薄暗いダンジョンで無数の怪物に囲まれている僕と長門さん。
…僕達は生きて戻れるのでしょうか…。
…。
…。
状況が飲み込めませんか?
OKです。
では今回の事を最初から振り返ってみましょう。
…。
…。
…。

あの惨劇(覚醒のおまけ参照)から一週間近くたった。
幸い死者は出ずまた普段の生活を送れるようになりました。
…三途の川渡りかけましたけどね…。
…。
今日は土曜日、恒例の不思議探索の日、いつも通り彼の奢りでコーヒーを飲み、これまたいつも通り爪楊枝を使い組み分けが行われた。
最初は彼とのペアでした。
特に何もなく終わりました。
そして2回目の組み分け…印有りですか。
さて、僕のパートナーは…。
見ると長門さんの持つ爪楊枝に印があった…彼女ですか。
…そんな訳で僕は今長門さんと2人、肩を並べて歩いている。

…実は最近…前回死にかけた時から謎の記憶が僕の頭をよぎっていた。
断片的な記憶ですが…僕が朝倉さんと闘っている所…巨大な怪物をあの神人が叩き潰す所…。
最初は気のせいだと思っていたのですがあまりにも場面場面がはっきりし過ぎている。
…これは何かある。
長門さんならば何か知っているのかも…。
…。
…。
…。
「長門さん。」
「なに?」
僕は自分の頭にある謎の記憶を長門さんに話した。
「……そう。」
「もしかしたら長門さん…何か知っているのではないですか?」
「…。」
…。
…。
暫しの沈黙の後…。
……え?
…。
彼女は僕の袖を掴み喫茶店へと入ってそのまま一番奥の席に座った。
…。
…。
「そこまで思い出したのなら話しておく。」
長門さんが静かに語りだした事…。
…。
…なるほど…世界の改変…長門さんの消失…情報統合思念体との…朝倉涼子との戦い…。

…。
…。
話しを聞いて行くうちに記憶の断片がパズルのピースのように一つ一つ組み合わさって行き…。
…。
…僕は全てを思い出した。
…。
これで心に引っかかっていた謎が解き明かされた。
…前回の長門さんのお礼の意味も……肉の入手先も…。
「不思議…本来なら絶対思い出さない。
あなた達にとってはあの日は無かった事になっている。
断片とは言えあり得ない…。」
…前回死にかけましたからね。
半分死の世界に足をつっこんだので思い出したのでしょう…。
「それで今現在の情報統合思念体の様子はどうなのですか?」
「心配ない。急進派はその勢力を大きく削減され力を失っている。
仮に再び力をつけたとしても問題ない。
涼宮ハルヒが許さないと言った以上絶対。」
「そうですか、なら安心ですね。」
「それに今の私は情報統合思念体の傀儡では無い…涼宮ハルヒの力により今の私は情報統合思念体の許可無く力を行使する事が可能…何かあっても大丈夫。」

実に頼もしいですね。
とりあえずは心配無いということで良いでしょう。
「所で長門さん。」
「なに?」
「情報統合思念体の許可が必要無くなったということは長門さん、あなたの出来る事の幅が増えたって事で良いのですね?」
「そう。」
「たとえば?」
「制限解除。わかりやすく例えるなら…
今まで自転車に乗る為に許可を取らねばならなかった。
しかし今は自分の意志で好きに乗れる。…そういうこと。」
なるほど…なんとなく理解できました。
「戦闘モードの無制限化。」
…ああ、あの"ジェノサイドモード"とかいう物騒な名前の…。
「情報操作能力の拡大。」
…何でもありと思われた長門さんの情報操作能力にも一応制限があったんですね…。
…。
…もしかしたら…アレも可能なのでは…?

