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古泉の言った通り、学校の裏庭の地面には洞窟へ続くと思われる巨大な穴が開いていた。
こんなモノがあれば学校中の生徒にバレそうなもんだが、ハルヒ曰く、
何でも人除けの結界が張られているらしく、魔術師以外の人間は穴の存在にも気付きはしないし、
そもそも無意識の内に近づかないようになってしまうとか。

「みんな、準備はいいわね?」
ハルヒの声に無言で頷く俺と朝比奈さん。それに付き従うサーヴァント組も全員真剣な面持ちだ。
「絶対にみんな生きて帰ってくるんだからね!これは団長命令よ?」
「ああ、わかってるさ」
「絶対です・・・」
そんな決意と共に、俺達は思い切って洞窟へと続く穴へと飛び込んだ。
昔、小学生ぐらいの頃流行ってたRPGゲームにこんなシーンがあったな・・・。

洞窟は明かりひとつないはずなのになぜか薄明るく、風の音も生物の気配も感じられない、
どこまでも無機質な空気に包まれている。
数分ほど歩くと、俺達の進行方向に立ちふさがるひとつの人影が現れた。
そのシルエットは紛れもなくあの蒼い男――古泉1号ことランサーだった。

「全員ここは通しません、と言いたい所ですが――」
コイツは顔だけでなく、声や口調も古泉そっくりで、あの金ぴかが随分傲慢だったのは、同じような顔でも大違いだ。
「僕は正直言って――聖杯なんかに興味はありません。興味があるのは強い相手と戦うことだけ。
ですから1人誰か置いていってくれれば、他の方達はどうぞ先へ進んでくれて結構です。
もっともこんなお願い、あなた方に聞き入れる義務はありませんがね」
ヒュンと槍を一振りし、こちらを一瞥するランサー。
確かに・・・3体のサーヴァントで一気に畳み掛けてしまえば倒すのは容易かもしれないが・・・。

「わかった。俺が残ろう」
意外にもそんなランサーの要求を呑んだのはアーチャーだった。
「ちょっとアーチャー!そんな安い挑発にのるんじゃないわよ!」
ハルヒがアーチャーをたしなめるものの、
「ランサーは強敵だ。セイバーとライダーと俺、3体でかかろうとも全員が無事という保証はどこにもない。
だったら俺が残る。そうすればセイバーとライダーは少なくとも無傷であの金ぴか野郎と戦える」
アーチャーは譲らない。

「ほう、あなたですか。あなたとは是非もう一度手合わせしたいと願っていたんですよ」
二ヤリと笑みを浮かべるランサー。
「それじゃ、決まりだな」
アーチャーがそう宣言しかけた時、
「ちょっとちょっと弓兵くんっ!1人だけいいカッコするのはいけないよっ!」
ライダーが長い髪をなびかせ、ずずいと前に出てきた。
「確かにランサーは強敵だねっ!だったら2人で力を合わせたほうがいいよっ!」
アーチャーはため息をつき、
「この先にはあの金ぴかが待ってるんですよ?ソッチに戦力を割いたほうが・・・」
と、なぜか微妙な丁寧語でライダーを押しとどめようとする。
しかし、ライダーも譲らない。
「ほほ~う?お姉さんの言うことが聞けないにょろね?」
「・・・わかりました。好きにしてください」
アーチャーはとうとう折れた。
「そういうことさっ!それじゃみくる達は先に行くにょろ。すぐに追いかけるからねっ!」

「・・・頼んだわね2人とも。それじゃああたし達は先を急ぐわよ」
ハルヒに急かされ、俺達は振り返らず、洞窟を奥へと進んでいった。

~interlude1~
「さて、ハルヒ達がいなくなった所でひとつ聞こう」
俺は、槍を構え、体勢を作り始めたランサーに問いかけた。
「何ですか?僕としては1対2の不利な状況なのでそれどころではないのですが。
まあ、サーヴァント2体を一気に相手に出来る機会なんてそうそうない貴重な経験ですがね」
「お前・・・初対面の時はとぼけていたが、俺のことを知っているだろう?
こっちの鶴屋さんのことも、そしておまえ自身が誰であったのかもな。
あのニヤケ神父をマスターにしておいて、知らないとは言わせないぞ」

ランサーはニヤケ顔を思案顔に変え、数秒考え込むと、
「さあ、誓ってあなた方の正体など僕は知りませんよ。僕自身が誰であるのかも同じくです。
まあマスターの顔を見れば、何らかの関連があったのは推察できますが・・・」
どうやらランサーは本気だ。仕方ない。
「そうか」
俺はそう吐き捨て、両手に短剣を投影した。
「ああ、でも――」
ランサーは一層体勢を低く構えながら、
「あなた方に遠い遠い昔に会ったことがあるような気がする――そんな記憶は少しだけありますよ」
と、いい放つと、一気に突進してきた。

「鶴屋さん!来ます!」
「あいよっ!」
鶴屋さんは得物の釘剣を握り締め、突進するランサーの真横に回りこむ。
サイドからの一撃――とっさに槍の柄でそれを受け止めたランサーに俺は正面から突っ込む!
覚えていないのならいいさ、古泉に似た男よ。
部室でのボードゲームと同じように、俺が圧勝させてもらうまで!!

