察室でも覗いてみるか。

「あ、キョン!丁度いいところに来たわ!」
ハルヒよ、"いいところ"とはどういうことだ?
「ねえ、この病院の白衣ってイマイチじゃない!これじゃ、みくるちゃんの魅力も半減よ!?」
そんなこと言ってもしょうがないじゃないか。それが制服ってもんだろう。
「この馬鹿キョン! それだからあなたは医者になっても雑用係のままなのよ! いい?制服やルールって物は、都合が悪くなったら、変えてしまえばいいのよっ!」
で、もう一度聞こう。"いいところ"ってなんだ?
「で、みくるちゃんのために新しいナース服を用意したのよ。キョン、よーく見なさいっ! みくるちゃん、入っていいわよ!」
「は、はーい.....」
正直、たまりません。
「ちょっとキョン!何いやらしい目で見てるのよ!」
やれやれ。おまえは見ろと言ってるのか見るなと言ってるのか、どっちなんだ?

 それより不思議なのはあの寡黙な長門さえも外来を担当していると言うことだ。何故か患者がすぐに良くなると言うのですごく人気だ。
医者としての知識は確かに長門が最優秀だ。しかし、あの宇宙的パワーで情報改変をしているのではないだろうか? ちょっと診察室を覗いてみようか。おや、診察中のようだ。

「胃の調子が悪いのですが...」
「あなたは胃癌。」
おい、長門!いきなり診断をつけるな!普通は胃カメラやらレントゲンやらで見つける物だぞ! 
「......大丈夫。生体情報をスキャン。胃に早期の腫瘍を発見した。胃カメラを使わなくても分かる。」
いや、でも、検査をせずにいきなり病名を告げられるのはどうかと思うぞ?
「......そう。」
で、治療はどうするんだ。外科に頼んで手術の手配をしないとな。
「必要ない。腫瘍の情報結合を解除した。もう治っている。」
で、このぽかーんとした顔をしている患者をどうするんだ?
「記憶を修正。胃炎の薬を処方して帰ってもらう。」
やれやれ。宇宙的パワー全開だ。

 古泉の野郎はあの0円スマイルでずいぶんと患者に人気がある。まあ、病院に来るのは年寄りばかりだから、婆さんに人気があると言ってもいいだろう。
「そういうあなたこそ優しくて人気があるのですよ?みなさん、慕ってくれているじゃないですか。」
うるさい。顔を近づけるな。そもそも慕ってくれていたって、俺の本名を知ってる患者は1割もいないんじゃないか?

ピンポーン「内科のキョン先生、内科のキョン先生、病棟にご連絡ください」
やれやれ。仕方がない、仕事に戻るか。

---end. 続かない。

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最終更新:2007年01月15日 18:00