「長門さん。」
「なに?」
「今の長門さんなら…時間移動も可能なのですか?」
時間移動…一度経験してみたい。彼は何度か経験しているみたいですけど僕はいつものけ者ですからね…。
淡い期待を抱いて僕は尋ねた。
「無理。」
…。
…。
…無理ですか。
「あなたの望む時間移動は無理。
厳密に言えば私自身を過去、未来に送る事は可能。」
「それはどういう意味ですか?」
「同期。」
同期…?
「私は過去、未来の私と同期する事により時間移動が可能。」
「…なるほど、すなわち情報を送る事は出来るということですね?」
「そう。物質を送る事は無理。あなたを送る事も。」
「…そうですか。」
…残念。
いや、特に過去や未来に行ってやりたい事がある訳では無いのですが…まぁ好奇心ってやつですよ。

「でも…世界移動なら可能。」
…。
「世界移動?」
「そう。」
「それはどのようなものなのですか?」
「世界移動とは…。」
…。
…。
…。
長門さんの説明によるとこうです。
…。
世界は一つでは無く色々な世界…いわゆるパラレルワールドが沢山存在し、それぞれの世界でそれぞれの僕達が存在している。
そして、今の長門さんならばそこへ移動する事が出来る…。
…。
…。
…大変興味をそそられる話ですね…ええ、時間移動よりもはるかに…。
「長門さん。」
「なに?」
「…もしも僕が行きたいと言ったら連れて行ってくれますか?」
…。
…。
…沈黙が流れた。
…。
永遠に続くのでは?と言いたくなるような沈黙の後(まぁ、実際は数分程度ですが…)長門さんは口を開いた。
…。

「…あまり推奨はしない。」
「その理由は?」
「私もやった事が無い。移動した世界がどのような世界かも予想出来ない…危険。」
「……それでも行きたいと言ったら?」
「……。」
「自分の責任は自分で取ります!」
「……。」
「是非とも!」
…。
…。
…。
「…強引。でもあなたがそこまで望むならいい。」
「本当ですか!?」
「あなたには恩がある…それと…。」
「それと?」
「…私も少しだけ興味がある。」
…。
…。
…。
そんな訳で僕は長門さんと世界移動をする事となった。
…。
これほどの不思議探索があるでしょうか!
彼も行った事の無い世界への旅!
……おっと失礼。
少し興奮しているようです…そうですね、子供のころの遠足の前の晩…そんな感じです。

喫茶店から出た僕達は人気の少ない場所を探していた。
…。
…。
…ここは…。
「昼間のここは人気が少ない。」
長門さんに連れられて来た場所はいわゆるホテル街…まぁ良いですけどね。
僕達は路地に入った。
…。
…。
「世界移動を開始する。」
「はい。
……あの…長門さん?」
「なに?」
「なぜ僕に抱きつくのでしょうか?」
「あなたを途中で落とさない為…一番良いのはあなたが私を持ちあげる事…。」
落とさない為…ああ、なるほど。
一番良いのは長門さんを持ちあげる事ですね…ならば。
…。
…。
「…あ。」
…。
僕は長門さんを…いわゆるお姫様だっこした。
長門さんは軽いので簡単ですね。

「これで良いですか?」
「……いい。
時間移動を開始する。目を瞑って。」
「はい。」
僕は瞳を閉じた。
…。
…。
…強力な立ち眩みが僕を襲った…。
…こ…これはきつい…。
長門さんを落とさないようにしないと…。
…。
…。
…。
「目を開けていい。」
…。
「…ここは…。」
…。
僕は学校の廊下に立っていた。
「ここはもう僕達の世界では無く別の世界なのですか?」
「そう。」
…。
見た目は全く同じだ…ん!?
「ここには別の僕達も居る…って事ですよね?」
「そう。」
「僕達の姿を見られるとまずいのでは?」
「大丈夫。不可視遮音フィールドを展開済み。誰からも私達の姿は見えない。」
そうですか、本当に便利ですね。
…。
…。

周囲を伺いながら僕達は文芸部室へと向かっていた…どうやら放課後のようです。
特に僕達の世界との違いは無いみたいですが…。
…。
…。
僕達は文芸部室の前まで来ていた。
「さて、ここの僕達はどんな感じなんでしょうか…。」
僕はドアを開けた。
…。
…。
…僕の目の前に…衝撃的な光景があった…。
…。
…。