一際明るく、広い洞窟の最深部、祭壇のように高く積み上げられた角ばった岩のカタマリの上に、
件の『聖杯』らしきモノがかすかに見える。そして、その岩のカタマリの真下には、まるで聖杯を守るかのように、
古泉と、古泉によく似た顔の金色の弓兵が立ちふさがっていた。

「ようこそいらっしゃいました。やはりランサーは大した足止めにはならなかったようですね」
ニヤニヤしながら、カソックに身を包んだ古泉が言う。
アーチャー(金)は黙ったまま、虫ケラを見るような視線で俺達を射抜く。
「さあ、古泉君!決着よ!」
ハルヒが威勢よく一歩前に出るが、
「ああ、待ってください。その前にひとつ、種明かしでもしましょうか」
「種明かし?何のことだ?」
思わず尋ねる俺に、古泉は笑みを崩さず、

「この虚構の世界について、ですよ。僕しか知らないのも不平等ですからね」
「虚構ですって?何が嘘っぱちだって言うのよ」
ハルヒが不機嫌さを隠すことなく言い返す。
「簡単なことです。この世界自体も、聖杯戦争も、サーヴァントも・・・そして僕やあなた方の存在も、
ただの虚構、かりそめのものに過ぎないのですよ」

何を言っているのだろうかコイツは。今こうして行われている聖杯戦争が嘘っぱち?
そんなワケないだろう。だとしたら俺達の存在は何だって言うんだ。
相変わらず、古泉は意味のない薀蓄を垂れ流すのがお得意なようだ。
誰一人そんなことは信じようとしなかったが、ソレにかまわず話し続ける古泉。

「今自分が生きている世界が、夢のように思える――そんな感覚を味わったことはありませんか?
今この世界を生きている自分に実感がない――そんな感覚を味わったことはありませんか?」
古泉のその言葉に俺はハッとした。確かに・・・そんな感覚を感じることがあるが・・・。
「結論から言いますとですね――」
古泉はフッと視線を外し、少し間を置くと、
「僕達は――この世界の人間ではありません」
余りにも衝撃的な言葉を発した。
「もっと言ってしまえば――サーヴァント達も然りです。彼等の元となる英霊たる存在も、
僕達と同じ、ここではない別の世界に元々は存在していたのですよ」

「そんな・・・ウソだろ」
思わず絶句する俺。
ハルヒも朝比奈さんも声が出ない。
「覚えていませんか?僕達が本来存在していた世界にもSOS団はあった。
ひとつだけ違うのはそこのセイバー・・・いや長門さんも団員だったということでしょうか」
セイバーが・・・?確かに彼女は自分の真名を『長門有希』と名乗った。
なぜか北高の制服だって着ている。しかし、そんなことが・・・。
戸惑う俺を尻目に、セイバーはまるで全てを悟ったかのように涼しい無表情だ。

「ちなみに・・・バーサーカーのマスター、あの少女はあなたの妹さんです。
バーサーカーに至ってはあなたの飼い猫である雄の三毛猫ですよ」
確かにあの少女は、妹のように感じたが・・・。
「キャスターは朝倉さんという方、アサシンは喜緑さんという方、どちらも北高生でした。
長門さんはよく知っているのでは?」
セイバーは無反応だが・・・確かにキャスターはセイバーのことを知っているような口ぶりだった。

「ライダーは鶴屋さんという方です。朝比奈さんのクラスメートにして、SOS団の名誉顧問ですよ?」
「そんな・・・」
朝比奈さんは驚きの余り、固まってしまった。
古泉の言うことは正直信じられない。ウソとしか思えない。
しかし、何故か絶対の説得力を持っているように思えた。

「どうしてこのような世界に僕達が飛ばされたのかはわかりません。
しかし、確実に言えるのは、僕達は違う世界の人間だということです。
その世界では魔術なんてものも聖杯戦争なんてものも存在しませんよ」
古泉はさらに1人薀蓄を垂れ流す。
「そんな話・・・信じられるワケないじゃない!!」
思わず叫ぶハルヒ。
「おやおや涼宮さん、これはあなたにとっては信じた方が良い話ですよ?
なぜなら『そっち』の世界にはあなたが望むような面白い出来事も、
『未来人』や『宇宙人』や『超能力者』も・・・あなたの傍にいましたしね」
「そんなワケ・・・!」
思わずたじろぐハルヒに、
「まあ信じるも信じないも自由ではあるんですが」
そう言うと、さっと髪をかきあげ、笑みをたたえたまま古泉は視線を外した。

「・・・お前の話が本当だとしよう」
IFの話なんて趣味ではないが、これは聞かねばならないだろう。
「それならば以前の世界のお前も・・・俺達の仲間ではなかったのか?」
「そういうことになりますね」
「じゃあどうして俺達と敵対するんだ?」
俺の問を受けた古泉は、ニヤケるのを急に止めた。

「要はですね。以前の世界での僕はストレスが溜まっていたんですよ」
「ストレス?」
「まあ詳しい事情は話せませんし、話した所で信じてもらえるとも思っていませんが、
僕は『色々』と気を使わねばならない立場にいましてね。
おかげで常日頃、被りたくない仮面を被らされる結果になりました」
「いつものお前が・・・仮面だったというのか?」
「ええ。元々僕はこんな性格ではないですから。よく言う所では、人間誰しも二面性を持ってるものですよね? 
それが僕が召還したサーヴァントに如実に表れているとは思いませんか?
顔が似ているというのも、そういうことです」
口調も態度も普段の古泉そのままのランサー、尊大で無慈悲なアーチャー(金)、いわばライトサイドと
ダークサイドといったところであろうか・・・。
「僕があなた方に敵対するのは――まあ、八つ当たりとでも思ってください。
僕としても・・・聖杯なんて正直どうでもいいです。叶えたい願いもありません」
八つ当たりだと?そんなことでこんな殺し合いをするハメになるだなんて・・・。

「ああ、後ですね。もし僕の言うことが本当かどうか確かめたければ、聖杯に願ってみたらどうですか?
以前の世界に戻してくれるかもしれませんよ?特に涼宮さんは興味がありそうですしね?」
「うるさいわッ!!」
ハルヒはマジギレ5秒前といった具合に沸騰している。すると、
「もう話は終わりか?全く、この我をあまり待たせるものではないぞ」
痺れを切らしたといった感じで、アーチャー(金)が前に出てくる。
その態度も口調も尊大で無慈悲、普段の古泉からは想像もつかない。
「この話の真偽を確かめる術など貴様等にはないぞ――なぜならここで貴様等は死ぬんだからな」
圧倒的な殺意と威圧感を持って、言い放つアーチャー(金)。
「だ、そうですよ。残念ですね」
古泉はまたニヤケながら首を振った。

「この世界が夢だろうが以前の世界が何だろうが、我の及び知ることではない。
我が成すべきは――貴様等のような目障りな雑種を掃除すること、それのみだ」
金色の鎧がまた一歩ずつ歩を進める。・・・来る!!
「キョン!!」
「キョンくん・・・!」
ハルヒと朝比奈さんの呼びかけに応じ、俺が一歩前に出る。

「何だ・・・てっきりセイバーが出てくるものと思っていたが。貴様のような雑種が我の相手か?」
アーチャー(金)は完全に俺を見下しているようだ。
「ああ。悪いか?」
強気に返しながら、俺も・・・正直足が震えてやがるんだがな。
「貴様に我の相手が務まるとでも思っているのか?」
「ああ、思ってるね」
正直・・・微妙だが・・・。
「貴様のような雑魚と呼ぶにも値しない雑種・・・見ているだけで不愉快だ。
その思い上がり・・・命取りになると知れ!!」
金色の男は一気にその表情を怒りをたたえたソレに変えた。
そしてパチンと指を鳴らすと・・・ヤツの背後には無数の武具が浮かび上がる。

・・・来る!!あの技だ!!


「消えろ――ゲート・オブ・バビロン(王の財宝)」
その言葉と共に、一気に射出される無数の武器。
俺の魔力は・・・ハルヒ達のおかげでいつになく充実している。
やるしか・・・ない!!

「――投影、開始(トレース・オン)!!」

~interlude2~
さっきから2対1にもかかわらず、ランサーは退くことがない。
ライダーもとい鶴屋さんが接近戦を仕掛け、俺がスキを見て投影した弓矢での射撃を試みるものの、
そのことごとくがかわされている。
「ランサーのサーヴァントは速さが命ですからね」
鶴屋さんの剣戟を槍の柄でいなしつつ、ランサーが言う。
コイツ・・・こんなに強かったのか。

「なかなかやるにょろね。これじゃキリがないっさ」
思わず嘆く鶴屋さんは、華麗なバク転をキメながら、いったんランサーの元から離脱する。
自分では接近戦でランサーを上回ることはできないと悟ったのだろう。
確かに・・・例え俺が接近戦に加わったとしても、神速のランサーを捉えることは難しい。
するとやはり、決め手となるのは・・・互いの宝具・・・。
俺は鶴屋さんに尋ねる。
「鶴屋さんは宝具には自信がありますか?」
「まあ、ソレはあるに決まってるっさ!でもあのランサーに正確にそれを当てることは難しいね・・・」
確かに・・・並みの宝具、俺が喜緑さんを倒したような飛び道具の類はランサーには効かないだろう。
しかし、完全なスキを作ることができれば・・・鶴屋さんの宝具で何とかなるかもしれないが・・・。
ひとつ思いついた案がある。
「ちょっと試してみたいことがあります」
俺は小声でその内容を鶴屋さんに伝える。
「本気かい?キョンくんが危険なんじゃないかな、それは?」
「何とかしますよ」
ランサーの方も、こちらの攻撃をかわしきることは出来ても、こちらに致命傷を与えるには至らないと悟ったのか、
追い討ちをかけてくることはしない。ヤツもまた、宝具の勝負になると睨んでいるようだ。