「た~らこ~♪た~らこ~♪た~ぷ~り~た~らこ~♪」
「……。」
「……。」
「た~らこ~♪たらこ~た~ぷりた~らこ~がや~ってく~る~♪」
…。
…。
……すいません…言葉を失ってしまいました。
説明します。
僕達の目の前にある光景…長門さんが涼宮さんの物と思われる赤い寝袋を被り、たらこの歌を歌いながらピョンピョン跳ねています…。
…それは楽しそうに…。
…。
…。
「た~らこ~♪た~らこ~♪た~ぷ………!?」
「……。」
「……。」
…僕達に気づいた様です…なるほど、彼女には僕達が見えるのですね。

「……。」
「……。」
「……。」
しばらく僕達は見つめ合った後、彼女が…そうですね、"有希さん"とでも呼びますか…。
有希さんがピョンピョン跳ねながら長門さんに近づき口を開いた。
…。
…。
「同期を求め…。」
「断る。」
「……。」
…。
…。
「…何故?」
「絶対嫌だから。」
「……。」
…。
…。
明確な拒絶…気持ちはわかります。
…これがこの世界の長門さんですか…。
見た目は全く同じなのですが…何と言うか…ゆかいですね…。
今度は長門さんが口を開き長門さんに…紛らわしいので有希さんと呼びます。
有希さんに自分達が他の世界から来た事を説明した。

…。
…。
…。
「そう…。」
さすがです。一発で理解できたようです。
「古泉一樹…。」
「なんですか?」
「あなたも他の世界のあなた?」
「はい、長門さんと共に来ました。」
「…そう…聞きたい事がある。」
「はい?」
「テドドン。」
「…は?」
「アナルだけは…アナルだけは…。」
…。
…。
…有希さんは一体何を言っているのでしょうか…?
「…申し訳ありませんが…意味が分かりません。」
「…あなたにとって彼は何?」
彼?…ああ、彼の事ですか。
僕にとって彼は…。
「SOS団の大事な仲間であり、大切な友人です。」
「……そう。」
…。
…。
有希さんは寝袋を脱ぎいつもの指定席に座り本を読み始めた。

…。
「あの…さっきの質問の意味は…?」
「……。」
有希さんは何も答えない…僕は長門さんを見た。
「……。」
長門さんは無言で首を振った…どうやら分からないらしい。
「古泉一樹。」
「はい?」
有希さんが突然僕の名を呼んだ。
「これからこの世界のあなたが来る……出来れば見ない方がいい。」
……は?
「このまま自分の世界に戻る事を推奨する。」
…。
…。
…いや、そう言われましても…せっかく来たのですから…。
「後悔する事になる。」
…。
…。
……何だと言うのですか…。
その時です…。

…。
タッタッタッ…ガチャ!
…。
勢いよくドアを開き入って来たのは…彼でした。
…。
…。
「長門!古泉が来たら俺は来てないって言ってくれ!」
彼はそう言ってロッカーに隠れた…。
…。
??…かくれんぼでもしているのでしょうか?
…。
カツカツカツ…ガチャ…。
…。
再びドアが開けられた…そして僕は…有希さんの言っていた言葉の意味を知る事となる…。
…。
「おや、長門さんだけですか?」
「…コクン。」
「彼は来て無いと?」
「そう。」
「ふっ…甘いですね。
彼は今この部屋にいます。

何故なら僕のテドドンが反応しているからです!」
…。
カツカツカツ…。
…。
「ここ!!」
ガチャ
「ひっ!!」
「見つけましたよキョンたん…さぁ、僕のテドドンを受け入れてください!」
「やめろ~古泉いいいい!!」
「ふっふっふっ…。」
「アナルだけは!アナルだけは!…アッ-!!」
…。
…。
…。
…。
……………何……ですか………アレ……は……。
…。
…。
…。
…すいません…今僕の目の前で行われている光景の解説は……勘弁して下さい…。
…。
…。
ただ一つ言えるのは…狂っている…それだけです。
長門さんを見ると目を見開いてそれを凝視している…。

有希さんを見ると…。
(だから言ったのに…。)
とでも言いたげな表情で僕を見た後、本に視線を戻した。
…。
…。
…これ以上…見ていられない…。
「…長門さん。」
「…なに?」
「…僕…ちょっと屋上に行ってきます…。」
「そう。」
長門さんはそれを見続けている…あまり見ないで下さい…。
…。
…。
…。
「……はぁ…。」
…。
自然とため息がこぼれた…。
僕は今屋上にいます。
…ここに来る途中…鶴屋さんをカツアゲしている朝比奈さんを見ました…。
…。
…。
………えらい所に来てしまった……。

…。
…。
「古泉一樹。」
えっ?
後ろを振り向くと長門さんと有希さんが立っていた。
「大丈夫?」
「…ええ…何とか…。」
多少は立ち直りました…。
有希さんが口を開く。
「ここはアナル世界。」
…アナル…世界…?
「おそらく一番カオスな世界。」
…カオス…まさに…。
「この世界のあなたはガチホモ。常に彼のアナルを狙っている。」
…めまいが…。
「彼も口では嫌がっているが実際はどうだか…。」
…。
「朝比奈みくるは黒い。
表では可愛いく演じているが裏では…。」
…ええ、先ほど見ました…。
…。
とりあえず有希さんは比較的まともみたいですね…まぁ、最初のアレはどうかと思いますが…。
…とりあえず、あの僕を野放しにして帰る訳にはいかない…。

「あの…。」
「なに?」
「この世界から戻る前に…アレを処分して行っても良いですか?」
「不可能。アレは殺せない。」
「……。」
「私はすでに何度も古泉一樹の情報連結解除を実行している…が、彼は何度も復活する。」
「…。」
「いつか私が粉々にするから…まかせて。」
「…お願いします。」
…有希さん、いつか必ずアレを殺して下さいね…。
「私はもう帰る。
あなた達も来て。」
有希さんは僕と長門さんに自分の部屋に来る様に行った。
僕も長門さんも断る理由は無く有希さんについていった。
…。
…。
…ああ、途中で谷口君を見ましたよ。
ええ、チャック全開でした。
僕達の世界と同じです…少しホッとしましたよ…。
…。
…。
…。
有希さんのマンションに着いた。
「入って。」
「コクン。」
「おじゃまします…。」
…。
……まぁ、ここでもまた驚く事になるのですけどね…。

「おかえり~。」
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
「……。」
「……。」
…。
…。
…えっと…説明します。
何故か喜緑江美里と朝倉涼子が出迎えてくれました…。
「あれ?なんで有希が2人もいるの?…ってホモも居るし…。」
朝倉さん、僕はホモではありません…。
「あ、ついに本気で殺る時が来たのね!手伝うわよ!」
…。
朝倉さんがナイフを手にして言った……冗談ではありません、有希さん、早く説明を!
朝倉さんと闘うのはもう勘弁願いたい…。
有希さんが口を開く…。
「この長門有希と古泉一樹は…。」
…。
…。
…。
「へぇ~、別の世界からねぇ~。」
「それはそれは、ようこそいらっしゃいました。」
…。
…とりあえず命の危険は無くなったようです。
この世界では彼女らは3人で暮らしているみたいですね。

「せっかく来たのですから晩御飯食べて行って下さいね。」
喜緑さんが僕達に言った。
「コクン。」
「はい、ご馳走になります。」
喜緑さんが作るのなら大丈夫でしょう。
「何が食べたいですか?」
喜緑さんがそう言った瞬間…同時に声が上がった。
「カレー。」
「おでん。」

…有希さん、朝倉さん…。
「カレーがいい。」
「おでんがいい。」
…2人が火花を散らしています。
「ごめんなさいね、古泉君。」
喜緑さん?
「この2人それしか言わないの…。
ほら2人共、今日はお客様が来てるんですから彼らに決めてもらいましょう。」
有希さんと朝倉さんが僕を見て言った。
「カレー!」
「おでんよね!」
…。
…いや、僕はどちらでも…そんな怖い顔で見ないで下さい…。