~interlude3~
俺はイチかバチかでランサーを挑発してみる。
「このままじゃ埒が明かない。ほら、お前も宝具を使えよ。
ゲイ・ボルグ(刺し穿つ死棘の槍)だったか?」
ゲイ・ボルグ(刺し穿つ死棘の槍)――因果を逆転し、
相手の心臓に槍が命中したという結果を作り上げてから槍を放つという反則にも似た技だ。
「挑発ですか?安々と自分の奥の手を見せる訳には行きませんね」
さすが古泉に顔も性格もそっくりなだけはある。安い挑発にはなかなか乗ってこない。

しかし、それでも、
「まあこのままでは埒があかないというのも事実。本当はゲイ・ボルグを使いたいところなんですがね」
ランサーは多少は乗り気なところを見せている。おそらく次は・・・
「しかしですね。このゲイ・ボルグは最大捕捉人数が1人なんです。だからいくら強力だろうと1人しか殺せません。
おそらくあなた方どちらかの心臓に僕の槍が突き刺さったとしても、
次の瞬間、残った1人によって、今度は逆に僕の心臓が貫かれているでしょうね」
予想通りだ。ランサーの宝具は1人相手にしか通用しない。2対1でのデメリットもしっかり把握している。
しかし1人相手にしか通用しない――というのは『基本的』な話だ。

「おそらくあなたは僕が宝具を放つスキを狙おうとしたんでしょうけど・・・
そもそも、ひとつ思い違いをしていることがあるようですね」
そう言うと、ランサーは己の紅い槍を縦に構えた。
「そもそもですね――ゲイ・ボルグは『対軍用』の武器なのですよ。
『刺し穿つ死棘の槍』はそれを対人用にアレンジしたに過ぎません――」
そう言うと、ランサーは一気に100メートルほど後退し、60メートルほどを一気に駆け抜け、
高く上空へと跳躍した。

~interlude4~
「そして――ゲイ・ボルグの本来の使用法は、
『突く』のではなく――『投擲する』のです!!!」
ランサーは右手で槍を持ち上げると――
一気に俺と鶴屋さん目掛けて投げ下ろした。

「――ゲイ・ボルグ(突き穿つ死翔の槍)!!!」

投げ下ろされた槍はもはや、その形状をとどめず、一筋の紅い流星のように俺達を目指して加速する。
そして数秒後には俺と鶴屋さんを紅い爆風と共に消滅させることであろう。
しかし――
「・・・予想通りだ。
さすが古泉に似ているだけはあるな――やっぱりお前は俺の期待を裏切らない」
俺は、そう呟いていた。
俺は槍が投げ下ろされるのをただ待っていたワケではない。
ランサーが1人で喋っている時から、俺は既に『ソレ』の投影を開始していた。
何をかって?決まっているだろう。古今東西、武器での攻撃を防ぐものといえば――それは『盾』だ。

「コイツを待ってたぜ!!――ロー・アイアス(熾天覆う七つの円冠)!!!」
7枚の花弁を持った大輪の花のような大きな盾が俺の目前で展開される。
この7枚の花弁が結界となり、ヤツの槍を跳ね返すはず・・・!
盾と槍が激突する。表現し得ないような異様な音が洞窟内に響く。

花弁が1枚割れた――こんなのは予想範囲だ。
2枚目が割れた――まだまだ!
3枚目が割れた――さすがの威力だ・・・。

~interlude5~
4枚目、5枚目が割れた――クソッ!!何とか持ちこたえてくれ!!
6枚目が割れた――ゲイ・ボルグの圧力が次第に俺の身体に伝わってくる。

そして7枚目が――と思った瞬間、まばゆい光と共に紅い流星は霧散した――。
よしっ!!持ちこたえた!!

「そんな・・・」
ランサーが驚愕に顔を歪ませる。
そして、1枚の花弁を残した花の背後から、神々しい光と共に――
白馬、いや翼の生えたペガサスに跨った鶴屋さんの姿が浮かび上がる。
「ライダーの本領発揮にょろ~!!」
洞窟の天井すれすれまで飛び上がった天馬は一気に加速し、ランサーへと向かっていく。
「さあついにあたしの活躍の時だよっ!めがっさ待たせてゴメンネッ!!」
鶴屋さんはゴキゲンにそう言い放ちながら、天馬の手綱をギュッと握る。

「一樹くんに似ているキミを倒すのはちょっと気がひけるけど、遠慮はしないにょろ!
喰らえっ!――ベルレ・フォーン(騎英の手綱)!!」

光となった天馬がランサー目掛けて駆け抜ける!
キュイーーーーーーーン!
まばゆい光と共に、光となった天馬はランサーを吹き飛ばした。
宝具を放ったあとの無防備な体勢だ。しかも己の得物は放ってしまったため、手元にない。
そんな状態で鶴屋さんの駆る神馬の突撃を喰らえば、ランサーとてひとたまりもなく消滅してしまうだろう。
そして、光が消えた後には――ランサーの姿は跡形もなかった。勝ったのだ・・・。

アーチャー(金)の背後から、次から次へと飛び出してくる武器の数々。
俺はそれを視認するや否や、全く同じものを投影し、相殺する。
「ほう。貴様はフェイカー(贋作者)か。しかし無駄なことよ」
アーチャー(金)がつまらそうに言い放つ。

いくら俺に投影が出来るからと言って・・・確かにこの量はキリがない・・・!
それに段々と身体への反動が出てきたようだ。
頭の内部から何物かにバットで叩かれているような鈍い痛みが俺を襲う。
しかし・・・まだあきらめるわけにはいかない!!
何とかあの金ぴか野郎にスキを作って・・・セイバーに攻撃のチャンスを与えなくては!
幸いなことに魔力にはまだ余裕がある!
「無駄だと言っただろう。所詮は贋作、我の持つ真作には叶わん」
アーチャー(金)は更に射出する武器の数を増やしてきた。
マズイ・・・投影が間に合わない!!

「キョン!!危ないッ!」
「逃げて・・・!!」
ハルヒと朝比奈さんの声が聞こえた瞬間――

グシャッ!!!

肉と骨を貫く鈍い音とともに一本の無銘の剣が俺の左肩に突き刺さっていた。
「グッ!!」
思わず膝を突いてしまう俺。これは・・・左腕はもうしばらく使い物にならないな。
「所詮は雑種。我に敵うはずなどなかろう」
金色のヨロイが無慈悲に俺を見下ろす。

「「キョン(くん)!!」」
ハルヒと朝比奈さんの悲鳴にも似た叫びが聞こえる。
すかさず近づいてくる足音。2人が俺の元に駆け寄ってきたらしい。
「来るなッ」
俺は思わず、未だ動く右腕で2人を制する。

「雑種などに我の相手が務まると思ったか。もったいぶらずさっさとセイバーを出せ」
アーチャー(金)の言葉に応じ、セイバーがスッと俺の前に立つ、が――
「だめだ、待つんだセイバー」
俺はおびただしい流血に濡れた紅い左肩を押さえながら、セイバーをも制する。

「・・・あなたにこれ以上の戦闘続行は不可能」
セイバーは俺の目を見据え、厳しく言い放つ。しかし、ここで退くワケにはいかない。
「まだだ・・・まだ俺は戦える・・・。セイバーは待ってるんだ・・・。
じきにあのムカツク金ぴかに攻撃するチャンスを・・・必ず作ってやる・・・」
「でも・・・このままでは・・・あなたは」
セイバーの目に、初めて感情らしきものが見て取れる。そしてそれは明らかに俺を『心配』する気持ち。
スマンな・・・セイバー。きっと古泉の言うように、俺が別の世界の人間だったとして・・・
そこにお前もいたとするならば、きっとこうして同じように迷惑ばっかかけてたんだろうな。

「セイバー・・・いや以前の世界とやらじゃ『長門有希』っていうんだったか?
大丈夫だ。俺は絶対に死なない。お前も一緒に・・・SOS団に戻りたいだろ?」

俺の問いかけにセイバーは2ミリほど首を縦に動かしてくれた。

「朝比奈さん・・・また美味しいお茶淹れてくれますよね?勿論メイド服で」
「は、はいっ!も、勿論ですっ!」
即答してくれる朝比奈さん。ありがとうございます・・・。

「ハルヒ・・・SOS団はまだ終わったりしないよな?」
「あ、当たり前でしょっ!!SOS団は永久に不滅だわ!
アンタだってまだまだ雑用係として仕事してもらわなきゃ困るんだからッ!」
同じく即答するハルヒ。そうだよな、SOS団は不滅だ。

だから俺は――まだこんな所で死ぬわけにはいかない!