すると長門さんが口を開いた。
「肉じゃが。」
…。
…。
…何ですと…。
…。
「肉ならある。」
長門さんはそう言って肉を出した。
…長門さん…あなたどこから出したのですか?
「ミノタウロス。」
それを聞いた3人は声をハモらせて言った。
「ミノタウロス!?」
…。
…。
「そんな高級食材を…。」
「…すごいわね。」
「…ご馳走。」
…。
…。
…どうやら彼女達にとってミノタウロスはかなり高級な物らしいですね…僕にとっては悪夢でしか無いのですが…。
「朝倉さん、長門さん。肉じゃがで良いわね?」
「もちろんよ。」
「問題無い。」
…。
…。
…僕は今回こそ本気で死を覚悟しました。
長門さん2人に喜緑さん、朝倉さん…抵抗しても勝てるわけありませんから…。

「あ…でもそれは古泉君食べられないですね…。」
…。
…喜緑さん?
「江美里、彼には牛肉で別に作れば大丈夫よ。」
「そう、牛肉なら冷蔵庫に入っている。」
…。
…。
「あの…喜緑さん?」
「はい?」
「僕が食べられないとは?」
「申し訳無いですけど、この星の人間にとってミノタウロスの肉は毒でしかないんです。」
…。
……。
「一口でも食べるとかなりヤバいのよね。可哀想、こんな美味しい物が食べられないなんて。」
「古泉一樹、残念。」
…。
…。
長門さんを見てみる…表情はいつも通りですがその汗、見逃しませんよ…。

「長門さん。」
「……。」
「毒です…って。」
「……。」
「何か言う事はありませんか?」
「……知らなかった。」
…。
…はぁ……。
…。
…。
その後喜緑さんお手製の普通の肉じゃがを頂きました。
ええ、最高に美味しい肉じゃがでした。
これで肉じゃがのトラウマも無くなりそうです…。
…。
…。
…。
「また遊びに来て下さいね。」
「ホモじゃない古泉君って新鮮だったわ。」
「…元気で。」
マンションの前、僕達は有希さん、朝倉さん、喜緑さんに見送られていた。
「さようなら。」
別れの言葉を言ってマンションを後にした。
…。
…。
「楽しかったですね。」
「コクン。」
最初はとんでもない所に来たと思いましたが…いや、実際とんでもない所ですが…まぁ、楽しめました。

「古泉一樹。」
「なんですか?」
「そろそろ帰還…。」
「待って下さい!」
「……?」
「他の世界にも行きませんか?」
…このまま帰るのはもったいない。
「……。」
「お願いします。」
「……了解。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
まだ終わらない!
「ただ、注意点がある。」
注意点?

「これから向かう世界には私たちは一切干渉できない。ただ見るだけ。」
「それは何故ですか?」
「その世界の創造主に許可を得ていない。
このアナル世界には私たちの世界の創造主も少なからず干渉している。
これから向かう世界は完全に独立した世界…一切の干渉はゆるされない…下手な事をしたら私たちの世界の創造主がスレで叩かれる事になる。」
…。
スレ?…何を言っているのですか…?
…。
「…いまいち理解できませんが…とにかく見るだけなら良いのですね?」
「そう、それなら多分ぎりぎり許してくれる。」
「わかりました、では行きましょう。」
長門さんは頷き僕の前に来た…ああ、抱っこでしたね…。
僕は長門さんを再び抱き上げ…目を閉じた…。
…。
…。
…。
…それから僕達はいくつかの世界を回りました。

彼の右手が長門さんになっている世界。
その世界では彼と長門さんが良い仲に…実に甘かったです。
僕ですか…はい、ホモでした…。
次に行った世界…。
SOS団でバンドを組み、文化祭で演奏をしていました。
その世界の彼はドラム担当でかなり頑張ってました。
僕達の世界でもやってみますかね…。
…僕ですか?
僕はベースを演奏していて……全裸でステージに上がろうとした変態でした。
結局は上がりませんでしたけどね…実行委員会GJです。

次に行った世界…悲しい世界でした。
彼の命が残り一月…残りわずかな寿命の中で彼は苦悩しながらも懸命に生き…死んだ。
彼…そしてSOS団の短い夏休み…不覚にも涙してしまいました。
…僕ですか?…ええ…ホモでした。