俺は、足に力を入れ、何とか立ち上がってみせる。
「フン、折角拾った命をドブに捨てるか、雑種よ。
まあ、どのみちセイバーの後に嬲り殺すつもりではあったが」
アーチャー(金)が吐き捨てる。
「アーチャーの言う通りです。あなたには荷が重いのでは?」
アーチャー(金)の後方で高みの見物を決め込んだ古泉が無感情に言い放つ。

「古泉よ、お前の話ではこの『聖杯戦争』は・・・作られた嘘っぱちなんだよな?」
急に話を振られた古泉は、さも何気ない風を装って答える。
「ええ、そうです」
「だがな、俺が思うにこの『聖杯戦争』は・・・俺達がいた世界とは別の・・・
どこかの平行世界で行われていたものなんじゃないか?」
「流石にあなたはこちらの世界でも勘がよろしいですね。僕もそのように考えています」
やはりそうか・・・。

「だとすれば・・・この聖杯戦争には元々の正しい登場人物がいたはずだ」
「その通りです。いわば僕らが、なぜかその役目を奪ってしまった、といったところでしょうね」
「なるほど・・・わかった」

「どうしてそんなことを?」
古泉は思案顔になり、俺の質問の意図するところを尋ねてくる。
なんだ・・・古泉お前も結構ニブイな・・・。
「つまり・・・以前の世界で魔術師でなかったハルヒや朝比奈さんが魔術を使えるのも、
お前が似合わない神父服なんかに身を包んでるのもそのせいなんだよな?」
「ええ」

「だったら・・・俺にはとっておきの『切り札』が残されてるハズだ」
「は?」

そうだ・・・さっきから俺のアタマの中で誰かが語りかけてくるんだ。
『お前の真髄は投影じゃない。投影は所詮お前の切り札たる能力から零れ落ちたに過ぎないもの。
どうしてその力を使わないんだ?』ってな。
そのおかげで俺にもやっと掴めてきたんだ。自分の力の使い方ってヤツがな。

――どこの誰か知らないけど・・・アナタの役を取っちゃってスイマセンね・・・。
――悪いですけど・・・この『力』、存分に使わせていただきます。

俺は心の中でそう呟いた後、アタマの中に自然に流れ込んできた呪文を唱える。

――I am the bone ofmysword(体は剣で出来ている)
――Steel is my body,and fire ismyblood(血潮は鉄で 心は硝子)
――I have created over athousandblades(幾たびの戦場を越えて不敗)
――Unaware of loss(ただ一度の敗走はなく)
――Nor aware of gain(ただ一度の勝利もなし)
――Withstood pain to create many weapons(担い手はここに孤り)
――waiting for one's arrival(剣の丘で鉄を鍛つ)
――I have no regrets.This is theonlypath(ならば我が生涯に意味は不要ず)

洞窟の最深部に、俺の詠唱が木霊する。
ハルヒも、朝比奈さんも、セイバーも――
古泉も、そしてアーチャー(金)も――目を見開き、沈黙し、俺の姿を見つめている。
そして俺は詠唱の最後の一言を呟く。

――My whole life was "unlimitedbladeworks"  (この体は無限の剣で出来ていた)

次の瞬間――俺の周囲の世界の光景が一気に塗り替えられた。

「・・・何!?」アーチャー(金)が苦虫を噛み潰したような表情で吐き捨てる。
「・・・これは」古泉が驚きに顔を歪ませる。
「・・・す、凄いです」朝比奈さんは驚きの余り、両手で口を覆った。
「まさか・・・キョンが」ハルヒは目を見開き、俺を見つめている。

塗りつぶされた世界には――無数の剣が俺を周りを囲んでいた。
「さあ、戦いはこれからだぜ金ぴか野郎。武器の貯蔵は十分か?」

俺の魔術の本領は、この『アンリミテッド・ブレイド・ワークス(無限の剣製)』だ。
全ての剣を生成する要素を包含し、視認した武器は容易く複製することが可能だ。
いわゆる『固有結界』ってヤツだな。
俺もついさっきその言葉を知ったばかりなのだが・・・。

「・・・クッ!!この雑種めが・・・!!」
激高したアーチャー(金)は、一気に背後の無限の宝物庫から武器を次々に取り出し、
俺に向かって射出してくる。
しかし、ここは無限の剣が存在する俺のテリトリー。
向かってくる武器を視認した次の瞬間には、全く同じ武器がそれを制裁する。
そしてやがて、俺の繰り出す武器のペースが、アーチャー(金)のそれを上回り始める。

「クソッ・・・!!なぜ我が貴様のような雑種に・・・!!」
たまらず顔を歪ませるアーチャー(金)。
古泉のダークサイドか何だか知らないが・・・どうやら貴様も古泉の『偽者』に過ぎなかったみたいだな。

やがて、一本、また一本と剣が金色のヨロイの肩、腕、脚を貫いていく。
「ガハッ・・・!!」
アーチャー(金)は思わずたたらを踏む。よしっ・・・今だ!!