…他にも色々行きましたが…ホモ、変態率高いですね…ホモじゃない僕がおかしいのでしょうか?
…さて、次の世界は…。
…。
ー!?
「ぐっ!」
…。
凄まじい衝撃が全身を襲った…気づくと僕達は薄暗い…洞窟か何かですか…ここは…?
「…うかつ。」
「どうしたのですか?」
「私たちは入ってはいけない世界に入ろうとして弾き飛ばされた…。」
「…入ってはいけない世界?」
「…オリジナル…谷川世界…絶対不可侵。」
…絶対不可侵?
「私たちはそこに立ち入ろうとした…だから飛ばされた…時空の狭間のダンジョンに…。」
いつもは無表情な長門さんの顔に焦りが見える…。

「…脱出は出来るのですか?」
「可能。ただし問題がある。」
「問題?」
「空間制御能力を全開にすれば脱出路を開く事は可能…ただしその間私は完全に無防備…無力になる。」
…。
…。
…なるほど…言っている意味がわかりました。
この周囲に漂う殺気…。
…良く見ると僕達は怪物の群に完全に囲まれていた。
…。
…。
「長門さん、脱出をお願いします。」
「…古泉一樹。」
「幸いにもここでは力が使えるようです。」

最初に言った…責任を果たす。
「あなたは僕が守ります。」
…。
僕の言葉に長門さんはコクンと頷いた。
…。
…。
…自分を光に変える事以外ならできそうだ…。
…。
さぁて…やりますか!!
…。
…。
…。

……戦闘開始からどれくらい時間が立ったのでしょうか…。
最初は結構余裕でした。
しかし倒しても倒してもどんどん怪物は増えて行き…今は全く余裕はありません。
すでに全身傷だらけです…。
長門さん…まだですか?
…。
…。
「古泉一樹!!」
長門さんが手を伸ばしながら僕の名前を叫んだ…。
意味を察した僕は長門さんに抱きあげた。
「移動開始。」

瞬間…世界が歪み…。
…気づくと最初の場所…僕達の世界に戻っていた。
…。
…。
よかった…。

…。
フッ…。
…。
倒れそうになった僕を長門さんが支えてくれた。
「ああ…すいません…。」
「いい…あなたは疲れている。」
ええ…疲れました。
何匹の怪物を倒したのか…100匹までは数えていたのですが…。
ドラクエなら確実に20くらいレベルアップしたでしょうね…。
……ん!?
「長門さん!その腕は…。」
見ると長門さんの手から血が流れている。
「少しだけ攻撃を受けた。」
「も…申し訳ありません…。」
…守ると言ったのに…。
「いい…あなたの傷に比べたら全然まし。」
「…。」
「まるで野獣の様な戦いだった。」
「優雅に戦う余裕はありませんでしたからね…。」
「…素敵だった。お疲れさま。」
…。
…。
照れますね…。

…。
…。
それから僕は長門さんに傷を治してもらい…集合場所へと向かった。
…。
…。
僕達が集合場所に着くともう既に涼宮さん達は来ていた。
…。
…。
「遅れて申し訳ありません。収穫はありましたか?」
「いつも通りさ。」
彼は両手を上げながらそう答えた。
「お前らはどうだ?」
…凄い体験をしてましたよ。
涼宮さんの前では言えませんけどね…。
「僕達もいつも通…。」
その時、僕の言葉を遮り長門さんが呟いた。

「私と古泉一樹は…ダンジョンの中に行った。」
…。
…。
ーー!?
長門さん!なにを…涼宮さんが居るんですよ!