「セイバー!!令呪の下に命令する!!
――あの金ぴか野郎に思いっきりブチかましてやれ!!」

俺の左手の甲に刻まれた紅い刻印が怪しく光る――。
そしてセイバーが己の剣を隠す結界、『風王結界』を解放し、一気にアーチャー(金)の懐に突進していく。

「――エクスカリバー(約束された勝利の剣)――」

セイバーが、決して音量は大きくないものの、澄んでハッキリとした声で、己の宝具の真名を宣言する。

そして、光り輝く聖剣は――確かな軌道をもって、金色のヨロイを真一文字に切り裂いた――。

「ガハッ!!」
唖然とした表情のアーチャー(金)は、大量の血を吐き出した。
その真下にいたセイバーの身を包む北高の制服が、紅く濡れる。

「そ、そんな・・・この我が・・・」
そう呟くと、古泉によく似た金色の弓兵は、ゆっくりと後方に倒れた。

「か、勝ったんですか、ね・・・?」
朝比奈さんがおどおどした様子で呟く。

「勝ったんだよ、ね?」
ハルヒも目の前の出来事が信じられないといったような驚きの表情を浮かべる。

「ああ・・・そうだ」
痛む左肩を押さえながら、俺は確信を持ってそう答えた。

そして、
「・・・勝った」
血に濡れた剣をヒュンと一振りしながら、相変わらずの無表情でセイバーが宣言してみせた。

「負けました、か・・・やっぱり僕はどこまでも運がないようですね」
倒れ伏し、今にも消滅しようとするアーチャー(金)の亡骸を見下ろしながら古泉が呟く。
「ああ・・・俺達の勝ちだ」
俺はそんな古泉に向かって改めて勝利の宣言をしてみせる。
古泉はふっと俺を見つめると、いつになく憂いに満ちた表情を浮かべ、
「どうやら・・・ランサーも負けたようですね。令呪が完全に消えました。
アーチャーもランサーも失った今、僕にもう勝ち目はありません。
ですからどうぞ、僕を――殺してください」
と、無感情に言い放った。

『殺してください』――そんな古泉の嘆願に俺達は誰1人として答えることはない。
「どうしたんですか?僕はあなた方を殺そうとしたのですよ?
これは戦争です。敗者が勝者によってその首を刈り取られることなど必然の論理、
遠慮する必要などないのでは?」
古泉はまるでソレが当たり前のことでもあるかのように、涼しげに語る。

俺はそんな古泉の下に歩み寄り――
『ゴキッ!!』
思いっきりその顔面を、動く右手でブン殴ってやった。

思わず尻餅をついて倒れこむ古泉。
その端正な顔は赤く腫れ上がり、情けなく鼻血まで垂らしていた。
俺はそんな古泉に言い放つ。
「・・・これは戦争じゃないだろう。お前の言う通りなら俺達はこの世界の住人ですらないんだ。
だったら・・・互いを殺しあう必要性なんて・・・本当はないんじゃないのか?」

そんな俺の言葉に、古泉は驚きと困惑の入り混じったような表情を浮かべている。
コイツのこんな顔・・・はじめて見たな。
「・・・お前はSOS団の副団長だろ?お前がいなくなったら・・・
合宿の手配とか・・・推理ゲームの企画とか・・・誰がやるんだよ?」

「そうよッ!!神聖なるSOS団の団員があたしの許可も取らずに勝手に死ぬなんて許せないわ!
それに何?あたし達が古泉君のことを殺すですって?そんなこと出来るワケじゃない!
SOS団内でそんな火曜サスペンスじみた愛憎劇なんて、お呼びじゃないわ!」
とは、ハルヒの弁。散々人のことを死刑だなんだ言っといて・・・よく言うよ。
それでもソレはハルヒの本心だろう。朝比奈さんも同意するようにコクコクと何回も力強く頷いている。

「・・・だ、そうだ。団長の許可なしに・・・勝手に死ぬのは許されないとさ」

古泉は流れる鼻血もカソックにこびりついた泥もを拭おうともせず、俯いている。
そして搾り出すように、
「・・・すいません・・・すいません・・・」
と涙声で連呼し続けた。

「とにかく!古泉君の今回の狼藉についてはあとで責任を取ってもらうとして!
金ぴかも倒したことだし、アーチャーとライダーもランサーを倒したみたいだし、
一件落着ってことでいいじゃないの!ねえ?」
と、無理やりハルヒは隣の朝比奈さんに話を振ってみせる。
「え、ええ・・・そ、そうです!ハッピーエンドなのですっ!」
朝比奈さんもたどたどしく拳を振り上げ、ガッツポーズを作ってみせる。

「いや、まだだ」
俺にはそんな勝利の余韻に浸ってる暇なかった。
「何よ?キョン、何かあるの?」
いぶかしむハルヒ。

「古泉の言っていた話だ。実は俺も無意識の内にこの世界は夢か何かで・・・
本当に俺やハルヒ達が生きている世界は別にあるんじゃないかって思ってたんだ」
そう、古泉の話はややもすると、ただの誇大妄想狂の妄言にしか思えないが、
俺にとってはやけに現実感のある話だったのである。
しかしその話になる途端・・・ハルヒも朝比奈さんも、そして最初からではあるがセイバーも、
一様に黙りこくってしまう。
確かに・・・その話が本当である保証なんてどこにも無いが・・・。

そんな重苦しい沈黙を破ったのは意外にも朝比奈さんであった。
「確かに古泉くんやキョンくんの言う通り、わたし達には帰るべき世界があるんじゃないかって気がします。
これは・・・本当にただの予感なんですけど・・・実際わたしには
セイバーさんもライダーもアーチャーさんも、他人には思えないんです」

「朝比奈さんはこう言っている。ハルヒお前はどうだ?」
「・・・・・・」
ハルヒは数刻、思案顔で沈黙していたかと思うと、
「・・・『そっち』の世界では聖杯戦争よりも面白いことがあるのかしら・・・」
「ああ・・・あるんだろうさ」
「・・・だったら・・・あたしも・・・帰りたい、かも」

「セイバー、いや長門だったか?お前はどう思う?以前の世界じゃお前もSOS団の一員だったんだろ?」
「・・・・・・」
セイバーは答えなかったが、その瞳の色には僅かながらの肯定の意が含んでいるように思えた。

「よし・・・戻ろう。
――俺達が元いた世界に――俺達のSOS団に」

俺の言葉にハルヒと朝比奈さんは力強く頷き、古泉とセイバーは小さくではあるが頷いた。
だとすればやることはひとつ。
全知全能の願望器という聖杯とやらに、このワケのわからない世界からの脱出を願うだけ――。

と、その時、
「ちょっと待った――」
聞こえてくる声。振り返った先にはアーチャー(赤)とライダーの姿。
そうだった・・・2人はランサーを撃破して、この場に参じた、ということだろう。

「ライダー・・・!無事?」
朝比奈さんが思わずライダーに駆け寄る。
「大丈夫にょろ。宝具を使ったから大分魔力は消費したけど、ランサーはしっかり倒したよっ」

「アーチャー・・・アンタも無事みたいね」
ハルヒの呼びかけに、
「ああ。ライダーのおかげだ」
と、答えてみせる。

「話は聞いていたよっ!実はあたしは以前の世界の記憶がちょっとだけあるからわかるんだけど、
一樹君の話は本当だよっ」
「・・・!本当ですか?ライダー・・・いや『鶴屋さん』?」
俺の問いかけにライダー、いや鶴屋さんはニッコリ笑って(勿論マスクのせいで表情は見えないが)
「そうそう!あたしは正真正銘、鶴にゃんさっ!」
と、元気に己の真名を語ってみせる。
そうか・・・やはり古泉の話は本当なのか・・・。
するとハルヒが一歩前に出て、
「よし!聖杯に以前の世界にあたし達を戻してくれるように願いましょ!」
と宣言してみせる。

しかし――それを是としない人物が1人。
「いや、まだだ。まだ終わっていない」
そうハッキリと呟いたのはアーチャー(赤)だった。
ハルヒはそんなアーチャーにムッとした表情を向け、
「何よ?金ぴかもランサーも倒したのよ?もう敵は残っていないわ。
それとも古泉君にトドメでも刺す気?それはマスターとして許さないわよ」

するとアーチャー(赤)は、ふっと微妙な含み笑いの表情を見せ、
「いや。そういうことではない――」
そう言うと、素早く懐から一本の、見覚えのある歪な形状の短剣を取り出し――いや投影してみせ、
「すまんな。ハルヒ」
――己の胸に思いっきり突き刺してみせた。

「ルール・ブレイカー(破戒すべき全ての符)!!!」

ルール・ブレイカー・・・それはあのキャスターがあのセイバーを相手にし、使用した宝具。
全ての魔術的な契約を破棄することの出来る裏切りの刃。
それをアーチャー(赤)は己の胸に突き刺した。
つまり・・・今この瞬間、ハルヒとアーチャー(赤)の契約は打ち切られた、とうことだ。

「ちょっと!アンタ何してんのよ!?」
思わず沸騰するハルヒ。
確かに、この期に及んでアーチャー(赤)がハルヒとの契約を断ち切るなんて、意図が全く不明だ。
怒るハルヒをものともせず、アーチャー(赤)は言ってのける。

「すまんな。どうしてもこうする必要があった。
――なぜなら俺の戦いはまだ終わっていないからだ」
そして、アーチャー(赤)は俺の方へと視線を向ける。

「ずっとこの時を待っていた・・・」
「何のことだ。意味がわからん」
俺の言葉にアーチャー(赤)は、全く表情を変えることなく答えてみせる。

「俺は、『キョン』――お前を・・・殺す」

既に両手に短剣を握り締めたまま、アーチャー(赤)は絶対の殺意を持って、俺にそう宣言してみせた。

第8章 完
 
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