…。
彼らを見ると…驚愕の表情で僕達を見ていた…。
…。
「ゆ…有希…今…なんて…。」
「長門…さん?」
「…長門…もう一回言ってみろ…。」
…。
…。
まずいですね…一体どうしたのですか、長門さん…。
「い…いや、あのですね…。」
「古泉君!あなたは黙って!」
「ん…。」
長門さんは再び呟いた。
「私は古泉一樹とダンジョンの中に行った。」
…どうフォローすれば良いのでしょうか…。
しかし、僕は事態がとんでもない方に行っている事にこれから気づく事になる。

…。
…。
…。
「有希と古泉君が…。」
「男女の仲に…。」
「なった…だと…。」
…。
…。
ちょおおおおおっ!!!!!!!!
…。
『ダンジョンの中に行った。』
『男女の仲になった。』
違う違う違う違う違う違う違いますううううう!!!
…。
…完全に聞き違いしている…。
「それは!!ごか…。」
僕は弁明しようとしたが…。
「あなたは黙りなさい!!」
…ぐっ…。
長門さんは頭に?マークを浮かべて僕達を見ている。
…早く誤解を解いて下さい…。
「有希…あなた古泉君に抱かれたの…?」
「そう。」
抱っこしただけでしょおおお!!!

「……どこで?」
長門さんは僕達が世界移動した場所を指差した…ホテル街を…。
「聞かせて…それはあなたから?それとも古泉君が強引に…?」
「彼は強引だった…でも結局は私の意志…私も興味があった。」
…長門さん…あなたは嘘はついてない…でも…でも…。
「私も彼も初めてだった…。」
…。
…あああああ。
「彼は…もちろん避妊したわよね!?」
「否認?…特に彼はしていない。」
「何ですって!?」
「そんな…。」
「古泉…お前…。」
字が違いますううううう!!!!
…僕の心の叫びが聞こえるはずも無く…なおも続く…。

「有希…もちろん安全な日だったのよね?」
長門さんは首をふり…。
「危険…しかし彼は最初に言った。
責任は取ると…。」
「責任を取る…?」
…なぜ…こんな事に…。
「私は彼の望むまま何度もいった。」
…。
…ええ…色々な世界に行きましたね…。
「最後の彼は激しかった…まるで野獣のよう…。」
…はい…野獣の様に戦いましたよ…。
「やっぱり痛かったですか…血は出ましたか?」
「血は流した…痛かった。」
…最後に怪物に引っかかれたあれですか…。

「彼は私を守ると言ってくれた…。」
…はい…言いました…。
「終わった後、疲れきった彼は私にもたれかかってきた。」
……疲れてましたからね…怪物戦闘で…。
「今思い出しても…古泉一樹は素敵だった。」
…。
…。
…ある意味奇跡ですね…ここまで噛み合ってない会話は…。
「待って下さい!!」
「あなたは黙っていなさない!」
「いいえ!!黙りません!!あなた方は誤解しているのです!!」
「誤解って…何がよ!逃げるの?有希を傷物にしといて!!」
「前提からして間違っついるのです!!……長門さん!」
「なに?」
「最初に言った言葉をもう一度言って下さい!」
涼宮さんが居る?
そんなの知った事か!!

「……私と古泉一樹はダンジョンの中に行った。」
「ほら、有希は男女の中になったって…。」
「長門さん!!大きな声ではっきりと言って下さい!!」
長門さんは息を吸いはっきりと言った。
…。
…。
「私と古泉一樹は男女の仲になった。」
…。
…。
おいいいいいいい!!!!!!
おいコラ長門!!確信犯かお前は!!
「…女の子にこんな大きな声で…。」
「古泉君…ひどいです…。」
「古泉…お前って奴は…。」
ああああああああああああああああああああ!!!!!。

「長門さん!あなたは何を!!!」
「ジョーク、茶目っ気。」
「ジョーク?茶目っ気?ええ、それは結構です!!でもシャレにならないジョークは止めて下さい!!」
「…ユニーク。」
「あなたもしかしてそれを言えば何でも許されると思っていませんか?」
…。
…。
…。
それから大変でした…ええ、誤解は何とか解けましたよ…。
長門さんのジョークって事でね…。
…。
…。
…。
「長門さん…あんなジョークはもう勘弁して下さい…。」
「…謝罪する。」
「……もう良いですよ。顔を上げて下さい…。」
「古泉一樹…楽しかった?」
「え?世界移動ですか?…ええ、楽しかったですよ。」
「私も…楽しかった。また一緒に。」
「ええ、また一緒に。」
…。
…。
…。
……おしまい。

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